日清戦争開始120年に考える。(40)

ネピドーでの日中外相会談は、その為国内へのプロパガンダに使うために、王毅氏から

岸田外相にワザと厳しい言葉を浴びせ掛けてきたものであろう。格好の国内プロパガンダ

にはなるからだが、だからこんな事からも、習近平政権の基盤は、それほど強固なものでは

ない、と思われる。まだまだ反日政策を強力に推し進めてゆかないと、国内をまとめ切れな

いと見える。

 

 

 

中国から見る安倍改造内閣
党人事に注目も依然強い不信感


【第484回】 2014年9月10日 陳言[在北京ジャーナリスト]

http://diamond.jp/articles/-/58898

9月3日に安倍晋三首相は内閣と自民党人事を刷新した。とくにリベラル派の谷垣禎一

事長、中国とのパイプを持つ二階俊博総務会長などの自民党人事から見て、少なくとも中

国の声が自民党の上層部に届くようになり、これまでの618日とは様相が変わってきた。

しかし、安倍政権価値観外交アベノミクスの行方などについては、中国はどう判断すべ

きか
、今も結論は出ていない。(在北京ジャーナリスト 陳言)


安倍内閣人事と自民党人事の温度差


自民党上層部の人事刷新については中国でも詳細に報道され、一様に期待をかけてい

るが、2006年に第一次安倍政権が発足した時のような、中日関係の氷をすぐ溶かしたいと

いう熱望は、もはやなかった


 2012年の年末に第二次安倍政権が発足した時には、6年前の実績があったため、選挙

の際に厳しく中国を批判したとはいえ、多くの日本専門家が安倍新政権に期待をかけて

いた。というのも民主党政権は、当初こそ中国人を鼓舞するような「アジア共同体」などのス

ローガンを掲げたものの、後に尖閣(中国名:釣魚島)の国有化で中日関係を大きく挫折さ

せたからだ。その未熟さに中国の外交官たちは呆れていた。このため外交を熟知する自

民党、とくに安倍首相なら期待できると思っていたのだ。


 しかし、6年ぶりに就任した安倍首相は、まったく様変わりしていた。その価値観外交

は、中国から見れば、いうまでもなく中国を孤立させ、中国包囲網をつくる外交である。

少なくとも日本のメディアは、安倍首相が外遊の際、かならず価値観について語ることを報

道し、それを「中国を牽制している」と解説していた。


 さらに昨年の暮れに安倍首相は靖国神社参拝を断行し、中国は不意打ちされたと感じ

た。まったく想像もしなかった日に参拝し、日本に対する期待はここで消滅した。


靖国参拝に対して中日の見方はまったく異なる。確かに昔、大平正芳首相(当時)らが在

任中に靖国を参拝した。クリスチャンの大平元首相があえて靖国神社を参拝するのは、

戦死者に対する崇敬を表していたが、周辺国を挑発する意味はまったくなかった。もちろん

マスコミに予告して参拝したわけでもなかった。おそらく安倍首相も昨年12月26日早朝

一人で密かに参拝することで日本のマスコミが報道しなければ、中国のマスコミなども知る

ことはなかっただろう。


 しかし、1985年の中曽根康弘首相(当時)による靖国神社公式参拝によって、はじめ

て参拝は戦後政治の総決算と結びつき、外国(旧連合国側)には戦前への逆流と思われ

た。中曽根首相はそれを察してからは、在任中の正式参拝は控えていた。


来年は反日記念行事がさらに大規模になる懸念


小泉純一郎首相(当時)の参拝は、周辺国を挑発していると中国のマスコミは見ていた。

さらに安倍首相の公式参拝は、外国から見て挑発の意味がいっそう深まっている。

靖国問題で中国側は歴史認識、侵略戦争、A級戦犯などの言葉で応酬しているが、さらに

挑発という新しい意味も無視するわけにはいかない。中国は靖国参拝に対して批判のトー

ンを高める
と同時に、いろいろな行動にも出ている。


 例えば、いままで8月15日や9月3日には、中国政府として公式にイベントを行っていたわ

けではない。しかし今年の9月3日は、政府上層部の全員が抗日戦争記念館でのイベント

に参加した。これを見ていると、やはり日本関連のイベントは、これから制度として固定化し

ていくと感じざるをえない。とくに今年は第二次世界対戦が終了して69年であり、あまり大き

なイベントは実施されないはずだが、中国では5年、10年の節目となると、大きなイベントを

やる慣行がある。来年は70年に当たるため、抗日戦争の記念行事が大規模に行われると

予想される。


自民党上層部の人事の変化を見て、中国は来年9月までの日程を変えるだろうか。

たぶん変えることはないと思われる。


安倍政権を長期政権にしたいという日本の民意を、我々もよく理解している。1年目には

安倍首相が少々中国を批判しても、我々はできるだけ黙っていた。しかし最終的に迎えた

のは靖国の正式参拝。もうこれからは容赦なく日本に対して反撃していく」とある日本専門

家は言う。


 確かに2014年に入ってから、中国上層部から日本向けと思われる批判がいろいろな場

で出始めている。


 今のところ安倍内閣は中国に対話を呼びかけているが、中国を牽制する動きを停止した

わけではない。自民党上層部の人事で関係を改善したいというシグナルを送ってはきた

が、安倍内閣人事と党人事には大きな温度差があり、それをどう判断するか、今の中国は

態度をはっきりさせたわけではない。


価値観外交の真意に不信感


11月に北京で開かれるAPECにおける習・安倍単独会談については、7月以降、外交

の場で本格的に交渉している模様だ。


 中国のさまざまな場で聞かれる質問に、「日本の価値観外交の目的はなにか」がある。

内閣を刷新してから安倍首相はすぐバングラデシュスリランカ訪問に出かけたが、日本

の新聞報道を読んでいると、スリランカへの巡視船無償供与、海上安保協力の強化など

は「中国を意識している」(9月7日付け日本経済新聞)と報道されている。これに対して、中

国は安倍政権価値観外交を継続していると思う。


 中国と同じ社会体制を維持しているベトナムや、ほとんど同じ体制のモンゴルでも、安倍

首相は日本がそれらの国と同じ価値観を共有していると言うのに、中国とは同じ価値観と言

うことはない。すなわち、価値観で線引きをして、中国には日本と違う価値観があり、別に

取り扱っている。言い換えれば、今の世界を敵味方を分ける場合、日本は価値観外交で識

別し、中国は少なくとも味方ではない、と判断していると中国側には映る。


価値観外交の背景は何か。おそらく日本から見れば。アジア回帰のアメリカはいずれ中

国とバトルする。それを見据えた上で、中国、韓国以外のすべての国と団結して、中国包

囲網
を作り、アメリカの回帰を迎える。


 中国の専門家を取材していて強く感じるのは、アメリカに対する理解はあっても、日本と

は大した交流をしていないことである。「アメリカは我々を重要視している。中国との見解の

違いはいくらでもあるが、中国を封じ込める意図はない。それなのに日本は価値観外交

中国包囲網をつくろうとしているが、それはアメリカさえも理解していないはず」と、彼らは

口を揃えて言う。


 日本国内から価値観外交を見ると、むしろきわめて単純であり、理解しやすい。国民の

大多数が中国を親しいと思っていない国では、中国を牽制する外交は当然のように歓迎さ

れるだろう。さらに軍備関連の支出をあまり増やせない財政状況のなかで、領土問題、

価値観外交
がなければ、それを増額させていくことができない。価値観外交の最大の目的

は日本国内の嫌中感情に訴え、さらに軍需産業を拡大するところにあると見える。


 日本国民が安倍政権に期待する最大の願いは経済の復興である。価値観外交の推進

によって中国との関係を疎遠にし、さらに中国市場へ参加する熱意を冷やしたため、日本

企業の対中国投資は大きく減少している。一面では中国経済もこの価値観外交の影響を

受けている。もう一面では、日本ももっとも成長していく市場への参加を、自ら放棄してしま

ったようだ。

(続く)