国慶節に思う。(51)

そして現在欧州が中心の市場となっている「クリーン開発メカニズム(CDM)」も、米国にも導

入されるかどうかが、注目の的となっているのである。そして排出枠の供給国となる中国の削

減目標があまりにも小さすぎる事が気がかりである。中国のあんな目標では、永久に地球温

暖化問題は解消されないし、このままで排出量取引が始まれば中国にだけ金が集まってしま

い、CO2は増え続け、中国の軍拡がますます進むこととなり日本はますます脅威にさらされ

る事となる。こんな事態を許してはならない。2010年の2月1日のコペンハーゲン協定の付属

書には、中国には『 2020年までに2007年比50%(半減)させる』('20年のCO2は'07年の半

分とする)くらいの目標を掲げさせるよう全世界から圧力を掛けさせる様、仕向けなければな

らないのである。何はともあれ、米国と中国が今後のCO2削減の中心となる事は間違いない

のであり、日本は全世界に向かって、米中にCO2を削減させるべく、働きかけなければなら

ないのである。然るに鳩山はどうか。

                 

ミスにつけ込んだ中国の勝利 200912240000
欧州“敗北”が映す排出量取引「G2」の台頭

2009年12月24日 木曜日  大竹 剛

 19日深夜2時から開かれた、欧州連合(EU)首脳の記者会見。壇上に揃って登った欧州理

事会議長を務めるスウェーデンのフレドリック・ラインフェルト首相と、欧州委員会のジョゼ・マ

ヌエル・ドゥラン・バローゾ委員長は、交渉結果に不満をぶちまけた。

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深夜2時、会見に挑む欧州理事会議長スウェーデンのラインフェルト首相(左)と欧州委員会バローゾ委員長

 「正直、パーフェクトな合意とは言い難い」(ラインフェルト首相)

 「ないよりはましだが、熱望していたものとはかけ離れている」(バローゾ委員長)

 それは、見方を変えればEUの敗北宣言ともとれる会見だった。ポスト京都の新たな枠組

み作りを目指したCOP15(第15回気候変動枠組み条約締結国会議)で、EUは思惑通りの指

導力を発揮できなかったことを、自ら認めたのである。

「2050年までに排出量半減」も削除される想定外

 EUは、京都議定書の下で、温暖化ガスの削減目標を定めた国内法を整備している唯一の

国・地域である。


 2005年にEU域内に導入した排出量取引は急成長を遂げ、バローゾ委員長も当初は、


「EUの排出量取引制度は世界の炭素市場のバックボーンになっている」と発言するなど、温

暖化対策の先駆者として交渉をリードすることに自信を表明していた。


 だが、結果はEUが望んだ合意とはほど遠い内容となった。

 法的拘束力のある合意に達しないのは開催前から確実視されていた。とはいえ、削減目標

が全く明記されず、しかも、合意書の草案段階にあった2050年まで世界全体の排出量を半

減するという文言まで削除される事態は、明らかに想定外だったと言ってよい。

 COP15の開催地であるデンマークは、EU加盟国の中でも特に環境意識の高いことでも知

られる。電力の約2割を風力発電で賄い、世界最大の風力発電機メーカーもある。

 デンマークCOP15を成功させ、京都議定書に代わる新たな枠組み作りを主導したという

実績を残せれば、温暖化対策のリーダーとしてのEUの地位はさらに高まったかもしれない。

首脳級会合の直前に議長を辞任する異常事態

 だが、中国をはじめとする発展途上国は、議長国デンマークの議事進行の不手際に付け

込み、EUを中心とする先進国側の主張に激しく反発。議論は停滞し、デンマークのヘデゴー

気候変動・エネルギー相が首脳級会合の直前に議長を辞任するという事態に発展した。

 後を引き継いだラスムセン首相も事態を収拾できず、結局、膠着状態を打開するきっかけ

を作ったのは米オバマ大統領を中心とする主要国首脳会談だった。

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デンマークのヘデゴー気候変動・エネルギー相(中央)がCOP15議長を辞任する直前に開催した全体会議

 「議長は額に汗するほど、会議の混乱に動揺していた。京都議定書でEUが果たした役割と

は大違いだ」。EUの首脳会見に出席していた、あるデンマークのベテラン記者は、吐き捨て

るように悔しがった。

京都議定書ではEUが議論をリード

 確かに、京都議定書を採択した1997年当時、EUは交渉をリードした。交渉は事実上、日

米欧の3極を軸に進み、その中でもEUの存在感は突出していた。


 COP15で世界最大の排出国として交渉を有利に運んだ中国も、温暖化の被害者として多

額の資金援助を要求し続けたG77のアフリカ諸国も、京都では脇役に過ぎなかった。

(Photo)
G77の代表を務めたスーダンのディアピィング氏

 京都議定書でEUは巧みな交渉術を発揮した。当初、2012年までの削減目標(1990年比)

として15%という極めて高い数字を掲げ、日本が掲げていた2.5%、米国のゼロ%を圧倒し、

日米に揺さぶりをかけた。

 その背景には、旧東ドイツで多くの工場が倒産したことや、英国で石炭火力発電所から天

然ガス火力発電所への転換が進んだこと、東欧諸国のEU加盟が控えていたことなどから、

温暖化ガスの削減が比較的容易だというしたたかな計算があった。

 突出した削減目標は「EUバブル」とも批判されたが、EUの主張によって流れはできた。

 米国も、来日したゴア副大統領(当時)の采配で目標を引き上げることに同意。最終的に

EUは、手のひらを返すように削減目標を8%まで引き下げ、削減目標は日米欧でそれぞれ

6、7、8%に決着した。

 京都議定書の枠組み作りでは、EUは日米に高い削減目標を飲ませることに成功したので

ある。

排出量取引の最初の果実も欧州に

 京都議定書でEUが勝ち得たのは、政治的なリーダーシップだけではない。

 京都議定書の採択後、米国が京都議定書から離脱するという不測の事態も起きたが、米

国が温暖化対策から後退するのを尻目に、EUは経済的な果実も貪欲に取りに行った。その

仕掛けの1つが、排出量取引のEU域内への導入だった。

 現在、排出量取引の市場規模は59億トン、金額にして626億ユーロ(約8兆円)にも達し、そ

の約7割をEUが域内企業に発行している排出枠が占める(調査会社ポイントカーボン調べ)。

 世界最大の取引市場は英ロンドンにあり、ロンドンには排出枠を売買する金融機関やコン

サルティング会社、会計事務所、調査会社など関連のサービス会社が集積している。

 EUは温暖化対策を巡る政治的な駆け引きだけではなく、温暖化ビジネスの舞台において

も、世界の中心となったのである。

米国の排出量取引市場はEUの3倍に

 だが、COP15におけるEUの指導力欠如は、世界の温暖化対策を巡る力関係が、根本的

に変化しはじめたことを意味する。

 その現実は、データを見れば一目瞭然だ。

(Image)
排出量は中国が世界最大
■CO2排出量(エネルギー関連)の国・地域別割合(2007年)

 世界の温暖化ガス排出量のうち、米国、中国はそれぞれ約2割を占めている。一方、EU

は14%
。全世界が協力して温暖化ガスの削減に取り組むことを目指す以上、ポスト京都

の枠組みは、米国と中国を軸に動かざるを得ない。COP15の交渉の行方が米中に左右さ

れたのは、ある意味当然だった。

 さらに、EUがリードしてきた排出量取引も、ポスト京都では米中の取り組みがカギとなる。

 現在、米国では、削減目標とともに排出量取引の導入を定めた法案が議会を通過するか

どうかが焦点になっている。米国の排出量取引市場は、潜在的に欧州の2~3倍はあるとさ

れ、米国内に排出量取引が本格導入されればインパクトは極めて大きい。

中国は排出枠“最大の産地”


 一方、中国は市場で取引される排出枠の“最大の産地”だ。


 京都議定書は、企業が発展途上国の温暖化ガス削減プロジェクトに投資することで、その

見返りとして排出枠を取得できる「クリーン開発メカニズム(CDM)」という枠組みを用意して

いる。そのCDMが、世界で最も適用されているのが中国である。

 昨年、CDMで発行された排出枠に占める“中国産”の割合は、実に約8割に達した。中国が

世界最大の温暖化ガスの排出国であるということは、中国が排出枠の産地としても大きな

役割を果たし続けることを意味する。

 これまで欧州は、CDMで発行された排出枠の約8割を購入する最大の買い手だった。つま

り、京都議定書が定めた排出量取引の枠組みは、事実上、EUの排出量取引市制度がなけ

れば成り立たなかった。

 だが、米国に排出量取引が導入されれば、排出枠の最大の産地である中国と、その最大

の買い手である米国という構図ができあがるかもしれない。それは、米中という「G2」を中心

に動く、世界経済の枠組みそのものでもある。

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メディアセンターで米オバマ大統領の演説を聞く海外メディア

市場はCOP15の結果に失望

 COP15閉幕後、12月21日の月曜日。欧州では、排出枠の価格が金曜日の終値と比べて

約9%も下落した。具体的な削減目標などが盛り込まれず、市場関係者の間にポスト京都の

枠組みに不透明感が増したことが一因だ。

 来年11月にメキシコで開かれるCOP16に向けて、米中を軸に新たな秩序が形成されなけ

れば、これまでEUが育ててきた排出量取引市場は失速し、温暖化ガス削減に有効な手段の

1つを失いかねない。

 EUの指導力に陰りが見えた今、ポスト京都の成否は米中の動向にかかっている。

エコ亡国――「地球のため」で日本を潰すな
 (
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20091120/210270/

鳩山由紀夫首相は就任直後の国連演説で「CO2排出量の1990年比25%削減」を明言、そ

の達成目標を2020年とした。環境技術のリーダーとして、世界のトップを走り続けることは日

本にとって悪いことではない。しかし、省エネが進んだ日本が破格のコストをかけることに経

済、政治、技術的な合理性はあるのか。目標達成のため“削減後進国”に支払うことになりそ

うな排出権の対価を含む国民負担に日本経済は耐えられるのか。多面的な議論を通じて「エ

コロジー=正義」という単純な構図を検証する。

大竹 剛(おおたけ つよし)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20091222/211820/
(続く)