次世代エコカー・本命は?(38)

評価の対象とする車種

JHFCの検討においては下記の5車種を対象としてWell-to-Wheel評価を行なっている。

内燃機関自動車(ICEV) 燃料はガソリン、軽油、圧縮天然ガス3
   ガソリン(ICEVInternal Conbustion Engine Vehicle内燃機関自動車
   ディーゼルDICEV
   圧縮天然ガスCNGV Compressed Natural Gas Vehicle
内燃機関ハイブリッド車HEV) 燃料はガソリン、ニッケル水素電池
   ハイブリッド車HEV
プラグインハイブリッド車PHEV) 燃料はガソリン、リチウムイオン電池、電力走行割合は0.5
   プラグインハイブリッド車PHEV
(バッテリー)電気自動車BEV) リチウムイオン電池
   電気自動車BEVBattery Electric Vehicle
(水素)燃料電池車(FCV) 圧縮水素搭載、リチウムイオン電池
   燃料電池車(FCV

評価対象の車種の基本性能は原則として同等としており、その他の前提条件、車種想定、各車種の燃費・電費などの具体的な数値およびその導出の基礎などは報告書に記載されている。

なお、想定しているプラグインハイブリッド車は「電力走行割合」ユーティリティファクターUF0.5のもの。因みに、プリウスPHV2012年式)はUF=0.48、ホンダアコードPHEV2013年式)はUF0.59、三菱アウトランダーPHEV2013年式)はUF0.72である。Battery Electric Vehicle

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JHFC
報告書では、この一覧表に示す各種水素製造・輸送方式の燃料電池自動車FCV)と比較の対象とする各種自動車(ICEVHEVPHEVBEV)について定量的評価を行い結果を示している。

燃料電池自動車への水素の供給方式としては、JHFC プロジェクトの実証水素ステーションの各種方式を参考に、標準ケースでは化石燃料オンサイト改質8方式、化石燃料オフサイト改質6方式、商用電力オンサイト電解2方式の合計16方式を評価している。

Well-to-Tankの評価方法

Well-to-Tank評価とは、一次エネルギー(原油、天然ガスなど)の源の油田やガス田などから自動車のガソリンタンク・圧縮水素タンク、バッテリーまでのエネルギーの流れ(輸送、変換などのプロセス)を評価して、車載のタンク・バッテリーに単位(1 MJメガジュール,エネルギーの単位)のエネルギーを入れるのに必要な一次エネルギー投入量と途中のプロセスで環境に排出するCO2排出量を計算することを言う。

検討の対象とするガソリン、軽油、電気、水素などの一次エネルギー源からタンク・バッテリーまでのエネルギーの流れ(パス)のそれぞれについて数値的に計算する。このJHFC報告書では80のパスについて計算してWell-to-Tankの一次エネルギーとCO2排出量を算出している。

電力の流れでは電源の構成によってエネルギー投入量とCO2排出量が大きく変わる。この検討における電源構成比には検討当時最新の経済産業省 資源エネルギー庁「平成22 年度電力供給計画の概要」(2010.3)による2009 年の推定実績を用いている。この電源構成による電力を「J-Mix」と呼びこの検討では「標準ケース」としている。

発電のCO2排出量は発電方式により異なり、この検討では電力中央研究所による電源別CO2排出原単位のデータと上記J-Mixの電源構成比から算出している。

Well-to-Tankの評価結果

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図3-14は、標準ケース(日本の2009年の平均電源構成電力、J-MIX)におけるWell-to-Tankの燃料消費量とCO2排出量を水素燃料電池車の水素製造・供給16方式をエンジン自動車、ハイブリッド車プラグインハイブリッド車電気自動車と比較したものである。

数値は、燃料1 MJ をタンク・バッテリーに充填するまでの(Well-to-Tank)エネルギー消費量(一次エネルギー投入量)および燃料1 MJをタンク・バッテリーに充填するまでに放出される(Well-to-TankCO2 排出量を示している。Well to Tank でのエネルギー消費量は上の目盛で,同CO2 排出量は下の目盛で読む。なお,圧縮水素の車両充填圧力は70MPa

報告書に記載されている「標準ケース」の結果の整理(p.59)から主なものを下記転載する。

① 水素を製造するためには,現行のガソリンおよびディーゼル燃料を精製する以上のエネルギーを必要とする。
日本の平均電源構成を用いた水の電気分解による水素製造および電力発電は,現行のガソリンおよびディーゼル燃料以上に多くのエネルギーを必要とし,CO2 排出量も多い
現行のガソリンおよびディーゼル燃料以外で比較的必要エネルギーが少なく,CO2 排出量も少ないのは,オフサイトでNG 改質して圧縮水素(CHG)で輸送するパスと,オンサイトでの都市ガス改質のパスである。
オフサイト改質で製造した水素を液体水素(LHにして輸送すると,CHG を輸送・充填するケースと比較して多くのエネルギーを必要とし,CO2 排出量も多い

 

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(続く)