尖閣諸島問題その3(17)

落としどころを用意しつつ、沖縄をテーブルに載せてくる

 そろそろ筆者の結論を書こう。

 中国は511日の環球網により、「琉球だって狙う可能性がある」ことを見せた。しかし実

際上はそこまでは実行せず、「沖縄国」独立を支援するにとどめる。そして「釣魚島領有権

主張だけで譲歩してやるよ」と「落としどころ」を狙う。

 最終的には「だから、釣魚島(と、周辺海域)は日中で共同開発しよう」というところに持っ

ていくのが中国の狙いではないだろうか。

 現在進行している尖閣諸島周辺の領海領空侵犯もまた、その準備の一環であろう。

 この度の一連の現象は、「琉球国独立運動」を支援し、日中対立の構造を「沖縄(中国流

には琉球)」に拡大して「アメリカ」をターゲットにして、最終的には日本に対する「落としど

ころ」に追い込んでいくための下準備、と筆者は見る。

 沖縄を巡る一連の事態を「中国政府に対する人民の不満をそらすための中国政府の小

芝居」と見る向きも日本のメディアには多いようだ。日本を「当面の仮想敵国としてでっちあ

げている」と。余談だが、実際、筆者に「そういう意見を言って下さい」と、コメントを求めてき

たテレビ局もあった。

 中国は確かにそういう行動を取る場合もあるが、この場合は違う。そこで筆者が「それは

誤っている。自分の意見で嘘は言えない」と回答すると、「それなら、私たちの望む方向で

発言してくれる方を探します」とのことだった。


1992
年の「領海法改正」を無視したツケ

 先日、日本の元外交官と会談する機会があった。

 1992年の中国が領海法を制定した時の日本の反応(中国が尖閣諸島を領海内に組み

込んだことをほとんど無視、メディアも大きくは報じなかった)をどう思うかという質問があっ

たので「日本政府の対応は甘かった」と回答した。すると元外交官は激高して「今さらその

ようなことを言うのは天に唾するようなものだ」と筆者を非難

 それなら問う。

 いま中国の党と政府のウェブサイトが「カイロ密談」を掲載し、ルーズベルト元大統領の言

葉を悪用して「琉球領有権」論議にまで斬り込んできているとき、なぜ日本は「カイロ密談」

に潜んでいる尖閣に関する「中国の矛盾」を突かないのか?

 中国は日本のこの反応を観察して、「カイロ密談」を逆利用し、「琉球国独立」に向けて

動き、「尖閣諸島」共同開発に持っていこうと、虎視眈々と狙っている(注2


(注2ブログの筆者としては、中国の狙いは当座としては共同開発もありうるが、その先の究極の狙いはまた別のところにあると見るべきだと思っている。それが先に示した「2050極東マップ」なのである。共同開発などで日本人の意識をある程度麻痺させておいてやおら武力で併合するのであろう。日本は当時の韓国のように破綻していないので、併合される謂れはない。


 日本は軍事力強化の前にやることがあるはずだ(注3


 カイロ密談の矛盾を中国に突き付けていくべきなのである。それをしないと「日本、与(く

み)しやすし」と侮られて中国は本記事で述べた戦略を着々と進めていくだろう。

 92年の中国の領海法制定時と同じ愚を、日本は繰り返すべきではない。


(注3ブログの筆者としては、確かに軍事力だけでは効果的な対抗は出来ないが、軍事力強化の前に、では

なく同時にではないかと確信している。同時に強化して行かないと時機を失してしまうのではないかと危惧す

る。今でしょう。


ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び

取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、そ

の道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む

意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20130521/248312/?rt=nocnt

 

中国は戦わずして勝つという「三戦」と言う長期戦略の下に尖閣諸島問題をプロパガンダし

ているのです。だから、ある意味怖いのである。知らないうちに世論が、間違った方向に誘

導されてしまっているからである。「三戦」とは、世論戦・心理戦・法律戦を言うが、この次に

来るのが「武力戦」なのであろう。そのために中国は現在アメリカをしのぐ事を目標に軍備

拡張を勧めているのであるが、日本は軍事力強化の前にやることがあるはずだに対する

答えは、この三戦」で日本も中国に対抗してゆく必要があるのである。

この「三戦」については、2012.10.25~10.30尖閣諸島問題その2(74~77)などを参照

願う。


そのひとつが遠藤 誉氏が述べている「 カイロ密談の矛盾を中国に突き付けていくべきな

のである。それをしないと「日本、与(くみ)しやすし」と侮られて中国は本記事で述べた戦略

を着々と進めていくだろう。

 92年の中国の領海法制定時と同じ愚を、日本は繰り返すべきではない。」と言うことで

ある。


ただし、軍事力強化の前に、ではなく軍事力の強化と同時に、それは実施してゆかなけれ

ば確実に遅れを取ってしまう。日本もこの「三戦」で中国に対抗してゆかなくてはならないの

である。事実、この「チャイナ・ギャップ」の著者である遠藤 誉氏も、いつの間にかこの中国

の世論戦に負けてしまっているのではないかと思われる記述が(そのように意図していな

いかもしれないが)、この「チャイナ・ギャップ」にはあるのである。


それはのP378の2,3行目の表現である。次のようなものである。


 中国はこの矛盾点を直視し、「人民の声」に耳を傾け、領空及び領海侵犯が、日本の軍

国主義化を助長すると言う事実を認識してほしい。まさか中国は日本を「軍国主義国家」に

わざわざ追いやって、・・・


この「日本の軍国主義」は何を意味しているのであろうか。安倍晋三首相の「憲法改正

により自衛隊国防軍として位置づけます。

自民党政策BANK・外交・安全保障 http://special.jimin.jp/political_promise/bank/d_001.html より)

 


をさしているのであろうか。もしそうであるなら、遠藤氏のこの表現全くの間違いである。


ここで言う軍国主義化とは、

「自国の勢力の拡大や政策を押し通すために、軍事力などを背景にごり押しすること」を意

味するのであれば、それは間違いである。


2013.6.4(8)
では帝国主義の定義を「領土や資源の獲得を目指して自国の勢力を拡大する

ために、軍事力などを背景に他国や他地域に押しいることを進める思想や政策」と述べ

たが、それを連想するような形で「日本の軍国主義化」と言ったように連想できる。だからこ

れは全くの間違いで、将に中国の世論戦・心理戦の影響をもろに受けているように思われる。

ここで言っている「国防軍として位置づける」と言うことは、軍事力を背景に日本の領海領

空領土に押し入ろうとする国が近くにあるから、それを防ぐための力として自衛隊国防軍

と位置づけるのであり、それなくして軍事力を行使することはない。


多分そういうことは聡明な遠藤誉氏であるから十分判っているのであるが、ついこのような

表現(日本の軍国主義化)をしてしまうのである。これこそが中国の世論戦・心理戦の影響

を知らず知らずの内に受けている証拠なのである。注意するに越したことはない。
(続く)