2011年12月21日
エコカーの真相 第十二回/テレビ・新聞が書かない「EVの真実」
Text :桃田健史 Photo:オートックワン編集部
テレビ・新聞が書かない「EVの真実」
第42回東京モーターショー2011において、各メーカーはこぞってEV(電気自動車)を出展
した。
トヨタ「FT-EV Ⅲ」、日産「PIVO 3」、ホンダ「フィットEV」、ダイハツ「PICO」、スズキ「Q-コン
セプト」、BMW「i3」などだ。こうしたEVを前に、テレビや新聞は
「エコカーが本格化。EVがどんどん売れる時代になる」
と報道する。
しかし、クルマに詳しい本サイト読者のなかには、EVの普及に対して疑問を持っている方
も多いはずだ。
例えば―――、
「毎日通勤に使っています、リーフ。確かにこれ、良く出来たクルマだと思います。乗り味も
ハンドリングも、上級なガソリン車並です。でも、航続距離が少ないのも確か。フルに充電
しても、実際には100kmちょっと走れればいい。まあ、僕はこれで十分ですけど。EVはまだ
まだ、創成期だと思いますね」(東京都府中市在住・リーフのオーナーさん)
「コンビニとかで、インフラはこれから増えるみたいやけど。でも、本当にこれからEVが急
に増えるンか? 第一、トヨタはハイブリッドとプラグインハイブリッドが主体やし。雑誌と
かで、トヨタがEVに本気になるの、まだまだ先だって言うてるやん」(大阪府豊中市在住・
メルセデスEクラスのオーナーさん)
「Webで見たけど、マツダはデミオEVを開発しているらしい。でもそれって、アメリカの法
律の対策だって書いてありました。フィットEVも出るみたいだけど、コンパクトカーでEVっ
て、どうなんでしょうか?ミライースとか安くて燃費が良いクルマ、これから増えそうだし。
EVだと値段、高くなるンじゃないですか?」(広島県広島市在住・デミオのオーナーさん)
こうした声にズバリ、お答えしよう。世界各地でEV最新現場の取材をしている筆者が、EV
業界の裏と表をご案内。
これさえ分かれば、あなたも今日から「EV通」だ。
http://autoc-one.jp/special/941000/
2011年12月21日
「トヨタがEVで出遅れている」という報道は嘘だ!
Text :桃田健史 Photo:オートックワン編集部
「トヨタがEVで出遅れている」という報道は嘘だ!
第42回東京モーターショー。
その西館のトヨタブースには、入口付近に「86(ハチロク)」。
その先には、「プリウスPHV」「FT-EV Ⅲ」、そして「FCV-R」が一直線上に並んだ。つまり、
プラグインハイブリッド車、電気自動車、そして燃料電池車だ。
これはまさに、トヨタが過去数年間に渡って主張してきた、電動化車両の正常進化そのも
のだ。つまり、2011年現在、トヨタはプラグインハイブリッドの量産化を決めただけで、
量産型EVの具体案は示していない。だから、「リーフ」「i-MiEV」に先を越されているような
印象を持つ人もいると思う。
しかし、EVは航続距離がガソリン車と比べると少ない、また走行条件により航続距離の
変化量が極めて大きい、さらには充電インフラの世界市場での標準化が未確定など、様
々な課題がある。
そのためEVは限定的な市場であり、その普及は急速に進まない。これが、世界の自動
車産業界での定説だ。
だからトヨタはいま、EV量産化に動かない。その逆パターンとして、日産と三菱は動く。つま
り「トヨタが動かない間に、ビジネスの基盤を築け」という経営判断だ。
また自動車業界のなかでは、トヨタはリチウムイオン二次電池技術で出遅れている、と
まことしやかにいう人がいる。同分野で世界をリードしてきた三洋電機の技術が欲しかっ
た、とも噂される。
だが、現実は違う。自動車用のリチウムイオン電池は、大量に製造するという点では、ま
だ創成期にいる。その過程で、トヨタであれパナソニックであれ、その合弁が基盤であるプ
ライムアースEVエナジー社であれ、トライ&エラーは起こる。
しかもそれは、日産系の電池メーカー・AESC(オートモーティブ・エナジー・サプライ)であ
れ、三菱系のリチウムエナジージャパンでも同様だ。
これが、自動車用リチウムイオン二次電池に関して、これまで数多くの現実を見聞きしてき
た筆者の本音だ。
さらにいえば、トヨタは本社直轄のほか、グループ会社のなかにも、二次電池の基礎研究
開発の部門がある。その規模と予算は、日系メーカーのなかで最大規模だと考えられる。
さらに、次世代の二次電池開発をBMWと共同で進めることが明らかになった。
(http://autoc-one.jp/news/921769/)
重ねて言う。トヨタはEV戦略でブレはない。トヨタの社内教訓、適時適材適所はEVにも適
用されている。
また、参考までにトヨタEVについて2点、付け加える。1点は「コムス」について。90年代後
半の「RAV4 EV」以来、EV量産車はない。トヨタのグループ企業のトヨタ車体が今年春ま
で生産していた「コムス」は、トヨタ本社が直接関わったプロジェクトではないので、「トヨタ
のEV」とは言えない。
2点目は「テスラ・トヨタ」。昨年11月発表のテスラ・トヨタによる新型「RAV4 EV」のプロジェ
クトは、トヨタのEV開発陣もびっくりの飛び入り参加だ。
これは、北米での工場売却など様々な要素がある「経営判断案件」であり、あくまでも北米
での特殊事例なのだ。そのため、テスラが推奨している、いわゆるパソコン用電池
の「18650」(直径18mmx高さ65mm)のリチウムイオン二次電池を数千本単位で使用す
るEVは、トヨタ電動車ビジネスの本流にはならない。
http://autoc-one.jp/special/941000/0002.html
(続く)