もちろん米国は中国に抗議するとともに、インペッカブルを護衛するために
イージス型駆逐艦を現場海域に派遣した。
中国はこれを嘲笑(ちょうしょう)するように、海外向けの中央テレビが漁業監
視船「漁政311」を南シナ海のパラセル(西沙)諸島に派遣したと報じた。漁政は
軍艦を改造した中国最大の監視船だ。
これまでも中国は、海洋に「力の空白」が生じると、これに乗じて軍を送り込ん
できた。まず92年の領海法で「中国の海」であるとの意思を示し、第2段階では
海洋調査船の派遣を開始する。第3段階で海軍艦艇や航空機を派遣して力で
領有権を明示する。その先兵が海上民兵だ。
太田教授は、すでに第3段階に入っていると『インテリジェンスと国際情勢分
析』で述べている。
今回の米音響測定船に対する中国艦の異常接近事件も、表向きオバマ米政
権との米中協調が叫ばれようと、海面下では熾烈(しれつ)な戦いが露骨に進ん
でいることを物語る。インペッカブルは、海南島に配備された中国原潜の音紋採
取や潜水艦を探すための海底地形の調査である。台湾海峡で風雲急を告げた
さいに、米空母機動部隊の脅威となる中国潜水艦を警戒するためでもある。
南シナ海は日本にとってこそ中東原油を輸送する生命線である。ソマリア沖に
護衛艦2隻を派遣するだけでも大騒ぎをしているようでは国益の確保はおぼつ
かない。やがては中国の空母が台頭してくるはずだ。
http://sankei.jp.msn.com/world/america/090318/amr0903180915004-n1.htm
中国のやり方はまことにずる賢い。純然たる日本領である尖閣諸島も、この手
順に沿って攻め込んできている。中国の領海法では尖閣諸島は中国領だと勝
手に宣言している。'08.06.03~の「中国覇権主義」でこのことには言及している
が、そして、2008年の12月8日には実に9時間も、中国調査船2隻を、尖閣諸
島の日本領海内に侵入させている。中国に対しては一筋縄ではいかない、日本
の国益を如何に護るかは真剣に考え、早急に実施に移してゆく必要がある。
(続く)