次世代エコカー・本命は?(42)

なお現在ではこの論考に、次のものが挿入されているので、序に紹介しておこう。

 

"Forget Hydrogen Cars, and Buy a Hybrid"

マサチューセッツ工科大学の雑誌「MIT Technology Review」の20141212日号"Forget Hydrogen Cars, and Buy a Hybrid"燃料電池車は気にせず、ハイブリッド車を買おう)と題する記事を掲載している。

この記事で言っていること:

◎ FCVに関するメーカーの「燃料電池車は水しか出さない」などの宣伝文句は少し"misleading"(誤解を招く恐れがある)、車を動かす水素の大部分は現在天然ガスから製造しており、製造時に相当な量のCO2を大気に排出している。

◎ 市販されているFCVよりCO2排出の少ない車はいろいろあり、その一つハイブリッド車FCVの約1/3のコストでリース可能。

◎ 米国環境団体UCSの計算ではヒュンダイ燃料電池Tucson(ツーソン)はガロン38マイルのガソリン燃費相当のCO2を排出し、これは同じTucsonガソリンエンジン車のガロン25マイル燃費よりは良い。しかしガロン38マイルより良い燃費の車は沢山あり、例えばトヨタプリウスVTucsonより少し車室が広くてガロン42マイル走る。Tucson FCVのリース料が月499ドルなのに対して、プリウスVは月159ドルでリースできる。

◎ 新技術によっていつかは水素がクリーンで安価になるであろう。再生可能エネルギー発電による電解水素や太陽光による直接水分解の可能性もあるが、現在のところ水素の燃料電池車の電気自動車に対する主たる優位性は燃料補給の速さにある。
20141217日追記)

 

まあFCVの評価は散々であるが、化石燃料から水素をつくるのであれば、当然CO2は排出されるしそれほど環境に優しいものともいえない。であるからして、燃料電池車の水素を化石燃料である天然ガスから取り出す方法での比較であるので、これでは本末転倒であろう。

 

化石燃料を使わないために燃料電池車を開発してきたのではないのかな、トヨタは。地球上には水素は沢山存在する。だから水素を作り出すための技術革新が待たれるのである。化石燃料はそのうちになくなる物と思わなくてはならないし、化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出す方法と言うものはすでに時代遅れになりつつある、と考えなければきれいな地球は残せないのだ。だから化石燃料から水素を取り出すのは、考えないほうが良い。水素社会の本当の初期の初期のことだけにするほうが良い。

 

2014.01.08NO.29出紹介した「村沢義久氏」の主張を再掲しよう。彼は「究極のエコカー」はEVで、燃料電池車はなり得ない、と主張している。


まあわからないでもないが、これはあまりにも一面的な主張のように、小生には思われる。EVにはEVの良さと悪さがあり、FCVにはFCVの良さと悪さがある、と認識しておかなければならない。性急にEVだ、FCVだ、と言う一元的な認識は、間違った方向へ人々を導き技術革新の芽を摘みかねない。


 

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 筆者は、定置型燃料電池と比較して、FCVの先行きには悲観的な見方をしている。日本では、「究極のエコカー」と呼ぶ人もいるのだが、世界の見方はかなり違っている

 まずは、テスラ・モーターズイーロン・マスクCEO最高経営責任者)。マスク氏は、テスラの年次総会などで「燃料電池Fuel Cell)は馬鹿電池Fool Cell」と発言し、FCVの普及には否定的な見方をしている。

 マスク氏は、その理由として、水素燃料はつくるのに時間もコストもかかり、貯蔵、輸送が難しく、さらに安全性の問題があること、などを挙げている。

 フォーブスも辛辣で、今年(2014)417日に発表されたコラムで、水素燃料補給の困難さなどネガティブな面を指摘した上で、「トヨタFCVは)買うのがバカバカしいほどのものridiculous to buy)」と突き放している。

 筆者は、FCVについて、マスクCEOやフォーブズ誌のように、「Fool」や「Ridiculous」などと言う気はない。トヨタの技術は素晴らしいものだと思う。しかし、FCVが「究極のエコカー」の座を勝ち取れる可能性は極めて低いと考える。

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だから小生は、水素社会実現には水素を取り出すための諸々の技術革新が必要となる、と主張しているのである。地球上に半ば無限に存在する水素をいかに効率的CO2フリーで取り出すか、これには相当の時間が必要となる。だから「究極の」とか「次世代の」とかの言葉が付くのである。

 

現時点の、または近い将来のエコカーを目指しているのではないのであるが、テスラーのイーマロン・マスクはよっぽど燃料電池(車)にある種の脅威を感じているようだ。そうでなければ半ば人が変わったように馬鹿電池”などと、燃料電池を呼ぶ筈はない。自分もベンチャー企業の創始者であり、技術革新の価値は十二分に承知している筈なのだから。トヨタ燃料電池車「ミライ」を水素社会へのきっかけとなるものと認識し、自身のEVに対してそれなりに危惧を感じているからこその発言なのであろう。愚かなことだ。

 

「モデルS」や「モデルX」(7人乗りのSUV2015年春以降に発売)、「モデル3」(2017年発売予定のBMW3シリーズ対抗車)の影が薄くなる事を心配しているのであろうか。テスラーの電気自動車も、その内に、燃料電池で発電した電気のお世話になる時が来るのではないかと、心配しているのではないのかな。

 

今まではそれなりに「テスラーのイーロン・マスク」と尊敬の念を持ってみていたが、これではシカゴのマフィアの下っ端と見間違うほどの悪の本性を剥き出した一介のがめつい視野の狭い我利我利の痩せ細った企業人に成り下がってしまったようにも見える。誠に残念である。

 

まあ、イーロン・マスクも向上と革新を旨とするベンチャー精神ではなく、金儲けを旨とする下賎な企業人の本性も持ち合わせていたものと、推察する。ある程度功なると人は変わるものなのであろう。

 

それとも聡明な頭脳から、燃料電池の未来の輝かしさを予想して、自身のEVに対する不安とあせりからの言動とも推察できる。

 

燃料電池は「馬鹿電他」と言われようが、CO2排出ゼロで安定的に電力を供給できる可能性がある現時点では唯一のものである。再生可能エネルギーは安定的に電力を供給するには、いまだ覚束ないのだ。燃料電池で作られた電気で水を電気分解して水素を取り出す。その水素で燃料電池を動かしてゆく。そして電気を作り、水を電気分解して水素を取り出す、と言うサイクルが出来上がる可能性がでてきたのである。そして今後の技術革新でそのサイクルは、もっと円滑に進むことになろう。そしてその燃料電池CO2フリーの唯一のものでは無くなるかも知れないが、テスラEVに使われているパソコン用の「18650」電池の製造工程もCO2排出ゼロに出来るのか努力を集中する必要がでてくるのではないのかな、マスクさんよ。テスラパナソニックと共同で大規模なEV電池工場を建設する予定だ。大規模と言うからにはCO2フリーにする事を考えているのかな、とも勘ぐれるがまあ考えてはいないのであろう。ここではCO2を排出しながら、テスラの新たなモデルXなども生産するつもりなのかな。

(続く)