日韓併合100年(95)

丁字に頭を抑えられたバルチック艦隊は、南東に逃げている。そのため両艦隊

は並航戦となっている。もっぱら「三笠」のみが被弾し、他艦には殆ど着弾してい

ない。しかし第2戦隊の「浅間」に着弾した12インチ砲弾は、死傷者は無かった

ものの、舵輪操作を不能にした。


以上と以下は
日露戦争5」(児島襄)を参照している。


14:40、並航戦が続くが、速力を上げ丁字に回頭する。

14:45、連合艦隊の第3、第4戦隊の巡洋艦隊が、バルチック艦隊の背後を襲う。


旗艦スウォーロフは、舵が故障し右旋回を始める。2番艦のアレクサンドル三世

が先頭になり北上する。そして被弾し、列外に出る。3番艦のボロジノが先頭に

なり、被弾する。防護巡洋艦「ジェンチュグ」が「スウォーロフ」の防護から離れ

て、戦列の先頭へと復帰するために速力を上げて突進する。その姿を「三笠」は

捕らえていた。あたかも「三笠」に向かって突進して、近距離にて水雷を発射

れることを恐れた「三笠」は、14:57、敵前で左90度に一斉回頭をする。


しかし第1戦隊に続く第2戦隊は回頭しなかった。第2戦隊旗艦の巡洋艦「出

雲」の先任参謀佐藤鉄太郎中佐は、「スウォーロフ」の異常に気が付き後続艦

隊は直進するので、第2艦隊司令長官上村彦之丞中将に「面舵をとって敵の頭

を抑えましょう」と進言する。そして15:00頃第2戦隊は右に舵を切る。「中」が

「大」に戦いを挑むのである。戦艦の12インチ(30.48cm)に対して、装甲巡洋

艦の8インチ(20.3cm)が挑んだのである。しかし砲撃精度に勝る上村艦隊

は、「
シソイウェリーキー」と「アレクサンドル三世」に砲弾を浴びせ火災を発生

させる。この三笠の指示を間違いと判断し独断専行で、バルチック艦隊を押さえ

た行動が、「ブラボー、アドミラル上村」と言われたゆえんである。


(2010/12/3,NO.33参照)


15:05、三笠の第1戦隊は左90度一斉回頭し、「三笠」が最後尾の単縦陣とな

り、バルチック艦隊と逆行する形となり、まず三笠がスウォーロフに向け発砲を

開始する。

15:10、オスラビア沈没


しかし第1戦隊とバルチック艦隊は逆方向への航行となりお互いに見失う。バル

チック艦隊は第2戦隊に頭を抑えられ、南へ向かっている。そして先頭艦となっ

た戦艦「ボロジノ」は、戦闘を避け、今度は北へ向かって逃走を開始する。


東郷の第一戦隊は間違いに気付き、15:47、一斉回頭をして戻ってきていた。

そして北に向かったバルチック艦隊偶然鉢合わせとなり、東から追いかける

第2戦隊と思いかけずに挟み撃ちをする形となる。ここでも東郷はバルチック艦

隊と鉢合わせすると言う幸運を得て、北に取り逃がすことにはならなかった。そ

の点でも東郷は、大いに運のよい男なのであろう。


スウォーロフはこの時、17:30頃は攻撃も受けずに単艦で漂っていた。司令長官

ロジェストヴェンスキーは頭部他に重傷を負っていた。駆逐艦「ブイヌイ」が「スウ

ォーロフ」に接舷させ、神業で司令長官を移乗させその場を離れていった。

(続く)