番外編・プリウス急加速問題(20)

p36.7トヨタ車の誤作動に宇宙線が関与?:チップ小型化で耐放射性が減少

WIRED VISION   2010年3月30日(火)12:28

Chuck Squatriglia

(写真・PRIUS) 画像は別の英文記事より

トヨタの意図しない急加速の問題は、フロアマットの位置やアクセルペダルの形から、車のソ

フトウェアの欠陥、[運転手の誤動作(英文記事)まで、]あらゆるものが可能性のある原因とし

て挙げられているが、もうひとつ原因があるかもしれない。宇宙線だ。


これは、読者が思うよりは、とんでもないとは言えない発想だ。

宇宙線によって電子製品のチップが破壊される場合があることはすでに知られている。

『LiveScience』の記事によると、一部の科学者はこのことが、意図しない急加速などの、トヨ

タ車の持ち主が訴えている問題の一因である可能性があると考えているという。

トヨタでは昨年11月以来、770万台をリコールし、捜査官たちは事態の解明に努めているとこ

ろだ。

『LiveScience』によると、トヨタのチップ、プロセッサー、ソフトウェアの設計によって、これら

の部品が宇宙線等の放射の影響を特に受けやすくなった可能性があると示唆する情報を受

けて以来、連邦当局ではその可能性を真剣に検討しているという。[自動車部品の電子化に

関して、トヨタが業界をリードしており、宇宙線や電磁波に対して他社より脆弱になっている可

能性があるという指摘があったという]


バンクーバーにあるサイクロトロン(粒子加速器)施設『TRIUMF』の研究者であるEwart

Blackmore氏は『LiveScience』に対し、「確かに、放射線トヨタの問題の原因となる可能性

はある」と話している。[TRIUMFには世界最大のサイクロトロンがあり、各社製品への放射線

の影響についての実験も行なっている]


宇宙線の問題は、軍や航空宇宙の分野では広範にわたって研究されてきたが、自動車メー

カーによる調査はほとんど行なわれていない、と『LiveScience』は報告している。[米Intel

は、宇宙・軍事目的に必要な特別製の耐放射線プロセッサーを開発している(日本語版記

事)]


バンダービルド大学の宇宙防衛電子工学研究所の工学担当責任者を務めるLloyd W.

Massengill教授は、『LiveScience』に対して、「われわれの生活はほとんどなんでも、デジタ

ル情報処理に依存するようになってきている」と話している。「われわれが取り組んでいるの

は、1ビットの重要な情報が、わずか1000個ほどの電子を使って保存されているような事例

だ。このような微小な電荷量は、高エネルギーの宇宙線粒子1つによって簡単に覆され、ビッ

トの破壊が起きる可能性がある」


[LiveScienceの記事によると、Massengill教授は1987年から、宇宙線による電子製品への

影響を研究してきた人物。同教授によると、Field-programmable circuit(プログラミングによ

って機能が変更可能な回路)においては、このリスクは特に高まるという。単にデータを保存し

ているだけではなく、基本機能にかかわってくるからだ。


チップが小型化されれば、それだけ情報を蓄積する電荷も小さくてすむが、電圧が低くなると

いうことは、すなわち低レベルの環境放射線に対するチップの抵抗力が弱くなることをも意味

している(日本語版記事)


更新:米高速道路交通安全局(NHTSA)の要請を受けて米航空宇宙局(NASA)と全米科学ア

カデミー(NASA)が事故原因の調査に乗り出すことが30日、明らかになった]

WIRED NEWS 原文(English)
http://news.goo.ne.jp/article/wiredvision/business/2010news1-22245.html

   
  
ちょっと古い記事だが、チップの回路が放射線でやられてしまうかもしれないと言う記事を見

つけた。もしそうであれば、トヨタに限らずGMやVWの車でも同じことが起こらないとおかしい

のではないか。トヨタのチップだけが放射線に弱いと言うことでもないであろう。

  

p36.8放射線にやられるマイクロチップ

1998年11月11日
Kristen Philipkoski 1998年11月11日

マイクロチップはどんどん小さくなりつつある。が、縮小していくそのサイズには、大きな代償

が伴っている。


超小型の回路は放射線の干渉を受けやすく、携帯電話の音とびといった単純なトラブルばか

りか、はるかに深刻な故障も引き起こす可能性を秘めていると、『ニュー・サイエンティスト』誌

が7日(米国時間)報じた。


チップが小型化されれば、それだけ情報を蓄積する電荷も小さくてすむ。しかし、電圧が低く

なるということは、すなわち低レベルの環境放射線に対するチップの抵抗力が弱くなることを

も意味している。


「残念なことに、われわれがより小さなチップを手にする代償として、ひとつひとつ(のチップ)

にかかる電荷や電圧が少なくなればなるほど、チップがちょっとした撹乱要因の影響を受け

やすくなるという問題が出てくる」と、米テキサス・インスツルメンツ(TI)社の内蔵メモリー・アナ

ログ信頼性部門主任、ロバート・バウマン氏は語る。


放射線による干渉は、大気中の中性子から、あるいはチップの組み立てに用いられる物質

から発生する。たとえば、鉛の「はんだ」や、二酸化珪素のパッケージ、エッチングに使うリン

酸といった物質はすべて、アルファ粒子を放射する。


「こうした問題は一筋縄では解決できない。物質工学の専門家の力を借りて、機器が含む放

射性不純物を確実に減らしていくことが必要だ」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校工学・

応用科学部の電気工学科教授である、チャンド・ビズワナザン氏は述べる。


現在ほとんどのパソコンに使用されているのは、大きさが330250ナノメートルトランジスタ

ーを搭載したマイクロチップだ。次世代のマイクロプロセッサーでは、これが180ナノメートル

以下になるので、いっそう干渉の影響を受けやすくなる。1ナノメートルは1メートルの10億分

の1。これはおおよそ人間の髪の太さの100分の1、あるいは細菌の細胞1個分の大きさにあ

たる。


なかでももっとも深刻な問題に直面しそうなのが、航空機用のシステムだ。干渉を受ける危険

性は、高度とともに増加する。


「高度1万メートルといった上空へ行くと、宇宙線の影響が強くなる」と、ビズワナザン教授は

言う。


TI社では、もう10年近くもこの問題に取り組んでいる。


「システム設計をする際には、それがメモリーであろうと、高性能デジタル・シグナル・プロセッ

サーであろうと、このこと(放射線の問題)を常に念頭におくことが肝心だ。問題の1つ1つは、

決して克服できないものではないのだから」と、バウマン氏は語る。


「常に解決策はある。問題は、解決する場合のコストはいくらか、解決しない場合のコストは

どのくらいか、ということだ。リスクの大きさは、その製品の用途と、エラーをどの程度容認で

きるかによって違ってくる。こういった要素を計算に入れねばならない。エラーが出ないように

システムを設計するというのは、その中で最高のケースだ」


解決策の1つとして、シールドを使って想定されるすべての放射線から機器を保護するという

手が考えられる。しかし、シールドによっては厚さが3メートルも必要になってしまうので、実用

にならないという場合も出てくるだろう。機器を地下に置くやり方もある、とバウマン氏は示唆

する。


また、設計者が放射線の影響に対してより強いチップを作るのも1つの方法だ、とビズワナザ

ン教授は言う。


最後にバウマン氏はこう語った。「いちばん困るのは、この問題が核物理学や工学その他、

多岐に渡る学問分野の知識を必要とするものであるため、ほとんどの人にはこれが問題で

あることすらはっきりわからないという点だ」

WIRED NEWS 原文(English)
http://wiredvision.jp/archives/199811/1998111106.html

  

4月19日の当ブログでは、「2004~09年ではフォードの「意図しない加速」のほうがトヨタ

りも多い」 ことを伝えている。ならば、トヨタでなくフォードを証人喚問すべきなのである。しか

し米下院も上院もそんなことはしていない。「トヨタが悪い」の一点張りである。だからオバマ

トヨタを潰そうとしていると言ったのであり、トヨタのハイブリッドのソフトウェアなどの秘密を

盗もうとしているとも言ったのである。

(続く)