次世代エコカー・本命は?(45)

ここで一応トヨタFCVに関する特許の内訳を整理しておこう。もちろん先の記事に書かれていたものを、まとめておくだけのものであるが、どんな内容の特許か知っておくことも大切な事ではないのかな。なお数字については、すべて約(おおよそ)とするものである。

 

燃料電池スタック(本体) 1,970件  2020年末まで無償

高圧水素タンク      290件    同上

燃料電池システム制御   3,350件    同上

水素ステーション関係     70件  期限なしに無償

     合計      5,680件  

 

これで見るとFCV本体に関する特許件数よりも、そのFCVの動作を制御するための特許の数の方が、1.7倍ほどである。と言う事は燃料電池の物理的なことに関する特許よりも、それを円滑に動かすためのカラクリの方がより難しいものであったのであろう。燃料電池本体はすでに実用化されているのでその原理に関することは特許とはならずに、物理的にはむしろ自動車に搭載するための工夫などが特許となっているのであろう。FCVはご承知のように、メカニカル(機械系)なものと言うよりも化学反応なので、その化学反応を機械系の車の合わせると言う、車を普通のエンジン車と同じように動かすためのFCVの機能・動作に関するための工夫の方が、難しかったのであろう、と推察される。

 

その点テスラ電気自動車に関する特許は、それほど複雑なものではなかったようだ。電気自動車であれば、リチウムイオン二次電池に関する特許の方が重要となるのであるが、テスラEVは既知のパソコン用バッテリの「18650」を7,000~8,000個を束ねただけのものなので(と言ったら語弊があるが)、そこら辺のみが特許の対象となっただけのものであろう。


 

トヨタテスラ、特許開放に意味はあるのか
VW幹部が投げかける知財戦略の疑問

2015121日(水)  広岡 延隆

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フォルクスワーゲン電子・電装開発部門担当専務のフォルクマル・タンネベルガー氏

 「トヨタの特許は無償公開の発表がされたばかり。精査できていないのでコメントできない。テスラの特許に関してはすでに調査したが、新しいものは何もなかった

 このほど来日した独フォルクスワーゲンVW)電子・電装開発部門担当専務のフォルクマル・タンネベルガー氏はこう語った。

 このところ、自動車業界では「特許開放」の動きが話題を集めている。昨年6テスラ・モーターズEV電気自動車)関連特許を開放すると発表。トヨタ自動車今年12020年までの期間限定でFCV燃料電池車)関連特許を無償公開した。いずれもEVFCVの本格的な普及拡大を睨み、デファクトスタンダード(事実上の標準)を獲得しつつ、仲間作りを急ごうとする姿勢が鮮明だ。

 2014年に世界販売で1014万台を達成し、トヨタと業界の盟主の座を争うVWEVは既に発売済みで、FCVについては「(水素ステーションなど)インフラが整えば迅速に発売できる」(同)と自信を見せる。

 本当にVWトヨタの特許を使わずにFCVの開発・販売を実現できるのか。この質問に対してタンネベルガー氏は「前述したように精査中なので一般論だが」と前置きしつつこう答えた。「VWは新技術開発にあたって、必ず関連技術が競合他社にあるかをチェックし、持たなくてはならない技術はどこにあるのかを見極める。その上で他の自動車メーカーやサプライヤーとの協力がどの部分で必要かを判断する」と言う。

マスコミ受けは良いかもしれないが…

 特許開放についての質問が連続したせいもあるのだろう。インタビュー中に、そうした動きをもてはやす風潮について釘を刺すコメントが飛び出した。

 「特許を取得してから数年後に業界として標準化するのにあたり、必要に迫れられて特許を公開するようなやり方はしたくない。もし技術の公開や標準化が必要であれば最初からそう取り組むべきだ」。

 「特許をオープンにするというのは、メディアにとってはよいストーリーなのかもしれない。だが、より重要なのはサプライヤーの動向だ。現在複数の自動車メーカーがサプライヤーを共同で利用するという状況になっており、同じ方向を向いていくことがより大事だ」

 いち早く他企業と協調すべき部分を明確にしていくことが、仲間作りの上でますます重要になってくるとの指摘だ。しっかりと技術ロードマップを組み立て、特許として囲い込む競争領域と、むしろその技術やノウハウをシェアする協調領域を切り分けられるかが重要になってくる。

 難しい作業だが今後、その切り分けはますます避けて通れなくなる。「自動運転」など、新しい技術分野が焦点になろうとしているからだ。

 「事故被害を最小限に抑えるためにハンドルを切る必要がある時、両サイドに人がいたとする。その場合、どのようにハンドルを操作するアルゴリズムを作るべきなのか。そんな基準を、自動車メーカー1社で作ることなど不可能だ」(同)。

 自動運転分野には米グーグルなど、IT企業の進出も目立つ。これまでとは異なる様々な価値観の相手と競争しつつ、必要な部分ではいかに協調していくか。各社の試行錯誤が続きそうだ。

 

ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150120/276500/?rt=nocnt


 

それにしてもテスライーロン・マスクCEOは、かなり強気だ。と言ってもトヨタFCVMIRAIミライ」と言う強力なライバルが現れたので、いささか慌てふためいているのかも知れない。事ある毎に

燃料電池(車)に対して、悪口雑言を吐いている。2014.12.9NO.11でも紹介しておいたが2014.9月の時点で既に「燃料電池車には勝ち目がない」と言っているし、2015.1.8NO.29では「燃料電池は馬鹿電池(Fuel Cell=Fool Cell)」と言った事を紹介している。今度はデトロイトモーターショー(2015.1.12~25)関連の会議で講演し自社の電気自動車を大いにPRし、その後の記者会見でも燃料電池車をこき下ろしている。余程燃料電池車は気に入らない存在として、脅威を感じているのであろう。

(続く)