バラク・フセイン・オバマ大統領(23)

(6)そしてその中国はオバマ演説をどう伝えたのか。

いささか古くはなるが、一ヶ月ほど前のhttp://sankei.jp.msn.comニュースにこ

な物があった。

http://sankei.jp.msn.com/world/america/090126/amr0901261917008-n1.htm

中国メディアがオバマ演説の一部削除 「欺瞞」「未熟」国内で波紋

と言う見出しのニュースだ。

それによると、この1月20日のオバマ大統領の就任演説を報道する際、「

主義」など一部の言葉を削除したことが中国国内で波紋を広げている、と言う。

海外のインターネットなどを通じて演説の全容を知った知識人達は「国民に対す

る欺瞞だ」「中国の未熟さが露呈した」などと報道姿勢を厳しく批判した、と言うも

のだ。

その演説は「(4)ケサン」の項で引用した第21節だ。

第21節

Recall that earlier generations faced down fascism and communism not just with missiles and tanks, but with sturdy alliances and enduring convictions. They understood that our power alone cannot protect us, nor does it entitle us to do as we please. Instead, they knew that our power grows through its prudent use; our security emanates from the justness of our cause, the force of our example, the tempering qualities of humility and restraint.

前の世代はファシズム共産主義ミサイルや戦車だけではなく、強固な

同盟と強い信念を持って対じした事を思いだしてほしい。彼らは、我々の力だけ

では我々を守れず、好きに振る舞う資格を得たのではないことも理解していた。

代わりに、慎重に使うことで力が増すことを理解していた。我々の安全は、大義

の正当性や模範を示す力、謙虚さ、自制心からいずるものだ。

この部分だ。中国メディアが問題視した部分は、この赤字を含むセンテンスだ。

演説を生中継をしていた中国・国営中央テレビ(CCTV)は途中で画面をスタジオ

に戻し、専門家による解説に切り替えてしまった。そして、中国・国営新華社

信も、「共産主義」の単語を削除して演説内容をホームページに掲載したと言う。

更に、「全訳」と称し掲載した大手ポータルサイトも「共産主義」をカットしており、

「捜狐」「新浪」の2社は、第25節の次の部分もすべて削除している、と言う。

第25節

To the Muslim world, we seek a new way forward, based on mutual interest and mutual respect. To those leaders around the globe who seek to sow conflict, or blame their society's ills on West – know that your people will judge you on what you can build, not what you destroy. To those who cling to power through corruption and deceit and the silencing of dissent, know that you are on the wrong side of history; but that we will extend a hand if you are willing to unclench your fist.

イスラム世界よ、我々は、相互理解と尊敬に基づき、新しく進む道を模索する。

紛争の種をまいたり、自分達の社会の問題を西洋のせいにしたりする世界各地

の指導者よ、国民は、あなた方が何を築けるかで判断するのであって、何を破壊

するかで判断するのではないことを知るべきだ腐敗や欺き、さらには異議を唱

える人を黙らせることで、権力にしがみつく者よ、あなたたちは、歴史の誤った

側のいる。握ったこぶしを開くなら、我々は手をさしのべよう。

この斜体の部分もすべて削除している、と言う。このニュースの訳文のほうが

すっきりしているので、それを下記する。

腐敗や欺瞞、反対者への抑圧を通じて権力の座にしがみついてる者たちよ、

あなた達は歴史の間違った側にいる。もし握っているこぶしを開くなら我々は手

を差し伸べる。」と言うもの。

上記の2社はこの部分もすべて削除してホームページに掲載していると言う。

そして記事は続く。

この部分は、中国の現政権への批判を連想させる可能性があることが理由と

見られる。そして更に続く。これらの対応は共産党宣伝部の指示によるものか、

それとも各メディアの自粛なのかは不明、としている。

そして、中国メディアは、中国にとって都合の良い部分だけを大きく取り上げて、

都合の悪い発言は常に削除して伝えるのを常としている、と言っている。しかし、

ネット人口が3億人となっているので、このような情報操作は殆ど機能していない

と言う。香港やシンガポールなどのメディアが伝える中国語訳がネットを通じ中

国国内に広がり、演説内容をそのまま伝えない中国メディアを非難する声が各ネ

ット掲示板に殺到していると言う。例えば、「我々はもう騙されないぞ」と言った書

き込みもあるという。

そして次のように締めくくっている。

ある北京在住の大学教授は「聞き流しても良いところをわざわざ削除したことで、

逆に強調されてしまった。当局にとって逆効果だったのではないか」と。いずれ

にせよ、中国(政府)と付き合うには、ふんどしの紐を締めてかからないと、何を

されるか分からないと言う事であろう。必ずどこかで騙しにくる

(続く)