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4. 「トヨタのセールスは徐々に回復するだろう。ただし、根本的にはトヨタのネガ
ティブなイメージの払拭には相当時間がかかると思う。思い出してほしい。
2002年の(タイヤメーカーとの技術的な因果関係を指摘された)フォード・エクス
プローラー横転事故のことを」(蓄電池材料メーカー営業担当者)
5.「トヨタバッシングは、GM(ゼネラル・モーターズ)が議会とマスコミを巻
き込んで仕組んだのだ。この業界にいる人間なら、そんなことは常識だ。トヨタ
は可哀相だ。根も葉もないことを、ここまで大きくされてしまって。だから大丈夫
だ。トヨタは確実に復活する」(ほろ酔い気分で顔面にかなり赤みを帯びたデータ
ロガー営業担当者)
6.「個人的な意見はなくはないが…。すまないが、この件はノーコメントだ。実
は、今回の米運輸省の報告書は、(カタログを開いて楕円形のコースのインフィ
ールドの建物を指差して)弊社のこの施設でずっと行ってきた」(オハイオ州のテ
スト施設関係者)
また、実名公表を了解の上、同シンポジウム初日の一番目に「ジャーナリスト
の視点から」との演目で講演した、米大手自動車雑誌「ロード&トラック」誌の技
術統括編集者、デニス・シーマナイティス氏にも聞いた。シーマナイティス氏は同
誌の技術編集担当を31年間務める、米自動車技術業界の重鎮だ。
筆者「今回の米運輸省の判断は、トヨタにとってフェアだと思うか?」
シーマナイティス氏「政府側がベストな施設とベストな人材を投入して行ったも
ので、(検証される側のトヨタにとって)とてもフェアな結果だ。今回の問題
点は、電子制御系の技術的な常識として、けっして起こりえないと思われること
が起こってしまうことを想定する、ということだ。政府側は、そうした起こりえない
ことを様々な手法で、発生させようと試みた。そして、何も発生しなかった。これ
により、今回の原因は、フロアマットとアクセルペダル関連の部品によるものだ、
と結論付けたカタチだ。さらに政府側は今回の解析を受けて、トヨタにだけでな
く、乗用車をアメリカで販売する全てのメーカーに対して、新たなる規定を構築す
るとしている。これは、トヨタに対してとてもフェアな態度だと思う」
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筆者「一連のトヨタバッシングは、米国大手メディアによる過剰な反応だと指摘
する声があるが?」
シーマナイティス氏「確かに過剰だ。だがそれは米国内のメディアに限ったこと
ではないだろう。メディア側はトヨタに対して、短期間での解決を期待し過ぎた。
政府側が検証を進めていることを承知の上で、だ」
筆者「今回の発表で、一連のトヨタバッシングは終わると考えてよいのか?」
シーマナイティス氏「いや、それはまた違った次元での、難しい質問だ。バッシン
グというものは、道理をわきまえたものでもなく、理論的でもないからだ。さらに、
トヨタの一連の急加速問題に関する訴訟は現在も審議中であることも、関係する」
筆者「とはいえ、今回の発表はトヨタ側に有利な情報となると思うが?」
シーマナイティス氏「確かにそうだ。私がトヨタに勤務していたら、今回の発表は
実に喜ばしいと感じるはずだ」
筆者は本連載でこれまでに、第30回「自動車業界に広がるトヨタ擁護論!プリ
ウスのリコールは本来不要だった~不条理なバッシングの餌食になった企業の
悲しい宿命」第32回「トヨタ車の品質は本当に下がったのか?バッシングの嵐が
覆い隠す問題の核心」第33回「トヨタの電子制御問題に隠れた真実!アメリカ
人特有のアクセルの踏み方」などで、一連のトヨタ問題にニュートラルな立場を
とってきたつもりだ。ここでいうニュートラルとは、現地の声、現地の“空気”を演
出なしに読者に届けることだ。本稿でも「アナハイムの空気」を感じ取って頂けれ
ば幸いである。
また最後に「アメリカ自動車業界の空気」としてもう1点付け加えると、トヨタ問
題が終焉に向かっている現在、米メディアたちは新たなるバッシングの矛先を探
している。それが、EV(電気自動車)になりそうな気配がある。
ダイヤモンド・オンラインのアーカイブズより
トヨタリコール問題に関する主な過去記事
◆トヨタ“推定有罪”の世論を作った
謎の人物とLAタイムズの偏向報道
~『ザ・トヨタウェイ』著者の米大物学者が語る衝撃の分析!
ジェフリー・ライカー・ミシガン大学教授 核心インタビュー
(2010年3月1日)http://diamond.jp/articles/-/2530 ('10/5/10.NO.27参照)
◆トヨタが米国民を怒らせた本当の理由を語ろう
~米著名自動車コンサルタント、マリアン・ケラー氏に聞く
(2010年2月15日)http://diamond.jp/articles/-/5425 ('11/4/7,NO.68参照)
まあ、「政府側がベストな施設とベストな人材を投入して行ったもので、(検証さ
れる側のトヨタにとって)とてもフェアな結果だ。・・・」などのコメントがあるが、
これは見方を変えればとてもアンフェアなやり方なのである。なんと言っても、
「トヨタの電子制御システムに不具合があるかも知れない」と言う疑心暗鬼を全
米に(意図的に)起こさたからである。例えば急加速したとされる23台のトヨタ車
の検査結果は、その全てにおいて「アクセルペダル」が踏み続けられており、ブ
レーキペダルは一切踏まれていなかったことが、記録として残されていたことが
判明しているにもかかわらず、それらの事実が大々的に公表されていないこと
を見てもわかる、と言うものである('10/8/24,NO.54参照のこと)。
あのロンダ・スミスの「マットが引っかかっていた」と言う証言も無視されているの
である('10/4/5のNO.10参照のこと)。今回のこれらのトヨタ車などに対する疑心
暗鬼は、その全てがマイナスサイドに働いたのであり、その全てがマイナスサイ
ドに働くように、アメリカ政府や議会によって仕向けられていた、と言うことの中
での検証と言う取り扱いであった。だから、この検証もトヨタ車に対する不安を極
限まで高めるために、意図的に使われていたのである。だから、いくら結果が
良(電子制御システムに問題は無い)でも、アンフェアなのである。
(続く)