次世代エコカー・本命は?(80)

 このように、ノルウェーでは政府の政策目標の下、EVイニシャルコストランニングコストの双方を優遇したことで、まさにEVで走れば走るほどユーザが得をするようになったのだ。また、ノルウェー国民の39%セカンドカー(2台目の車)を保有しているという統計もある。通勤や買い物などちょっとした外出のための2台目として、すでにガソリン車を保有する世帯にEVが好まれたようだ。EVがガソリン車と同程度の価格で、しかも渋滞を免れられ、有料道路や公共駐車場を自由に使えるとなれば、EVが爆発的に増えたのもおかしくない。

 EVが増えたもう一つの理由は、市場に出回るEVのモデルが近年増えてきたためだ。日産自動車「リーフ」は以前から高いシェアを維持してきたが、ここ1年に発売された米国のテスラ社「モデルS」とドイツのフォルクスワーゲンe-up!」も、近年大きな市場シェアを獲得しており、EV市場規模の拡大に寄与している。

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ノルウェーの新車市場に占めるEVのシェア

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ノルウェーEV市場の内訳(2013年)

 

 EVの車両価格は同性能のガソリン車と比べて非常に高いため、ガソリン車並の普及を目指すためには、購入補助金や、税制上の優遇施策などの経済的なインセンティブが必要だ。加えてノルウェーは、バス専用レーンをEVにも開放して、渋滞を回避できるほか、公共駐車場の無料開放、無料で使える充電器など、EVユーザの利便性を向上させる社会的なインセンティブを取り入れている。

 今回取り上げたノルウェーEV推進政策は、普及台数が5万台になるまで継続される予定である。現在のペースでは、5万台の目標達成はもう目前だ。すべての優遇策がなくなるわけではないが、今後EV普及のペースは一体どうなるのだろうか。次回は、EVの普及推進政策を持続可能にするためのポイントを考えてみたい。

国吉 浩 (くによし ひろし)
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO
理事/エネルギー・環境本部長

1984通商産業省(現経済産業省)入省後、エネルギーや技術に関する様々な政策を企画・実施してきた。国連工業開発機関(UNIDO)の事務局長補佐官や東京工業大学教授など、経済産業省以外でも活躍。現在は、NEDO理事兼エネルギー・環境本部長として、スマートコミュニティをはじめ、エネルギー・環境関係の技術開発や実証事業を推進している。JSCAの事務局長でもあり、GSGFの副議長を務める。1958年生。東京大学工学部電気工学科卒業、ケンブリッジ大学修士(国際関係論)、京都大学博士(エネルギー科学)。関西学院大学客員教授

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20141007/381051/?ST=eleizing&P=1

 

まあ環境対策として国が率先して電気自動車の普及に対して、相当な支援策を実施しないと、なかなか普及は難しいということなのだ。このノルウェイの場合は、EV購入価格の補助はもとより、EVを使用する時に諸々の費用も補助対象として、公共の駐車場料金無料化、充電インフラ設置への補助、有料道路の無料化などなどと、かなりの厚遇策を実施した結果、EV大国となったと言う事のようだ。

 

燃料電池にとっては、水素ステーションが普及しないと始まらないし、そのために日本は今そのための施策をとり始めている。ノルウェイの場合は、そのお国柄水力発電による電気が豊富で、その上国策としてもCO2削減に力を入れて、しかも2050年には全くCO2を出さないことを目標に掲げている。そのためにも本気でEVの普及に努めている、と言う事情もある。だから日本の場合には、水素の確保を国策として実施してゆくことが求められるのではないのかな。水素社会の実現と言う事は、そういうことなのである。

 

なんと言っても、水素は日本でも自給できる可能性のある資源であるから、国としてもエネルギーセキュリティの観点からも、水素社会を実現させることは国益上の観点からも、相当優先順位は高い施策となる。これには長い道のりが必要となるが、化石燃料に頼らないエネルギー社会の実現が見えてきたことは、一つの希望となろう。まあ50年、100年の長期にわたるものとなるのだが。

 

まあ100年先とはちょっと大げさな言い回しであるが、現在の地球上ではCO2を出さないCO2フリーの社会の実現は必須事項となっている。まだ大量にCO2を出しっ放しにしている無責任な国もあり誠に困ったことではあるが、自動車としては、航続距離が伸びなくても当座はバッテリーEVに頼ってでも至急CO2を出さない車を世に出さなくてはならない、という事であろう。


トヨタEVを出すのか出さないのか分からないが、HV車の燃費は相当向上させないと、世に受け入れられないとの考えを持っているようだ。次期新型プリウスの燃費は、そのためL40km程度で発売されるのではないのか、と言った噂もある。しかも当初は2020年での40km/Lの実現を目指していたものが、ひょっとしたら今年2015年発売の新型プリウスでそれを実現してしまう、と言った話もあるようだ。もしそうなったとしたら、プリウスが世界最高燃費の車(32.6km/L→40km/L)となる。

 

20年に40kmLも視野 トヨタ、次世代HVの青写真

2014/11/12 7:00  ニュースソース  日本経済新聞 電子版

日経Automotive_Technology

 ハイブリッド車HV)の代表格である、トヨタ自動車プリウス」の勢いに陰りが見えている。燃費で同車を上回るようなクルマが相次いで投入されているためだ。次世代プリウスは、モーターや電池を小型化しつつ、大幅な燃費向上を目指す。中長期では高効率のPCU(パワー・コントロール・ユニット)を開発し、2020には40kmLが実現できそうだ。

 プリウスの燃費である32.6kmLを上回る小型HVや軽自動車が続々と登場しているが、トヨタは手をこまねいているわけではない(図1)。環境対応車全方位戦略を実現するために、HV技術の横展開と次世代車の取り組みに着手している。

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1 燃費競争は35kmL以上が主戦場に。現行プリウスは発売から5年がたち、燃費の優位性は薄れつつある

 「約700万円の価格で販売できるのはHV技術があったからです」。20146量産型燃料電池車(FCV発表会で、トヨタ自動車常務役員の小木曽聡氏は自信を示した(図2)。

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2 2014年度に発売する量産FCV燃料電池車)。ハイブリッド技術の活用で価格を約700万円に抑えた(左)。右は、トヨタ自動車常務役員の小木曽聡氏(右写真:宮原一郎)

 トヨタHVシステムは、電気自動車EV)/プラグインハイブリッド車PHV)/燃料電池FCVといった電動車を展開する上でのベース技術となっている。HVシステムのガソリンエンジン燃料電池スタックに、燃料タンクを水素タンクに置き換えればFCVに必要な要素部品はそろうのだ(図3)。

 HVの電池やPCU(パワー・コントロール・ユニット)、モーター、発電機などはそのまま使える。HVの量産実績が、FCVの価格低下に役立つというのだ。700万円という価格ではすぐに普及は望めないが、第2世代、第3世代のFCVになれば既存のHVに近い価格帯も見えてくるかもしれない。

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3 トヨタのハイブリッドシステム。エンジン、発電機、モーター、PCU、電池で構成する。走行状態に応じてエンジンの駆動力走行用と発電機用に柔軟に割り振る独自の仕組みを採用する

(続く)