岡田監督に物申す。(20)

2011年3月11日の14時46分に発生した東日本巨大地震により、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。と同時にいまだ行方不明の方々の一刻も早い救出をお祈り申し上げます。そして被災された方々のいち早くの復興を祈念致しております。

福島第1、第2原発の安定に邁進されている方々のご検討をお祈り申し上げます。

さて、本ブログは、2010年10月2日に終了した「岡田監督に物申す。(19)」の続きとして、綴ったものであることをご承知願う。

さてザッケローニ監督は、2011年1月29日からのAFCアジア杯カタール大会を制覇して、彼なりの日本チームのマネジメントをやり始めている。まあザッケローニは日本代表チームのサッカーの歯車をよい方向へ回転させ始めたことは確かである。この話については、2011年2月1日からの「ドーハの歓喜」を参照願いたい。ここでは今一度「岡田監督に物申す」に戻ってみたい。

先ずは岡田(前)監督の「ベスト4」発言から。外国の事情通からは、この「ベスト4」発言は「調子に乗りすぎている」と思われていたのである。
次の記事は、2010/9/22のNO.9で言及したものであり、一寸どころかかなり古いが、先ずはその記事を参照願う。

-10岡田監督はバブリー?「ベスト4」発言に対する英語な皮肉――JAPANなニュース 
GOOニュース  2009年6月10日(水)10:30

■本日の言葉「bubbly」(泡だらけ、浮き足立って、お調子者)■

英語メディアが伝える日本をご紹介するこの水曜コラム、今回は6日夜の大興奮「岡田ジャ

パン、ワールドカップ出場決定」について英語メディアが発した皮肉タラタラな慣用句のもろ

もろについてです。(gooニュース 加藤祐子

○バブリーはバブリーでも

自分がサッカーについて書くのを一番驚いているのは自分、というくらいサッカーについて

も詳しくないのですが、イングランドにはそこそこご縁があるといういきさつの視点からす

ると、「まあ確かに、欧州の人は日本サッカーをこう見ているんだよね……」というそのもの

ズバリな記事を見つけてしまいました。

ロイター通信のこちら↓は、1992年から東京在住のスポーツ特派員によるもの。見出しから

していきなり「日本の岡田監督はバブリーすぎるのか?」ですから。

http://blogs.reuters.com/japan/2009/06/08/japan-coach-okada-too-bubbly/

わざと「バブリー」とカタカナにして誤解を誘ってみましたが、ロイターのアラステア・ヒマー

特派員は別に、岡田武史監督がキンキラ成金趣味で六本木アマンド前の交差点で一万円

札ふりかざしてタクシー拾っているジュリアナ常連だ——と言いたくて「バブリー」と書いた

わけではありません。

そもそも和製英語の「バブリー」は「バブル経済」からきていて、この「バブル経済」は

「bubble(泡)」のようなバカ景気という意味。そしてロイター特派員が使った「bubbly」は「泡

だらけの」という形容詞。それでもなお、岡田監督が泡を吹いているとかそういう意味では

なく、泡がぶくぶくピチパチ浮き立つように軽いというか浮き足立っているというか、日本

全国1億2000万人のサッカーファンを敵に回すようなことを言いますが、「お調子者」とか

調子にのってる」とかそういうことを言われてしまったわけです。

英語でシャンペンのことを俗語で「bubbly(バブリー)」と呼んだりしますし、いつもキャッキャ

キャッキャと箸が転んでもおかしい年頃の娘さんのことを「she's a bubbly girl(バブリーな娘

さんだね)」と言ったりします。泡風呂のことは「bubble bath」です。まあつまり、そういうよう

な関連語がたくさんある言葉で、わが日本代表の監督は評されてしまったわけです。

なぜかというと、ワールドカップ出場決定後の記者会見で岡田監督が「ベスト4に入ること

に向かって闘志を出していきたい
」と発言したから。ベスト4に「向かって闘志を出してい

きたい」という前向き姿勢は戦うからには当然と、私個人は思いますが、これが「ベスト4に

入ると公言
」となって伝言ゲーム的に伝わってしまったからでしょうか、ロイター記者に「お

いおい、そこまで言うか」的な記事を書かせてしまったのは。

記事は、そんなことを言った岡田監督は実はタシケントからの帰国フライトの中でお祝いし

すぎたのかもしれない(celebrated too much)、つまりは酒を飲み過ぎたんじゃないか?

——と、皮肉たらたら(お祝いで飲む酒と言えばシャンペン=bubbly、にもひっかけている

のかもしれません。上手いな)。考え過ぎかもしれませんが、ああまたここにも例の「酒に飲

まれる日本人」ステレオタイプが……↓。
http://news.goo.ne.jp/article/newsengw/entertainment/newsengw-20090424-01.html

○欧州は眠れているか

ではこれがことさらに不愉快な記事かというとそうでもなく、英語比喩や慣用句をたくさん

使っていて面白いので、こうしてご紹介するわけです。たとえば、「岡田はベスト4入りする

と発言したが、スペイン代表やイングランド代表の監督が心配で眠れずにいるとは、とても

思えないけどね」というくだりは「losing much sleep」で、これは「lose sleep」の変形。直訳

すれば「睡眠を失う」で、意訳すれば「眠れない、不眠」。「何かが気になって眠れない」とい

う状態を「I'm losing my sleep because I'm so worried about なにそれ」と言います。

また日本がなぜワールドカップのベスト4にこだわるかという解説で、それは2002年の日韓

共催大会で韓国が日本をさしおいてアジア初のベスト4入りを果たしてしまったからだと。

以来、「日本人はずっとこのことを気にしていた(The Japanese have had a bit of a bee in

their bonnet)」のだと。この「have a bee in 誰それのbonnet」という慣用句は、けっこうよく

使われるもので、直訳すれば「かぶっている帽子の中にハチが入ってしまった」状態。つま

りは「とっても気がかり」という意味。日本語で「五月蠅」と書いて「うるさい」と読ませるのと

発想が少し似ています。

「韓国がアジア初のベスト4を果たしてしまって日本のお株を奪った」というくだりの「お株を

奪った」という意味の慣用句は「stole their thunder」。直訳は「誰それの雷を盗んだ」で、こ

れもよく使います。

○眉が上がったり目を回してみたり

そしてさらに、岡田監督は(2002年韓国代表の監督だった)ヒディンク監督とは器が違うの

だし(Okada is no Guus Hiddink)、そもそもアジアから4~5カ国も本戦出場できるいまの

仕組みで日本が出場できないわけもないのだから、岡田監督のベスト4発言に「人々は眉

をあげたし、日本選手たちには不要なプレッシャーを与えたかもしれない」と結んでいます。

この「眉をあげた」と訳してみたここは「raised a few eyebrows(何人かの眉がつりあ

がった)」で、「raise eyebrows」という表現がもとになっています。

そしてこれは英語では本当によく使う表現で、欧米人は本当によくやる表情なのですが、

日本人はどうでしょう。単なる驚きではなく、ちょっといぶかしげな感じで「ええ?」という風に

目を見開きそれに伴って眉(eyebrow)が上にあがる(raise)表情。日本人もしますか?

自分も日本人なのになぜこんなことを聞くかというと、かつて「そういう表情は日本人はしな

いものだ」と断定されたことがあったからで(しかも日本人の私が現にそういう表情をしてい

たのに)。それはやはり英語表現ではよく使い、欧米人は本当によくやる表情で「roll 誰そ

れの eyes」 。何かに呆れて辟易したとき、目をぐるりと回して(主に上向きに左右ぐるり

と)「やれやれ」と表現したいときに使うのですが……。これがそのままでは日本語に訳せ

ないということは、やはり日本人のする表情ではないのですね。やれやれ(目をぐるり)。

ちなみにサッカーに詳しくない私がこういうことを書くのもあれなのですが、サッカー好きの

イングランド人と「なぜ日本は得点力がないのか」について酒を飲みながら話をしたところ、

その人は私がこういうコラムを書いているのを知っているのでこんなことを言っていました。

「日本人が英会話が苦手だと言われるのと同じじゃないかな。全員がそうだというわけじゃ

ないけど、文法的に正確できちんとした構文が整った文章をまず頭の中で組み立ててから

でないと口にできない、そういう日本人が多い気がする。意味が伝わればいいんだからと

もかくしゃべろう、とは思わないというか。ネイティブはそんなこといちいち気にしないし、み

んなけっこう間違いながらでもどんどんしゃべるよね。それと似ていて、欧州や南米のプレ

イヤーはここぞという時はともかくひたすらゴールに向かって打っていくけど、日本のプレイ

ヤーはきちんとしたフォーメーションからきちんとしたパスコースが見えないとゴールに打た

ないような気がするよ。印象だけどね」

That's just my impression.

◇本日の言葉いろいろ
・bubbly=ぶくぶく、ピチパチ、キャッキャキャッキャ、お調子者
・loose sleep=心配で眠れない
・celebrate=お祝いする
・bee in the bonnet=とっても気がかり
・steal their thunder=お株を奪う
・raise one's eyebrows=びっくり怪訝そうに眉を上げる
・roll one's eyes=やれやれと辟易して目をぐるりと回す (「目をぎょろぎょろさせる」という訳はちょっと違うんじゃないかなあ…とずっと思ってます)

◇goo辞書でも読める「ニュースな英語」はこちら
http://dictionary.goo.ne.jp/study/newsword/archives/200906.html

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◇筆者について…加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英

語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪し

い関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を

経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュー

ス編集者。米大統領選コラム、「オバマのアメリカ」コラム、フィナンシャル・タイムズ翻訳も

担当。英語屋のニュース屋。

http://news.goo.ne.jp/article/newsengw/life/newsengw-20090610-01.html

http://news.goo.ne.jp/search/article/?MT=%A5%B3%A5%E9%A5%E0%A1%D6%C5%EC%B5%FE%A4%AB%A4%E9%B8%AB%A4%EB%A5%AA%A5%D0%A5%DE%A4%CE%A5%A2%A5%E1%A5%EA%A5%AB%A1%D7&IE=EUC-JP&OE=EUC-JP&day=all&ihost=news.goo.ne.jp  →オバマのアメリカ

http://news.goo.ne.jp/publisher/ft/  →フィナンシャルタイムス

(続く)