次にそのような内容の解説を紹介しよう。アメリカの本音がわかるというものだ。
q26手のひらを返したトヨタ安全判定!
やはりそうだったのかアメリカ?
GM復活後に事情通たちが語り始めた裏話と本音
http://diamond.jp/articles/-/11125
【第71回】 2011年2月13日 桃田健史 [ジャーナリスト]
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ディズニーランド(米カリフォルニア州アナハイム市)に隣接するアナハイム・ヒルトンホテル――。
「トヨタ車に乗らないほうがいい」と発言した昨年とは一転、2月8日の記者会見では、末娘がトヨタ車を購入しており「トヨタ車は安全だ」と宣言したラフード米運輸長官。Photo: AP/AFLO
その二階・会議場のカリフォルニア・ボールルームで、SAE(米自動車技術会)
の「ハイブリッド・ビークル・テクノロジー・シンポジウム」(2011年2月9-10日)
「エレクトリック・ビークル・シンポジウム」(同年2月11日)が開催された。ここに、
日米欧韓中印など世界各国の自動車メーカー、自動車部品メーカー、電気機器
関連メーカー関係者が約500人集まった。
実は同シンポジウム初日の前日、米運輸省は「NHTSA-NASA TOYOTA
studyresults (米道路交通安全局と米航空宇宙局によるトヨタ案件に関する
報告)」を公開した。
ここでいうトヨタ案件とは、昨年世間を騒がせた、トヨタ(レクサスを含む)車
の「Unintended acceleration (予期できない急加速)」についてだ。
今回の報告書の結論は大きく2つある。
1)「予期できない急加速」の原因は、電子制御ソフトウエアや同制御系周辺機
器の誤作動ではない。
2)「予期できない急加速」の原因として、アクセルペダル裏の部品の誤設計によ
りアクセルペダルが「sticking(戻らなくなる)」、またはフロアマットがアクセルペ
ダルに引っかかってアクセルペダルが戻りにくくなる、との可能性がある。これら
についてトヨタは、2009年から2010年にかけて約800万台のリコールを実施し
て対応しており、問題はほぼ解決している。
米運輸省は、2010年2月の米議会での豊田章男社長を含むトヨタ関係者の公
聴会をうけて、過去10ヶ月にわたり本件を検証してきた。
その順序は、まずNASAで28万通りに及ぶ電子制御ソフトウエアコードを解
析。次にNASAのゴッダード・スペースセンター(メリーランド州)で制御系ハード
ウエア周辺での磁力線等の影響による加速走行に関する誤作動を検証。次
にNHTSAのビークル・リサーチ&テストセンター(会社名はトランスポーテー
ション・リサーチ・センター社/オハイオ州リーストリバティ市)でトヨタ実車を使用
した様々な走行状態を再現して検証した。
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さらに、米運輸省は2011年末を目処に、米国で販売される全ての乗用車を対
象として、ブレーキオーバーライド(アクセルとブレーキの同時操作の場合に減
速する機構)の装着の推奨、キーレス始動システムの義務付け、加えてEDR(イ
ベント・データ・レコーダー/誤操作などを記録する機器)の装着の推奨を行うと
した。
また、この米運輸省の発表について各国メディアは、同省レイ・ラフード運輸長
官が会見の席上、自身の末娘がトヨタ車を購入しておりトヨタ車は安全だ、との
発言に冷ややかな目を向けた。これは、同長官が行った昨年2月のトヨタに対す
るネガティブな発言とは正反対。まるで「トヨタへのリップサービス」と受け取れる
からだ。
SAE(米自動車技術会)のハイブリッド車/電気自動車のシンポジウム会場。
世界の自動車メーカーや、米政府系の研究所関係者が集まった。 この場で、「ト
ヨタ問題」について直撃インタビューを試みた。
こうした発表の翌日、つまり本稿冒頭で紹介したシンポジウムの初日、自動車
業界関係者たちに「きのうの米運輸省のトヨタ問題報告をどう思うか? これで
一連のトヨタバッシングは終わるのか?」と聞いてみた。
質問した時間帯は、2回の30分間休憩、ランチタイム、そして午後5時過ぎから
始まった、アルコール飲料もサービスされた立食式の「ウエルカム・レセプショ
ン」においてだ。以下、主なものを紹介しよう。
1.「犯人探しは事実上無理だ。現状では、事故に対するデータロガー(各種の
データを保存・計測する機器)らしきモノが装備されていない。It happened(起
こってしまったのだから仕様がない)という感じだ。トヨタバッシングについてはよ
く分からない」(電子制御・電気モーター・蓄電池のテスト装置開発関係者)。
2. 「今回の件での、トヨタバッシングは感じない。ただ、私はオハイオ出身で現
在の勤務地は東海岸だ。そうした生活のなかから、西海岸に来てみると、街中に
トヨタ車など日本車の数が圧倒的に多くて驚く。今になって振り返ってみれば、こ
うした社会環境のなかでトヨタへの過剰な期待が生まれて、その反動が生じた
のかもしれないとは思う」(充電コネクター商品企画関係者)
3. 「トヨタバッシングは確かにスゴイ。度が過ぎる。実は私自身がトヨタ車オー
ナーだが、私の周辺のトヨタオーナーを含めて、トヨタバッシングの雰囲気を過去
1年ほど、強く感じてきた。私は是非、トヨタに今回の米運輸省発表をしっかりと
広報活動して欲しい。昨年の議会公聴会に代表されるようにネガティブな情報
は大量に流れるが、今回の発表の反響は思ったより小さいし米国内での報道も
少ないと思う。トヨタはこれから数ヶ月間が勝負処だ(電気モーターメーカー広報
担当者)
(続く)