次世代エコカー・本命は?(8)

これは小生のブログの2012.4.23~24の「番外編・プリウス急加速問題(99~100」に載せたものであるが、ご一読願いたい。

 

このZEV規制に対して先に紹介した『ZEV規制2018年問題、Tesla以外の対応は 和田 憲一郎=開発イノベーション コンサルタント、エレクトリフィケーション コンサルティング代表 2013/09/09 00:00 』の2018年規制による改正が反映されるのである、と小生は見立てている。

 

この引用文の中に、小生の独断と偏見で2018年規制の内容の注釈を緑色の太字で入れてみる。2018年規制の内容が幾分でもクリアになる物と思う。

 

カリフォルニア州ZEVZero Emission Vehicle規制についてはこんなものであろう。ただし我流の解釈なので、間違っているかもしれないので、その点は責任は負いかねる。

 

(1) 加州で6万台以上の車を販売するメーカーは一定量以上のZEVを販売しなければならない。

  このメーカーは、トヨタ・日産・ホンダ、GMFordChryslerの6社である。マツダVWが入って7社とする記事もあるが、合計で次のZEV車を販売しなければならない。各社は当然シェア相当の割合のZEVの販売が必須となる。

(現時点では台数条件などは変わっているかもしれない。)

 

従来の大規模メーカーLVM6社から中規模メーカーIVM(4.5千台~6万台/Y)も対象となる。

従って富士重工マツダBMWDaimlerHyundai-KiaLandRoverVWVolvoなども対象となる。

 

  2009~2011年 11%ZEVを販売すること。

  2012~2014年 12%

  2015~2017年 14%

  2018~       16% 〃 FCV,EV,PHEV(75mile走行)のみで4.5%の販売となる。以前の規制にはHEVも含んでよい事になっていたが、これからは除外される。

 

(2) ZEVは、次のようなランクに分類される。


→FCV,EV,PHEV(75mile
走行)のみとなる。HEV車は除外されるので、下記の表の上二つの車種だけが対象となるものと思われる。

 

・ZEV FCV(Fuel Cell Vehicle) , BEV(Battery Electric Vehicle)

・Enhanced AT-PZEV Plug in HEV , 水素エンジン車

・AT-PZEV ※ Hybrid , CNG(Compressed natural gas天然ガス),対象から外れる。メタノール燃料電池→対象から外れる。

・PZEV (極限まで)排気がクリーン普通車→対象から外れる。

Advanced Technology Partial Zero Emission (Allowance) Vehicleとも。

 

(3) 2012~2014年 12% 車種構成

  12%が総てZEVで満たすことは出来ないと想定されるので、それ以外のLEVで代替してもよい。その比率は次の通りである。

 

・ZEV                         0.79%

・Enhanced ATPZEV 2.21%
・ATPZEV         3.0%

・ PZEV                       6.0%

合計       12.0%

 

例えば、加州の年間の市場規模が100万台で、10%のシェアを持つ会社があるとする。その100万台の10%10万台の12%12,000台は最低でも上記の比率での車種を販売しなければならないことになる。即ち、12,000×0.79/12%=790電気自動車燃料電池車はまだ実用化されていないと想定すると)でなければならないことになる。そして12,000×2.21/12%=2,210Plug in HEVを販売する必要がある。又はこの3,000総てを電気自動車で売ることも出来る。ただし売れればの話だが。だから燃料電池車の実用化はまだ相当先の話となるため、自動車各社はどうしても顧客に買ってもらえる価格で電気自動車を売らなければならなくなるのである。

 

現実的な話として、

もちろんZEVからATPZEVまでの6%(6,000)を総て電気自動車でも構わない。だから日産は確かリーフを5万台販売するとしていたから、電気自動車だけで3,000台をカルフォルニア州にもって行けば事足りる。まあ日産は加州のZEV規制については、左団扇である。

 

トヨタはそのために、何とか電気自動車を物にしようともがいている?様である。その表れがテスラとの提携話だと見ることも出来る。しかし2012年後半に「iQ EV」と言う電気自動車を発売すると言う。'12.3.29,NO.88で紹介しているがこのZEV規制のため、航続距離80kmの「iQ EV」をサイオン系列で販売する計画なのである。そしてAT-PZEVに分類されるPlug in HEV'12130プリウスプラグインハイブリッド車として発売したのである。このためトヨタは何とかこの加州の「ZEV規制」には対応出来そうなのである。

 

問題はホンダである。「FCXクラリティ」と言う燃料電池車で対応する気だったようだが、間に合わない。そのため慌てて?フィットEV(タイプ1.5)を発表している。'12.4.1,NO.91参照のこと。しかしEVZEVにランクされるが次のタイプの Enhanced ATPZEVにランクされるPHEVプラグイン)がない。そのためこの分野もフィットEVでカバーすることになる。それだけ売れるのかが問題である。3%分がどれ程の台数になるかは小生とってはつまびらかではないが、果たして造れて売れるであろうか。それが問題である。

 

それに、これには罰則があり不足ZEV1台につき5,000ドルのペナルティとなる。そして単に電気自動車と言っても、その航続可能距離により持ち点が異なっている。

 

電気としての航続距離が50マイル未満を1台とカウントする事になっており、それ以上の航続距離を持つ電気自動車は持ち点が増加している。これをクレジットと称している。

 

(4) 電気自動車の航続可能距離別クレジット点数について
(「加州のゼロエミッション車」http://www.yasuienv.net/ZEV-CA.htm '09.830による。)

 

(タイプ)  (航続距離など)    (クレジット点数)

Type 0   ~50マイル走行EV     1対象から外れる。

Type 1   50~ 70マイル走行EV   2対象から外れる。

Type 1.5  75~100 〃        2.5  三菱・iMiEViQ EV、フッィトEV

Type 2   100~200   〃      3 日産・リーフなど

Type 3   200 or 100 〃で急速充電や水素補給可 4

Type 4   200 〃        5テスラロードスター

Type 5   300 〃         7→9  燃料電池

FCVのクレジット点数は9点とし、Type0Type1は対象から外れる。他のクレジットは全体的に減らされるし走行距離区分など、その細部は詳らかでない。どなたかお分かりになれば教えてください。

 

(5) ハイブリッド車の分類ハイブリッド車は非対象となるのでこの区分はなくなる。

 

Type C モーター10kw以上、駆動電圧60V以下  0.2

Type D モーター10kw以上、駆動電圧60V以上  0.4 ホンダ・インサイトなど

Type E モーター50kw以上、駆動電圧60v以上   0.5 トヨタプリウスなど

 

 トヨタPHEVプリウスEnhanced AT-PZEVとして電気走行距離が10~20マイルのため、0.9クレジットとなるようだ。シボレー「ボルト」は40マイルなのだが、1.35クレジットと言う。

 

(6) クレジットの計算方法2018年のZEV4.5%のクレジットの内訳はわからない。

  先に2012~2014年 12%ZEVを所定の構成で販売しなければならないことを述べた。この時は簡単に台数として説明したが、実際はクレジット換算で計算される。性能のよい電気自動車はより多いクレジットを持たなければ不公平となるからである。

  即ち10万台販売するメーカーはその12%12,000(台)クレジットポイントZEV車を販売しなければならないのである。

  この12,000クレジットポイントを先に説明した夫々の車種のクレジットで消化しなければならない事になる。

 

12,000×0.79%/12%= 790クレジットは、電気自動車で、Type1.5(2.5crdt)なら790÷2.5=316


12,000×2.21%/12%=2,210クレジットは、PHEV1.35crとすると、2,210÷1.35=1,637

 

12,000×3.0 %12%=3,000クレジットは、通常のHEVで販売しなければならない。HV0.5crとすると3000÷0.5=6,000となる。

 

12,000×6.0%/12%=6,000クレジットは、普通の低燃費車でよいことになる。仮に0.2cr/台と仮定すると3000÷0.2=15,000の低燃費車となる。一般的に残りの88%も低燃費車となる筈なので、10万台-(316+1,637+6,000+15,000=22,953)=77.047台の普通燃費車となる。トヨタであればこれらも総てHEVで済ます事も出来る。

 

と言うことで、少なくとも(このケースでは)316電気自動車を売らなければならない。これがなければこの会社は加州で10万台の車を売れなくなるので、電気自動車の導入死活問題となる。

 

だからトヨタも、ホンダも電気自動車を慌てて出してきたのである。慌ててと言っても本当に慌てて出せるものでもないので、ずっと前から開発はやっていたものと思われる。各社が言う2012年導入と言うことには、このような意味があったのである。

以上は我流による試算なので間違いがあるかもしれないが、その点は悪しからず。)

 

このZEV規制の2009~2011年は11%である。そして2012年にもあるようにPureZEVを一定数販売することも義務付けられている。トヨタもホンダも90年代からEVのリース販売を行っていたが、トヨタはリース終了後それらのEVを売り渡したようだ。然るにホンダはリース終了後それらのEV車を総て引上げてしまったようだ。そのためこのZEV規制になんの効力も持たなくなってしまった。トヨタテスラと提携して、RAV4EVを再度発売しているので、ZEV規制はクリア出来ているようだ。

 

しかし、ホンダは引上げたEVをスクラップにしてしまったので、ホンダは1台もPZEV車を加州では売っていないことになってしまった。ペナルティを払うか、さもなくば他社から余っているクレジットを購入する必要に迫られることになる。そこでホンダはテスラから「ZEVクレジット」を購入したのである。しかも悪いことに、テスラトヨタが出資してしまったのである。ホンダともあろう会社がなぜ「そんなことをしたのか」などとの批判的な意見もあるようだが、これは致し方ないことであった。

 

'70年代にいち早くCVCCを物にしたホンダではあるが、一瞬の経営判断の誤り?が会社の行く末に大きな影響を与えるものである。トヨタも一時期リコール問題の対応を間違えて、偉い目にあっている。だからトヨタも慎重にならざるを得ない。

 

トヨタテスラと提携したのは2010.5.212010.5.31,NO.42を参照のこと)で、ホンダがテスラから「ZEVクレジット」を購入したのが判明したのが、2010.6.2テスラの新規株式公開の登録届出書であった。ホンダとしても購入交渉の時点ではテスラトヨタと提携するなんぞと言う情報は、入っていなかったことであろう。ちなみに三菱自動車や日産にもクレジットの余剰分の購入オファーがきていると言う。これからはますます環境対策・電気自動車への注目が高まると言うものである。

 

(続く)