日韓併合100年(121)

まずウィッテは、賠償金支払いサガレンの割譲は「絶対に不可」との訓令を

受けている。従って自分の権限ではどうしようもない。だからあくまでも日本がこ

の件を主張するなら、講和談判の破裂も止むを得ない。」と脅かしてから、「しか

しこれに代わるよい案が考え出せれば本国へ進言できる」と思わせぶりの発言

をした。そしてウィッテが出した代案は「樺太2分割」論であった。


賠償金については、全く同意できない。ただしロシア兵捕虜に関する費用は支

払う。


樺太割譲については、妥協の余地がある。ロシアは対岸のアムール川河口流

域や沿海州の安全保障の確保が必要であり、日本は樺太の資源が必要であ

ろう。だから樺太の北部はロシアが、南部は日本が保有する。そして宗谷海峡

の航行自由は保障して欲しい。


と言うものであったが、ウィッテは樺太全島を譲渡する決意を固めていたが、

日本側(10)ロシア艦の引渡し(11)海軍力の制限2項の譲歩を言い出

したために、更に譲歩の用意が有るかもしれないと思いつき、樺太2分割案

思いついたと言う。ウィッテの強者ぶりを発揮したものであった。


小村は、このウィッテの譲歩案に対して内心ホッとしたことであろう


日露戦争7」(児島襄)
ではそのようなことは述べていない。何と言っても日本

が最初に(10)ロシア艦の引渡し(11)海軍力の制限、の
撤回を提案して

いる。これにより何らかのロシア側の譲歩を導き出して、何とかしてこの講和談

判をまとめたかったに違いない。講和談判も終盤に近づいている。小村寿太郎

の内心には、それと気付かないにしても焦りがあったことであろう。そこをウィッ

テに目ざとく見透かされて、攻め込まれてしまったものであろう。それがウィッテ

の咄嗟の判断であった。日本側が勝者の立場に立って居たのであれば、否、

勝者の立場に立って居たのであるから、まずはロシア側の譲歩案を聞こう、と

泰然自若と構えていればよかったのである。しかしこのようなことは後になって

言える事である。


ウィッテのこの樺太2分割案に対して、小村は「ロシアに譲歩の意向があるなら

こちらも一歩譲って樺太2分割案に賛成しよう。ただし、樺太は現在日本軍の

手中にあり、半分たりとは言え相当な報酬が無ければ還付は出来ない」と回答

する。


ウィッテの報酬とは何かの問いに対して、小村が代わりの土地をもらうことだが

それは不可能であろう、従って金銭の報酬となろうと答えると、ウィッテははっと

する。ロシアは賠償金の支払いは絶対に拒否する決意であったので、この報酬

名目に対してウィッテは愕然としたはずである。ロシア側はロシア兵の捕虜に関

する費用については支払うと言明している。樺太北部のロシアへの還付に対し

ては当然対価を支払わねばならないことになる。この小村の作戦は、巧妙では

あった。樺太はもともとロシアにとっては、それほど重要なものではない。なんと

言ってもロシア本国の地ではない。賠償金は絶対に拒否すると言っているので、

報酬とはいえこの対価の支払いをニコライ2世が許可するものであろうか、疑問

の残るところである。


ウィッテもそのこと(報酬と賠償)に反問しながらも、日本側の提案を受け入れざ

るを得なかった。


そして次の5項目をまとめた。

(続く)