コラムはまず、「何百万人もの普通の中国人が問題を抱える中、なぜ中国政府
は世界的な経済危機を引き起こした米国を助けるのか」という中国国内の疑問を
紹介。「米国債への投資をやめ、北京は中国の社会基盤や軍事力、社会福祉の
充実に資金を振り向けるべきだ」という王氏の見解をその答えとして挙げた。
米国防総省の報告書は、中国の実質軍事費が公表分をはるかに上回る巨額
に達していることを示す。この軍事費を削って民生向上を求める声も強いのだ
が、王氏はむしろ、「国防がないがしろにされている」と論じてはばからない。
ここでコラムは、今回の報告書を引用し、「国防総省の最新報告によれば、中
国はすでにこの(国防強化という)方向に進んでいる」と指摘する。いわく、8年間
での軍事費倍増、ソマリア沖への派遣、空母艦載機の搭乗員養成など、事例の
引用は簡潔ながらこの報告書の性格をきちんと反映していた。
最後に4月下旬に青島沖で行われる中国海軍の壮大な観艦式を挙げて、「こ
の情景を見れば、王氏や仲間の不満も少しは和らぐのではないか」と結んでい
る。観艦式程度で、中国の軍拡や過剰な民族主義が収まるならお安いモノな
のだが。(ワシントン 山本秀也)
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▼自由時報(台湾) 馬政権の対中傾斜に警鐘
米国防総省が発表した年次報告書「中国の軍事力」への台湾の関心はひとき
わ高い。発行部数最大の「自由時報」紙(3月27日付)は1面トップで中国が台
湾軍の3倍もの地上部隊(44万人)を台湾海峡沿いに配備している現実をイラス
ト入りで大々的に報じた。さらに2面の社説や3面トップ記事などで、馬英九政権
が中国の急速な軍拡を軽く見て「対中傾斜を強めている甘さ」を厳しく批判した。
米報告書によると、中台の軍事バランスはすでに中国優位に転じ、格差はさら
に拡大の一途をたどっている。中国は陸軍の兵力数で3倍、海軍も駆逐艦、潜
水艦、上陸艦でそれぞれ台湾の4、8、3倍の艦艇を配備、台湾を射程に収めた
ミサイル数は1050~1150基にのぼる。
自由時報紙は中国がうわべでは「台湾の平和統一に重点を移すそぶりを示
す」一方で、「実は虎視眈々(たんたん)と軍拡を続けている現実」(3面解説
記事)を強調、繰り返し警戒を呼びかけている。
「胡錦濤(国家主席)、温家宝(首相)らのくすぐったくなるような(平和友好の)
呼びかけは、ほほ笑みの裏ですきあらば台湾を併呑(へいどん)しようとの懐刀
を秘めた統一戦術にすぎない」(2面社説)からだ。
ところが馬英九政権は「中国の武力脅威を軽視して国防費を次第に削減、軍
隊の徴兵制から志願制への移行(5年後に全面実施予定)も進んでいないうち
から兵役短縮などの動きを始めている。国防の質、量ともに実に憂慮すべき状
況」(3面解説)にある。
さらに「馬政権は米国からの防衛兵器購入を先送りする一方、中国の台湾へ
の政治、経済面での浸透を放置し台湾人民の自主能力をそぎ落としつつある」
と強い警鐘を鳴らしている。(台北 山本勲)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/090406/chn0904060822002-n1.htm
(続く)