p95トヨタ、EV開発本腰 米ベンチャーのテスラと提携
産経新聞 2010年5月22日(土)08:00
トヨタ自動車は21日、米電気自動車(EV)ベンチャー「テスラ・モーターズ」とEV
開発で業務提携することに基本合意したと発表した。トヨタは総額5千万ドル(約
45億円)を出資しテスラ株を取得。2012年に米国市場でのEV発売を目指す。ト
ヨタは「プリウス」などガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車
(HV)に力を入れる一方、EV戦略では出遅れていた。高級EVの販売で評価さ
れているテスラと組むことで、EV戦略を本格化させたい考えだ。
トヨタが期待する最大の提携効果はテスラの電池関連技術だ。EVの最大の
弱点は1回の充電による走行可能距離が短いことだが、テスラが開発したスポ
ーツカーのEV「ロードスター」の走行可能距離は380キロ。トヨタは、民生用
の電池をつなぎ合わせて大容量にするテスラの製造方法を取り入れたい考えだ。
テスラとの提携に乗り出した背景には、EV戦略の出遅れ感がある。トヨタはE
Vが本格普及するまではHVが主流となると判断。これに対して世界の自動車
大手では、日産自動車が10年12月に日米欧でEV「リーフ」を発売。独ダイムラ
ーも12年、独フォルクスワーゲン(VW)も13年に欧州などでEVを発売する。トヨ
タにとってもEVへの本格参入は避けては通れない選択となっていた。
■渡りに船
トヨタにとって“渡りに船”だったのは、テスラが今年4月に閉鎖したトヨタと米自
動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁工場「NUMMI(ヌーミー)」(カリ
フォルニア州)の一部を購入し、12年をめどにEVの生産を始めるということだ。
トヨタがヌーミーを閉鎖した際には従業員約4700人のほぼ全員を解雇。地元
経済への悪影響から不満の矛先がトヨタに向かうことが懸念されていた。
「われわれとともに培った25年間のDNAが、未来の産業に引き継がれること
をうれしく思っている」。豊田章男社長は20日の米国での会見でこう語り、ヌー
ミー“再開”を歓迎した。
テスラによると、来年にはヌーミーの元従業員を1千人程度雇用。会見には同
州のシュワルツェネッガー知事も同席し、ヌーミーの元従業員の雇用につながる
提携を評価した。
■「刺激受けたい」
一方、トヨタは大規模リコール(回収・無償修理)問題での対応の遅さなどで「大
企業病」ともいわれてきた。今回は、そんな中でのベンチャー企業との提携となる。
豊田社長は1カ月前、テスラのEVを試乗し「未来の風を感じた」といい、テスラ
のチャレンジ精神や意思決定のスピード、柔軟性に魅力を感じたという。
提携理由について、豊田社長は「大きな会社になっていくことを求めるよりもベ
ンチャー企業に刺激を受けたい」と強調。停滞感のある社内に風穴を開ける好
機とみているようで、自動車アナリストは「創業家出身の豊田社長だから決断で
きた」とも指摘している。
ライバルのホンダや日産と比べ、業績回復の遅れは鮮明。証券アナリストは
「日産、ホンダはリストラを終えて次の投資に移っているが、トヨタはリコール問題
もあり危機対応の途中だ。1周遅れという印象」と厳しい。大量生産・大量販売に
よる規模のメリットを追求してきたトヨタが、「シリコンバレー発」のベンチャー企
業の手法をどれだけ取り入れられるかが問われている。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/industry/snk20100522054.html
果たしてこの提携がトヨタを高みにのし上げる起爆剤となり得るものか、今後の
展開に注目する必要がある。トヨタ自動車と豊田章男社長の今後の活躍と発展
を期待したいものである。
「エコカー大戦争、世界の自動車業界関係者もびっくり仰天!トヨタと米電気自動車ベンチャー・テスラ提携の真実」( http://diamond.jp/articles/-/8232 )
には、テスラとトヨタにとってのメリットなどが詳細に述べられているので是非参
照願いたいが、次に概略しよう。
先ずトヨタにとってのメリット
第一は、NUMMIの雇用が一部でも確保される事だ。
(1)NUMMI(ヌーミー)の一部をテスラが買収し、電気自動車の生産を開始する。
そのためある程度の雇用が確保される事だ。NUMMIは、ご存知のように、4月
1日で閉鎖され従業員は全員解雇されている(3/19,NO.4も参照のとこ)。シュワ
ルツネッガー、カルフォルニア州知事にとっても雇用が確保される事は、とても
ラッキーだったに違いない。ただでさえ向かい風の強いトヨタにとっても、これで
地元の反発も和らぐと言うものである。しかし生産開始時期は、未定である。た
だテスラのモデルSの量産開始は、2012年と言っており、工場予定地を物色中
だったようだ。
第二は、トヨタのイメージアップが図れることである。
(2)トヨタはリコール問題では、米国政府をはじめ米国全土からたたきにたたか
れて、奈落の底に落ちてしまった。この「トヨタ叩き」は一段落したとはいえ、現在
は集団訴訟局面へ入っており別次元の「トヨタ叩き」が始まっているのである。そ
のため豊田章男社長としては、起死回生の逆転打でも打ちたかったのであろう。
米国民に対して少しはポジティブなイメージを送る事が出来たのであろう。
第三は、電気自動車で業界をリードできるかもしれないと思えたことである。
(3)電気自動車はガソリンの代わりに電気を注入(充電)して、走ることになる。そ
こでガソリンスタンドの替わりに「充電スタンド」があちこちに必要となる。しかもリ
ーズナブルな時間で充電が可能とならなければならない。そのためには、どんな
「充電インフラ(設備と仕組み)」が最適かを決めなければならない。この充電シ
ステムは、しかも、世界で通用させなければならない。即ち、今の流行言葉の
「世界標準」をいかにして勝ち取るか、が重要なのである。そのためには電気自
動車の先端を行く米国ベンチャーのテスラと手を組めたと言う事は、トヨタにとっ
てかなりのメリットとなる筈である。
第四には、これは小生の考えだが、電気自動車のバッテリーのあり方に一矢
(いっし)を報いる事が出来るのではないか、とも思えるのである。
(4)テスラは現在パソコンなどに使われている一般の民生用のバッテリーを6,831
個も束ねて電気自動車の動力源たる蓄電池として使っている。このバッテリーは
日本製と言われているが、それらを沢山束ねてシステム化する方法には秀でた
ものがあると言われている。そこら辺りから、自動車用のバッテリーのあり方に
ある種の示唆を与えられるのではないか、とも思えるのである。しかしその重量
は450kgもある。大の大人が10人近くも余分に載っている勘定にもなるのである。
(続く)