日韓併合100年(122)

そして次の5項目をまとめた。

(1)サガレン(樺太)を分割して処分する。

(2)
ロシアは、同島北部の還付について日本に報酬を支払う。

(3)
間宮、宗谷海峡の自由航行を相互に保障する。

(4)
右の三ヵ条が妥結すれば、日本は軍費の払い戻し要求を撤回する。

(5)
報酬金額と支払い方法については、別に協議する。


ニコライ2世は、「一寸の土地」も譲渡するな、「一カペイクの賠償金」も支払う

な、と厳命している。しかし、樺太北部を確保すれば同島を日本に与えたことに

はならず、「賠償金」でなく「報酬」ならば、ロシアにとって「面目が立つ(支払い)

名分」が成り立つ。ウィッテはこれなら皇帝も納得するはずだと推理した。そして

小村委員は、更に踏み込んだ。


(注)カペイク
とはロシア通貨の補助通貨で、100カペイク=1ルーブル=2.78円(2011/8/2現在)

単数の場合は1カペイカ、2~4カペイカ=カペイキ、5カペイク以上=カペイク(カペ

ーク)と発音すると言う。1ルーブル=ルーブリ、2~4ルーブル=ルブリャー、5ルー

ブル以上=ルブレイと発音すると言う。(Wikipediaより)


樺太分割の境界を北緯50度とし、報酬金額を「少なくとも12億円」とした。

日本は戦費16億5千万円に見合う15億円を獲得するよう訓令していた。そのた

め12億円は、小村委員の独断での減額であった。ロシア側がこの議論を乱さな

いための2割減額であったが、ウィッテは渋った。樺太分割は説得できるが、

12億円は大金過ぎて説得できない。しかし、日本も粘った。とにかく12億円なら

日本も折り合うとして、あらためて次の秘密合意がまとまった。


しかしここで緊張をほぐしてもう一度広い視野で、この提案を検討してみる必要

があった。報奨金とはいえ12億円と言う大金が動く。果たしてニコライ2世がこれ

を承認するだろうか。もし承認しなかった場合に対応はどうなるのか。日本はそ

のまま引き下がるのか。談判を破裂させるのか。いわゆるリスク管理を行う必

要があった。


こう言うものが許されるものかは判らないが、二者択一的な提案を設定しておく

必要があった。


もし、この樺太北部の還付に対する報奨金12億円案が駄目ならば、還付は出

来ない
。と言った条件を追加しておくべきだったのではないか。


報奨金の減額は不可だとしていたのであれば、樺太北部の還付はない。樺太

全島が日本領となる。…といった条件を付けておくべきだったのであろう。A案

か、B案か、どちらかをとれ、と言ったものと同じ事になる。日本としては、戦費

の補填金が欲しかったのである。だから樺太の北部を還付する報奨金としたの

であるが、もしニコライ2世がこれを許可しなかった場合はB案となる、などの条

件をつけておくべきであった。


しかし更に深読みをすれば、結果として「大東亜戦争」のドサクサに紛れてロ助

満州樺太、千島を蹂躙されてしまい樺太も取られてしまったため、余分な

事(開発投資など)をしなくて済んだと思ったほうが好いかも知れない。


ウィッテ
は12億円についてはロシア政府を承知させることはすこぶる困難だと

表明するものの、次のように「秘密合意」をまとめた。

(続く)