次世代エコカー・本命は?(104)

燃料電池車への白金の使用量は、大型車で150g×7,000=105万円となり、FCV「ミライ」には一台で百万円程度の白金が使われていることになる。尤もトヨタとしてはこの白金の使用量を相当減らすことに成功しているようなので、これほどまでにはなっていないものと思われるが、いずれにしても白金を使っている以上FCVの普及はそれほど進まないものと、思っているほうがよかろう。

 

だからトヨタとしてもこの白金に変わる触媒探し触媒の開発にはシャカリキになっていることであろう。


 

FCVの低コスト化に光!白金に変わる触媒研究で成果

http://clicccar.com/2014/11/03/276405/

2014/11/03 08:03 by Avanti Yasunori テクノロジー, ニュース・新車, 環境・エコ

FCV燃料電池車)を今年の12月に700万円程度で発売すると発表したトヨタ自動車

 

TOYOTA_FCV

補助金を含めれば500万円程度になるようですが、先端技術搭載車だけあって、同クラスの4ドアセダンと比較すればかなりの高額車である事は間違いありません。

(出展 トヨタ自動車

トヨタとしてもさらなる低コスト化に向けて動き出しているようですが、普及価格にまで下げるには総コストの60%を占める発電用の「FCスタック」と呼ばれる燃料電池本体の大幅なコストダウンと「量産効果」の2点が求められています。

中でも、FCスタックの化学反応を促進させる電極用の「白金触媒」がコストを増大させる要因になっており、白金(Ptの使用量を低減する事が重要課題となっています。

TOYOTA_FCV
(出展 トヨタ自動車

「白金」の世界全体の推定埋蔵量は38万トン程度とされており、主な産出国は南アフリカ共和国、ロシア、カナダで、多くは南アフリカに偏在。

グラム当たりの価格が5,0007,000と非常に高価で「NEDO」(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)によれば、FCV1台に使用される白金の量は小型車(80kW)で32g、中型車(150kW)で62g、大型車(250kW)で150gとのこと。

FCV1台あたりの平均使用量を50gとすると、白金だけで2535万円ものコストに。

現状の「白金」産出量は年間180トン程度で、世界の自動車年産台数の10%以下しか需要を満たせない状況と言います。

TOYOTA_FCV
(出展 トヨタ自動車

白金の推定埋蔵量は36000tに過ぎず、白金触媒を使うかぎり、燃料電池車の普及は望めない状況。

そうした中、日清紡ホールディングス群馬大学の尾崎教授と共同で開発した「カーボンアロイ触媒」が白金の代替触媒としてほぼ同等の発電性能を有することが確認されたそうです。

この「カーボンアロイ触媒」は数%の窒素を含んだ炭素を主成分としてカーボングラファイトに窒素とホウ素を入れてアロイ化したもので、白金と同様に燃料電池の酸素還元反応を促進、溶出を起こさないため、燃料電池自体の寿命延長にも役立つと言います。

価格は白金の6分の1、もしくは10分の1程度まで低減可能とか。

また一方では奈良先端科学技術大学院大学兵庫県立大学の研究グループ微生物の持つ酵素が常温常圧という温和な環境条件下で水素分子を分解して電子を取り出す反応を触媒する点に着目。

Hyougo
(出展 兵庫県立大学

触媒反応を担う分子の構造を真似た人工的な触媒を作れば、燃料電池の高性能化、低コスト化が図れると共に、水素を使う化学合成などの産業分野でも有用な触媒ができるとして、研究成果をドイツの学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」に公開しています。

同研究グループが反応に伴う活性部位の分子構造の変化や鉄硫黄クラスターの電子の状態を詳細に調べたところ、活性部位に最も近い「鉄硫黄クラスタ」が電子を失い酸化されている時だけ反応が進んでおり、「オン」「オフ」を切り替えるスイッチ役をしていることを発見。

このスイッチを容易に操作できるようになれば、必要に応じて効率を高める技術に繋がる可能性が有るとしており、人工触媒の設計や化合物の合成にも役立つと見込んでいるようです。

Video

燃料電池化学反応を利用した技術だけに、産学連携による多方面からのアプローチにより、新たな低コスト化の道が開ける可能性を秘めており、2020年を目処とするFCVの本格普及に向けた研究がいっそう活発化することになりそうです。

日清紡ホールディングス Webサイト
http://www.nisshinbo.co.jp/r_d/activity.html

奈良先端科学技術院大学 物質創成科学研究課
http://mswebs.naist.jp/

兵庫県立大学 理学部 生命理学研究課 発表資料 (PDF
http://www.naist.jp/topics_pdf/admin_baec9c61715589d081afa0bd5a3cd605_1413448987

http://clicccar.com/2014/11/03/276405/

(続く)