国慶節に思う。(67)

以前にIPCCとは次のように説明したことがある。

IPCCとは、Intergovernmental Panel on Climate Change (気候変動に関する政府間パネル)で、国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構であり、国連環境計画United Nations Environment Programme)と国連の世界気象機関(World Meteorological Organization)が1988年に共同で設立した学術的な機関である。(Wikipediaより)
  
地球温暖化問題がその発端ではあるが、それでは地球温暖化問題はどのよう

にして提起されてきたのか。

http://ameblo.jp/tetsuyuu/entry-10308191320.html

上記URLに2009-0727の日付で掲載されている「地球温暖化問題を如何に世

界政治と経済の歴史的ながれの中に位置づけるか
」と言う[アラスカ大学国

際北極圏研究センター・赤祖父俊一氏
]の講演記録を参照しながら、以下述

べる。

  
これは現在このブログが参照している「正論」2009年12月号の「地球温暖化

原因は炭酸ガスにあらず-「25%削減」公約の愚かしさ」と言う赤祖父俊一博士

(アラスカ大学国際北極圏研究センター名誉教授)の論文と同じ類のものと考え

てもよかろう。

  
事の発端は、1980年代の英国にさかのぼる。当時の英国首相マーガレット・

サッチャーは「英国の将来は原子力発電なしには不可能」との考えに達してい

た。しかし英国民の猛烈な反対で原子力発電の導入が出来なかった。ちょうど

その時、極めて粗雑な地球温暖化のコンピューター・シミュレーションの結果が

発表された。それによるとCO2を削減しないと2000年以降、大災害、大異変が

起きると提起されていた。

  
これを知ったサッチャーは、これは使えるとほくそ笑んだかどうかは知らないが、

地球温暖化問題で英国民を説得しようと動き出した。すなわち、彼女は自国民

にCO2による地球温暖化を選ぶか、CO2を排出しない原子力発電を選ぶかを

迫ったのであった。そして「気候変動に関する政府間パネルIPCC」の設立

を促したのである。そして気候変動問題を更に研究するためにハドレー気候研

究センターを設置した。当時マイナーな気候学は一躍脚光を浴びることとなる。

CO2が温暖化の原因因子のひとつではあったため、IPCCはそのためその誕生

から原子力に関係し、「一週間後の天気さえ予報できないのに、どうして世界の

終焉が予測できるのか」と言う疑問は最初からあったが、IPCCはその発足から

して大災害、大異変を声高に叫ばなければならない運命を持っていたことになる。

  
そして冷戦の終末で大きなニュースに飢えていたマスコミもこぞって、CO2問題

を取り上げた。そのため、いつの間にかCO2が地球温暖化の極悪人に祭り上

げられてしまった。

  
そして今度はアメリカのオバマが登場する。オバマ石油輸入の大赤字を何

とか止めなければならない立場だ。そして更に石油を算出する中東地域は、まこ

とに不安定だし、オバマとしては余り気に入ってはいない。それにしてもアメリカ

にとっても電気エネルギーはますます重要となる。国を挙げて電気自動車を奨

励している。石油に代わるエネルギー源として原子力がクローズアップされるの

は必然であった。更にアメリカには車に変わる柱となる産業を探さなければな

らない状況でもあった。1760年代から1830年代にわたって進行した英国の産業

革命はアメリカにも伝播した。しかし英国の織物産業は米国に奪われ、米国は

日本に奪われ、日本は中国に奪われた。製鉄産業、自動車産業然り、しかし金

融産業で米国は失敗した。今度はどこにも奪われたくない産業を探さなくてはな

らない。そしてオバマ原子力産業を選んだ。アメリカは石炭のかなりの産出国

である。アメリカの石炭はまだ数百年分はあると言う。しかし石炭では産業は活

気付かない。

  
アメリカでは、スリーマイル島原子力発電所の事故以来、一基もの原子力

電所を作っていない。原子力発電を推進しようものなら、オバマは、大多数の国

民から大反対を受ける事を知っていた。だからオバマサッチャーと同じように、

CO2を排出しない原子力発電で現在の生活を進歩させよう、さもなくば、地球温

暖化や地球大災害を防ぐために現在の生活水準を下げるか、と投げかけた。

それがCO2を排出しない電気自動車の推奨なのである。これが、いわゆる

Green New Deal」政策なのである。

(続く)