番外編・プリウス急加速問題(110)

2011年12月21日0003
「フィットEV」「デミオEV」が、いきなり登場したその理由
Text :桃田健史 Photo:オートックワン編集部

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「フィットEV」「デミオEV」が、いきなり登場したその理由

フィットEV」「デミオEV」が、いきなり登場した理由。これは、ZEV対策だ。アメリカ・カリ

フォルニア州の大気保全局(CARB)が90年代に設定した規制だ。

ZEVとは、ゼロ・エミッション・ヴィークルを意味する。カリフォルニア州は世界で最も排気ガ

ス規制が厳しいとされ、そこでのZEV規制を達成できず反則金を支払うことは、自動車メ

ーカーにとって企業イメージダウンにもつながる。そのため、世界の各自動車メーカーは

「EVは、ZEVありき」と言う。

90年代後半
に、このZEV規制が厳しくなり、トヨタ初代「RAV4 EV」やホンダ「EVプラス」な

どが同州内で市販された。

現在は2009年モデル(2008年夏)からの規制対象期間で、トヨタ、ホンダ、日産、GM

フォード、クライスラーがZEV規制で最も厳しい条件をクリアしなければならない。
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ホンダは当初、燃料電池の「FCXクラリティ」をZEV枠で想定していたが、北米での

リース販売が予定台数に達しなかった。そのため「フィットEV」の投入が必然となった。

またマツダは、今年11月に発表された2018年モデル~2025年モデルまでのZEV規制で、

上記6社に新たに加わった6社のなかに入った。現在、ハイブリッド車も量産型の燃料電池

車もないマツダにとって「デミオEV」が必然となったのだ。また、フォード、GMVW、アウ

ディなども「EVはZEVありき」が本音だ。

さらにいえば、欧米メーカーと日系メーカーは、急速充電器の標準化について対立して

いる。

日系メーカーは直流充電のCHA de MO規格を推進。欧米メーカーは、直流充電と交流

普通充電のコネクターを一体化させた「コンボコネクタ」を主張している。

両者どちらが世界標準となるのか、または並存するのか?さらには、欧米とも日本とも違う

規格を主張している中国が今後、どう出てくるのか?今後どうなるのか、全く予想がつか

ない。

こうした様々な裏事情があるため、欧米メーカーが基本的に「EVに対してコンサバ」なの

だ。またテスラ、フィスカー(正確にはプラグインハイブリッド車/レンジエクステンダー)な

ベンチャー系については、製造業というイメージより「投資家の投資対象」という位置付

けが強い。つまり、浮き沈みの激しいシリコンバレーのIT企業たちと同じだ。

この他、ダイハツ「PICO」、スズキ「Q-コンセプト」などは、本サイトで以前紹介した「超小型

モビリティ」だ。これらは基本的に日本市場専用で、日頃の移動にクルマがかかせない地

方都市の高齢者向けだ。

乗用車と自動二輪の中間的な存在で、確かにEVなのだが、「リーフ」「i-MiEV」等とは設計

思想が全く違う。

以上、EVは様々なバックグランドがあることがお分かり頂けたと思う。

http://autoc-one.jp/special/941000/0003.html

筆者プロフィール:桃田健史 Ev_momota

日米を拠点に、欧州、BRICs新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年

間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持

つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車

レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤ

モンド社)。1962年東京生まれ。

 
 
何はともあれ、リチウムイオン電池がキーとなる。トヨタBMWと次世代リチウムイオン電

池で共同研究を開始すると言う。片や日産ダイムラーとEVの共同開発を進め2014年

に販売を始めるという。何かと騒々しくなってきている。日本ではトヨタと日産がお互いにラ

イバルとしてしのぎを削ってきたが、ドイツでお互いにしのぎを削っているBMWとDaimler

と、夫々協調してしのぎを削りあうこととなるようだ。この戦いはどちらが勝利するのであろ

うか。

 
 

自動車ニュース  2011年12月1日
トヨタBMWグループ、次世代リチウムイオン電池の共同研究で合意 | 自動車ニュース 【オートックワン】

次世代環境車・環境技術に関する中長期的な協力関係構築も
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http://autoc-one.jp/news/921769/photo/

トヨタドイツ・BMWは12月1日、次世代リチウムイオンバッテリー技術共同研究開

に合意したと発表した。また欧州トヨタにおいて、BMWのクリーンディーゼルエンジン

供給についても併せて明らかにした。今後、さらに次世代環境車や環境技術についても、

中長期に渡り協力関係を構築に向け覚書に調印した。

脱石油の時代に向け、次世代環境技術と言われる選択肢の中で現在最有力候補となる

のが、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド)だ。それを支える電池の開発

は、世界各国の自動車メーカーにとって最有力課題となっている。

現在市販EVで先行し、独自のリチウムイオン電池を自社で開発・生産する日産は、グル

ープのルノーに加え、ダイムラーグループ(メルセデス・ベンツ)との間でも、EVや燃料電池

車に関する協業に向け検討に入っている。ハイブリッド技術で大きく先行しながら、リチウ

ムイオン電池の技術においてはやや保守的な印象もぬぐえないトヨタと、メルセデスの最

大のライバルであるBMWが手を取ったことで、最新の電池技術の開発に弾みをつける狙

いがあるようだ。

BMWの1.6・2.0リッター クリーンディーゼルエンジンを欧州向けトヨタ車に供給へ

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BMWのクリーンディーゼルエンジンについては、2014年より1.6リッターと2.0リッターのエ

ンジンをBMWよりトヨタへ供給し、欧州向けモデルに搭載する。

トヨタ自動車の内山田 竹志 取締役副社長は、コストにシビアな小型車向けのエンジンで

あり、自社で独自開発するよりも供給が妥当と判断したという。BMWとは従来より技術交

流があったといい、エンジン供給以外での協業の可能性について2011年4月頃より検討し

ていたことを明かした。

http://autoc-one.jp/news/921769/
(続く)