番外編・プリウス急加速問題(98)

  「10・15モード」、「JC08モード」、「米国LA4モード」で、電気自動車の航続距離に

大きな差が生じるのか?

 A 我々が「i-MiEV」で実験した結果では、「JC08モード」での航続距離は「10・15モード」

の場合より若干短くなった。「米国LA4モード」は、(カリフォルニア州)ロサンゼルスのダウ

ンタウンで、朝の通勤時間での走行状況を反映したモード。これは都市内走行と高速道路

走行が組み合わさっている。「10・15モード」と比較して、平均車速も最高速度も高いため

(ガソリン車の場合、アイドリング比率も米国LA4モードの方が低い)、「米国LA4モード」で

電気自動車の航続距離は、「10・15モード」より短い値になることが想像出来る。

(筆者注:つまり、「10・15モード」は、「JC08モード」、「米国LA4モード」どちらに対しても、

電気自動車での航続距離は長くなる。また、「リーフ」メディア向け試乗に関する報道で、日

産関係者はリーフは「JC08モード」で200km程度になる、と予測している。つまり、現状日

産が提示している「米国LA4モード(100マイル=160km)」より「JC08モード」の方が数値と

して上になるということだ)

  プラグインハイブリッドについては燃費(=電費)について昨年、交通研が試験方法を

策定し、国土交通省で認証された(企業向けリースされている「プラグインプリウス」のカタ

ログに表記済み)。電気自動車に関して、航続距離だけではなく、電費に関する試験法/

走行基準
を策定する計画はあるか?

 A プラグインハイブリッド試験法において、電費(航続距離〈等価プラグイン距離〉、充電

電力)を規定したが、これと同等の考え方を電気自動車にも導入する必要があると考えて

いる。具体的な試験法としての策定については、現時点では決まっていない。

  電気自動車の航続距離は、搭載される電池の劣化によって大きな影響を受ける。

現状で、自動車メーカー、または蓄電池メーカーが交通研、または国の機関に、電池劣化

に関するデータを提供する義務はあるか?

 A 自動車メーカー、蓄電池メーカーが、国の機関に電池劣化データ、もしくは電気自動

車等において、駆動用バッテリー劣化に伴う性能変化について提出する義務はない。


一般ユーザーの認識を高めるために
条件別の航続距離を明示すべし


 このように日本において、電気自動車の各種規定は「発展途上」にある。さらに「走行条

件別での航続距離」に至っては、国としての基準は皆無であり、自動車メーカー側から、

ユーザーに対する「説明責任」のあり方も不透明だ。


 前述の日産・渡部執行役員の講演の前、同社は日本では初めてとなる一般ユーザー向

けの「リーフ」試乗会を開催した。その現場で参加者の声を30人強(参加者は約100人)

拾ってみると「160km走るそうなので、それなら一応安心」という方が多かった。だが「走行

条件別での航続距離の大幅な変化」について認識している人はほとんどいなかった


 こうした状況について、日産自動車マーケティング本部・マーケティングダイレクター(兼)

ゼロエミッション事業本部事業部長(兼)渉外部担当部長、島田哲夫氏は、次のように説明

した。


 「使用条件電気自動車はガソリン車より航続距離変わる、ということをまずユーザ

ーに(今後)伝える。そのうえで、どういう条件で変わるのかを理解して頂くことが、電気自

動車を使って頂く際のポイントだと思う。一般的にガソリン車の場合、ユーザーの方の多く

がカタログ燃費を鵜呑みにはしていない。実燃費がカタログ値の2~3割減が当たり前、と

いう風潮がある。電気自動車の場合、そのような『世間相場』がない。


 それ(=世間相場)を我々メーカーとして作るつもりはない。(事例として)初期にi-MiEV

購入した顧客から(実際の走行条件で、10・15モードの160kmの)『なんだ半分しか走らな

いではないか』という声があったとも認識している。そうしたなか、我々としては、ユーザー側

とより密接なコミュニケーションをとっていく。(航続距離の変化を理解してもらうには)時間

はかかると思うが、今後ジックリと説明していくつもりだ」(島田氏)


 具体的なコミュニケーション方法として、同氏は以下の例を示した。

●「リーフ」にエコモード切り替えスイッチがあり、同機構が作動すると、エネルギー効率が

約10%向上。これにより、エアコンの風量が落ちたり、加速が落ちるが、市街地走行の距

離が伸びることを説明。

●急加速、急減速をしない、いわゆるエコドライブを心がければ、ガソリン車以上にエネル

ギー効率が良くなることを説明。

●最終的には、ユーザー側の様々な使用シチュエーションで、航続距離とバッテリーの残

量がどうなるのか、何パターンか示していく。


 世界的な電気自動車普及の立役者である日産におかれては、「走行条件別の航続距

」について今後、是非ともユーザーと真正面から向き合って頂きたい。


 長年にわたり「(事実上の)タブー視」されてきた、「電気自動車航続距離問題」。日本

電気自動車の本格普及期を目指すいまこそ、自動車メーカー各社は自社の電気自動

車の「ありのままの姿」を公の場にさらすべきだ。さもなければ、「鶏と卵」といわれる、

電気自動車のインフラ整備の明確な事業計画も立たず、日本全体の成長戦略が大きく

崩れてしまう。

http://diamond.jp/articles/-/9038

 
 

ハイブリッドをもたなかった日産は、電気自動車にその経営資源を集中している模様だ。

もっとも2004年にトヨタからハイブリッド技術を買い、2007年にアメリカでアルティマハイブ

リッドを発売している。そのハイブリッドも販売が振るわず、その間トヨタのハイブリッド技術

を習得して新たに自社開発のハイブリッド技術を完成させたのである。そして2010年11月

2日
にはアルティマハイブリッドの販売を中止し、日産のハイブリッド車両はフーガハイブ

リッド
に置き換わっている。このハイブリッドシステムは、1モーター・2クラッチ式と言われ

ているもので、ハイブリッド用バッテリーには(トヨタニッケル水素電池と異なり)リーフと同

じのリチウムイオン電池を採用している。そのためクラッチの一つでエンジンを切り離して

モーターのみの走行を可能にしている。そしてその間発電機はエンジンの力を

借りて、2次電池に電気を充電しているのであろうか。その結果高速域での燃費向上が

ネックであったTSH-Ⅱに比べて燃費も向上しているという。


フーガハイブリッドの発売開始から1ヶ月半後の2010年12月20日に、日産は満を持して

完全な(5人乗りの実用的な)電気自動車の「リーフ」を発売した。三菱自動車iMiEV

次ぐ完全な5人乗りの電気自動車であり、電気自動車としては2番手であったが2011年11

月15日に2012年次RJCカーオブザイヤーを受賞し、更には2011年12月3日には

2011-2012日本カーオブザイヤーも受賞したのである。そして世界のもろもろのカーオブ

ザイヤーも席巻して行ったのである。


RJCとはAutomotive Researchers' & Journalist' Conference of Japan「日本自動車研究

者・ジャーナリスト会議」と呼ぶらしい。
(http://www.npo-rjc.jp/)


この電気自動車としての実用性を持ったと言うことは、持続可能なゼロ・エミッションの実現

に近づいたと言うことなのである。内燃機関のエンジンでガソリンを燃やして常にCO2を排

出しながら走る代わりに、低騒音の電気モーターで車が走るということは、ゼロエミッション

社会に近づくことができそうだと言う気持ちを世に与えたことが評価されたのであろう。もち

ろん総ての車が電気駆動になっている訳でもなく、モーター、バッテリー、ボデー、アクスル

などの製造過程では多くのCO2が排出されているが、車の走行時でのゼロ・エミッションが

可能となることに、評価の目が行ったものであろう。


だから1997年に世界で始めて、エンジンとモーターで動く量産型のハイブリッド車・プリウ

が新発売された時にも日本カーオブザイヤーを受賞しているが、それと同じ内容の衝

撃だったのである。


日産「リーフ」は下記に示すように世界で、各種の賞を受賞している。

http://ev.nissan.co.jp/EFFORT/HISTORY/award.html


2011-2012日本カーオブザイヤー
受賞(2011年12月3日、東京ビックサイト・東京モーターショー)

2012年次 RJCカーオブザイヤー
受賞(2011年11月15日、ツインリンク茂木・栃木県)

ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー2011
受賞(2011.4.21,ニューヨークインターナショナルオートショー)

欧州カー・オブ・ザ・イヤー2011
受賞(2010.11.29,フランス・パリ)

グローバルモバイル賞2011
受賞(2011.2.15,GSMAモバイル世界会議スペイン・バルセロナ)

2010年度グッドデザイン賞 金賞
(2010.11.10,東京ミッドタウン・ホール港区赤坂)
グッドデザイン賞には内閣総理大臣賞(大賞1点)と経済産業大臣賞(金賞14点)がある。

 
 
それにしてもバッテリーによる航続距離の変動幅の大きいことには、要注意だ。

先の論考に記載されているように、

『「i-MiEV」の電池消耗量は、ハイペースで走行すると電池残量表示の1目盛(全部で16

目盛)でコース1周(2.4km)だった。つまり、満充電状態での航続距離は、

16×2.4=38.4kmとなった。これは、同車のカタログ値(10・15モード)の160kmの4分の1

以下
だ。


と述べられているように、その走行状態の違いにより、航続距離は極端に少なくなる。これ

では自動車としては困るのである。日産のリーフでも、『航続距離は米LA4モードで100マ

イル(160km)とされてきた』ものが、我々が巷で使う日常的な走行条件では、その半分

の80km前後に減少してしまうという。これもi-MiEVのように高速走行すると、更に減少し

て40km程度しか走らないものと思われる。これでは高速道路では常に充電を考え考え走

ることになり、その都度充電ししかも充電に数時間かかっては全く時間の浪費となってし

まう。やはり電気自動車は何らかの方法で充電するための動力を積載していることが必須

となろう。だからGMの「ボルト」は1.4Lのガソリンエンジンを積んだのであろう。積んだら積

んだで遊ばせておくにはもったいないと考えて、ハイブリッド式に車の動力としても使うよう

にしたものと推測できる。

だから「レンジエクステンダー式」などとしゃれた名称を付けざるを得なかったのである。

(続く)