まあ「ベスト4に向かって頑張る」が「ベスト4に入る」となって報道されてしまったようだ
が、小生はそれくらいの気概は必要だと思っている。だから尚更その目標を達成するため
の方策を考える必要があったのである。まあ、岡田監督には、その「ベスト4に向かって
頑張る」ための方策を、是非とも示してもらいたかったものである。2010/9/28のNO.28
では、「強国と本気の試合ができる環境があれば、まだまだ強くなる」と言っていると紹
介したのであるが、強国と本気の試合をすることも、その一つの方策であることは確かで
ある。それならそれでそのことを岡田としても、日本サッカー協会にしっかりと申し入れなけ
ればならないのであるが、このことを岡田はどのように処理しているのであろうか。しかし
こんなことでお茶を濁してもらっては困るのであるが、岡田からは、W杯南ア大会の反
省は(ほとんど)聞かれなかったと思われる。しいて言うならこの環境づくりくらいがその方
策なのであろうか。先の「ドーハの歓喜」(2010/2/24,NO.21)では、「ベスト4」への戦略は
なかったのではないか、と結論付けたが、日本国民もまた日本のマスメディアも、またサッ
カー関係者もなぜ「ベスト4」にゆけなかったのかとか、なぜ「ベスト16」で満足してしまって
いるのか、などともっともっとW杯を話題にしなければならなかったのではないか、と思う
よ。そうすれば、何らかの方策が議論されたのではないかと、その機会を失ってしまったこ
とを、非常に残念に思うのである。
ここにひとつその方策に言及していると思われる2010/10/8のアルゼンチン戦の記事が
ある。それを次に載せるので、よく読んでいただきたい。
ザックジャパン初戦、“金星”で明らかになった世界との差
一筋の光明も見えたアルゼンチン戦
2010年11月2日 火曜日
森本 美行
(Photo)
10月8日のアルゼンチン戦で両軍唯一のゴールを決めた日本代表の岡崎慎司選手(左)
前半19分。日本代表のミッドフィールダー、長谷部誠(独ウォルフスブルク)が放ったミド
ルシュートをアルゼンチン代表のゴールキーパー、セルヒオ・ロメロが手で弾く。前にこぼ
れた球にいち早く駆け寄ったフォワードの岡崎慎司(清水エスパルス)が右足で押し込み、
先制点を挙げた──。
10月8日に埼玉スタジアムで行われたサッカー日本代表とアルゼンチン代表の国際親善
試合。イタリア人監督のアルベルト・ザッケローニが初采配を振るった南米の強豪との一
戦は、日本が先制点を守りきり、1-0で勝利した。
1-0でアルゼンチンに勝ったが…
諸事情で日が経ってしまったが、今回はこのザックジャパンの初戦を、データを基に検証
したい。
その前に、10月30日から始まった日本プロ野球・日本シリーズのこれまでの結果につい
ても少しだけ触れておこう。
レギュラーシーズンでセリーグを制した中日ドラゴンズと、パリーグを3位で通過した千葉
ロッテマリーンズという対照的な顔ぶれとなった今年の日本シリーズ。本コラムの前回(日
本シリーズ開幕、勝つのはセの王者かパの雑兵集団か)では、クライマックスシリーズの
ファイナルステージでの両者の戦いぶりをデータから振り返り、日本シリーズの勝敗を分け
るポイントを探った。
その結果、ロッテの方は、「先発→中継ぎ→抑え」の継投という勝利の方程式に綻びが生
じ始めた中日の投手陣を打ち崩せるか。一方、中日の方は、エラーがらみで失点を許すこ
との多いロッテの緩慢な守備を突いて得点を挙げられるかが、それぞれ焦点になりそうだ
と指摘した。
30日の第1戦、31日の第2戦は、まさにこれらのポイントが勝敗を左右する結果になっ
た。第1戦は、中日の先発投手の吉見一起が不調。制球が定まらず、3回3失点で降板
する。さらに、6回と7回にも中日の3番手、平井正史が追加点を奪われる。このように中日
の投手陣を打ち崩したロッテが5-2のスコアで先勝した。
先発の吉見から2回表に先制の適時打を放ったのは、8番打者の大松尚逸。いったんは
中日に2-1と逆転を許した直後の3回表には2番打者の清田育宏がソロホームランを打っ
て同点とし、再逆転の口火を切った。大松や清田といった伏兵が活躍した点も、福岡ソフト
バンクホークスを相手に1勝3敗から3連勝の大逆転劇で勝ち上がったファイナルステージ
の再現となった。
続く第2戦は打って変わり、中日が12-1のスコアで大勝。ロッテにとっては、特に1回裏に
4失点と序盤に大量リードを奪われたのが響いた。先発投手のビル・マーフィーは1死1、2
塁から中日の4番、和田一浩にセンター前のタイムリーを打たれて先制点を許す。その
後、セカンドの井口資仁の悪送球などでピンチを広げ、2死満塁から押し出し四球を与える
などして4点を献上した。
ロッテはソフトバンクとのファイナルステージの第2戦、第3戦もエラーがらみの失点で負
けている。伏兵の活躍などで快勝した第1戦とは違った意味で、第2戦もファイナルステー
ジの再現になったと言えよう。
今晩に行われる第3戦以降も、前回に指摘したポイントが勝敗を左右していくのか。勝負
が決着した後に、データを基に詳しく振り返ることにする。
データから浮き彫りになる日本代表の“実力”
さて、本題に戻ろう。ワールドカップ(W杯)で2回の優勝を誇るアルゼンチンに1-0で勝
利したザックジャパンの初戦。これまで6戦して全敗だった南米の強豪に対して勝利を挙げ
たのはこれが初めて。メディアは「歴史的な勝利」などと報じた。その中には、監督がザック
に代わり、日本代表が早くも大きく変わり始めたとする論評も見られた。
だが、データを基に冷静に試合を分析してみると、日本代表の現在の“実力”が改めて浮
き彫りになる。
それを端的に示すデータが、ボールの支配率だ。
アルゼンチン戦における日本のボールの支配率は39.9%。本コラムではこれまで、日本
が世界レベルのチームと対戦した時には相手のボール支配率が6割以上に上り、劣勢に
立たされると指摘してきた。今回のアルゼンチン戦でも、世界の強豪相手に6割の壁に突
き当たってしまった。
アルゼンチン戦の4日後の10月12日に行われた韓国代表との親善試合では、アウェー
にもかかわらず日本のボール支配率は59.0%をマークした。アジアレベルでは自らが主導
権を握れるが、世界レベルでは相手に主導権を奪われてしまう。こうした図式に変わりは
なかったわけだ。
ポゼッション率の高低が勝敗に直結するわけではないが、一方で、主導権を握った方が
有利なのも事実。実際、マイボールで走る時よりも、相手ボールで走らされる時の方が疲
労度は大きい。
アルゼンチン戦の直前のコラム(ザックジャパン始動、初戦の成否は)では、ザックジャパ
ンのパフォーマンスを評価する指標の1つとして、クリアの回数に注目していきたいと書い
た。(http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20101004/216494/?ST=print)
今年6月から7月にかけて開催されたW杯南アフリカ大会では、ベスト8以上に進出した
代表チームは総じてクリアの回数が少なかった。自陣ゴール前の危険なエリアに進入され
ても、そこで奪ったボールをピンチの回避を目的として大きく蹴り出すのではなく、味方に
ボールをつないでピンチを攻撃の起点に変えようとする。その意識とそれができる技術が
高いから、クリアが少なくて済む。
一方、南ア大会での日本は、危険なエリアに進入された回数は、ベスト4に進出したドイ
ツやベスト8のアルゼンチンなどと変わらなかった。だが、クリアの数は、ドイツやアルゼン
チンの2倍近くに上った。日本はピンチをチャンスに変えようとする意識と技術がまだ世界
の強豪レベルに達していないことがうかがわれる。
攻撃を受けて奪ったボールを再び相手に渡して、二次攻撃を許すのか。それとも、奪っ
たボールを自らのチャンスに変えるのか。どちらを選択するかによって戦況は大きく変わ
る。攻める姿勢を強めなければ、ベスト8の壁を破ることはできない。そこで守備から攻撃
への切り替えを意図的に行っているかどうかを見る指標の1つとしてクリアの回数に注目し
ようと考えたわけだ。
では、アルゼンチン戦はどうだったか。
次の図をご覧いただきたい。W杯南ア大会に出場した32カ国の代表チームの1試合当た
りのクリアの回数と、10月8日のアルゼンチン戦、10月12日の韓国戦での日本のクリアの
回数を分析したものだ。
(続く)