次世代エコカー・本命は?(27)

法律等の社会的制約と水素と酸素から電気を取り出す化学反応の効率化や、水素を如何に安く安全に作り出すか、と言った各種制度の改革と改善、技術革新と科学の一大変革(イノベーション)が連動して日本社会を覆(おお)ってゆけば、これこそシュンペーターオーストリアの経済学者、現在のチェコ生まれ)の言う創造的破壊の過程となってゆくのではないのかな、などと想像している。このイノベーションによって長期的には日本経済はますます成長してゆくことになる。

 

その1つとでも言うようなプロジェクトが動き出そうとしている。それは大規模な下水処理場から水素を取り出そうと言う試みだ。しかもそれだけではない、その水素を使って電気まで起こそうとする企てだ。


 

トヨタ、GEも食指を動かす
水素インフラ整備の“秘策”

【第181回】 20141117日 週刊ダイヤモンド編集部

世界初となるトヨタ自動車の市販燃料電池車(FCV)の情報解禁日が1118日に迫った。かねて、FCV普及のネックとされてきたのが、FCVに水素を供給する水素ステーション整備の遅れだ。高額な建設・運営コスト、都市部における遊休地の不足が遅延の理由だが、それらを解消するかもしれない、秘策が浮上しているという。

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ソニー本社に隣接する芝浦水再生センター(東京都港区)。下水処理場の有効活用が、水素ステーション整備の一助となるのか
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芝浦水再生センターHPより

 東京都港区にあるJR品川駅港南口より徒歩10分。ソニー本社と隣接する広大な敷地に、芝浦水再生センター(港区)はある。千代田区、港区、渋谷区など「山手線内側の面積」に相当する区域の下水を一手に処理する下水処理場だ。

 この施設の有効活用に、トヨタ自動車が大きな期待を寄せている。現在、水面下では、芝浦など東京都心部にある下水処理場に、燃料電池車(FCV)に水素を供給する水素ステーションを建設しようという計画が、持ち上がっているのだ。「何としても、このプロジェクトを足掛かりに水素インフラを普及させたい」(トヨタ幹部)と鼻息は荒い。

 FCVとは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる「燃料電池」を搭載し、その電気を使ってモーターを回して走る車だ。走行時に水しか出さず、1回水素を充填するだけで600700キロメートルを走行できるため、“究極のエコカー”とも呼ばれる。

 いよいよ1118日、トヨタが世界初の市販FCV「ミライ」をお披露目する情報解禁日がやって来る。年内にも工場出荷されるミライのデビューに、世間の注目が集まっている。

 しかし、である。トヨタ渉外部門幹部の表情はさえない。早くも発売前から、FCV普及を阻む壁として、水素ステーション整備の遅れが明らかになっているからだ。

 政府の計画では、2015年に水素ステーション全国で100カ所建設する予定になっているが、現時点では、わずか13カ所しか稼働していない。

水素ステーション建設に前向きな石油元売り最大手のJX日鉱日石エネルギー幹部ですら、「同業他社に比べて設置ペースが速過ぎる」と、警戒気味だ。水素ステーション建設には約5億円のコストが掛かる。「国が半額補助してくれても25000万円掛かる。ガソリンスタンドならば1億円もあればできる。赤字が明白な事業を加速させるのは、株主に説明がつかない」(石油元売り幹部)というのが、本音なのだ。

 水素インフラが整備されなければ、FCVは普及しない。遅々として進まない現状に、トヨタは危機感を募らせている。そのトヨタが、“ウルトラC”の秘策として期待を寄せるのが、下水処理場の存在なのだ。

 具体的には、下水処理場に集まる汚泥を有効活用し、それらから水素を取り出して、FCV向けの燃料として供給する水素ステーションを建設するというものだ。

「意外にも、下水処理場都心部など好立地にあり、初期のFCVユーザーである富裕層が住む地域とも重複するので好都合だ」(トヨタ幹部)という。

 特に、冒頭の芝浦水再生センターは、20年に開催される東京オリンピック競技会場のベイエリアに近く、「環境に優しい水素社会を国際的にアピールできる」(同)。

芝浦を最右翼として、有明江東区)、砂町(江東区)、森ヶ崎(大田区などの下水処理場もまた水素ステーション建設の候補地として名前が挙がる。

事業性の確保が鍵
先行して進む福岡市の実証実験

 実は、東京都に先行する形で今年4福岡市下水処理場を活用した実証実験が始まっている。下水道革新的技術実証実験というもので、福岡市、九州大学三菱化工機トヨタグループの豊田通商をメンバーに、国土交通省先端事業として進められている。

 下水処理過程にあるメタン発酵槽(消化槽)で発生したバイオガスから水素を製造する、という仕組みだ。実験のオブザーバーである田島正喜・九州大学教授は、「全国に約2000カ所ある下水処理場のうち、消化槽を有するのは300カ所。福岡の事例を全国で応用できる」とみている。

 さらに、トヨタは、ベンチャー企業のジャパンブルーエナジーが保有するバイオマス(下水汚泥もその一種)のガス化技術にも着目している。水素を精製するだけでなく水素発電まで行うプロジェクトには、米ゼネラル・エレクトリックも興味を示している。

 もっとも、都内の下水道事業を管轄し、かつ、東京オリンピックの基本計画を取りまとめる、肝心の東京都の姿勢が固まったわけではない。「都内には、脱水した汚泥を焼却する方式の下水処理場もあり、水素精製ありきの考え方は本末転倒だ」(東京都庁幹部)という考えが根強いのも事実だ。

 そんなタイミングで、トヨタに強力な味方が現れた。国交省が動いたのだ。技術的なハードルを越えて、コスト計算も合うのか。国家予算で行う方法で検討されているという。「目標の水素ステーション100カ所のうち1割程度を下水処理場で占められれば」(国交省幹部)と自信を見せている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

http://diamond.jp/articles/-/62268

 

但しメタンから水素を取り出す方法だと、最終的に二酸化炭素が精製されてしまう。

これは科学雑誌Newto」の2015.2月号に載っていたものだが、次のような形でCO2ができてしまうと言う。

 

CH4(メタン)+H2O=3H2+CO、→ CO+H2O=H2+CO2 と言う化学反応だと言う。メタンが水と反応することにより、最終的には4H2+CO24単位の水素H21単位のCO2が発生する。水素が発生する事には何の異存はないが、CO2の処理をどうするかが問題となる。このCO2は、「二酸化炭素貯留技術」で地下や海底に埋め戻す方法などが考えられているが、この方法は少し厄介では有る。


しかしこのような形で水素インフラ(ステーション)が整備されてゆけば、水素社会の実現はそれほどの夢幻ではなくなるのではないのかな。トヨタ燃料電池車の「ミライ」を世界で初めて発売したからではないが、水素社会の実現にはに日本は非常に有利な位置にいると言う見解も存在している。

 

その理由は次の三つだと言う。

(続く)