番外編・プリウス急加速問題(90)

電気自動車オバマの言う「グリーンニューディール」政策の目玉である。その目玉がこ

の体たらくではオバマも困るのである。なんとしてでもアメリカの電気自動車を流行らせなく

てはならない。しかも電気自動車に付き物のバッテリー(2次電池)も、発火事故を起こした

ボルトの韓国製よりも日本製の方が優秀だと言う。これでは日本の電気自動車は米国で

はますます優位となり、出る釘となり、オバマに叩かれることになりはしないか心配だ。

  
    
【クルマ人】「電池は韓国より日本が優秀」 米テスラのケルティ氏
2012.3.18 07:00

 EV(電気自動車)スポーツカー「ロードスター」で一躍脚光を浴びた米国のテスラモータ

ーズ。今年、第2弾としてEVセダン「モデルS」も発売。全世界で9千台以上を受注した。EV

の心臓部であるリチウムイオン電池について、バッテリー技術部門を統括するカート・ケル

ティ部長に聞いた。

 --パソコンなどに使われる小型のリチウムイオン電池を、EVに転用して世界を驚かせた

 「小型電池を独自にパック化して、ロードスターに搭載した。直径18ミリ、長さ65ミリの円

筒型で手の平に乗る電池を一つのパックに6851個収めた。サイズが小さいため、熱伝導

効率が高く、精密な充電管理が可能なほか、長寿命など利点が多い。家電向けを中心に

毎年10億個以上が生産されるため、調達コストを削減できるメリットもある」

 --調達先は

 「パナソニック三洋電機ソニーサムスン電子、LGグループという5大リチウムイオン

電池メーカーとつき合いがある。パナソニックと三洋は合併したが、調達先を1社に限定し

ないのは、メーカー同士で競争させるためだ。ただ、電池のパック化はテスラに独自のノウ

ハウがあり、他社にパックとして供給できることが強みだ」

 --パナソニックとEV8万台分の電池を調達する契約を結んだが

 「パナソニックが、技術的に最も優れていると判断したためだ。パナソニックは、2006

年に2・9アンペア時という世界最高容量の電池の量産に成功し、その後も最高容量の電

池を生み出し続けている。テスラは、航続距離と直結する電池容量を最も重視している。こ

のため容量に加えて、信頼性やコスト面なども加味して、パナソニックを『優先サプライヤ

ー』に位置づけている」

 --パナソニックは10年11月にテスラに出資しているが

 「出資していることと、電池の契約はまったく関係ない。テスラが独占的に1社から調達す

ることはあり得ない。出資はしても、パナソニックから役員が派遣されているわけではなく、

経営の独立性は保たれている。8万台分の電池についても、主にモデルSに搭載する予定

だが、使用方法が限定されているわけではない。電池の技術革新のスピードは速い。この

ため今後も多様なメーカーの電池を評価しながら、最適な電池を選択していく姿勢は変わ

らない」

 --韓国メーカーが車載用電池市場でも価格攻勢をかけているが、性能についての評価は

 「サムスンやLGの場合は、他社の商品をまねするのがうまいうえに、自社製品に仕立

てるスピードも速いため、価格を安く抑えることができる。もともとEVの部品のなかで、リチ

ウムイオン電池は最も高額だ。このコストを抑えるには、日本メーカーだけではなく、韓国メ

ーカーと競争してもらう必要がある。ただ、技術優位性では、パナソニックはじめ日本メー

カーの方がやはり高い


 --どういった点で日本勢の技術レベルが高いのか

 「日本メーカーは、高密度化など電池の性能を決定づける材料を深く知り尽くしている

例えば、『電池の寿命が短くなったのはなぜか』との問い合わせに、すぐ対応してくれる。

さらに、材料の組み合わせによる電池の特性の変化なども深い部分で理解している

。一方、韓国メーカーに同じ質問をすると、『いろいろ試して、直すように頑張ります』とな

る。材料に至るまで電池を化学的に理解しているという点で、日本は韓国メーカーより技

術的に優位だ


 --車載向けリチウムイオン電池市場の今後は

 「EV市場などの拡大の過程で、車載向け電池では自動車メーカーの影響力が強まると

みている。これまでは、電池メーカーが強かったが、この関係が逆転する。例えば、米ゼネ

ラル・モーターズ(GM)は、当初はLGグループから、電池のパックを購入していた。しかし、

その後すぐに、GMパックを自ら製造するようになり、LGはパック用に電池部品を供給

するだけになった。トヨタも電池の研究に、多大な要員をさいているようだ。EVにとって最

重要部品である電池に、自動車メーカーが積極的にかかわりたいと考えるのは当然のこ

とだ。将来的には、自動車メーカーが電池の製造も手がけ、自社や他社向けに供給してい

くことになるのではないか」

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120318/biz12031807000001-n1.htm

 
   
リチウムイオン2次電池も日本勢が優秀で、しかも量産型電気自動車は、日本の三菱自

動車が「i-ミーブ」を先駆けて発売し、続いて日産自動車が5人乗りの日産「リーフ」を販売

している。これからアメリカにもマスセールスを行ってゆくことになろう。日本の2社の電気

自動車がオバマグリーンニューディール政策に乗っかって延びてゆくことは、オバマ

とってもGMにとってもきっと耐え難いことになりはしないか。だからこれからもいろいろと

イチャモンをつけてくることであろう、トヨタにイチャモンをつけて見事トヨタつぶしに成功し

たように。これには日本も気をつけなければならない。


その前に一寸長いが、次の論考を読んでアメリカの電気自動車事情を頭に入れてほしい。

 
 

ホンダ「フィットEV」の保守性、「テスラ」「フィスカー」の不在、そしてシボレ

ー「ボルト」火災報道の真相――米LAオートショー発、誰も書かない最新

EV裏事情

http://diamond.jp/articles/-/14971?page=8   【第93回】 2011年11月22日

RAV4 EV」「テスラ
「フィスカー」がいないワケは?

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2011年LAオートショー。「フィットEV」量産型を発表する、アメリカンホンダ執行副社長、

ジョン・メンデル氏。Photo by Kenji Momota

 2011年11月16日、米カリフォルニア州LAオートショー(ロサンゼルス・コンベンションセン

ター/一般公開11月18~27日)の報道陣向け公開日。その模様は日系のテレビ、新聞、

ウエブなどを通じて日本時間17日に報道された。それらの内容は概ね、『ホンダの電気自

動車フィットEVの量産車が初登場。これを契機に、アメリカでのエコカー普及が進む』とい

う軽いタッチだった。

 だが、筆者が同ショーの現場で詳しく取材してみると、アメリカの電気自動車市場での

変動
を強く感じた。

 最も強く印象に残ったのは、トヨタテスラだ。本連載第62回「電気自動車で先を行く

日産を追う・トヨタとホンダの歯切れが悪い裏事情」で紹介したように、1年前の同ショーは、

トヨタと米電気自動車ベンチャーテスラ」が共同開発の「RAV4 EV」の記者会見で大いに

盛り上がった。だが今年の同会場には、「テスラ」のブースはなく、トヨタのブース内にも

RAV4 EV」の姿はなかった。日米のメディアの多くから「あれだけブチ上げたのに、どうし

て今年は展示がないのか?」という声が聞かれた。

 筆者は今年
('11年)5月、同車初期開発モデル/フェイズゼロをトヨタモーターセールス

(米国トヨタ/LA近郊のトーランス市)を基点に、その周辺一般路で試乗した。加速感、

ブレーキ性能、さらに電気自動車特有のインバータ音の少なさなど、ベンチャー企業の技

術にトヨタ品質が加わったことによる、商品としての「ある一定レベル以上の安心」を感

じた。

 だが、本連載で再三指摘しているように、この事例はトヨタの次世代車ロードマップのな

かに「降って湧いたような存在」だ。トヨタにとってテスラとの連携は、GM破綻により課題と

なったGMトヨタ合弁工場(旧NUMMI、北カリフォルニアフリーモント市)の売却問題の

解決策が最終的なフックであり、さらには「トヨタの北米内の企業イメージ向上を含めての、

テスラというブランドの先物買い」という側面が強い。

 そうした1年前の事情はいまも大きな代わりはない。これまでの各種取材を通じ、筆者の

個人的見解としては、トヨタテスラ事業の継続性については若干の疑問が残る。尚、

テスラ単独の事業としては、5ドアセダン「モデルS」の製造準備が進んでいる。ただし、テス

ラ側の説明では、同車についてトヨタの直接的な関与はない、としている。

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謎多きベンチャー「フィスカー」のサンタモニカ・ディーラー。Photo by Kenji Momota

 今回のLAオートショーには、「フィスカー」の姿もなかった。同社については本連載第20

回「日本要注意!オバマ政権が入れ込む新興自動車メーカー“フィスカー”の秘密」等で紹

介したように、技術面での詳細を公開しないにもかかわらず、メディアでの露出が多く、ブラ

ンドイメージが先行している不思議なメーカーだ。

 当初、同社の第一弾量産車4ドアクーペ「カーマ」は2011年前半の発売予定だった。これ

まで同車は米欧での販売ディーラー網についての発表や、それらディーラー候補地でのコ

ンセプトカーお披露目などを行っている。参考までに、同ショー会場からクルマで30分程、

サンタモニカ市内に同社の仮ショールームがある。ここはレクサスと独フォルクスワーゲン

のディーラーでの併売だ。同地に2011年11月15日に訪れたところ、「Coming soon!」の垂

れ幕が掛かり、ショールーム内には各種展示品があるが車両はなかった。またフィスカー

はその翌日の11月16日、独自動車技術製品の検査機関のTUV(テュフ)によるCO2排出

量検査を受けた旨、プレスリリースを出した。

 過去3年間の筆者のフィスカーに関する感想は、「声はすれども姿は見えず」。


事態は沈静化、しかしな調査中
GMシボレー「ボルト」の火災報道


 次に、GMシボレーボルト」の火災報道に関してだ。

 これは2011年11月11日、Bloombergなど米大手メディアが一斉に報じた。その概要

は、2011年5月12日にDOT(米運輸省)管轄のNHTSA(米道路交通安全局)が米ウイスコ

ンシン州内の試験施設で実施した、側面衝撃試験で使用した「ボルト」1台が、同試験の3

週間後に同試験場裏手の駐車場で炎上したというものだ。これについて発火の原因は「ボ

ルト」に搭載されているリチウムイオン二次電池である可能性があり、NHTSAは同車搭

載の韓国LG化学製の製品の調査を進めているというものだ。同製品はフォードが2012

年に発売する電気自動車「フォーカス・エレクトリック」でも使用されている。

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GMシボレー「ボルト」と、開発総責任者の同社エグゼクティブ・ディレクター、ジム・フェデリコ氏。Photo by Kenji Momota

 今回の「ボルト」火災事故報道について、LAオートショーの報道陣向け公開日でGMは、

同社で「ボルト」を含むGM電気自動車事業の統括責任者、同社グローバルコンパクト、

スモール、ミニバン、エレクトリック・ヴィークル担当のエグゼクティブ・ディレクター、ジム・

フェデリコ氏による各メディアとの個別インタビューを行った。

 筆者も同氏と約15分間、個別インタビューを行った。その中で同氏は「発火の原因は、

衝撃テストの後、バッテリーと車両との結合部分を外さなかったからだ。その後の試験では

結合を外すことで問題は生じていない」と説明した。だが、火災事故の件が米メディアの独

自取材として公表されるまで、NHTSAとGMから未発表だったことについて、明確な回答は

なかった。

 また今回の火災事故について「現在でも、NHTSAによる調査が継続している」とした。

これまでのところ米国内で「ボルト」は約5000台販売(2012年生産計画台数は4万5000

台)されているが、本稿執筆時点で二次電池を含めたリコールついての発表はない。

また、米メディア報道では、ノースキャロライナ州内の「ボルト」を所有する一般家庭で火災

が起こったケースも紹介している。この件についてフィデリコ氏は「これは一般的な火災が

原因であり、車が火元ではない。ちなみに、同家の車庫にはボルトの他、(ガソリン車の)

日産車もあった」と語った。

 これら報道による、米市場でのリチウムイオン二次電池を搭載する電気自動車等エコ

カーの今後の販売に対する影響について、LAオートショー内で10人程の米メディア関係者

に聞いてみた。それら回答は概ね「同関連報道は現在、沈静化していて、今後の市場に与

える影響は少ない」だった。

(続く)