国慶節に思う。(50)

小生は、付属書に記入する数字は「0.0%」でよいと思っている。以前にも主張

しておいたが、参加する主要国が日本の省エネレベルに到達できた時には、日

本の削減目標を提示します、とでも言っておけばよい。それくらいの強引さと戦

略が必要だ。鳩山のあの大馬鹿な25%でも、誰もついて来なかったではないか。

それに日本のCO2排出量の世界に占める割合は、僅かに4%しかない。その日

本が突出して25%削減に努めても、世界全体で僅かの1%しか削減できない。

CO2の増加で世界が温暖化して地球の将来が危ない、と思っているのなら(真

実はそうではないが)、今最も多くのCO2を排出している国から更に多くの削減

を迫る事がもっとも大切な事ではないのか。次に2007年の世界のCO2排出量

の数字を示す。
       

2007年・世界のCO2排出量

NO.  国別    %      CO2排出量   
1、  中国   21%    60億7,120万トン
2、  米国   20%    57億6,930万トン
3、  EU     14%    39億2,640万トン
4、  露国     5%    15億8,740万トン
5、  印度     5%    13億2,400万トン
6、  日本     4%    12億3,630万トン
7、  加国     2%      5億7,290万トン
8、  韓国     2%      4億8,870万トン
9、  豪州     1%     3億9,630万トン
10,  伯国     1%      3億4,710万トン
11,  其他   25%    72億4,340万トン
     合計   100%    289億6,200万トン

                 

この数字でもわかる様に、中国、米国が排出削減に取り組まなければ、現在排

出しているCO2は全く減らないと思っても良い。ここでも米中2強なのである。米

中のG2が今後どんな取り組みをするのか、が最も注目されるべき事項なので

ある。日本の25%削減などはこの数字を見る限りにおいても、COP15でも霞

(かす)んでしまっていたのである。だから日本は25%なんぞと高い目標数字を

誇示するのではなく、中国のCO2削減に対してはもっともっときつく言い寄らなく

てはならなかったのである。そして日本が損をしないように、と言うよりも日本が

儲かるように「鳩山イニシアチブ」の展開を図らなければならなかったのである。

これでは無益な資金援助だけが残ってしまったと言っても過言では無い状況に

立ち至っているのである。明らかにCOP15は失敗だったのである。

                     

新聞案内人
2009年12月22日
安井 至 (独)製品評価技術基盤機構理事長、東大名誉教授

http://allatanys.jp/B001/cUGC0200018.html
              

COP15」は成功? 失敗? 200912220000

(1/4)
 デンマークコペンハーゲンで行われていた気候変動枠組条約に関する国連の会議、

COP15が終了した。20日の朝刊を見ると、主要国が提出した「コペンハーゲン合意」を「承

認」と表現したのが朝日新聞と読売新聞。「合意を了承」と表現したのが日本経済新聞であっ


た。一方、NHKは「合意文書に留意する」と放送した。

 「承認」「了承」「留意」などなど…と様々に訳された英語の表現は“take note”"であった。こ

れは、採択、署名、受諾などに比べ、かなり弱い表現である。そうせざるを得なかったのも、

この合意文書を作成したのが26ヶ国の主要国であり、その枠外に置かれた途上国の反発

が非常に強かったためだとされている。

 ニュースで見ると、中国代表が最後に主張していたことは、この文書は署名された

(singed)ものでもなく、公的に認められた(acceptedと言ったと思うが、adopted のつもりだ

った可能性はある)ものでもない、ということであった。要するに、主要26ヶ国の協議の中で、

中国としては、いやいや合意したという意思表明をしたかったのではないか、と思われる。

○“どこからみても満点”の国はない

 この合意文書は、それならどのような“成果”なのか。それは、どのような立場から見ても、め

ざましいものだとは言えないものだろうが、国や立場によって評価は異なるだろう。


 環境派の立場から見れば、こんな不十分な終わり方は許容できないだろう。国としても、ツ

バルなどの島嶼(とうしょ)諸国は、似た思いが強いことだろう。もっともツバルの沈下は、海

面上昇だけが原因だとは思えない要素が大きいと思うのだが。

 日本の産業界に近い立場から見れば、米国はもちろんのこと、中国やインドなどのBRICS

諸国も参画した形で、国際的に公平な枠組が新たに創設され、結果として京都議定書の継

続が阻止されることが最良の結果であったろう。

 中国から見れば、現在の京都議定書が継続され、法的拘束力も維持されることによって、

CDM(クリーン開発メカニズム)による巨額の資金が中国に流れ込む枠組が継続されること

が、最良の解だったと思われる。言い換えれば、今回のように、削減をしろ、資金提供をする

から情報を公開せよ、などと言われる筋合いはない、という立場だったろう。

(2/4)
 アフリカ諸国から見れば、巨額の途上国支援がコペンハーゲン合意に含まれているとは言

うものの、そもそも削減せよと言われても、もともと温室効果ガスの排出そのものが農業起源

のみで、その削減などは最初から無理だというのがこれらの国である。支援を受けるのなら

情報公開をせよと迫る先進国の提案は迷惑でしかない。そもそも、どうやってデータをとった

ら良いか分からないだろう。

 オバマ大統領にとってみれば、国内の共和党の上院議員の大多数と選挙を控えた民主党

の上院議員の一部が、自分の政策を支持してくれないという最近の状況では、これ以上いか

んともしがたかった。とても、厳しい削減目標などは出せかなった。とはいえ、最後の最後に、

主要国に影響力を行使できたのが良かった、といった自己評価なのではないだろうか。

○読めなかった途上国の頑強な反発

 デンマークは、最初から、一本化を諦めていた様子がないとは言えない。しかし、途上国か

らの先進国への反発がこれほど強いというところまで、読めていなかったのではないだろう

か。

 EUはどうだったのだろう。排出権市場を維持するため、さらには、加盟国への強制力を発

揮するために、強制力を伴う厳しい枠組が望ましいEUではあるが、最後まで、覚悟を決め協

調した行動をとった訳ではなかった。今の政治的な状況では、多くを望むのは無理という理

解だったのかもしれない。

 最後に日本にとってはどうだったろう。支援金額の積み増しと、25%削減という数値によっ

て、中国あたりから妥協を引き出すことを狙ったものと思われるが、結局、中国の態度は想

像以上に頑なで、結局、勝負にならなかった。

(3/4)
 日本が言い出したことの一つとされている2050年までに全世界での温室効果ガス排出量

を半減する、という国際公約が、途上国によって、いとも簡単に突き崩されたのは、予測され

ていたとはいえ、日本交渉団にとっては不本意だろう。

 結果的に、中国は半分ぐらい満足したようにも思えるが、他の国々の満足度は、最大でも

20~40%程度以下だったのではないだろうか。

 このような結果に終わることは、最初から想定されていただけに、関係者は、条約そのもの

の全面的な崩壊を免れただけで、ホッとしているのではないだろうか。これが20%の中身で

ある。

 さて、今後、どのような進展が見られるだろうか。

 楽観は全く許されない状況である。まず、国連の会議だけに、全会一致が大原則である。

190を超す国と地域が参加しているこの会議で、立場が全く違う各国の利害が一致するはず

はない。国連の会議は、どの国も平等に一票であるため、どうしても途上国に配慮した案を

作らざるを得ない。中国、インドなどの利害とも全く異なった利害を持つ途上国も多い。

○日本にできるのは資金援助だけなのか

 そのためには、まず、先進国が自らの利害を乗り越えて、合意を目指すべきなのだが、EU

排出権取引市場に対する期待が大きすぎる。米国では、国内産の石炭に多くを依存して

いるし、国内の保守勢力がそもそも温暖化を信じていない気配がある。日本は、自国の産業

保護色が強すぎる。

 となると、相違点を乗り越えたとしても、やれることは資金援助に限られるのだろうか。

 ただし、すべてを絶望的に考える必要はないようにも思える。なぜならば、本当に必要なこ

とは、やはり2050年に温室効果ガス50%削減といった長期目標の達成である。地球全体で

解決すべき問題は、気候変動だけではない。さらに上位の問題として、人口爆発を回避する

ということがある。そのためには、途上国の経済力が向上し、出生率が下がることが必要不

可欠である。

(4/4)
 温暖化と人口爆発とのリスクのバランスを考えると、環境派からは甘いという指摘を受ける

可能性はあるが、途上国に関しては、しばらくは現状からの継続を認め、2020年頃から、途

上国全体の温室効果ガスの排出が頭打ちになって、2030年頃からはかなり急速に減り始め

ることが最善のシナリオのように思える。

 ということは、2020年頃から、世界各国において、各個人の心の中で何かが本質的に変化

しはじめること。これが必須条件になるのではないだろうか。時間は確かにないが、全くない

わけではない。

○「付録1」に日本は何を書き込むか

 今回のコペンハーゲン合意によって、日本にとっては、短期的な問題として、文書の付録1

にどのような削減目標を書き込むかという問題がでてきてしまった。鳩山首相の25%削減案

をそのまま書くわけにも行かないだろう。

 中国、米国がどのような数値を書くか、こちらはすでにほぼ明らかになっており、25%を書

き込む条件は満たされていないことが明らかだからである。そうならない唯一の望みは、時

限だとされる来年の1月末までに、米国の上院が厳しい削減策の方向で固まることだが、果

たして可能性はどのぐらいあるのだろうか。難しいように思われる。

 最後に結論である。このCOP15は成功だったのか不成功だったのか。決して成功したとは

言えないが、現時点の世界情勢のもとでは、別の解がなかったことは明らかなので、不成功

だったと断定することもできない。

 ポジティブに考え、かつ、評価する以外に方法はないように思える。
http://allatanys.jp/B001/UGC020001820091222COK00450.html

(続く)