続続・次世代エコカー・本命は?(117)

ごく最近までトヨタは、電気のみで走行する100EVに背を向け、次世代車として水素式の燃料電池車(FCV)開発を積極的に進めていた。2013年、ガソリンと電気のハイブリッド車プリウス」の生みの親の内山田竹志会長は、水素電池車は従来の燃焼エンジンに対する「実際的な代替役」だと語り、EVが使われるとしても近距離用に限定されるとの見通しを示した。

同社はモーター搭載式のハイブリッド車プラグインハイブリッド車PHV)が水素電池車への橋渡し的存在になると予想。14年にはついに初の水素電池車「MIRAI」の販売を開始した。

ところが昨年末、長距離走行可能な100EVの開発を始めると表明し、豊田章男社長直々に指揮を執る新部門を立ち上げた。業界専門家によると、2020年ごろには販売にこぎ着けるはずだという。

あるトヨタ役員はこうした方針変更について「苦渋に満ち、胸が痛む」と表現している。

トヨタに姿勢を変えさせた大きな要因は、世界最大の市場である中国にある。同国政府はクリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた厳しい燃費基準導入を計画しつつあり、世界の大手メーカーは試練にさらされている。

昨年(2016)9月に公表された当局の提案では、各メーカーに販売台数の8を来年(2018)までにEVないしPHVとするよう義務付けた。この比率は2019年に10%、20年には12まで高められる。

業界側の働きかけでクリーンエネルギー自動車に関する販売義務の比率やペースは多少修正されるかもしれないが、トヨタを始め各メーカーは中国が20年までにEVを本格的に市場に普及させようとする基本的な流れは続くとみている。

ただトヨタにとってこれは死活問題になりかねない、と別の役員は懸念を示した。中国の提案によると、プリウスのようなモーター式ハイブリッド車はガソリン車と同等に扱われ、厳格な燃費基準達成のために利用できる「EVクレジットを稼ぎ出してくれない

トヨタの大西弘致中国本部長は18日、「中国の見解ではプリウスはガソリン車と変わらないので、われわれはアレルギーを克服して電気自動車を考え出すしか道はない」と述べ、来年には中国でPHV販売を始める方針を明らかにした。いずれは100EVの販売も目指すとしながらも、その具体的な時期は示していない。

Norihiko Shirouzu記者)

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1704/22/news014.html

 

 

しかしながらトヨタHVも捨てたものではない。中国では「乗用車企業平均燃費規制(CAFC」なるものもあるので、このCAFCcorporate average fuel consumption)とNEVの両方で規制されることになりそうなので、その点HVで大いに燃費を稼ぐことが出来るので、トヨタとしては後はZEV車だけを考えればよいことになろう。EVがまだならPHVを導入すればよいからである。FCVは最もランクの高いZEVではあるが、中国への導入にはいまだ敷居が高すぎると判断できるが、そんな時だからこそFCVの導入の検討も必要なのであろう。

 

トヨタとしてはFCVの導入も準備はしているようなので、ここはお手並み拝見と言ったところなのであろう。

 

 

2018NEV規制導入対応で、電動化を加速する
自動車各社

20161121

  • 統一管理予定のCAFCNEV規制について解説!!

  • 地場・外資系メーカーの中長期販売目標を分析!!

  • メーカー各社の製品投入や設備投資等の事業計画を網羅!!

  • 自動運転やコネクテッド等新技術開発の最新動向を調査!!

中国政府はエネルギー安全保障や大気汚染改善に向けて、20169月に乗用車企業平均燃費規制(CAFCと中国版ZEV規制となる新エネ車(NEV)規制を統一管理する意見徴収案を発表し、CAFCクレジットとNEVクレジットからなるダブルクレジット制度2018年から実施する計画を明らかにしました。中国政府は2020年にNEVの生産台数を市場全体の7に相当する200万台超2030年には同40に相当する1,500万台以上へ引き上げる強気な目標を掲げています。ダブルクレジット制度の詳細が明らかにされたことで、これまでNEVの投入に積極的ではなかった外資系メーカーは製品投入を本格化しなければならず、2018年以降、中国で本格的にNEV製品の競争が繰り広げられることが予想されます。また、各メーカーは、NEV規制対策のほか、CAFC規制対策としてHEV48Vシステム、アイドリングストップ等の省エネ技術、ダウンサイジングターボエンジンやDCTCVT8AT等の燃費改善技術の開発、採用に取り組んでおり、環境対応技術導入に向けた開発が進められています。この他、自動運転やコネクテッドカーなどの新技術も中国で注目されており、長安、北汽、上汽などの完成車メーカーが開発を進めるほか、百度Baidu)やAlibabaなどのIT関連企業も強みであるIT技術を武器に完成車メーカーとの共同開発・実証実験を展開しています。今後は、本格的な量産化・普及に向けて、法整備や通信インフラ整備が課題となります。

「中国自動車産業2017」では、2018年から統一管理が予定されるCAFCNEV規制について解説したうえで、地場系メーカーの第135ヵ年計画と外資系メーカーの中国事業戦略を調査し、中長期販売目標やNEV規制対策、燃費改善策を分析します。そのほか、各メーカーの製品計画や生産整備などの事業動向、製販台数(CDにも収録)や売上高などの各経営業績指標も掲載しています。

当案内をご高覧頂き、関係部署ともご相談いただき、ご採用賜りますようお願い申し上げます。

中国、パワートレイン別自動車生産・NEV比率推移(2009~2015年実績、2016~2030年見通し)

※ 画像をクリックすると大きいサイズでご覧になれます。

http://www.fourin.jp/report/CHINA_INDUSTRY_2017.html

 

 

先の論考によれば「8来年(2018)までにEVないしPHVとするよう義務付けた。この比率は2019年に10%、20年には12まで高められる。」と言っているので、ZEV(NEV)の導入は必須であろう。特に各社がEVの導入を企画しているので、トヨタとしても本気でEVの導入を検討せざるを得ないのである。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(116)

と言う事は、トヨタはまだHVに未練を持っておりCO2を排出していても、次世代エコカーとしての認識を捨てていないようだ。米国でも中国でもHV車はエコカーとは認められていないのに、なんとなく往生際が悪いと言うか、唯我独尊的な考え方が強いようにも感じてしまう。

 

短期的にはHVは大切な環境技術だ、などと言ってもよいが、「パリ協定」の手前少しでもCO2を排出するようなクルマは、世の中では「愛車」などとは呼ばれなくなるのだ。次世代環境車を補完するクルマとしての地位では、あり続けることはできるかもしけれないが、ZEVNEVではありえないクルマなのである。

 

一人よがってまだ世界では2%位しか売れていないので、まだまだ売れるのではないかなどと言っているうちに、取り残されてしまうのではないのかな。それよりもトヨタの乗用車全車種に、PHVを早急にラインナップさせることを急いだ方が余程理にかなっているような気もするのだが。

 

まあ発展途上国では、HV車はそれなりに幅を利かすことが出来るであろうが、先進国ではCO2を排出しないクルマが、環境対応車はなってゆくことであろう。

 

 

このように豊田章男社長の言葉を整理していくと、2018年のル・マンへは参加しない可能性が高いのであろう。

 

と言うのも、「競争相手がいるから、クルマ作り人材育成の場となり」と言っている以上Audiが抜け、Porscheも抜けてしまっては、競争相手が誰もいなくなってしまう。これではル・マンに参加する意義はかなり薄れてしまうことになり、トヨタとしてもプライド上参加は見合わせることになろう。

 

競争相手がいるとすれば、それは「Formula E」となろう。2017.8.15NO.96などを参照願いたいが、トヨタも競争相手のいる「Formula E」への参加を検討すべきなのだ。

 

小生は、トヨタには「Formula E」へ参加する技術はまだ出来上がっていないのではないのかな、と思っている。HVが一番だとして技術を磨かせてきた手前、おいそれと「Formula E」へ転換せよとは、章男社長は言い出せないのではないのかな。

 

ここを素直に次は「Formula E」だ、と言い出せば、豊田章男社長には将来性があるとみなすことが出来よう。

 

今年のル・マンは、あまりにも勝ちたい、勝ちたいと言った雰囲気が充満していたために、チームの中で小さい齟齬が発生し、それがやがては少しづづ悪い方向に動きだした結果、勝てるレースを次々と落としていったのではないのかな。今年のル・マンでは、トヨタチーム全体が虚心坦懐で謙虚にレースに集中していれば、1,2フィニッシュも夢ではなかったのではないのかな。小生は技術と言うよりも、精神的な、哲学的なところに弱点があったのではないのかな、と思っている。

 

これが、「勝敗は時の運、と言われるものなのである。これが足りなかった「強さ」であり、チーム全体をそんな雰囲気にさせたしまったリーダーたる豊田章男社長の弱点ではないのか。だから社長はル・マンの現場にはいなかった方がよかったのである。

 

少なくとも「やりつくした」と少しでも思ったのであれば、後は「運を天に任せておけばよい」のである。そうすれば結果は自ずと付いて来るものなのであろう。

 

それでも負けたのであれば、どこかに物理的な弱点があった訳なので、それを見つけて潰すことをすればよいのである。これがいわゆる「カイゼン」である。

 

今年のル・マンは勝てるレースであったものを、みすみす僅かな齟齬の積み重ねで落としてしまった(と小生には感じられるのであるが)と言うまことにもったいないレースであった、と残念で仕方がないのである。

 

もう一つ、コモディティと言えば、今のクルマこそコモディティではないのかな。コモディティが何を意味するのかは、小生には深く詳らかには出来ないが、「Formula E」が成立している以上、EVのことを簡単にコモディティなどとは言えないのでないのかな。

 

もっといいクルマ」は”操れるもの”から、”地球にやさしいクルマ”に変わってきていることも、肝に銘ずるべきである。トヨタのクルマは、少なくとも一千万人の人達に愛されているのであるから、尚更(地球にやさしくなければならないの)である。

 

 

中国では、そのコモディティ化するEVを相当数売らなければ、商売ができなくなるような「新エネルギー法・NEV」が、2018に施行されることが予想されている。

 

トヨタVWに販売台数で負けている要因の一つが、中国での販売台数の差なので、これは聞き捨てにならないことである。2018年と言えば来年のことである。トヨタとしては、うかうかしてはおられない立場なのだが、トヨタはこの中国のNEV法に背中を押される形でEVの開発に取り組まなければならなくなった訳だ。

 

 

中国の動きなど影響:トヨタが開発戦略を180度転換 EV開発に本腰

201704220700分 更新

トヨタはこれまでの開発戦略を180度転換し、電気自動車(EV)開発に本腰を入れざるを得なくなっている。[ロイター]



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19日、トヨタ自動車はこれまでの開発戦略を180度転換し、電気自動車(EV)開発に本腰を入れざるを得なくなっている。写真は同社RAV4EV。米カリフォルニア州20119月撮影(2017年 ロイター/Lucy Nicholson



[上海 19日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>はこれまでの開発戦略を180度転換し、電気自動車EV)開発に本腰を入れざるを得なくなっている。業界内で次世代自動車の主力はEVとの見方が強まる一方であることに加え、中国の政策に背中を押された形だ。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(115)

現状では、電気自動車はコモディティー化への道だ

 ところで、アウディは参加するレースをWECから(電気自動車=EVが争う)「フォーミュラe」に移しました。それについてはどう思われますか。先程、現実的な解はハイブリッドだとおっしゃっていましたし、トヨタEVには行かないのですか

豊田:それはね、社長として言うと、いろいろ問題がありますから(笑)。モリゾウとして話しますけど、いまトヨタ自動車にはEV事業室というものがあり、それは私が担当しています。以前86トヨタのスポーツカー)をベースに作ったEVがあって、試乗したことがあるんです。印象を聞かれたんで「ああ、電気自動車だなっ」て言いました。

 電気自動車、ですか?

豊田:その本意というのは「86であれなんであれ、EVEVになってしまう。すると、コモディティになってしまう」ということです。いまのメーカーにとっては、自分たちの首を締める可能性がある。

 やっぱりクルマというものを“愛車”にしておきたいという思いがあります。それがコモディティーになると、愛車から遠ざかる可能性がある。商品化決定会議の議長をやっているのですが、自分自身を最後のフィルターだと思っています。そしてEVであっても“愛”のつく乗り物、これはやっぱりトヨタEVだね日産のEVだねって、どのブランドのものなのかわかるクルマ作りで競争しないと、EVは単なるEVになってしまう。そこが一番自分がこだわりたいところで、だから自分で担当しています。

********

小林可夢偉選手のドライブにより歴史的なタイムでポールをとった7号車。まさかのクラッチトラブルでリタイヤとなった

 このインタビューは、レーススタート後、約1時間が経過し、トヨタ7号車がトップで順調にラップを重ねている時に行われたものだ。

 レース後の囲み会見で、章男社長は、7号車小林可夢偉選手の歴史的なコースレコードを称えながらも、ポルシェに対し“強さ”が足りなかったと話した。そして、社長としてこのル・マンの地に初めて訪れたことについて、昨年の「その場にいてやれなくてごめん」というコメントを引き合いに出し「社長としては寄り添えたものの、ドライバーモリゾウとして寄り添えたのかというと、自分自身やるべきことはまだまだあるなと、思いました。これからはドライバーモリゾウの目線で、チームを支えていきたい」と話した。

 ただし、「来年もルマンに挑戦を続けるのか」という問いに対しては、章男社長も、TS050レーシングハイブリッドプロジェクトリーダーの村田久武氏も、この場では明言しなかったことが少し気がかりだった。

 レース終了後、章男社長とハイブリッドの生みの親である内山田会長のコメントが発表されたのだが、その会長のコメントに来年への希望がみてとれたので、ここで一部を抜粋する。

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 準備をどれだけ重ねても、レースでは、やはり想像しえないことが起こります。
7
号車、8号車、9号車に起きたそれぞれの不具合やトラブル… 残念ですが、私たちには、まだまだ足りないものが残されていました。

 しかし、1台だけになっても、少しでも長く距離を走ろうとプッシュし続けた
8
号車の“闘志”や“諦めない気持ち”は、私たちに残された大事なパーツです。

 “諦めない気持ち”で、足りなかったものを、再び探し集め、
また来年、この場に戻ってまいります。 もう一度、我々にご声援を送っていただければと思います。 応援いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

2017618

トヨタ自動車株式会社
代表取締役会長 内山田 竹志

ポルシェは決して諦めない。トヨタはどうか。

 私自身、トヨタ勝利を見届けようという思いでル・マンの現場を訪れ、その速さを目の当たりにし、歴史的瞬間に立ち会えるのではないかという思いも頭をよぎった。

 一方でスタート前にポルシェサイドに話を聞くと、開幕2戦続けて負けようと、ポールポジションを取られようと、まったく悲観などしていない。ル・マンは別物だから、という思いがひしひしと伝わってくる。

 彼らもトラブルに見舞われ、盤石のレースとは言えなかった。ポルシェのホスピタリーに応援に駆けつけた、ル・マン24時間レースで6度の優勝経験を持つ伝説のドライバー、ジャッキー・イクス氏がトラブルに見舞われたポルシェのドライバーに「Never Give Up」と声をかけていたのが印象的だった。そして最後に生き残ったのはポルシェだった。やはり“何かが足りない”のだ。

 そして、その何かをつかみとるためには、走り続けるしかない、と思う。
 来年のトヨタに期待する。


このコラムについて

トレンド・ボックス

急速に変化を遂げる経済や社会、そして世界。目に見えるところ、また見えないところでどんな変化が起きているのでしょうか。そうした変化を敏感につかみ、日経ビジネス編集部のメンバーや専門家がスピーディーに情報を発信していきます。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/070400141/?P=5&mds

 

 

 

豊田章男社長のクルマ、特に次世代環境車に対する考え方などを、この論考からまとめてみると次のようになるのではないのかな。

 

 

(1) 次世代環境車としての現時点での解は、ハイブリッドHVである。

 

(2) レースと言うものには競争相手がいるから、クルマ作り人材育成の場となり、トヨタは実践教育の場として活用している。

 

(3) しかもレースである以上勝つことが必要で、そうすれば顧客獲得の場、ファン作りの場ともなり得る。

 

(4) 電気自動車はクルマと言うよりも、日用必需品コモディティ化する傾向があり、今のところ愛車にはなり得ない。

 

(5) だからトヨタとしては、もしやるとしたら、同じEVであってもトヨタEVとしてのアイデンティティを持ったものを作り出したいと思っている。

 

(6) 2017年のル・マンは強さが足りなかったから負けたので、もっと強くしなければ勝てないことが判った。

 

(7) 2018年のル・マンには、もう一度挑戦したい気はあるが、AudiPorcheも参加しないので、参加するかどうかはわからない。(2017.8.15NO.96参照のこと)

 

 

偏見と独断でまとめてみたが、こんなところが豊田章男社長の考え方のようだ。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(114)

ポルシェ博士との対話

 WECでは、サーキットに参加チーム各国の国旗が掲揚されます。日の丸も上がりました。日本代表ということに関する思いはありますか?

パドックスタンドの上段には、このようにさまざまな国旗が掲げられている。ちょうど真ん中あたりに日の丸があった

豊田:トヨタ自動車と言えば日本代表といわれますし、色んな方がトヨタに期待していただいていることだと思います。トヨタは年間生産台数1000万台のうちの約700万台を海外で作っていて、日本では約300万台です。そういう意味ではグローバル企業ですけれど、チームは日本代表の気概をもって参加していると思います。

 モータースポーツは現在、オリンピックの種目ではないですよね。けれど、このル・マンやWRC世界ラリー選手権)などの世界選手権は、オリンピックだと思いますね。今日もドライバーの出身国のすべての国歌が流れていました。メインスタンドにもあれだけの色んな国旗が並んでいて、表彰台の裏にも必ずドライバーの国旗が掲げられます。このル・マンには日本の選手も3名参戦していますし、改めて日本を背負って、世界で戦っているんだと、そういう気持ちでやっているんじゃないですかね。

 先程ポルシェ博士の下を訪れておられましたけど、どんな話をされたのですか?

豊田:実は昨年のレース後、ドクター・ポルシェから手紙を頂いたんです。そしてパリオートショーで初めてポルシェさんにお会いすることができた。そのときに、「是非来年はル・マンで会いましょう」と言われました。その日程は株主総会なんですよと話すと「あなたCEOなんだから、株主総会の日にちは自分で決めればいい」と言われて(笑)。今回は偶然、数日前に株主総会が終わったので、「お約束を果たせて良かったです」という話をしました。

 話の途中で、今は引退された方らしいのですが、40年来ポルシェのモータースポーツを支えてこられたという方を紹介頂いたのですが、その方を見て、私自身にとっての成瀬さん(成瀬弘氏、故人。トヨタのテストドライバーで、豊田章男氏にスポーツドライビングを教えた)を思い出しました。

約束通りル・マンでの再開を果たしたポルシェ博士と豊田章男社長

豊田:モータースポーツを軸にクルマ作りをしている会社はトップの姿勢も大切かもしれませんが、やはり現場を支えている支柱的な存在の人もいるんだと、そうした方をご紹介頂けたことを大変嬉しく思いましたし、そういったことも含めてモータースポーツを盛り上げていかなければいけないなと感じましたね。

 昨年アウディが撤退して今年はトップカテゴリーにはトヨタとポルシェしかいません。レギュレーションとしてもトップカテゴリーであるLMP-1Hハイブリッド車)は、技術も開発コストもかなりのレベルにあるため、新規参入が難しいとも言われますが、そのことについてはどうお感じになられますか

豊田:要はね、トヨタ1社じゃ何もできないということです。次世代社会も含めてEVFCVも、それだってトヨタ1社じゃできません。いろんなものを巻き込んで。単にモータースポーツが好きということだけじゃなくて、一緒にモビリティーの未来を考えていきたい、それに尽きると思うんです。

 そのためにもやはり、競争はあったほうがいいじゃないですか。単なる技術競争も大事ですが、でも、参加者がいるという状態も大事だと思います。ただ、レースという以上、参加者を増やすために技術レベルを据え置きにするというのは少し本末転倒じゃないかとは思います。そのバランスは非常に難しいとは思いますが。

 トヨタとしてル・マンに参戦することの意義についてはどのように考えていますか。

豊田:我々はニュル(ブルクリンク)の24時間レースにも参戦しています。そして初めてル・マンに来て、同じ24時間レースでもこうも違うのかと。ニュルでは市販車ベースのクルマを24時間戦わせます。24時間のなかで、ここはガチンコでいくぞ、ここは落とすぞとかペース配分というものがあるんですね。ここはね、全周アタックなんですよね。可夢偉コースレコードを出しましたけど、それくらいのペースで24時間走り続ける訳ですから、全く種類の違う24時間レースだなとまず思いましたね。

皆さん、私を単なるレース好きと思っているでしょう(笑)

豊田:それともう一つはハイブリットに関してですね。内山田さん(内山田竹志氏、初代プリウスの開発責任者、現会長)が作ったプリウスをはじめ、ハイブリッドというものの研究室なんですよ。ハイブリッドというと燃費、エコというイメージで語られがちですが、このル・マンのような場で、毎周毎周ガチンコでアタックするような走りができるという意味では、やっぱりヨーロッパにおいて、ハイブリッドというもの見え方が、ガラッと変わってくると思うんです

 トヨタの場合は、ハイブリッド、PHVEVFCVといろんな次世代環境車があるなかで、当面の一番現実的な解はハイブリッドだと思っています。しかし、ハイブリッドの割合は全世界レベルでみてもまだ2%くらいしかない。現実的な解だとすれば、10%くらいはハイブリッドになっていくことを期待していますし、トヨタとしては有利に展開していけるんじゃないかと思いますけど。

 章男社長はいつも「レースの目的は、クルマ作り人材育成」とおっしゃいますけれど…

豊田:それとファン作りですね、これが大事です。ドライバー“モリゾウ”(レース競技に参加する際などの章男社長のニックネーム)としてこういった活動をしていることを、ひとりでも多くのファンの方、はもちろん、社員も何かを感じとって欲しいなと思いますね。獲得

 日本の自動車メーカーがレース活動を続けていくことの難しさはありませんか。

豊田:結構大変なんですよ。これだけの大企業がレースをやるのって。だって、世の中の人、みんな私が単なるレースを好きだと思っているでしょう、公私混同みたいな(笑)。

豊田:でも、そういうことではなくて、例えばこのル・マンだって近所に工場もなければサプライチェーンもない。持ってきたパーツとここにいる人材だけで24時間戦うんですよ。アレがないからできないとか、時間があればできるとか、そんなこと言ってる間にレースは終わってしまいます。

 だからこそ、そこにとんでもない人材育成のネタがあるんです。一般のクルマの開発期間というと3年~4年ありますけど、それとはまったく違う緊迫したクルマ作りというものがレースからは得られる。人間って追い詰められるととんでもない知恵が出るんですよ。それは、上位の者がソリューションネタを持っているとかではなくて、そういう環境を作っていくことが私の役割だと思っています。

 トヨタ生産方式のひとつに現場主義というものがありますが、それはレーシングチームであっても、会社組織であっても同じということでしょうか

豊田:現場に色んな事実がある。事実があればそれが課題になる。課題が見つかればみんなでなんとかしたいという気持ちになりますから、それがトヨタ流のカイゼンに繋がると思います。モーターレースの現場であろうが生産現場であろうが、開発現場であろうが、マーケティングの現場であろうが、カイゼンに向けてそのサイクルを回すことがトヨタだと思います。いきなりベストを狙わずにベターベターベター。昨日より今日が、今日より明日が良くなるやり方があるはずで、ベターを絶やさない努力を続ける、これがどの分野でも大切ということです。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(113)

まあ大雪の鳥取の国道でクルマが数百台立ち往生した場合を考えると、とてもじゃないがEVだと何の役にも立たない、と言う事が理解できぞっとする。それこそ雪かきされた雪と同じようにEVは、道端に放置されることになろう。

 

EV,EVと騒いてはいるが、そう考えるとEVは全く特殊なクルマなのでしょう。オールマイティでは絶対にない。雪の季節では、豪雪地帯ではEVは邪魔者扱いされるだけの存在なのであろう。

 

2040年までにはICEVは禁止されてしまうことになるフランスやイギリスでは、こんな時には運搬は何に頼ることになるのであろうか、などと考えてしまう。FCVであれば、こんな時でもガソリン車の代替になれるのではないのかな。

 

それでも「パリ協定」の手前、EVFCVも)化は進展してゆくことになろう。このEV化の流れは留まることはないであろう。ただトヨタはこの流れに乗り遅れているような感じがするのである。だから小生は、トヨタはこの流れに乗らなくてはならないのではないのか、と危惧しているのである。

 

 

トヨタも今年のル・マンで、WECル・マン)からは撤退するつもりであったのではないのかな。当然優勝するつもりであったので、優勝して撤退すると言う図柄を考えていたものと思う。それだけTS050 HYBRID の性能は十二分に高かったようだ。

 

豊田章男社長TS050レーシングハイブリッドプロジェクトリーダーの村田久武氏も、今年のル・マンの開始冒頭のインタビューでは、「来年もルマンに挑戦を続けるのか」という問いに対しては明言しなかったと言うではないか。これは「挑戦しない」と言う事を意味する、と推察できる。

 

当然次世代環境車の開発に集中するためである。トヨタは当面の次世代環境車の主軸はハイブリッド車と位置付けてはいるが、PHVEVFCVへの開発、特にEVへの開発へも注力しなければならない状況に落ちいっており、相当焦っていたのではないのかな。

 

欧州や米国では、猫も杓子もEVへ、EVへとなびいているからである。トヨタの考え(というよりも豊田章男社長の考え)は、次の論考でなんとなく解るのではないのかな。

 

豊田章男社長にル・マンで聞いた話

トレンド・ボックス

「日本でもこういう場を作っていきたい」

201776日(木)

藤野 太一

 あれから365日。

 「あの悔しさはすべて、伏線だ。」

 と、自らを鼓舞し、TOYOTA GAZOO Racing61718日、WECの第3戦、ル・マン24時間レースに挑んだ。

 WECとは、FIA世界耐久選手権FIA World Endurance Championship)の略称で、世界三大レースのひとつとされる「ル・マン24時間レース」を含む耐久レースのシリーズ戦だ。2017年シーズンは世界9カ国、全9戦が開催される。

 ちなみに、今年ル・マンで優勝した車両の走行距離は5001.23km、平均速度208.2km/hだ。この距離はどのくらいか。高速道路でいうと青森東ICから、桜島の西にある鹿児島ICまでが約2000km。本州の北端から九州の南端まで走り、もういちど青森まで戻って、さらに折り返して豊田東JCT(名古屋の少し手前)まで、平均時速200kmでまる1日走る、ということになる。マシンにもドライバーにもサポートするチームにも、とんでもない負荷がかかることが分かるだろう。

 昨年のル・マン24時間レースで、トヨタ23時間57分、ゴールまで残すところ3分を切るところまでトップを走っていた。しかし、無情にもマシンは止まった。詳細は昨年の記事を参考にされたい(「ル・マン敗北、豊田章男社長の言葉の意味」「『勝利』と『人材育成』、トヨタが挑む二律背反」)。

挑戦は今年も退けられた

 それゆえ、今年のルマンにかけるトヨタの意気込みは、相当なものだった。

 マシンの名称こそ「TS050ハイブリッド」と昨年と変わらないが、中身は全面改良と呼べるほど手が加えられていたという。その言葉のとおり、4月の開幕戦、イギリス・シルバーストーンでいきなり優勝。5月のベルギーのスパ・フランコルシャンは、ルマンを見越してマシンを通常の2台から3台体制(7号車、8号車、9号車)に増員し、1-2フィニッシュを成し遂げた。

 そして6月、開幕2連勝を遂げたトヨタは意気揚々とフランス、ル・マンに乗り込んだ。練習走行から好調で、予選では小林可夢偉選手が従来ポルシェがもっていたコースレコード2秒も更新する314791という驚異的なタイムでポールポジションを獲得した。関係者もファンも、今年こそはいける、と確信していた。

 しかし、結果はすでに多くのメディアで報じられたとおり、ポールポジションからトップを快走していた7号車がスタートから約8時間後にクラッチトラブルでストップ。続いて9号車も他車により追突をきっかけにリタイヤ。残る8号車は、フロントモーター回りのトラブルでピットイン後、約2時間の修復を経たのち走行を続け総合9位でチェッカーを受け、レース後、上位車両の失格により8位となっている。

 昨年のレースを日本で観戦していた豊田章男社長が、レース後、チームにかけた言葉が「その場にいてやれなくてごめん」というものだった。例年、ル・マン株主総会と日程が重なるため、参加できなかったのだという。今年の株主総会614日、まさに第1回目の予選日だった。17日の決勝には十分間に合う。社長就任後初めてル・マンを訪れた豊田章男社長に、インタビューする機会が得られたので、ここでその模様をお届けする。

ル・マンでだってホテルは足りていない

 社長に就任されて初めてのル・マンということですが、その印象は

豊田章男社長(以下、豊田):オーケストラだなと。スタートの時に流れたあの音楽がね。ああいう雰囲気はニュル(ニュルブルクリンク、ドイツのサーキット)にも無いですよね。

 それと、やっぱりヨーロッパだなと感じました。日本でモータースポーツというと、観客収容人員がどうだとか、周辺に渋滞を起こすとか、すぐにネガティブな話ばかりになってしまう。ホテルのキャパシティーが足りないとかね。

豊田:でも実際、ここだって無いですよ(笑)。だけど、そのないない尽くしの中で、みんなで成り立たせようという思いが、どこか村祭りのような雰囲気を感じさせるんじゃないかと思うんです。ニュルもここも両方を見て、正直うらやましいなと思います。日本でも規模は小さくてもいいから、24時間レースができれば、そうするとプライベートチームが出られるようになる。

 われわれはワークスの立場で出ていますが、ワークスが成り立つのはプライベーターがあってのことです。そこから町のチューナーや部品メーカーさんといった、裾野が広がることが必要なんです。単にワークスが強ければいいということではなくて、全体の底上げが重要で、それをここにいる(トヨタの)人たちにも何か感じ取って日本に帰って欲しいですね。

 F1などと違って、WECやニュルなどはマチュアドライバーがプロと一緒に走れる、それが1つの魅力だと。

豊田:そうすると若手が鍛えられるじゃないですか。私だって、はじめてニュルに出たときは、アマチュアもアマチュア、ド素人でした。それがいまはね、(開発者たちに)最後のフィルターだとかね、少し偉そうなことを言えるようになったんですから(笑)。そういう意味で人材育成の場としていいもので、あらためて、日本でもこういう場を作っていきたいと思いました。

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(112)

「ガソリンを10リットルだけ入れて納車してみたら?」

本文を読む

金子:一方、PHVなら必要最低限のバッテリーを積んで適度に毎日EVとして走れ、長距離はガソリンを使ってエンジンとモーターのハイブリッドで走れるじゃないですか。

小沢:ある意味、効率的で無駄のないジャストサイズEVだと。

金子:最近、僕は販売店のみんなに言うんです。「『プリウスPHV』は満充電にして、ガソリンを10リットルだけ入れて納車してみたら?」と。毎日充電して使っていただければ、たった10リットルですらなかなか使い切らないはずだから。ヘタすると数カ月もつからと。

小沢:そうすれば、PHVが事実上の“使えるEV”であることが理解できる。

金子:私が言いたいのは、400キロ走れるEV1台分の電池で、4台のPHVがつくれるんです。EV車の電池の無駄な大容量化航続距離競争を食い止めたい……というのが本音です。

小沢:たしかに、今やドイツのフォルクスワーゲン2025年にはEV車生産100万台を目標としていたり、中国は20年に累計500万台のEVPHVの生産を目標に掲げていますが、じつは僕は疑問だったんです。一体どうやって、そんなに大量のリチウムイオン電池をつくり出すのかと。もちろん韓国のLGとかサムスンとか中国のBYDとか世界中に巨大電池メーカーはたくさんあって、どこも開発・量産競争の真っ只中ですけど、資源的な限界もありますからね。

金子:そう、そこなんです。ですから私は、お客さまに「682キロしか走れないEVでも十分」であることに気づいていただきたいんです。たとえば軽自動車オーナーで長距離走行をなさらない方なら、次にエコカーEV化した時に、2030キロ走れる電池で十分だとわかっていただけるかもしれない。そうすると地球資源的にもよいはずだ……と。

電池容量は時代ごとに最適解がある

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小沢:うーん、すごくおもしろいですね。実際、昨今のEV化の流れって、みんな漠然と「よいこと」だと信じ込んでいて、「EVはエコだ」「ガソリンを使わないから素晴らしい」って感じています。

でも、そもそも大容量電池を量産し、クルマに搭載できることがはたしてそんなにいいことなのか?という根本的疑問も生じます。リチウムイオン電池は、廃棄にもエネルギーを使って大変らしいし。

金子:けっしてEVを否定するわけではありませんし、自動車の電動化はどんどん進んでいくと思うんです。ただ、電池容量については時代によっての最適解があるだろうし、大容量電池搭載のEV車は、普及をなるべく遅らせたほうが地球環境的によいのではないかと思うわけです。

小沢:ますます、おもしろいなあ。環境にとってはEVがいいのか、PHVがいいのかという、ほとんどイデオロギーの闘いになりつつありますね。当然の如く、EVこそ正義だと言う人もいますものね。

金子:話は飛びますが、やっぱりガソリンなど化石燃料の携帯性、そしてエネルギー密度の高さというのは大変価値が高いもので、昨冬、大雪の鳥取自衛隊がガソリンと軽油を持ち運んで、動けないクルマに配っていたんです。ああいうことって電気ではできない。電池を運んでポンと補給して100キロ走るなんて。

小沢:たしかに。

金子:限りあるガソリンをいかに大切に使うかという取り組み。我々は「省石油」と呼んでいますが、その意味でもPHVは有効です。もちろん、ガソリンが本当に枯渇する事態に備えた「脱石油」も視野に入れていますけれどもね。



おざわ こーじ◎バラエティ自動車ジャーナリスト。

量産車では世界初となる大型ソーラーパネルを車両ルーフに設置(S“ナビパッケージ”、Sにメーカーオプション)。駐車中に駆動用バッテリーへ太陽光の自然エネルギーを供給。1日に最大で6.1km走行分の充電が可能だ。

 

PRIUS PHVナビゲーションシステムには11.6インチの大型ディスプレイを採用。見やすいのはもちろん、タブレット感覚で操作できる。



PRIUS PHV

ヘッドランプにはLED4眼プロジェクターを採用。極限まで薄く、小さく、低くすることでシャープさを演出。リアもコンビネーションランプがサブウインドウを取り囲むように赤いラインを描くなど、印象的なデザインに大きく変わった。



PRIUS PHV

PRIUS PHV

エクステリアのデザインを一新。艶めくアクリルグリルや先進技術を凝縮した4眼プロジェクターによって、未来を見据えた精悍な顔つきになった。

PRIUS PHVの詳しい情報・お問い合わせはtoyota.jp

toyota.jp

https://harmony.ts3card.com/interview/201707-08/

(続く)

続続・次世代エコカー・本命は?(111)

欧州での「モビリティ革命」の行く先は電動化であると認識してもよいとして、その動き(の一部ではあるが)はこのくらいして、次は日本、特にトヨタの動きを追ってみたいと思う。

 

 

13)モビリティ革命、トヨタはどうする?

 

 

トヨタの「モビリティ革命」に対する考え方は、次の「Harmony」(20177/8月号)の「プリウスPHV」の金子將一主査の話を聞くとよくわかる。

 

プリウスPHVに搭載されているリチウムイオン電池と燃料タンク43Lの重量が比較されている。

 

8.8kWhリチウムイオン電池の重量 120kg、航続距離 68.2km

ガソリンダンク容量43L、重量40kgHV燃費 37.2km、航続距離 1,599.6km

 

プリウスPHVは、ガソリン満タンで約40kgの重量で1,600kmも走れるわけだ。

これに対してEV性能としては、3倍も重い120kgBatteryを積んで、僅か68kmしか走らないのだ。

 

それに先の論考では、

 

リチウムイオン電池はとても高価で、『買ってから廃車にするまで5年間の「所有コスト」で考えると、平均約8万ドルで、内燃機関(平均約36000ドル)の2倍以上というのが米エネルギー省(DOE=United State Department of Energyの計算』と書かれているように、2.2倍も高価なのだ。

 

しかもそれに見合って2倍以上の環境効果があるかと言えば、環境効果はICEV内燃機関車に比べて10%程度だけで、2.2倍も高価な割にはCO2の低減はほとんどない、と言ってもよいほどないのが実情のようだ。

 

これではICEV(Internal Combustion Engine Vehicle内燃機関自動車)を電気自動車EVに早急に置き換える意味は、それほど無いのではないのかな。

 

Batteryがもう一皮も二皮も脱皮しないと「パリ協定」は守られないことになる。Batteryの技術革新が必要なのだ。

 

そこで必要なだけのBatteryで、必要なだけ走れればよいのではないか、と言う考え方も出てくるのである。まあこれが初期のプリウスPHVEV走行26.4kmの距離だった訳だが、これが全く世間では受け入れられずに惨敗と言った状況だったようだ。

 

そのため今度はEV走行68.2kmと相当おごって、しかもスタイルまで大幅に変えて2代目プリウスPHVを登場させたのである。しかも68kmに拘って5人乗りのところを4人乗りと重量を一人分軽くして、登場させたのである。

 

そのため2代目プリウスPHVは、かなりの人気らしい。試乗結果はとても素晴らしく、素人受けするものであった。もちろん玄人にはもっとアピールする筈であるが、ただ如何せん4人乗りと言うのが、小生には引っかかるのである。

 

これもバッテリーの重量問題のために致し方ないことのようではあるが、何とかしてもらいたいものである。要はバッテリーの技術革新が待たれるである。

 

ちなみにテスラのモデルSは純粋のBEVであるがそのバッテリーの重量は500kg~650kgになると言う。

 

 

テスラ・モデルS 60.0 kWh  Battery 推定重量約500kg 走行距離345km

テスラ・モデルS 85.0 kWh  Battery 推定重量約650kg 走行距離460km

プリウスPHV 8.8 kWh  Battery 推定重量約120kg 走行距離 68.2km

 

まあ長い距離を走るためには大量のバッテリーを搭載すれば済むわけであるが、その重量を何とかしなければならないのである。リチウムイオン電池に限らず、その性能向上に技術の革新を期待したいものである。

 

 

 

Harmony 20177/8月号  開発者に聞く 201708010000

プリウスPHV 金子將一
MS
製品企画 主査

文・小沢コージ 写真・小松士郎

PRIUS PHV

PRIUS PHV S    

プラグインハイブリッド車の存在意義

力強いEV走行を実現した2代目「プリウスPHV」。次世代エコカーの先鋭が冷静に問いかけるPHVの同時代性とEVの必然とは……。

EV車の大容量電池がもたらすもの

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小沢:満を持して登場した「プリウスPHV」ですが、今回はあえてハードウエアについて深く突っ込むのではなく、「PHVで世の中をどう変えるのか」をお聞きしようかと。CMでも、「ハイブリッドの次は、なんだ?」と謳っていることですし。

金子:なるほど、PHVの存在意義とはなんぞや、ということですね。わかりました。

まず今、日本はもちろんアメリカや欧州などで叫ばれているのは車両の電動化。つまりEV車の普及です。近い将来、石油の枯渇が危惧される中、風力、水力、太陽光はもちろん化石燃料を燃やしても取り出すことができる電気をクルマの燃料に……ということで、EV化が進んでいるんですが、その一方で電気は貯蔵が大変難しく、エネルギー密度も非常に低いことが難点です。

小沢:貯蔵とは、電池のことですよね。つまり電池の性能が低すぎるという意味ですか?

金子:わかりやすく言うと、今回の「プリウスPHV」の燃料タンク容量は43リットル。満タンのガソリンの重さは40キロ以下で、しかもハイブリッド走行でのモード燃費が372kmLですから、満タンならざっくり言って1500キロほど走れる計算になります。

ところが電池のみですと、88kWhリチウムイオン電池をフル充電しても、682キロしか走れない。

小沢:「プリウスPHV」は電池重量だけで120キロ。つまりガソリンの3倍以上の重さのくせに、航続距離はたった20分の1。同じ距離を走ろうとすると電池はガソリンの約60倍の重量が必要になる。逆に言うとガソリンがいかにエネルギーとして持ち運びしやすいかという。

金子:その通りです。もちろん電池の性能が上がると多少軽くはなりますが、ご存じの通り、急速にEV化が進んでいる今、そもそも航続距離が短いというEV車の問題を、バッテリーの大容量化で解決しているんです。

小沢:たしかに! 某・国産EVが新たに30kWhの電池を搭載しただけでも驚いたのに、昨年登場した北米のプレミアムEVは、100kWhっていう巨大電池を搭載していました。

金子:ええ、すると何が起こるかと言うと、クルマが変わっていくんです。重量を支えるために大きく頑丈なタイヤが必要になり、その重量で衝突安全性能を成立させるためにボデーがどんどん肥大化していく。

小沢:そうですよね、たとえば「テスラ」なんか、尋常でなくデカいEVセダンですしね。

金子:じつは、ここで冷静に考える必要があるんです。人が1日平均何キロぐらいクルマを運転するかというと、日本の場合はせいぜい1520キロで、欧米でも30キロぐらいなんですね。

小沢:そんなもんでしょうね。

金子:つまり今はフル充電で300400キロ走れるEVが出ていますけど、まだ270370キロ走行可能な電池を、たんに重りとしてクルマに搭載していることになりませんか?

小沢:なるほど、そういう計算もできるのか。重い電池を積んでも短い距離しか走らないなら。

金子:もちろん、考え方にもよりますが、それは非常に無駄だと思うんですよ。クルマが必要以上に重く頑丈になるばかりか、バッテリーって貴金属とかレアメタルなどが大量に使われるわけですから。

小沢:電池は希少マテリアルの宝庫ですからね。

金子將一

金子將一(かねこ しょういち)

青山学院大学理工学部を卒業後、1991年にトヨタ自動車入社。エンジン設計にたずさわった後、99年に製品企画室に配属。ミニバンの「イプサム」「ガイア」「アイシス」や、「カローラ」を手がけた後、現職。趣味はバイクとスキーとスピード系アクティビティー。  


(続く)