続続・次世代エコカー・本命は?(93)

何れにしてもクルマも、ハードとソフトの両面で変革が必要となる。

 

先ずは巷にうごめいているクルマ(だけとは限らないが)の情報の収集が必要となる。

 

高機能センサー、高速データ通信網、大量のデータを蓄積して分析をする場所としての大容量ストレージ、そしてそれらを分析・活用する働きをする高機能ICチップとそこにloadされているデータを識別し予測する人工知能AIなどが、手軽に使えるようになったきたからである。いまではこのAIは、ディープラーニングとかいう人間の頭脳が行う学習に似た機能を駆使して、「人には出来ないものがAIには出来る」と言う時代になりつつあると言われている。

 

移動に関しては、最も安全で最短の移動経路を探し出して、クルマが走ってくれて、場合によってはある種のデータから事故まで予測してくれて、クルマを止めてくれるか安全なルートへと案内してくれると言った芸当も出来るようになるかもしれない。

 

ある種のデータとは、通過地点でのトラフィックの全ての状況(個々のクルマの状況であり、個々の運転者の状況であり、道路や歩道の状況などである。)であり、それらをAIが分析し予測して何が起こりそうかを教えてくれる、と言う事である。

 

と言う事は、クルマだけでなくあらゆるものがネットにつながっていなければならない訳であるが、当座はクルマだけでもつながっていれば、そのことで新しい数多くのビジネスモデルが提供されることになろう。

 

但しAIを大々的に使った「知能化」はまだ先のこととなろう。と言うのも、AIを動かすためには膨大な電力が必要となるからである。今のAIは人間の脳ほどの経済性はないものと思っておく必要がある。この大々的にAIが車で活躍するには、省電力の半導体が必要であり、クルマには相当大きなバッテリーが必要となる、と言う事である。

 

とすると今のところICEV(Internal Combustion Engine Vehicle内燃機関自動車)でなければ、大々的にAIを使えない、と言う事ではないのかな。AUDIなどは、相当高度な自動運転車を開発しているようだが、これは「A8」の新型車と言う事なので、3.0LV6ガソリンエンジンのクルマであり、電気自動車EVなんぞではない。AIは相当電気を食うので、今のところ高度なAIは生半可なEVには載せられないのではないのかな。

 

さて電力の話はさておきIoTに話を戻すと、そうなると次に問題となるのが、それらの膨大なデータをどう使うかと言う事となる。

 

買い物の場合普通なら、買いたい人は自分でクルマを運転して店に行き、必要なものを買ってまた車を運転して帰宅すると言ったパターンとなるが、クルマが知能を持ってしかも繋がってしまっていれば、ある人からオファーを受けた事業体がしかるべき手続きをして自動運転車でその注文された品物を集配して届けさせる、と言った塩梅となろう。注文者は自分が買い物に行かなくてもよくなり、その時間をもっと違った価値あることに集中することが出来ることになるし、クルマを使った新しい買い物ビジネスの誕生もできることとなろう。

 

即ちクルマを所有すると言う事から利用すると言う事になり、新しい買い物ビジネスと言ったビジネスモデルが誕生して、クルマはその一つの道具・手段となってゆくと言う事であり、主役から外れる。即ち、物作りから事作りへと(ビジネスモデルは)発展してゆくと言う事であろう。

 

だからトヨタなどのカーメーカーは、ものづくりだけに勤しんでいたのであれば、取り残されてしまうのではないかと、かの本は警告しているのである。物作りから事作りに脱皮してゆかなければ、潰れてしまいかねないのである。

 

そうなると次の「モビリティ革命」を引き起こす第3の要因は、シェアリングサービスの台頭となろう。

 

考えてみれば、CO2の削減には、こ難しい内燃機関の変革などと騒がなくても、走っている車が少なくなれば必然的にCO2の減少にはつながる訳である。

 

かの書籍は、このことを次のように表現している。

 

さらに、大胆で単純な方法がある。クルマを売らないことである。世界の自動車保有台数が現在の1/10になれば、燃費が現在と変わらなくてもCO2排出量は1/10に減る。大きな投資を伴う急速な次世代車シフトを推進していくか、カーシェアリングや台数抑制によって分母を減らしていくか。自動車業界としては、いずれかの方法でCO2排出量の抑制が求められる。

 

さてクルマに関してのシェアリングには、「マイカー的」と「タクシー的」の二つのシェアリングサービスがあるようである。

 

マイカー的」とは、いわゆる「カーシェアリング」のことで、そのクルマが空いていれば必要な人が自分で運転して使うと言うものである。一台のクルマをシェアすると言う事は、マイカーではないのでいつでも好きな時に使えると言う事ではない。そのためいわゆるクルマの「ちょい乗り」使用が無くなるのである。そのためマイカーよりも走行距離が少なくなり、CO2の排出量も少なくなる、と言われている。

 

事実、都会の駐車場や住宅地の家々の車庫には、沢山のクルマが常に眠っているので、これらのクルマがシェアリングの対象となればそれほど多くのクルマは必要ではなくなる。そういう意味で、このシェアリングが普及すると、カーメーカーは相当脅威に感ずることであろう。何と言ってもそれほど車が必要ではなくなってゆくからである。

 

こんなことで驚いていては、次への話は進まない。まだ「タクシー的」なシェアリングがじわじわと普及し出しているからである。

 

タクシー的」なシェアリングとは、いわゆる「ライドシェア」のことである。有体(ありてい、ありのまま)に言えば、合法的に登録された「白タク」がネット上に相当数存在しており、呼び出しに応じて迎えに来てくれて目的地まで安価に運んでくれる、と言う仕組みらしい。かの書籍でも、アメリカでUberを体験したことが書かれているが、タクシーに比べるとほぼ半額で簡単に移動できたと言っている。決済は事前登録のクレジットカードからの自動決済だと言う。

 

かの書籍とは「モビリティー革命2030自動車産業の破壊と創造」(デロイト トーマツ コンサルティング著、日経BP社発行)のことであるが、それによると、このシェアリングのシステムが普及してゆくと、乗用車の保有台数は半減する可能性があると分析している。

 

そんなことになるとトヨタなどのカーメーカーは堪(たま)ったものではない。とてもこんな状態には我慢できないことになろう。そんな世の中がいつ来るのかは定かではないが、トヨタは早々にUberと業務提携している。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(92)

この環境問題が「モビリティ革命」を引き起こす第一の要因である。

 

と言う事は、ICEV(Internal Combustion Engine Vehicle内燃機関自動車)から早々にクルマは脱皮することを、迫られると言う事である。2017.6.15,NO.54~などを参照願う。

 

即ちCO2を排出しないというパワートレーンへの変革である。

 

ガソリンを燃やさないクルマと言う事は、真っ先に頭に浮かぶことは、電気自動車EVのことであるが、トヨタは「もっといいクルマは操れるもの」と言うやや独善的な考えに振られて、EVからは遠ざかっていた。これが環境対策の主流から外れるキッカケとなってしまったのである。

 

EVに取り組むことなく、と言うと語弊があるが、FCVに走ってしまった訳だ。FCVの量産化(とはお世辞にも言えないが)には成功しているが、売れなくては環境対策にはなり得ないのだ。このことはトヨタとしても十分にわかっていたことではあるが、こ難しい技術に挑戦し過ぎてしまった。この調子でバッテリーに挑戦していれば、今頃はそれなりに性能の良い蓄電池の開発に成功していたかも知れないのだ。一寸時代が早すぎたと言う事ではないのかな、トヨタFCVにとっては。

 

トヨタもようやくこのことに気付いて2016.12.1付けで「EV事業企画室」を設置したが、時すでに遅しで、相当出遅れてしまったものだ(とは小生の感覚であるが)。

 

まあ優先順位を間違えてしまった、とい言い換えることもできる。FCVは絶対に必要な技術であるが、今必要かと言うと疑問が残るものである。先ずは水素を供給する体制作りが必要なのである。しかも石油を改質して水素を取り出すなんぞと言う方法ではなくて、CO2フリーの方法で水素を大量に生産できる方法の確立が求められるのである。

 

何故かというと、イーロン・マスクに馬鹿にされるほど、FCVは今の技術ではないような感じがする。ミライとまではいかないが、次の時代のものであろう。トヨタは先走りし過ぎたのである。だから「ミライ」なのである。今の技術と言えば、そこそこのもので間に合わせることが出来るBEVなのであろう。

 

BEVが一渉り行き渡ってから、おもむろにFCV燃料電池車の時代となってゆくのではないのかな。何もFCVの研究はまだ先でよいと言う事ではないが、FCV「ミライ」の発売の時がトヨタとしてのBEVの発売の時期であり、FCVは「COP22マラケシュ会議」後の今年2017年か来年2018年でもよかったのではないのかな。

 

そうすれば2020年以降の温暖化対策の目玉として、トヨタFCV「ミライ」は今以上に脚光を浴びて登場出来たものと思われる。COP22の今では、FCV「ミライ」も注目度は更々ない。残念なことである。

 

とは言うものの、いまだにCO2を排出しているエセEV車が幅を利かせていることには、いささか幻滅を感ずるものではある。日産のノートe-POWERの「電気自動車のまったく新しいカタチ」なんぞと謳っているので先日日産(販売店?)の関係者に、CO2を排出して走行している以上、決して電気自動車のマッタク新しいカタチなんぞではないのではないか、と聞いてみたが、理解できる返答はなかったので、きっと日産のノートに関する限り環境問題への優先順位はかなり低いものと推察される。試乗してみた感じではそれなりにクルマとしては感触は悪くはなかったが、環境よりも銭を優先したものと感じられ非常に悲しさを感じた。少なくとも日産としては販売店関係者への、この手の質問に対する回答を伝授しておく位の配慮もなかったものと思われるので、やはり日産の哲学はどこへ行ってしまったのかと残念である。きっとゴーンの「コミットメント」の中には、銭はあっても環境と言う字は相当小さくなっていたのであろう。ひょっとしたらないのかも知れない、残念である。

 

自動車の専門家である島下泰久氏の「e-POWER」の評価は、それほど高くなかった理由の一端がわかった気がしたものである。

とすると、三菱もそのうち潰されるものと心する必要がある、などと脈絡はないがやや突拍子もない思いに駆られた。心配である。

 

 

モビリティ革命」を引き起こす第2の要因は、クルマの知能化IoTである。

 

早い話が、クルマが知能を持てば己のAIを駆使して、ビックデータを分析して最もCO2の排出が少ない移動方法を考え出してくれる筈だ。当然クルマはビックデータのネット網に繫がっていなければならない、コネクティッド即ちIoTである。

 

これがクルマの「知能化」と「IoT」である。

 

と言う事は、このAIは人間の頭脳のように学習して、否それ以上にディープラーニングを通して、物事を識別し予測することになる。人間が出来ないことをするようになる。クルマの「知能化」と「IoT」が進めば、確実に交通事故は減ってゆくことになるし、たとえICEVでもCO2の排出も少なくなってゆくことであろう。交通事故などはなくなってしまうことも夢ではない。

 

そうなれば「自動運転」なんぞは、お茶の子さいさいではないのかな。

 

クルマは移動するもの・運ぶもの」となれば、「知能化」と「IoT」はクルマにとっては打ってつけの機能となろう。もちろんAIが人間(の頭脳)と同じように動作する訳ではないので、ある程度道路や交通標識などの外部環境も、それなりに整備されなければならないのであるが、水素ステーションの整備と同じように、クルマの知能化が進むにつれて社会環境も整備されてゆくことになろう。

 

この交通に関する整備された外部環境での自動運転のレベルが「レベル4」と言われるものであり、取り立てて整備されていない環境での自動運転のレベルが「レベル5」だと、小生は理解しているが、これが正しい理解か否かは定かではない、と一言断っておこう。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(91)

11)モビリティ革命が始まっている。?

 

2015.12.12に採択された「バリ協定」とは、次の内容のものである。そして「バリ協定」は2016.11.4に発効している。先進国はもとより新興国発展途上国と言われる国々も、この協定に拘束される。

 

2020年以降の温暖化対策の目標としては、

 

『地球の気温上昇を産業革命前に比べ2度未満とし、1.5に抑える努力もする』というものである。

現在世界の各地で異常気象が報告されている。日本でも、大雨、旱魃、サンゴの白化、デング熱などの事象を見れば、それは明らかである。

そのうえ今後更に気温上昇が続けば、地球環境に壊滅的な打撃を与え元に戻すことが出来ない状態となってしまう、と言うのがこの地球気温の2℃上昇と言う事である。気温が2℃上昇すると、地球生態系や気象状況に大混乱が起こり、食料生産が出来なくなり地球上の人間を養えなくなってしまう、と言う事である。そのため世界各地に食料を求めて大紛争が起こり、人々は食料を求めて大移動をせざるをおなくなってしまう。今のシリア問題どころではない、と言う事である。

国連IPCCIntergovemmental Panel on Climate Change国連気候変動に関する政府間パネル)は、2013.9ストックホルムでの第36回総会及び第1作業部会の第5次評価報告書で「地球の気候システムは着実に温暖化しており、その原因は我々人間の活動によるものであることは疑う余地がない。これを抑制するためには、温室効果ガスの抜本的かつ持続的な削減が急務となっている。世界の平均気温の上昇とCO2排出量とは比例関係にあり、地球気温が何度上昇するかは、CO2の総排出量の累積に関係してくる。」と述べている。



これを受けて、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)及び京都議定書11回締約国会議(COP/MOP11)が、2015.11.30~12.31パリで開催された。ここで上記の「パリ協定」が採択されたのである。



この目標を達成するためには、我々は2050年までには温暖化ガス排出量実質ゼロにしなければならないのである。

2016.11.7~18COP22マラケシュ会議では、2020年からどのようにして「バリ協定」を実施してゆくかと言う仕組み(ルール)が議論されている。

 

まあ言ってみれば、全世界地球の温暖化を遅らせよう(または止めよう)と、あがいていると言う事である。

 

日本の温室効果ガスの削減目標は、「省エネや脱CO2エネルギーへの転換によって、2030年度までに、2013年度比で、温室効果ガスの排出を26%削減し、2050年には80%削減する」と言うものです。

 

 

トヨタ2015.10.14に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表している。

 

これによると、トヨタは、2050年には新車のCO2排出量を、2010年比で90%削減し、新工場でのCO2排出もゼロにしてゆく、といっているので、もっといいクルマとはCO2を排出しないクルマのことであり、もっといい工場もCO2の排出がゼロ近くとなっていなければならないことになった訳だ。

 

(この話は、2017.7.7フランスや2017.7.25イギリスが2040にはガソリンやディーゼルエンジン車の販売を禁止する、と発表する大分前に記載しているので、それでもすごいことを言うなあと少しは感心していたが、これでトヨタ10年は時代遅れとなってしまったことになる。「トヨタ環境チャレンジ2050」は「チャレンジ2040」としなければならなくなってしまったことになる。しかしながらこの「トヨタ環境チャレンジ2050」がフランスや英国の環境対策に大いに影響を与えた事には間違いないであろう。その点、トヨタは内心大いに誇ってもよいのではないのかな。)

 

 

ここに「モビリティー革命2030自動車産業の破壊と創造」(デロイト トーマツ コンサルティング著、日経BP社発行)と言う本がある。

 

それによると、この気温上昇を2℃に抑制するためには、乗用車のCO2の排出量を2050年には、2015年比で90%削減することが必要だ、言っている。

 

そして世界のCO2排出量は、成り行きでは2.5倍程度までに増加すると予測している。そのため全世界での自動車のCO2の排出量を90%削減する(1/10に抑える)と言う事は、1/25に削減する必要があると言う事である。

 

このためデロイトは、2030年の全世界新車販売の4台に1台、2050年にはすべての車両が次世代車でなければならない、と試算している。

 

(これでも先の仏・英の販売禁止の話よりも10年遅れていることになる。)

 

その次世代車の2050年の内訳は、ZEVEV,FCV)が86%PHEV14%必要だと試算している。

 

 

日本での運輸部門でのCO2排出量は、日本の全排出量の2割を占め、その9割が自動車から排出されている、と言う。これは2005年の「京都議定書目標達成計画」に掲げられているものであるから、現在2017.6.11では少しは変わっているかもしれないが、傾向としてはいまだにこんなものであろう。即ち日本のCO2の排出量の18%は、自動車が排出している、と言う事である(2017.6.14 NO53参照のこと)。

 

このためトヨタの言う「もっといいクルマを作ろうよ」は、「限りなくCO2を排出しないクルマをつくろうよ」と言う事になってしまったと言う事なのであろう。

 

「もっといいクルマは操れるモノ」といつまでも思っているようであれば、これは早急に修正して貰わなければならない。これももちろん「いいクルマ作り」には優先事項であるが、それと同じくらい、いやそれ以上に「CO2を排出しないクルマ作り」が重要な目標となっているのである。トヨタも大変である。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(90)

一寸古いが、序に次の論考を載せて、次の章(テーマ)に移ろう。トヨタとテスラとでは、成り立ちから技術的思考方法まで、全く異なっている会社であると(小生には)思われるので、うまくゆくとは到底感じられなかったのである。

 

 

トヨタとテスラ、両極端のパートナーはどのように衝突したのか

Craig TrudellAlan Ohnsman

20148800:01 JST

 

4年前、米テスラ・モーターズのイ ーロン・マスク会長はあるファンをカリフォルニアの自宅に招き、スポ ーツカー「ロードスター」のドライブに連れ出した。その来客とは世界 最大の自動車メーカー、トヨタ自動車豊田章男社長だ。

両者は数週間のうちに意気投合し、トヨタはテスラに5000万ドルを 出資することに合意し、米カリフォルニア州で閉鎖していた工場を4200 万ドルで売却した。トヨタの「RAV4」の電気自動車(EV)版の開 発でも一致し、事情に詳しい関係者によると、その時点では提携が SUVのレクサスRXの電動モデルに拡大する可能性があったという。

現在は提携がほころび、共同開発の「RAV4 EV」は販売が現 時点で2000台を下回ってる。マスク氏が提携強化のきっかけになると誇 らしげに話していた車だったが、ガソリン仕様車の2倍というトヨタの 価格設定や、入手がカリフォルニアに限られることでヒットする望みが なくなった。

 

より根本的には、事情に詳しい関係者によると、技術陣の衝突で提 携に新たな展開が見込めなくなった。政略結婚をしても自動車業界では 成功しないこともあるという教訓になる。トヨタはいまや、テスラの中 核のEV市場から距離を置き、マスク氏があざ笑う燃料電池技術を推進 している。

「2つの会社が成功しているというだけで、その2社が一緒に協力 すればうまくいくとは限らない」と、インテリジェンス・オートモーテ ィブ・アジアのマネジングディレクター、アシュビン・チョータイ氏は 電話取材に指摘。「誰かが業界の体制を変えようとしていて、しかも最 大手と手を組もうとしているときには、いろいろ複雑なことになるもの だ」と話した。

共同開発車の詳細について、両社はコメントを控えた。

米国でほぼ80年ぶり

 

両社が提携に至る動機が双方の弱点を浮き彫りにした。バンク・オ ブ・アメリカ・メリルリンチによると、より機敏な相手から学ぼうとし たトヨタだが、今後5年間は業界平均のペースで新型車を出していくだ ろう。クライスラー以来ほぼ80年ぶりの2003年に設立されたテスラは米 国新興自動車メーカーで、ものづくり能力を試す成長の最中にある。

提携が締結された10年5月、テスラ会長はこの提携を「歴史的」と 呼び、トヨタはずっと素晴らしいと思っていた会社だと話した。提携の 1カ月ほど前にテスラのロードスターに試乗した際、豊田氏は未来の風 を感じると述べていた。

テスラにとって、この提携はお金になることを意味し、格安で最初 の工場を入手したり、業界のリーダーと協力することで信用を得ること になった。

トヨタにもメリット

トヨタにとっては、この提携が意図せぬ急加速によるリコール問題 に見舞われていた会社をよみがえらせるきっかけとなった。この投資は また、もうかるものでもあった。

「豊田氏がマスク氏と今回の件でかかわるようになった際には電池 分野の協力を超えたものに発展するとみていた」と、トヨタの北米事業 を統括するジム・レンツ氏は5月に話した。「トヨタは自動車業界で起 業家精神に富んだ小さなスタートを切ろうとしており、テスラの人たち と一緒に仕事をすることで、より迅速で起業家精神に富むようになるた めに学ぼうとしていた」という。

ほどなくして衝突し始めたと、このプロジェクトに詳しい関係者は 話した。2人の元技術者によると、テスラ技術陣が共同開発車の初期デ ザインを提案した際に、トヨタ側はトランスミッションの中にあるべき 部品が含まれていないと不快感を示した。

パーキングブレーキに関連した部品であり、テスラ側はロードスタ ー開発で使って苦労した経験から、その代替として、電気パーキングブ レーキの装着を提案したと、関係者が話した。双方の主張は平行線で、 結局、トヨタ側が主張する部品を使うことで決着した。

テスラ提案を拒否

トヨタの技術陣はまた、共同開発車の電池パックの下側を保護する カバー装着というテスラ側の提案を拒否したと、関係者は話した。トヨ タ側がカバーに関する責任を引き受けることで落ち着き、構造的な完成 度を強化したという。

テスラは結局、今年3月にセダン「モデルS」にチタン・プレート を追加した。火災につながった衝突について米当局が調査したのを受け て、電池の保護を改善するためだ。

もう一つの衝突の要因は、減速した際にエネルギーを回収するテス ラの特許技術だと、ジェフ・ライカー米ミシガン大学教授は話した。ラ イカー氏は昨年、共同開発車の技術陣と会っていた。

テスラのシステムではアクセル・ペダルを緩めるとブレーキがかか り始め、そのため、車ががたついて多少の慣れが必要になると、ライカ ー氏は話した。トヨタの技術陣は興ざめになると懸念した。双方とも自 らのシステムを守ろうとするため、修正は骨が折れるものとなった。

トヨタとの協力から学ぶ

テスラ最高技術責任者(CTO)のJB・ストローベル氏はインタ ビューで、トヨタの天下一品の生産品質プロセスを高く評価し、協力か ら学んだと話した。ストロベール氏は、技術陣間で摩擦があったとの特 別の話は知らないと話した。テスラ広報担当のサイモン・スプロウル氏 は共同開発プロセスについてコメントを控えた。

「非常に異なる両社が違ったアプローチをした事例になる」と、ト ヨタ広報担当のジョン・ハンソン氏は話した。確かに困難なプロジェク トだったが、厳しい期限の中、スケジュール通りに製品が出てきたとい う。

豊田氏とマスク氏がプロジェクトを発表して2年後、共同開発車12年に発売になった。モデルチェンジに7年かかることもある業界に あっては迅速だ。6月までの出荷は計1834台。両社は3年間で2600台の 販売を計画していた。

共同開発車はリコールされたり、米運輸省道路交通安全局 (NHTSA)の安全性の調査を受けたりしていないが、不満を持つ顧 客の1人にトニー・ウィリアムズ氏がいる。

「悪夢だ」

ウィリアムズ氏は1211月に購入したが、修理に30日以上かかり、 モーター部品などの交換が必要になった。日産自動車の「リーフ」を運 転したいと思っているが、まだEV版のRAV4に乗っている。

EV版RAV4は「とんでもない悪夢だ」と、加州サンディエゴに 住むウィリアムズ氏は話した。

トヨタ広報担当のハンソン氏は、共同開発車に特別に広まった問題 があるとは知らないと話した。共同開発車が発売されたときにオーナー のウェブサイトに提起された技術的な問題のいくつかについては解決を 図ってきたという。

共同開発車が終了に近づく中、両社は異なる方向に進んでいる。米 消費者団体専門誌コンシューマー・リポーツが最高の評価をしたモデル Sでテスラは舞い上がっている。マスク氏は世界最大のリチウムイオン 電池工場の建設を計画し、電動SUV「モデルX」の来年発売に備 え、17年の小型セダン「モデル3」につなげようとしている。

燃料電池

一方、トヨタ水素燃料電池に期待している。マスク氏は燃料電 池(フューエルセル)を「ばかげた電池(フールセル)」として嘲笑し ていた。また、あまりにも複雑でコストがかかりすぎるため、燃料電池 車は決して成功しないだろうと話していた。

燃料電池を拒む競争相手は自らのリスクでそうしている」と、米 国トヨタ販売のボブ・カーター副社長は話した。マスク氏や日産のカル ロス・ゴーン氏などの燃料電池に対する批判について、「個人的には、 まったく気にかけていない」という。

懸案があっても、両社は提携を諦めなかった。独BMWトヨタと スポーツカーを共同開発しながら、テスラと提携協議をした。

両社は、これを最後に決別しないかもしれない。「トヨタとは物事 を保留し、おそらく1、2年ぐらいして、また戻ってくることで合意し た」と、マスク氏は6月3日のテスラ株主総会で話した。

両社は多くの点で真っ向から衝突していると、調査会社オートパシ フィックの業界アナリストのエド・キム氏は指摘。トヨタはEVを重視 していないため、テスラと再び協力するとはみていないという

原題:How Tesla-Toyota Project Led to Culture Clash by Opposites: Cars

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2014-08-07/N9VOQO6JTSFJ01

 

まあトヨタEVを重視していても、テスラと協業することはないであろう。小生に言わせれば、別れるべくして別れた、と言う事。ただそれだけのことで、トヨタの技術部の人間にしてみれば、当然のことと清々していることでしょう。ただあの時間はムダな時間だったという思いだけが残ったのでしょう、残念な事ではある。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(89)

次に参考までに、テスラの年表を(わかる範囲で)綴っておこう。一部最新情報で内容を更新している。

 

19950000日 イーロン・マスクが弟と共にオンラインコンテンツ出版ソフト提供会社を起業。コンパックに買収される。

19990000日 X.com社共同設立者となる。(オンライン金融サービス)

20010000日 X.com社、コンフィニティ社と合併後、paypalとなる。 

20020000日 スペースX社、立ち上げ。イーロンの3つ目の会社。

20030000日 テスラモーターズ創業JB ストローベル氏とマーティン・エバーハード氏。テスラは、イーロン・マスクが作った会社ではない。)

20040000日 イーロン・マスクテスラモーターズに資金提供(投資)、会長に就任する。

20060000日 ソーラーシティー設立。カート・ケルティ氏パナソニックからテスラへ移籍。

20080300日 ロードスター生産開始、最初のEV

20090600日 米政府より低利融資の承認を売る。(465百万ドル)

20100100日 パナソニックと提携(リチウムイオン電池開発)

20100500日 トヨタ自動車と提携

20100500日 NUMMIトヨタから購入開始(~8月)

20120622日 モデルS発売、旧NUMMIEV生産

20120900日 RAV4EV(テスラとトヨタの共同開発)加州で発売(2014年末で生産終了)

20131000日 モデルS火災発生

20150000日 テスラエナジー設立(家庭用・法人用蓄電池)

20150900日 モデルX生産開始(2014年から遅れること1年)

20160500日 モデルS自動運転中に死亡事故

20161100日 ソーラーシティ買収(太陽光発電パネル)

20161200日 トヨタ、テスラ株をすべて売却、資本提携を完全解消

20170104日 ギガファクトリー稼働(2170リチウムイオンバッテリー生産)

20170201日 テスラモーターズから「テスラ」に社名変更

20170700日 モデル3生産開始(5千台/週計画)

20170728日 モデル3出荷開始

20170800日 カート・ケルティ氏、テスラを退社。

2018年         EV年産50万台計画(1万台/週計画)

 

以上の様に整理していたら、2017.6.3に次のように記事が発信された。トヨタ保有するテスラ株の残りすべてを売却していた、と言う事だ。まあ、燃料電池のことを「くそ電池」などとけなされては、提携なんぞも糞食らえ、なのである。

 

トヨタ、テスラ株すべて売却 昨年末で資本提携を解消

Business | 201706409:24 JST
 6月3日、トヨタ自動車が電気自動車(EV)メーカー、米テスラ株式をすべて売却していたことが明らかになった。写真はトヨタのロゴ。ブラジルのサンパウロで2日撮影(2017年 ロイター/Paulo Whitaker)
 6月3日、トヨタ自動車が電気自動車(EV)メーカー、米テスラ株式をすべて売却していたことが明らかになった。写真はトヨタのロゴ。ブラジルのサンパウロで2日撮影(2017年 ロイター/Paulo Whitakerトヨタとテスラr

 

[東京 3日 ロイター] - トヨタ自動車が電気自動車(EV)メーカー、米テスラの株式をすべて売却していたことが3日明らかになった。両社は2010年に資本・業務提携したが、協業は進展せず、14年にはトヨタがテスラ株式を一部売却。トヨタによると、残りの株式も16年末までにすべて市場で売却したという。

  トヨタはこれまでEVには慎重な姿勢を見せていたが、16年12月には社長直轄のEV開発組織を設置し、本格的な量産に向けて自社でEV開発に乗り出している。今後も協業の効果は見込めず、テスラ株式を保有している意義が失われていたとみられる。トヨタの広報担当者は、テスラ株すべてを売却した理由について「投資先の定期的な見直し」と述べるにとどめた。

トヨタ10年、5000万ドル(当時、約45億円)でテスラ株3.15%を取得し、資本・業務提携した。両社はテスラ製バッテリーを搭載したトヨタのSUV(スポーツ型多目的車)「RAV4」ベースのEVを開発。ただその後、共同開発が進むことはなく、14年にはテスラがバッテリー供給を打ち切り、トヨタは同年テスラ株の一部を売却したが、「協業の可能性は検討していく」としていた。

    中国や欧米など主要市場で環境規制が一段と強まる中、自動車各社は、従来に比べて航続距離が伸びるなど性能が向上しつつあるEV次世代エコカーの柱として位置づけており、開発競争が激化している。 (白木真紀 取材協力:田実直美)

http://jp.reuters.com/article/auto-toyota-tesla-idJPKBN18V005

 

 

まあトヨタとテスラの提携解消話は小生のブログ「次世代エコカー、本命は?(58」(2015.2.18)等でも話題にしたものであるが、これでトヨタ(の技術屋)としてはすっきりしたのではないのかな。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(88)

もちろんボデーやシャシーは新しくなるのであるから、新型車として新しい経験ではあるが、このことは既に経験済みのことであり、普通ならそれほど心配することはなかろう。

 

何はともあれ、量産型の「Model 3」が楽しみであるが、イーロン・マスクもモデルXの量産立ち上がりのトラブルに懲りているのか、2017.7.28の量産型の「Model 3」の出荷式で「ようこそ『量産地獄』へ。前の車種でも地獄を超えてきた。諸君はベテランだ。地獄に入ったらもう前に進むしかない」と社員を鼓舞したと言う。

 

やはり部品点数の少ないEVでも新型車の量産立ち上がりに際しては、それなりのトラブルがつきもののようだ。そして量産立ち上がり期間を6か月としているようだが、少し長すぎるような感じもしないでもないので、今年の年末までの間を象徴して言った言葉なのかもしれない。普通は量産初号車のライン・オフから1か月未満でフル生産の段階に上る詰めるのではないのかな、だからフル生産までの期間が6か月は長すぎるので、イーロン・マスクの言う週1万台、年50万台のことなのであろう。

 

 

テスラ、新型EV出荷開始 初の量産車種
日本への出荷は来年以降

2017/7/29 18:40
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 【シリコンバレー=兼松雄一郎】米テスラが(2017.7)28、量産型の新電気自動車(EV)「モデル3」の出荷を始めた。まずは航続距離が354キロメートル499キロメートルの2モデルをそろえた。標準モデルの価格は計画通りで、補助金や控除の適用前で、それぞれ3万5千ドル(約388万円)と4万4千ドルから。電池切れの心配が少なく、デザイン性の高い中価格帯EVが登場し、エコカー市場が活性化しそうだ。ただ、右ハンドル対応には時間がかかる見通しで日本への出荷は来年以降になる。

量産型EVの出荷式で社員を前に演説するイーロン・マスクCEO(米カリフォルニア州フリーモント)。量産型EVの出荷式で社員を前に演説するイーロン・マスクCEO(米カリフォルニア州フリーモント)。    

量産型EVの出荷式で社員を前に演説するイーロン・マスクCEO(米カリフォルニア州フリーモント)。

量産型EVの出荷式で社員を前に演説するイーロン・マスクCEO(米カリフォルニア州フリーモント)。

 同日、米カリフォルニア州フリーモントの工場で最初の30台の出荷式に登場したイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は社員を前に「ようこそ『量産地獄』へ。前の車種でも地獄を超えてきた。諸君はベテランだ。地獄に入ったらもう前に進むしかない」と語りかけた。うなるような笑いと歓声が巻き起こる。「ボルボは我々に次ぐ安全性世界2位だ」と競合をあおると会場の盛り上がりは最高潮に達した。

 そしてこれから6カ月の生産立ち上げの苦労を予告し、社員を鼓舞した。

 現行の主力モデルの多目的スポーツ車(SUV)「モデルX」では、はねあげるタイプのドアや後部座席などのデザインを変え、品質が定まらなかった。後に改善されたが、初期製品については米で自動車購入時の影響力が大きいといわれる情報誌「コンシューマーリポート」からは「欠陥商品」という辛辣な評価を下される羽目になった。テスラは経験の浅いベンチャーとして文字通り「地獄」を経験してきた。

モデル3の内装デザイン=テスラ提供

モデル3の内装デザイン=テスラ提供

 今注文しても出荷は早くても来年末。ツイッターではマスク氏に対し早く出荷しろと批判が集中している。だが、2003年創業のベンチャー、テスラにとって年産10万台を超える生産規模は未知の領域20年に年産100万台を目指す量産規模を軌道に乗せるのは至難の業だと誰もが分かっている。

 社員には早期予約特典があったため、今回の初回出荷の車を手にしたのは全員が社員だ。まずは社員から不具合のフィードバックを集める。価格が高い方のモデルから先に出荷する。量産が軌道に乗るまでは売るだけ赤字になるためだ。グッゲンハイム証券のアナリストは粗利はマイナス15%で、少なくとも来年半ばまでは赤字が続くとみている。投資先行のテスラではやり切らなければ損失が膨らむ一方だ。その先には破滅が待っている。

 モデル3では過去の経験を生かし、モデルSから大幅な変更は避け量産効率を上げる設計とした。ワイヤハーネス(組み配線)を極力短くするなど、削れる部分は可能な限り簡素にした。価格を下げるため、モデルSではアルミが大半だった車体材料は鉄とアルミが半々になった。部品の仕入れは7割が北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国から。ぎりぎりのコストで生産するだけにトランプ政権の通商政策の影響が経営に直撃する可能性もありそうだ。

 ただ、試乗した感じは非常にいい。モデル3は1千万円近くする同社の高級セダン「モデルS」の廉価版という位置づけだが、操作感はかなり近い。EVらしい静粛さと電池を車体の底面に敷き詰めたことによるどっしりとした安定感、5.6秒で時速96.5キロメートルに達する力強い加速は変わらない。ハンドルの操作感は自在に変えられ、ブレーキもきびきびしている。

 内装デザインは無駄な凹凸がほとんどなく、すっきりとしている。視界が開けた感覚だ。15インチの大画面パネルの位置が上に移動し、より見やすくなった。レーンの自動移動・維持、車庫の自動出し入れといった運転支援機能を61万6千円でつけられるのも変わらない。日本市場ではモデルSは横幅195センチメートルと都心の駐車場には大きすぎる懸念があったが、モデル3は185センチメートル10センチ小さいのは利点になる。

 テイスト的にも独アウディの中型車などから顧客を奪いそうだ。中古市場に出るようになれば価格的にも相当な競争力を持つ可能性がある。

 ただし、ジェットコースターのような高級スポーツ車並みの加速性能、ホイールのデザイン、インテリアの高級感、車内空間の広さといった部分についてはモデルSとは大きな差がある。デザイン的には特に後部座席のシートはあまり特徴がない地味なものになった。

 モデル3の量産が成功するかは全く不透明だ。だが「同じ価格帯の中では最高品質の車」というマスク氏の言葉には確かに説得力があった。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29H2X_Z20C17A7000000/?n_cid=NMAIL003

 

 

モデル3の量産が成功するかは全く不透明だ。だが「同じ価格帯の中では最高品質の車」というマスク氏の言葉には確かに説得力があった。」とイーロン・マスクも今回は相当の自信を持っているようだが、その裏では、突拍子もない出来事が起きていた。

 

ギガファクトリー誕生の立役者でありテスラの電気自動車の心臓部を司るバッテリー技術の中心人物であるあの「カート・ケルティ氏」が、「モデル3」初出荷の直後にテスラを去ったのである。一体何があったのか。

 

 

米テスラ、古参のバッテリー技術ディレクターが退社

Dana Hull

20178210:14 JST

 

米電気自動車(EV)メーカー、テスラバッテリー技術担当ディレクター、カート・ケルティー氏が退社した。「モデル3」の納入を開始したばかりの同社から幹部流出が続いている。

  ケルティー氏は2006年にテスラに入社。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)率いる同社で最古参の幹部の1人だった。その前は、パナソニック14年余り勤務。リンクトインのプロフィルによると、ケルティー氏はネバダ州リノ近郊にあるバッテリー工場「ギガファクトリー」を巡るテスラとパナソニックの交渉を主導した。

  テスラは電子メールで1日送付した発表資料で、「ケルティー氏が新たなチャンスを探るため退社した。同氏が当社のためにした全ての仕事に感謝したい」と指摘。同氏の職務は今後、「テスラの既存のチーム間で分担」すると説明した。ケルティー氏からのコメントは今のところ得られていない。

 

  米グーグルから移籍したジェイソン・ウィーラー最高財務責任者(CFO)も今年、先に退社している。テスラは2日の取引終了後に4-6月(第2四半期)決算を発表する。

原題:Tesla’s Longtime Battery Technology Director Leaves Company (1)(抜粋

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-02/OU15IQ6JTSKO01

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(87)

F 価格や航続距離の問題も近い将来解決できるのでしょうか?

ケルティー たしかにいまは価格の問題はありますが、それもギガファクトリーができるなどして、どんどん改善していくでしょう。航続距離もすでに500km走る。もう十分じゃないでしょうか。欲しいのは、急速充電の設備ですね。
アメリカではすでにEVを使いやすい環境が出来上がりつつある。私がサンフランシスコからロサンジェルスまで運転する場合、自分のモデルSを途中で2回充電します。23時間運転して、トイレ休憩のあいだに20分充電する。それをもう2回繰り返すだけ。先日も家族4人と大きな犬とで休日にオレゴン州ワシントン州まで10日間のドライブをしてきましたが、航続距離や充電の心配はまったくしませんでしたね。 (注、オレゴン州ワシントン州は加州の北に位置する太平洋岸の州である。ワシントン州でカナダと接している。)

F
 いちいち、どこのSAで止まって充電して、みたいな計画表を作らなくていいんですか?

ケルティー 基本的には考えなくて大丈夫です。すごく便利になっています。日本も将来的にはそうなると思います。

F
 テスラは日本規格のチャデモで充電できるんですか?

 

ケルティー チャデモも使えますが、なにかと面倒です(苦笑)。私たちのスーパーチャージャーは出力125Kwで、無料で、コンセントをさすだけです。

F
 日本にもそのスーパーチャージャーで充電できるところがあるんですか?

ケルティー いま東京、大阪、神戸など全国6か所にあります。無料で充電できますし、これからどんどん導入していきます。

F
 いま日本のショールーム東京のほかに先日、大阪の心斎橋に国内2拠点目をオープンしたそうですが、ほかの場所にオープンする予定は?

ケルティー 計画はあります。将来的には、名古屋、神戸、福岡、横浜、広島ショールームを出したい。その前にまず、スーパーチャージャーを増やし、そして、サービスセンターを増やし、そのうえでショールームを増やしたい。

F
 ケルティーさんは電池の専門家でいらっしゃいますが、EVを普及させるうえで、バッテリーの値段を下げた方がいいとお考えか、高くても航続距離が長い方がいいとお考えでしょうか?

 

ケルティー これにはいろいろな意見がありますが、私たちとしては500km走れば、今のところ航続距離は十分。これ以上の航続距離はいらないと考えています。あとは値段を安くしたい。みんなが買いやすいようにしたいと思っています。

F
 先日テスラに乗る機会がありましたが、EVの時代がきたんだなと実感しましたね。

ケルティー 多くの方にぜひ体感していただきたいですね。青山や心斎橋のショールームでも試乗できますし、箱根などで試乗イベントも行っています。実際に乗ってみたらきっと環境のことや難しいことは忘れて、とにかく買いたくなりますよ!

 

インタビュアー:フェルディナント・ヤマグチ
コラムニスト。半導体・電子部品専門のマーケット・アナリストとしての顔をもつ一方で、コラムニストとしても活躍。「日経ビジネスオンライン」、「Tarzan」、「cakes」等に連載をもつ。トライアスロンを趣味とし、圧倒的なバイタリティでプライベートと仕事を両立。仕事の関係上誌面への顔出しはNGでマスクがトレードマークになっている。

http://www.jaia-jp.org/50th/interview/018/index2.html

 

 

これ↓なども参照されるとよい。

インタビュー 電気自動車:最強のスポーツカーを作るには、テスラの技術責任者に聞く

http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1201/24/news015_3.html

 

 

さて、次は「Model 3」がどのような生産立ち上がりをするか、見ものである。今年半ばには、そろそろ量産試作が始まるのではないのかな。そしてことしの7月後半には、ボチボチモデル3のライン・オフが始まる。モデルSモデルXで、量産立ち上がりは経験しているので、新しい経験と言う物はそれほどないのではないのかな。あるとしたらバッテリーが18650から2170に変わることによるインバーターの変更などと言うバッテリーがらみのことだけではないのかな。

(続く)