番外編・プリウス急加速問題(96)

「株式会社SIM-Drive先行開発車事業第3号募集開始」(2011.9.12付け)による「先行開

発車事業第2号参加機関」を下記しておく。

http://www.sim-drive.com/news/2011/0912_press-release.pdf


ちなみに第1事業参加機関の中には、いすゞ自動車株式会社(自動車)と三菱自動車

業株式会社
(自動車)の名前がある。ただし自動車関連部品会社は数社見受けられる。

各社はいずれも1回のみの参加である。

 
 

旭化成株式会社(材料)
株式会社アドバンテスト (電子)
オイレス工業株式会社(部品)
川﨑工業株式会社(部品)
株式会社クラレ(材料)
サンスター技研グループ(材料)
株式会社ソミック石川(部品)
タカタ株式会社(部品)
ダッソー・システムズ株式会社(ソフト)
千代田化工建設株式会社(建設)
株式会社ティラド(部品)
株式会社TBK(部品)
デュポン株式会社(材料)
東レ株式会社(材料)
東北電力株式会社(エネルギー)
東京エムケイ株式会社(輸送)
凸版印刷株式会社(出版)
豊田通商株式会社(商社)
日本パーカライジング株式会社(表面処理)
PSA Peugeot Citroën (自動車)
株式会社日立アドバンストデジタル(電子)
日立化成工業株式会社(材料)
リプラスチックス株式会社(材料)
BOSCH(部品)
株式会社ミクニ(部品)
三井・デュポンポリケミカル株式会社(材料)
株式会社ミツウロコ(エネルギー)

 
 

SIM-Driveでは第3号開発車で、第2号と同様「インホイールモーター技術」と「コンポーネ

ントビルトイン式フレーム技術」などを組み合わせて、モーター利用の効率化、空気抵抗の

低減、転がり摩擦の極小化などを目指すとしているし、開発工程の中では新しいことも追加

したいとしている。


その中には今流行の「スマートグリッド」関係の概念の確立を狙いそのハード・ソフトを開

発したい、と「先行開発車事業第3号:26の参加機関を集めて始動」には述べられている

から、電気自動車そのものよりも電気自動車使い勝手の開発に進んでゆくものと思わ

れる。

http://www.sim-drive.com/news/2012/0328release1.html


と言うことは、インホイールモーターに関することは概ねマスターしたと言う事で、車本来の

技術の向上と言うよりも、電気自動車をつかった仕組みの開発にも目を向けているようで

ある。しかしながら、問題のバッテリーに関する技術の向上に関する事項は、ここでは言

及されていない。


バッテリーに関してはなかなか手が出せない、と言うことか。であるならば、この事業は単

なるとは言っては失礼に当たるが、外部からバッテリーを調達した電気自動車作りに終わ

る可能性がありそうだ。だから続けて参加する企業が無いのであろう。


ちなみに搭載するバッテリーは(先の記事によれば)、パナソニック18650型で容量

は35.1kWh、充電時間は「CHAdeMO」規格の急速充電器で3時間家庭用電源(200V)

12時間である。もちろんパナソニックにはそれなりの要求は出していることであろうが、

それがどのようにバッテリーの性能向上やコストダウンに効くのかは不明である。しかしな

がら、351kmも走れば合格レベルなのであろう。この18650型Φ18mm×L65mmの円

筒形のパソコン用のリチウムウオン2次電池であり、例のテスラー「ロードスター

6,831個も束ねて載せられているものと同じである。
('11.4.21,NO.80参照のこと、'10.5.28,NO.41~なども。)

http://matome.naver.jp/odai/2133295194491607401 によれば、

三菱のiMiEVが180km、日産のLeafが200km(いずれもJC08モードでのカタログ値)の航

続距離なので、この先行開発事業第2号車の351kmはリーフの1.7倍以上の航続距離を

誇り、ほぼ実用に供せられる値に近いものである。実際のところ日産のリーフの実用航続

距離としては160km程度だそうなので、この記事に言う日産リーフの約2倍の航続距離と

言う表現も、あながち的外れでは無さそうだ。リーフの航続距離につい

ては'11.4.25,NO.83~84や'12.3.29,NO.88なども参照願う。


何はともあれ、電気自動車航続距離は、その走りっぷり(電気の使われ方)によってか

なり上下すると言われているから、そのことをよく認識して常にバッテリーの電気を確認し

ながら使うことが大切なのであろう。今ではこのことは多くのユーザーが認識していることと

思うが、「リーフ」発売前には、日産もこの航続距離の減少にはかなり頭を悩ませていたよ

うだ。一般的な状態(ガソリン車でのように)で走っても、いわゆるJC08モードでの航続距

離は出ない。このようにただでさえ充電量の減少が早まるので、電気自動車の航続距離

は水物なのである。一寸古いが次の論考を参照願う。

 
 

DIAMOND online エコカー大戦争
走行条件によって大きく変わる
電気自動車のタブー「航続距離」の正体

【第51回】 2010年8月11日 桃田健史 [ジャーナリスト] 

ついに、「真剣に速さを競う」電気自動車レースが始まった。

 海の日で祝日だった2010年7月19日袖ヶ浦レースウエイ(1周2.4km/千葉県袖ヶ浦

市)で全日本EV選手権第1戦が開催されたのだ。

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('10年)7月19日に袖ヶ浦レースウェイで開催された全日本EV選手権第1戦の様子。

 「全日本」と銘打つも、参加車はたったの9台。市販車クラスが6台で、2台が全日本GTカ

ー選手権の老舗プライベーター「チームタイサン」のテスラロードスター。残り4台が

菱「i-MiEV
で、そのうち3台は三菱自動車工業本社の広報車両だ。その他、改造車クラ

スに、自動車整備の専門学校/千葉自動車総合大学校から「カローラEV」とスバルの軽

自動車「ビビオEV」、さらに「チームタイサン」のポルシェ「916EV」が参加した
。(日産リーフ

まだは発売されたいない。)


 これまで、日本で電気自動車レースというと、毎年11月に筑波サーキットで開催される「E

Vフェスティバル」に代表されるように、「速さ」より自主改造の技術向上を狙うことを基盤に

運営されてきた。対して、こちら「全日本EV選手権」は、電気自動車の高速走行パフォーマ

ンスを前面に押し出すものだ。


路面温度67度で性能ダウン
まるでガソリン車の創世記


 大会当日の午前10時過ぎ、各車が練習走行を開始するころには、気温34度路面温

67度
に達した。

 そうしたなか、各車は大きな壁にブチあたった。

 「全開走行だと、2周もたない。バッテリーの警告ランプがつくし、モーターの警告ランプが

付いた、それまで200Nmだった最大トルクが、コンピュータ制御がかかって一気に4分の1

程度まで落ちて、加速できなくなった」(テスラロードスター、飯田章選手)。

 「警告灯はつくし、クルマが重いし、リアの重心は高いし。コーナーの入り口ではアンダー

ステアが強くて曲がりづらいし、コーナーの出口ではいきなりオーバーステアでリアが大きく

流れるし。とにかく大変だ、このクルマを速く走らせるのは」(テスラロードスター、植田正幸

選手)。

 「バッテリーの過熱も課題だが、思ったより電気を食ってしまって。決勝ではかなりペース

ダウンしないと完走出来ないかもしれない」(三菱i-MiEVでの出場者)。また、デモンストレ

ーション走行を行った、BMW「Mini E」も「各種警告灯がついてしまって2周もたない」

と、早々にピットインした。

 居合わせたベテランのレース関係者は「こりゃまるで1962年、鈴鹿サーキットが開業した

頃みたいだ。あの頃、量産車はブレーキも、トランスミッションも、エンジンも弱くて、鈴鹿

全開で1周出来なかったンだから」と、日本のガソリン車創世記を回想した。

 つまりはこの全日本EV選手権第1戦、日本の自動車産業の新たなるステージへの幕開

けなのかもしれない。

(続く)