バラク・フセイン・オバマ大統領(32)

(1)3回のパラダイム・シフトの項では、米政府は1942年から日本に自主

衛させない」と決めていたと、Michael Sherry, “Preparing for the Next War”

YaleUniversity Pressを引用して記述しているが、伊藤貫氏は「正論・1月号」に

も「バマ米新大統領の”チェンジ”が日本にもたらすもの」とする一文を載せ

ている。それによると、1941年8月の時点で、アメリカ政府は既に戦後の日

本を、永久に武装解除すると決めていたと、キッシンジャー国務長官

記述している、と述べている。アメリカは「日本を戦争に追い込む」ことを計画し、

そして叩き潰して「2度と自主防衛できない国にする」ことを日米戦争が始る

前にに決めていたのである。

そして2008年の米民主党にも「アメリカは日本に自主防衛させてはならない

が、中国の軍備増強に反対する必要はない。日本は、米中両国が共同して

封じ込めておくべきだ」と考えている者が多い、と述べている。クリントン夫妻、

ホルブルック特別代表(元国連大使)然り。1942年のF.ルーズベルト大統領の

「米中による日本封じ込め」政策と同じ考えであり、民主党の親中嫌日的な

政策は、いつまでたっても変わらない。共和党でも同じであると言う。ブッシュ(息

子)は2003年ごろまでは親日的であったが、2004年以降、父親やキッシン

ジャーに説得されて、「米中両国で日本を封じ込めておく」と言うアジア戦略に

賛同するようになる。そして「日本を押さえつけておく為に必要だ」と納得して、

2008米朝合意をしたのである。ジョージ・W・ブッシュは、決して親日ではない

し、メリカに依存する外交政策は間違いである。

米ソ冷戦の終わった後も、政治家や国際政治学者の著作や論文には、「日本

は、アメリカの保護領に過ぎない」とか「実質的な属国である」と描写されている

と言う。21世紀になった現在でも、「日本に、永久に自主防衛能力を持たせな

い。日本が2度と外交政策を実行できない国にする」と言うアメリカの日本に

対する基本的考え方は継続されており、変わっていないと言う。

今後、オバマ政権が日本に対して表面的にはどんな甘い言葉を使おうが、日米

関係のこの基本的な構造からは外れることはない、とこの筆者は結論付けいて

る。そして、「オバマは計算高い民主党ポリティシャン(政治屋であり、201

年の大統領再選に不利になるような言動はしないだろう」と言っている。彼は信

念タイプの政治家ではなく、政治を一種のゲームに勝つように立ち回る「ゲーム

ズマン・タイプ」の政治家とみなしている。そのためオバマは、自分の政治キャリ

アに不利になるような言動を徹底的に避ける。そのため「変革」は掛け声だけ

であろうと予測している。そしてこの対日戦略の枠組みからは決して外れること

はないし、中国と真正面から対抗してまで、日本や台湾を守ろうとはしない

あろう、と予測している。

たった1回の戦争に負けただけで、「自分の国は自分で守る」と言う当たり前の

義務を果たすことをやめてしまった日本は、今後、「偉大な中華帝国」の属領とな

るだろう。そして、日本が中国勢力に併合されても、世界中、どこの国も日本に

同情しないだろう。

日本と言う国は、北朝鮮核武装し、日本の女性や子供を拉致しても、自国の

国民を自分で守ろうとすらしない国である。そんな卑怯な国に同情する国など、

世界中に存在するわけが無い。このように結論付けている。しかし、そこから脱

却する為の方策も述べている。

それは先に述べたように、

・自主的な核抑止力を含む自主防衛能力を構築すること。

・同盟関係を多角化すること。

これらのことは先に述べた提案と同じであるが、三つ目はまともなものであり是

非とも実現させたいものである。

兵器の確保や軍事技術の開発について、アメリカだけに依存せずに、ヨー

ロッパ、インド、ロシア、イスラエルとも、共同して進める必要がある、と提案

している。

「米中両国に弄(もてあそ)ばれる」日本外交から脱却する為には、多極化した

バランス・オブ・パワー外交が必要なのである。日本の同盟関係と軍事・外交・技

術の協力関係を多角化し、多極的なバランス・オブ・パワー外交を推し進めるこ

とが、日本の生き延びる道である。さし当たっては、F-22なんぞの採用にこだ

わらず、ブラックボックスを設けないとしている「ユーロファイター」を採用すること

である。

(終わり)