続続・次世代エコカー・本命は?(74)

 テスラでは、屋根型太陽光発電蓄電池を円滑に組み合わせた製品を開発し分散型電源として機能させ、1つのスマートフォンアプリで注文やアフターサービスを実施するためには、2つの会社ではなく1つの会社に統合した方がメリットを発揮できるとマスタープランの中で、主張している

 ソーラーシティは、イーロン・マスク氏のいとこであるリンドン・ライブ(Lyndon Rive)氏とピーター・ライブ(Peter Rive)氏が2006年に設立した太陽光発電ベンチャーで、マスク氏も会長として経営に参加している。今回の買収は26億ドルでテスラがソーラーシティを買収することで合意。この合意によって、設置コストの削減やハードウェアコストの削減、製造の効率化、顧客獲得コストの削減などにより、テスラとソーラーシティのシナジー効果1年間で15000万ドルに及ぶとしている。またテスラの190店舗の小売りネットワークにより国際的な展開なども可能になるという。

 ただし、今回の買収は2016914日までは、他社の買収提案を受けられる条件も入っているとしている。

総合エネルギー企業として進化するテスラ

 今回の買収が成立すれば、ソーラーで発電して家庭用の蓄電池およびEVに蓄電するという創エネから蓄エネの動きを1社で完結できる世界でも珍しい企業の1社となる。同社のEVは、ソフトウェアバージョンアップによる機能向上やスマートフォンとの連携などで従来の自動車産業を大きく変えたといわれるが、家庭においても「スマートホーム」の最有力企業になり得る可能性が生まれてきている。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/03/news029_2.html

 

 

このことは次の論考なども参照されるとよい。

蓄電・発電機器:テスラが蓄電池市場に参入、家庭用では7kWhで約36万円を実現

201505070700分 更新

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1505/07/news012_3.html

 

 

まあ総合エネルギー企業として進化していると自慢している暇は、今のテスラにはない。何としても「モデル3」の量産化を急がなくてはならないのだ。問題は「Model 」の生産の立ち上げである。

 

バッテリーはネバタ州の「ギガファクトリー」で確保できるが、フリーモントのテスラのEV工場での生産立ち上げは、今のところてんてこ舞いであろう。

 

テスラの「Model S」は、シャシーフレームからボデーまでアルミで出来ているので、アルミのプレスや溶接にはそれなりの技術が必要となろうが、相当数のそれなりの技術者を集めたものと思う。そして相当苦労して量産をものにしたものであろうことと思われる。そして「Model 」もすべてアルミ製ではないのかな。

 

だから「Model 」の量産立ち上げもかなりの準備と訓練とそれなりの苦労が伴うものと思われる。

 

当然量産試作などの手順を踏んでの量産化ではあるが、一般のエンジン付き自動車に比べれば、EVはかなり構造が簡単になっているので、較べればその点は優しいものとなろう。

 

2年早出しをして2018年には50万台のEVを売る計画だと言うので、先ずはそれだけ量産できなければならないことになる。

 

2017.7.4のNO.67の記事では、Model 320177月より生産を開始して、2017年には5,0002018年には10,000の生産に持ってゆく、と言っている。

 

10,000/週(2,000/日)ということは、250/÷5/=50/年 となるので、これで年間50万台の生産となるわけだ。イーロン・マスクと言えどもこの台数を1shiftで生産するわけにはゆくまい、当然2shiftとなろう。場合によっては3shiftも考えられる。

 

これを2shift×8h=16h/dとすると、16h/d×60m×60s/2,000unit/d=28.8s/u となり、28.8秒に1台のEVが生産されることになる。これはとてつもない速さのラインとなろう。とても人間がついてゆけないラインスピードとなるので、品質を確保しながら確実に生産してゆくのであれば、1/台~1.5/台のラインを3つほど準備しなければならないことになろう。

 

この工場建屋・設備の手配、治工具の準備、電気配線、完成車を含む構内物流などなど、場合によってはWorker達の福利厚生なども含めて、生産準備は大変なものである。このためテスラの工場は、まったくのてんてこ舞いであろう。

 

しかも生産計画立案、それに沿った資材・パーツの手配、設備のメンテナンス、サプライヤーの育成、要員の確保と育成・訓練とハードからソフトまで、いくらEVとは言え一台の新型車を作るということは、一大プロジェクトである。

 

「モデルS」のシャシー・ボデーのレイアウトはこんな形だ。相当すっきりしている。

 

「モデルS」の主要コンポーネントのレイアウト
「モデルS」の主要コンポーネントのレイアウト(クリックで拡大) 出典:Tesla Motors

 

幸いテスラでは、組み立てラインではなくて、自動走行台車上で車両の組付け・組立を行うようになっているから相当柔軟性があり、更にはEVであるので、E/G,T/Mやプロペラシャフト、ディファレンシャルギア、ドライブシャフト、場合によってはトランスアクスル、等速ジョイント(ドライブシャフト)などと言った機械部品が必要ないので、その点はずっと楽であろう。実際のところバッテリー関係の準備が出来てしまえば、生産準備などは相当簡単なものとなろう。

 

しかし多くのサプライヤーからのParts unitsの同期的Supply、混合生産での工夫など、いくら電気自動車とは言え自動車なので、大量生産の場合にはその生産準備はそれなりに大変となろう。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(73)

太陽光:ついにテスラが太陽光発電メーカーへ、創エネから蓄エネまで一貫提供

20160803 1100分 更新

EV
ベンチャーであるテスラモーターズは、20166月から買収提案を進めていた米国の太陽光発電ベンチャーであるソーラーシティを買収することで合意。従来展開してきた蓄エネだけでなく、ソーラーを自社で扱うことで創エネメーカーとしての顔も持つようになる。

[三島一孝スマートジャパン]

 EVベンチャーである米国Tesla Motorsテスラモーターズ、以下テスラ)は、新たに太陽光発電ベンチャーの米国SolarCity(ソーラーシティ)を買収することで合意したと201681日に発表した。テスラでは、20166月にソーラーシティの買収提案を行っていた(関連記事)。http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1607/22/news034.html

 2003に創業したテスラは電気自動車(EVの生産と販売を行うベンチャーだ。ここまでEVとして、スポーツカー「Roadsterロードスター)」やプレミアムセダン「Model S(モデルS)」、中級セダンの「Model 3(モデル3)などを展開し、成功を収めてきた(関連記事)(図1)。

1 車両価格の引き下げを目標に開発した「モデル3」 出典:テスラ

 EVには蓄電池が必須となり、テスラではパナソニックと独占的に提携することで電池の供給を受けている。EVの低価格化には電池の低価格化が欠かせずそのためには大量生産が必要になる。そのためテスラはパナソニックらと共同で米国ネバダに建設中のリチウムイオン電池工場「Gigafactory(ギガファクトリー)」を建設中である。ギガファクトリーは、2013年における世界全体のリチウムイオン電池セルの生産規模を上回る年間35GWh(ギガワット時)という膨大な生産規模の実現を予定しており、量産効果でリチウムイオン電池の価格低減を実現する狙いだ(関連記事)(図2)。

photo
2 ギガファクトリーの外観イメージ 出典:テスラ

定置型蓄電池市場に参入

 一方で、製造した蓄電池の使用先を考えた場合、全てをテスラのEVに使用するということは難しい。中級クラスの「モデル3」は予約受注が非常に好調であるとはいえ、EVだけでギガファクトリーで製造する電池全てを使うほどの規模があるわけではないからだ。そこで新たに20155に参入を発表したのが、定置型蓄電池市場である(関連記事)。

 EVを「移動型蓄電池」と考えれば、定置型蓄電池とのシナジーを生み出すことができる。テスラはEVから、20155月から家庭向け蓄電池の「Powerwall」と業務用蓄電池「Powerpack」を展開。徐々に世界各国で取り組みを拡大してきている(図3)。

photo 3 日本での投入もうわさされている家庭用蓄電池「Powerwall」。20163月に開催された「スマートエネルギーWeek 2016」でモックアップが展示された

 

実はこの10年間の動きはマスタープランで計画済み

 テスラでは2006年の8に企業運営の方向性としてマスタープラン(基本計画)を発表。その中で「持続可能な社会」に向けたエネルギー革新企業を目指す方向性が示されている他、ハイエンドとなるEVスポーツカーから投入しその資金で徐々に低価格なEVへと展開を進めていく点などが既に紹介されている。テスラの10年間の取り組みはほぼ、この計画の通り進められてきたといえる。

 そして、2016710年ぶりに更新したマスタープランにおいて、新たに明言したのが、太陽光発電を載せた屋根と蓄電池を組み合わせた家庭向けのエネルギーサービスの提供である。その実現のためには太陽光発電関連企業であるソーラーシティの買収が必要になるという考えである(図4)。

 テスラ CEOイーロン・マスクElon Musk)氏は「テスラは自動車メーカーではなく、エネルギー革新企業である」と述べているが、実はこれらの取り組みは既に10年前に発表されたマスタープラン(基本計画)に記載されていたことであるという。


photo
4 テスラが新たに発表したマスタープラン(クリックでWebサイトへ)出典:テスラ

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(72)

テスラにしてみれば、アメリカの一介のEVベンチャー生産メーカーであったものが、世界のパナソニックを傘下に従えた様な雰囲気を持つに至り、ある意味ふんぞり返りたい気持ちではないのかな。パナソニックは自主性を失わないことだ。

 

 

パナソニックとテスラ、NY州で太陽電池生産を発表。ソーラーシティの工場使い来夏稼働

大阪二色の浜工場でも生産再開の方針

 

Munenori Taniguchi

20161228, 午後05:00 in green

 

パナソニックが、テスラモーターズとともにニューヨーク州バッファローにある元ソーラーシティの工場太陽電池モジュールの生産を開始すると発表しました。パナソニックはテスラのバッテリー工場「ギガファクトリー」で提携をしており、今度は太陽電池モジュールでもその関係を強化していく構えです。

バッファロー工場にはパナソニックが生産ラインを構築し、生産開始は2017年夏頃になる見込み。当面の目標としては「2019年までに1GWの生産能力に拡大」を掲げています。

テスラとの提携により、パナソニック太陽光パネル生産能力はこれまでの2近くにまで増加すると考えられますが、その約半数はテスラが今後10年間にわたって購入するとのこと。日経新聞などの報道では、パナソニックはテスラへの納入のため現在は創業を休止している二色の浜工場(大阪府貝塚市)でも太陽電池モジュールの生産を再開し、テスラに供給する方針とされます。

なお、バッファロー工場で生産する住宅用太陽電池パネル「ソーラールーフ」はテスラの住宅用蓄電製品であるPowerwallなどとの接続性を確保しており、シームレスな連携が可能とのこと。内部の太陽電池モジュールはパナソニック製となります。またパナソニックはソーラールーフ以外の太陽電池製品の生産も行います。

EV
メーカーとして独走するテスラの心臓部とも言えるバッテリー、そして電力供給源となる太陽電池モジュールで提携することで、パナソニックテスラにとって欠かすことのできないパートナー企業の地位を固めています。

ちなみに、バッファローの工場はいずれもイーロン・マスク筆頭株主のテスラとソーラーシティが、グループ内で電力の生産と家庭用蓄電設備、EVの充電設備を一貫供給するために建設したものです。しかし、ソーラーシティの経営悪化などからすでに関係が深く太陽電池でも実績のあるパナソニックに工場を任せる案が浮上し、パナソニックはそれに応える条件としてテスラがソーラーシティを買収することを提案していました。

蛇足ですが、テスラはパナソニックに対し日本でパワーウォールなどの販売を打診しているとも伝えられています。

[Image : Edgar Su / Reuters]

 

http://japanese.engadget.com/2016/12/28/ny/

 

 

これによりテスラは、太陽光発電で電気を創り、その電気を自社が開発した蓄電池に蓄えて、一般家庭や法人企業でEVも含めて、効率的且つ安定的にその電気を使うことが出来ると言うエネルギーの一貫体制を完成させることとなった訳である。これで工場の稼働に際して、CO2の排出を極力抑えることが出来れば、地球環境に貢献すること大となる企業となり得るのである。

 

まあこのことがマスクの言う電気を直接使えばよい、と言う事なのであろう。

 

と言う事は電気を蓄える蓄電池とバッテリーに充電する時間の長さの問題が残り、バッテリーを沢山積んで航続距離の不安を無くすことには成功しているので、馬鹿電池のと言われないためには水素を作ることと燃料電池のコスト高などとの比較となるのであろう。

 

さてこれらの動きは、イーロン・マスクの思い付きで進んでいるように見えるが、実はそうではなくて20068に発表された「マスタープラン(基本計画)」に既にそのような方向性が示されていると言うので、計画的なものであったようだ。とすれば、大したものである。

 

一寸古いが、次の論考を参照願いたい。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(71)

理想と現実

マスク氏のビジョンはさておき、テスラの企業活動の核は、結局、自動車だ。これなしでテスラは成り立たない。この先、ソーラーシティテスラエネルギーが自動車関連事業を超える可能性を否定はしないが、屋台骨はあくまで自動車の製造、販売だ。

テスラの株価は現在、250ドル(約28000円)で推移しており、投資家は今年の後半に予定されている新車「Model 3」の発売を見守っている

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マスク氏は2017年、様々なことに取り組むつもりだ。

OnInnovation/Flickr

20163月の発表以来、Model 3」には373000の予約が入っている(しかも、1000ドル、約112000円の手付金つきで)。実際に販売が開始され、売上げが計上できるまでには、まだ時間がかかる。しかも、テスラは販売が3年遅れたModel X SUVのような過去がある。同じことが起きれば業績への打撃となる。テスラの太陽光パネルがいかにクールだろうが、テスラエネルギーが成長しようが、取り返せない。

難しい分野

自動車の製造/販売と他の事業をどう組み合わせていくのか、テスラにとって2017は難しい年になるだろう。しかし、それでも前に進まなければならない。マスク氏はこの2年以内に年間50万台の製造を目指している。2016年はこれまでで最多の85000台を生産したが、この数値を見る限り、まだまだ課題は多い。

それでも、グリーンエナジーと自動車の企業体として、テスラはカリフォルニア州で電気自動車を製造し、ネバダに巨大なバッテリー工場を持ち、各地で太陽光パネル電力貯蔵システムを推進、そのすべてが電気自動車製造につながる流れを生み出している。2016年はテスラにとって大きな躍進の年だった。2017年もさらなる成功が見込まれる。

しかし、名前が変わってもテスラはやはり自動車メーカーだ。今も、そしてこれからも。

[原文:It's too early to start thinking of Tesla as more than just a car company(TSLA

(翻訳:十河亜矢子)

 

https://www.businessinsider.jp/post-725

 

 

テスラは、2016.11月にソーラーシティを傘下に収めて太陽光発電事業に参画したが、先の記事中の「ソーラールーフ」の写真はそのことを示しているのであろう。しかし同時にパナソニックと共同で太陽電池の生産をはじめることも検討していると言うので、二刀流ではないのかな。

 

 

テスラとソーラーシティ、太陽光パネル共同開発

2016/10/29 18:21
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 【ロサンゼルス=兼松雄一郎】米テスラモーターズ28日、買収手続き中の米太陽光発電設置大手ソーラーシティと共同で、屋根タイルと一体化した太陽光パネルを開発したと発表した。来夏に米国で出荷を始める。テスラの蓄電池の新モデルと合わせて提案する。相乗効果をソーラーシティの株主にアピールし、買収手続きを前進させる狙いがある。

 表面を強化ガラスで保護した上で、水圧の力を使う「水圧転写」などを使い加工。発電効率をほとんど落とさずに、見た目は太陽光パネルだとわからないデザインに仕上げた。価格はパネルを設置しない場合に必要な電気料金と屋根タイルを合わせた水準にする。ソーラーシティの米ニューヨーク州の工場で生産。数年内に米国の屋根市場でシェア5%を目指す。

 太陽光パネルと一体的に使う家庭用蓄電池の新モデルも発表した。インバーターを一体化し設置しやすくしたのが特徴で、14キロワット時の容量で価格は5500ドル(日本は税込み61万7千円)と競合他社品の半額以下に抑えた。来年から設置を始める。日本でも蓄電池を来年発売する。

 ソーラーシティは1117に買収を承認するかどうかを決める株主総会を開く予定。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「買収が遅れれば製品開発に遅れが出る」と株主にアピールした。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29H1H_Z21C16A0TJC000/

 

 

         ソーラーシティー        パナソニック  

電池方式   トンネル接続型         ヘテロ接続型

生産工場   加州フリーモント、中国    大阪府貝塚市  

工場新設   NYバッファロー市      ←同左 

販売先     新設家屋用           既設家屋用


(注)中国からは撤退の予定

 

 

テスラのやることは、複雑すぎて何が何だか理解に苦しむものであるが、事の成り行きは次のようなものであったようだ。

 

この「バッファロー工場」はテスラとソーラーシティーが建設を始めたものであったが、ソーラーシティーの経営悪化からかねてより関係が深いパナソニックに、イーロン・マスク助けを求めたもののようで、そのためのパナソニック側の条件がテスラによるソーラーシティーの買収であった、と言う物である。

 

だから「バッファロー工場」の経営主体はパナソニックとなるのではないのかな。今までの記述からは、パナソニックが、ソーラーシティーの「バッファロー工場」の軒下を借りて太陽電池パネルを作らせて貰うような雰囲気であったが、実情はその反対のようだ。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(70)

現在テスラのEVは、カリフォルニア州フリーモント工場で、生産されている。フリーモント工場は昔のNUMMIである。言わずと知れたGMの遊休工場だったものを、トヨタとの合弁でコンパクトカーを生産するNUMMIとして再生された自動車工場である。カローラ(スプリンター)をベースにしたシボレー・ノバをGMに供給し、カローラトヨタに供給していた。198412月にシボレー・ノバの1号車がライン・オフしている。

 

しかし2009年にGMが破たんしNUMMIを手放してしまったため、トヨタ201041日にNUMMIを閉鎖してしまったものである。工場としては年産50万台規模の能力は持っていたようなので、テスラのEV50万台くらいは生産できるキャパシティは残っているのではないのかな。

 

なおNUMMI(New United Motor Manufacturing Incorporated)については「続・次世代エコカー・本命は?(35~」(2016.5.20~)に解説されているし、NUMMI閉鎖については「番外編・プリウス急加速問題(4)(41)」 (2010.3.192010.5.28)等で少し述べている。

 

しかしギガファクトリーと言う巨大工場が出来た以上、そこで車の生産をしようと思えば出来る筈なので、いくら隣接州とは言え、わざわざネバタからカリフォルニアまでバッテリーを輸送するまでもないのではないのかな、と普通考えるのが常識である。

 

従ってこの巨大工場でも車を組み立てるのではないのかな、とは誰でも考えることであろう。ここにはそんなことも記述されている。ということは、50万台どころかイーロン・マスクは本当に100万台EV生産・販売を考えているのかも知れない、と驚きを禁じ得ない。

 

そう、もう一つ指摘しておきたいことがある。

 

この記事の冒頭では「Tesla Motors テスラモーターズ」と記述している。この記事は[日経ものづくり2017年2月号の記事を再構成]と注書きされているので、たぶん1月以前に記述されたことと思う。1月時点では、テスラはテスラモーターズが正式社名であった。

 

しかし「テスラモーターズ」の社名は、2017.2.1付で、「テスラ」に変更されている。だから記事は1月だったかもしれないが、3月に掲載するのであれば、中身を吟味して「社名は2.1にテスラに変更されている」くらいの注書きを付けてもしかるべきではないのかな。

 

ではなぜ社名を変更したかと言うと、

 

テスラは「ソーラーシティ」と言う太陽光パネルの販売・施工・設計を行う企業と、家庭用・法人用の蓄電池を扱う「テスラエナジー」と言う企業持っているからである。

 

ソーラーシティは、イーロン・マスクのいとこであるリンドン・ライブとピーター・ライブが2006に設立した太陽光発電ベンチャーで、イーロン・マスク本人も会長として経営に参画している。その会社を、2016.11月に買収したものだが、テスラとソーラーシティのシナジー効果を期待してのことである。イーロン・マスクは「テスラは自動車メーカーではなく、エネルギー革新企業である」と述べているように、ソーラーシティが作った電気を「テスラエネルギー」が販売する蓄電池に貯めて、店舗やオフィッス、家庭、更にはテスラEVなどでも使うことが出来るようになる。

 

テスラは、もともと自社が開発した家庭用や業務用の蓄電池Powerwall 2」「Powerpack 2」を2015から「テスラエネルギー」から販売している。だからギガファクトリーで生産される「2170」と呼ばれる直径21×長さ70mmの円筒型電池は、当初はこの蓄電池への搭載用バッテリーとして供給されたのである。

 

従って、「ソーラーシティー」の太陽パネルで発電した電気は、テスラの「ギガファクトリーで生産される「2170」と呼ばれるリチウムイオンBatteryを搭載する「テスラエネルギー」が扱う蓄電池Powerwall 2」や「Powerpack 2」に貯められて、家庭や商店、工場などで使われることになる。

 

テスラは創エネから蓄エネまでを一社で完結できる世界でも珍しい企業となった訳で、だからテスラは、自社を「統合された持続可能なライフスタイルのためのソリューションを提供する複合企業体」と、称していると言う。自動車だけを作る会社ではなくなっている、ということを誇示したいのでTesla MotorsテスラモーターズからMotors をとったのである。しかしその主力は、やはりMotorsであろう、と言うのがもっぱら噂である。。

 

 

社名から「自動車」をなくしたテスラ、しかし実態はまだ自動車メーカー

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Justin Sullivan/GettyImages

先週、テスラは正式に社名を「Tesla Motors」から「Tesla Inc.」に変更したhttp://www.businessinsider.com/tesla-year-in-review-again-2017-2
すでにウェブサイトのURLから「Motors」をなくしていた同社。2017年の財務報告は、複雑なものになりそうだ。自動車メーカーの範疇を超えて、エネルギー関連やソーラーシティの買収により、ソーラービジネスにも進出、事業を拡大しているためだ。

時価総額400億ドル(約45000億円)の「an integrated sustainable-lifestyle-solutions conglomerate統合された持続可能なライフスタイルのためのソリューションを提供する複合企業体)」と称するテスラだが、その中身はまだ固まってはいない。むしろ、「自動車メーカー以上」と考えるのは、長期的な企業経営の「健全性」の観点からは危険だ。

株式価値0%

モルガン・スタンレー自動車産業アナリスト、アダム・ジョナス氏は昨年、ソーラーシティについて、「同社の財務状況と最近の株価を考えると、テスラにおけるソーラーシティの株式価値はゼロとみなしている」と述べた。同様にバッテリー事業を行うテスラエネルギーについても「価値はゼロ」とした。

随分と手厳しい評価だが、2つの会社に投資している投資家にとっては、価値は「ゼロ」という見方は妥当な意見だろう。テスラは企業統合を図りたいわけだが、テスラエネルギーはまだ始まったばかりの事業であり、ソーラーシティのせいで巨額の負債を負った。

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テスラのソーラールーフ

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SpaceX同様、もともとイーロン・マスク氏が所有していた自動車関連以外の事業は、テスラの企業価値を低下させるという懸念を拭えない。たとえ、「人類の化石燃料の時代を終わらせ、万一の際には火星居住を可能にする」という彼の壮大な理念を実現するためのものだとしても。
(続く)

 

続続・次世代エコカー・本命は?(69)

 「ペンタゴン(米国防総省の本部ビル)の3倍以上のサイズになる世界最大の工場で規模のメリットを追求し、電池を低コスト化する。長距離走できる電気自動車(EVを安価にして、みんなの手が届くようにしたい」。Musk氏はこう強調した。

 「電気をためてクルマが走る時代が来る。社会を変えるためには電池をいかに有効活用するのかが大事で、だからこそパナソニックGigafactoryへの投資を決断した」と津賀氏は語った。

図3 TeslaのElon Musk氏(中央)とパナソニック社長の津賀一宏氏(右)。Gigafactoryの稼働開始を満面の笑顔で祝った

3 TeslaElon Musk氏(中央)とパナソニック社長の津賀一宏氏(右)。Gigafactoryの稼働開始を満面の笑顔で祝った ギガファクトリー-DSXZZO1234576031012017000000-PN1-15

全世界のLiイオン電池生産能力に匹敵

図4 小型セダンのEV「Model 3」。現在のTeslaの主力車と比べて半額で、EVの普及を一気に加速させる可能性を秘める

4 小型セダンのEVModel 3。現在のTeslaの主力車と比べて半額で、EVの普及を一気に加速させる可能性を秘める ギガファクトリー-DSXZZO1235197031012017000000-PN1-14

 Gigafactoryへの総投資額は50億ドル(約6000億円)で、パナソニックの投資額は1500億~2000億円程度になるとみられる。現在は工場全体の約30%が完成した段階で、今後も追加投資して生産能力を順次拡大し、2018年までに電池セルの生産能力を年間35GWh(ギガワット時)に引き上げる。この生産規模は「Gigafactoryを除く全世界で生産されるリチウムイオン2次電池の総量に匹敵する」(Tesla)という。

 同工場が生産する電池は、まずTeslaが開発した家庭用や業務用の蓄電池Powerwall 2」「Powerpack 2」向けに供給する。その後、Tesla2017年半ばに量産を開始する予定の小型セダンのEVModel 3向けに供給する計画だ(図4)。

 「2170」と呼ばれる直径21×長さ70mmの円筒型電池で、現在の主力車である中型セダンの「Model S」や多目的スポーツ車SUV)の「Model X」向けの直径18×長さ65mmの電池「18650」よりも一回り大きい。セル当たりの容量を高めるのと同時に生産効率も向上させられるとする。Model 3のベースモデルの価格は35000米ドル(約416万円)から。Model SModel Xの半額程度の水準になる。

 EVの低コスト化のカギとなるのが、部品コストで最大とされる電池コスト。電池コストを大幅に引き下げるうえで、Gigafactoryが重要な役割を果たす。集中生産で規模のメリットを追求することに加えて、パナソニックなどの電池メーカーや材料メーカーと協業して、材料から電池セル、電池パックまでを一貫生産することにより、バッテリーパックのkWh当たりのコストを30以上削減する。

 電池コストの低減で車両の本体価格を安くしつつも、Model 31回の満充電で走行可能な距離(以下、航続距離)を215マイル(346km)以上にする予定。EVの課題とされる航続距離を十分に確保している。

 Model 3は既に37万台以上の予約を獲得。米国での予約金は1000米ドル(約12万円、日本では15万円)で、新規予約する場合の引き渡し時期は2018年半ばごろを見込む。

電池から車体まで一貫生産に現実味

 好調な予約を受けて、TeslaModel 3の量産拡大を当初計画から前倒しする。カリフォルニア州フリーモント工場では、EVの生産能力を2018年にも年間50万台に高める。フリーモント工場はTeslaが買収する前は、トヨタ自動車と米General Motorsの合弁工場「NUMMI」だった。当時は年間50万台規模の生産能力を持つ工場だったため、Model 3の増産は十分可能とみられる。

 ただし、2019年以降にModel 3などの販売が順調に拡大すれば、EVのより大きな生産能力が求められる。

 その際に視野に入ってくるのが、GigafactoryでのEV完成車の生産だ。Musk氏が目指すのは、「材料段階から電池などの主要部品を製造し、完成車に組み立てた上で、それを展示するショールームにもなる工場だ。将来的にはEVの完成車を生産する可能性がある」(TeslaGigafactory担当の幹部)。

 実際、TeslaGigafactoryにおいて、電池に加えてModel 3向けのDrive Unit駆動ユニット)、モーターなどの中核部品も生産することを決めた。当初は同工場で「電池のみを生産する計画だったが、電池の生産ラインを工夫することでより狭い面積に生産設備を配置することが可能になった」(同幹部)という。

 こうした工夫でスペースに余裕が生まれ、そこを使って他の製品を生産することが可能になる。現時点のGigafactoryの敷地面積176000m2(平方メートル)超、延べ床面積455000m2は、前述のように工場全体が完成した際の3割弱に過ぎない。将来的に電池をフル生産するようになっても、電池以外を生産できる十分なスペースを確保できるメドがついているという。

 Gigafactoryで電池セル、電池パック、モーター、駆動ユニットなど基幹部品を生産する以上、スペースに余裕があれば、完成車も製造した方が効率は高められる。

試されるものづくりの力

 GigafactoryTeslaパナソニックの命運を左右する工場といえる。Teslaにとっては年間50万台規模の生産を目指すEVの低価格化に、Gigafactory製の電池が必要不可欠だからだ。同社初の普及価格帯のEVの成否は、高性能な電池を安価に生産できるかどうかにかかっている。

 パナソニックにとっても数千億円規模の巨額投資は、プラズマテレビ以来の大きな“賭け”だ。EV向け電池でも韓国のLG ChemSamsung SDIとのグローバル競争が激化する中、パナソニックTeslaと組み、シェア世界一に向けて、リスクをとって攻める。

 もちろん従来の18650と比べてサイズが一回り大きい2170の電池の量産をかつてない規模で短期間に立ち上げるのは容易ではない。クルマは高い安全性が求められるだけに、高い品質を確保することも不可欠だ。

 EV完成車の生産立ち上げもハードルは低くない。2016年で生産規模8万台弱の自動車メーカーであるTeslaが、一気に年間50万台まで量産規模を拡大することになる。実際、TeslaModel Xを立ち上げる際には、フリーモント工場で量産を軌道に乗せるのに苦労した。

 リスクが大きいことは否めないが、成功した場合の果実もまた巨大だ。「世界中のクルマをEVにする」というMusk氏の究極の野望に向けて、世界でEVが普及する起爆剤になる可能性を秘めている。

 その成否のカギを握るのが高い品質を確保した上での早期の量産立ち上げ。まさに両社のものづくりの力が試される正念場を迎えようとしている。

日経ビジネス 山崎良兵)

[日経ものづくり2017年2月号の記事を再構成]

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO12343160R30C17A1000000/?n_cid=MELMG005

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(68)

イーロン・マスクの言う年間50万台のEVを売るためには、この「2170」バッテリーと「ギガファクトリー」は絶対に必要となるものであるから、自慢も当然であろう。

 

 

テスラの新型バッテリーセルは「世界で最もエネルギー密度が高く、最も安価」になるとイーロン・マスクCEOが発言

By  Autoblog Japan Staff RSS feed

201611080600

 

テスラの新型バッテリーは「より安価でより高いエネルギー密度を誇る」とイーロン・マスクCEOが語る

テスラのイーロン・マスクCEOは、アナリスト達とのカンファレンスコールにおいて、米国ネバダ州のリチウムイオン電池工場「ギガファクトリーhttp://jp.autoblog.com/tag/gigafactory/2170」と呼ばれる新型バッテリーセルをパナソニックと共同で生産すると発表し、「世界で最も優れたセルであると同時に、最も安価なセル」になると語ったと『Electrek』が伝えている。この新型バッテリーセルは年末までに生産が開始される見込みだ。

 

カンファレンスコールの中でマスクCEOは、テスラとパナソニックとの提携拡大について語り、その際に新型バッテリーとその可能性について言及した。『Electrek』によると、同CEOはその後、このバッテリーセルが「世界で最も高いエネルギー密度」を誇ることを明らかにしたという。

普通に考えれば、バッテリーを生産するメーカーは「高密度だが高価」か、または「低コストだが密度はそれなり」の間で妥協を強いられるはずである。それを考えるとずいぶんと大胆な主張だが、あのマスクCEOによる発言だと思えば驚きはない。現在、テスラは「18650」と呼ばれるパナソニック製のバッテリーセル(上の写真)を「モデルS」と「モデルX」で採用している。「1865018-650としても知られる)」は、直径18mm、高さ65mmの円筒形だ。新型セルの2170(つまり21-70と取れる)という名前から推測すると、その直径は21mm、高さは70mmになるはずだ。

テスラの現行EVが採用する「18650」バッテリーセルのエネルギー密度は、250Wh/kg(ワット毎キログラム)と推定される。今年初め、テスラはモデルSのバッテリーパックが「1kWhあたり190ドル(約2万円)以下」と公式に発表しており、『Electrek』の見積もりでは、クルマに搭載するバッテリーパックのサイズにもよるが、実際には100ドル(約1300円)から15015,500円)ドルほどだろうとのことだった。今回、マスクCEOは「2170」のコストについての詳しい情報を明らかにしていない。

この新型セルがどのクルマに採用されるのかについてもマスクCEOは言及していないが、来年発売予定の新型「モデル3」に採用されると見てほぼ間違いないだろう。テスラはこれまで既存のモデルに様々なアップデートを施してきたため、モデルSやモデルXがアップグレードを受け、この新型セルを採用する可能性も高い。


By Joel Patel
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

 

http://jp.autoblog.com/2016/11/07/tesla-new-battery-best-in-world-cheap-2170-musk/

 

 

なおこのギガファクトリーは名前の通り巨大であるため、工場建設に際しては地球の丸みも考慮する必要があった、とどこかに書かれていたが、それほど巨大なものである。

(2017.6.21のNO.58参照のこと。)

 

ここでは、当然「モデル3」用のバッテリーを作るのであるが、当初は家庭向けや会社向けの蓄電池用のバッテリーとして供給されることになっている。「モデル3」は今年後半から生産されるため、今はまだEV用には供されないだ。

 

 

車生産も視野、テスラとパナの命運握る「世界最大工場」

2017/3/9 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

日経ものづくり

 世界中に存在するあらゆる工場の中で最大となる巨大工場がついに動き出した。

図1 Gigafactoryの外観。一部で生産を開始しており、段階的な生産拡大を目指している

1 Gigafactoryの外観。一部で生産を開始しており、段階的な生産拡大を目指している

 米Tesla Motorsテスラモーターズパナソニックと共同で、ネバダにおいて世界最大のリチウムイオン2次電池工場Gigafactory(ギガファクトリー)」を201714に稼働させた(図1)。2014年に着工し、建設を進めてきた同工場では第1段階の工事がこのほど完了して、リチウムイオン2次電池のセルの生産を開始した(図2)。

 オープニングセレモニーには、Teslaの会長兼最高経営責任者CEO)のElon Muskパナソニック社長の津賀一宏氏が出席。その後、共同会見を開いた(図3)。

図2 リチウムイオン2次電池セルの生産設備。パナソニックが製造した電池セルは直ちにTeslaのバッテリーパックの生産工程に引き渡される

2 リチウムイオン2次電池セルの生産設備。パナソニックが製造した電池セルは直ちにTeslaのバッテリーパックの生産工程に引き渡される


(続く)