続・戦後70年談話はヒストリーで!(15)

そのため米国は、尖閣諸島を国有化した日本に対して「現状変更は好ましくない」と迫り、日本は「現状維持に終始」してきた。然るに共産主義独裁国家中国は、「現状変更に挑戦」し続けている。このようなアメリカの的外れな頓馬な対応が、中国をして南シナ海での武力による領土侵略である。

 

米国は本当に尖閣諸島を中国が攻めてきた時に、守ってくれるであろうか。疑問がのこる。だから日本は独力で、尖閣を守る力をつける必要がある。安倍内閣は、そのため、今必死になって全方位でそのことに立ち向かっている。

 

国連での異例の批判に日本はどう立ち向かうべきか?
複雑怪奇な日米中韓関係を乗り越える“巻き返し術”

315回】 2014210日 真壁昭夫 [信州大学教授] http://diamond.jp/articles/-/48451

国連で中国と韓国が異例の日本批判
日本を巡る各国の複雑怪奇な関係

129日、国連安全保障理事会の場で中国韓国国連大使が、安倍首相の靖国参拝などを取り上げて激しくわが国を批判した。今までも、中国と韓国は日本批判に関して歩調を合わせることが多かったが、今回のように国連安全保障理事会での批判は異例のことだった。

 このような事態の発生に関して、政治には門外漢の経済学者でる筆者が、自分なりに現在の日米中韓の関係を考えてみる。まず頭に入れておくべき出発点は、日米中韓の中心ポイントとなっているのが中国と米国の関係であることだ。

米国は世界No.1の経済大国であり、やや勢いが衰えたとはいえ覇権国だ。強大な経済力と軍事力をバックに、依然として世界最強の発言力を持った国だ。一方中国は、今や世界第2位の経済大国にのし上がり、急速に軍事力、特に海軍力を強化している。

米中の関係は、冷戦時代の米ソの関係とは大きく違っている。米ソの場合、両者の依存度は低く、主に核弾頭の保有数などの軍事力の増強競争を展開していた。一方、現在の米中の経済における相互依存度は高く、米国は中国が変調をきたすと困り、中国も米国がおかしくなると相応の痛手を受けることになる。

 その米中の関係に、一時の経済力が衰えつつある日本と、経済力をつけてはいるものの独特の政治情勢を抱える韓国が絡み合っている。それだけではなく、厄介な北朝鮮ロシアも絡んでいる。そこには、極めて複雑怪奇な関係が展開されている。

相互依存度の高い米中経済

 米国と中国の関係を考えるとき、最も重要なポイントは相互の経済依存度の高さだ。主要先進国にとって、中国は最も重要なポテンシャルを持ったマーケットだ。13億人の人口を抱え、平均賃金水準が上昇しつつある中国は、今後さらに大きな需要地になると見られる。

国内事情で日本批判を繰り返す中国
中国と波風を立てたくない米国

 すでに自動車は世界最大のマーケットであり、フォルクスワーゲン、GM、現代自動車、わが国のトヨタや日産などが入り乱れて、激烈な競争を展開している。スマートフォンのようなIT関連機器についても、同じことが言える。世界最大のチャイナモバイルがアップルのiPhone5を扱い始めると、一挙にアップルの売り上げが拡大したのはその一例と言える。

 一方、中国がため込んだ外貨の多くはドル建てになっており、昨年11月現在、中国の米国債保有額は13000億ドルを超え、世界最大の米国債保有国になっている。つまり、米国の借金の調達先として、中国は最も重要な国なのである。

 そのため、仮に中国が米国債の保有額を極端に減らすようなことになると、米国債市場での需給が大きく崩れ、米国の金利水準が上昇することが想定される。金利の上昇は経済活動にマイナスに働き、米国の景気を下押しすることさえ考えられる。米国は、そうした事態は避けたいはずだ。

 経済に関する相互依存度の高さに対して、安全保障上の観点では、両者は間違いなく重要な潜在的敵国になり得る。米国は覇権国として、日本や韓国、フィリピンなどアジア地区における同盟国の安全を維持する役割を負う。 

 それに対して中国は、空母の建造計画などを練り、着実に海洋戦力を強化している。それは大きな脅威であるばかりではなく、実際に尖閣南シナ海の領有権などで、複数の国と対立が深刻化している。

 そうした米中の経済・軍事の面から考えると、米国の本音は「今は中国との対立を穏便にやり過ごし、経済的なメリットをしっかり享受したい」というところだろう。そのため、安倍首相が靖国神社参拝を行って、中国や韓国に対立のネタを与えるようなことは避けてほしいと考えているように見える。

中国は、ある意味ではわかり易い国だ。13億人の人口を持つ利点を生かして高度経済成長を続けてきたが、そろそろ成長の限界に達しようとしている。一人っ子政策の影響もあり、働き手(生産年齢人口)の割合は低下しており、今後人件費の上昇によって、付加価値の低い分野における企業の国際競争力の低下は避けられない。

金融システムも規制体制が続いており、効率的な機能が働いているわけではない。また足もとで、不動産バブルやシャドーバンキングなどの問題が顕在化しており、信用の拡大に依存した経済成長をこれ以上続けることが難しくなっている。

 何よりも決定的なことは、共産党一党独裁制が続き、民主化圧倒的に遅れていることだ。現在の習政権は様々な改革を唱えているものの、民主化に向けての本格的な前進は見られない。

 情報・通信機器の発達で、中国の多くの人々は格差の実体や政策当局の非民主的な行動を、目の当りにすることが可能になっている。そうした状況を考えると、政府にとって国民の不満や関心を海外の特定の国に向けることは、最も有効な政策だ。日本という格好の標的が存在する。

韓国が抱える経済構造の問題点
スクラムを組んだ日本批判は厄介

 一方、韓国も中国同様、現在の経済構造の問題点が次第に明確になっている。人口5000万人の韓国経済は、貿易に依存する割合が高い。どうしても海外景気の影響を受けやすい。しかも稼ぎ手が一部の財閥系企業に限られる。

 頼みの財閥系企業に関しても、現代自動車では大規模な労働争議が発生している。大黒柱のサムスンに関しても、スマホの次の製品がまだ見えてこない。スマホに関しても、高価格帯の先進国市場では普及が進んでおり、これからの大きな伸びは期待できない。

 低価格帯が中心の新興国市場では、サムスンよりも安価な製品群を持つ台湾や中国などのメーカーとの競争が激化し、収益力は低下することが懸念される。成長が低下して国民の不満が蓄積すると、朴政権にとって国民の敵である日本を批判し、不満を海外に向ける手法は手っ取り早い。

 米国のオバマ政権は、今秋の中間選挙のためにも、景気を改善して国民の支持率を少しでも上げておきたいはずだ。シリアを巡る外交問題等で失点を重ねたオバマ大統領が、中国との穏便な関係を模索するのは当然かもしれない。また中国・韓国の国内事情を考えれば、彼らがスクラムを組んで日本批判を行う背景も理解できる気がする。

国際社会で諦めずに主張を続けよ
日本がプレゼンスを回復するには?

 それでは、わが国はどうすればよいだろう。主に行うべきことは2つあると思う。1つは、諦めずにわが国の主張を繰り返すことだ。中国や韓国の執拗な批判を聞いていると、主張を行うことの意義を見失う心理が出てくる可能性がある。

 それはとても危険だ。諦めてしまうことは、彼らの狙いでもあるからだ。正しい主張であれば、相手に常識や良識が通じなくとも、倦まず、弛まず、諦めずに主張を繰り返せばよい。彼らが耳を傾けなくとも、世界の中には常識が通じる人たちもいる。

 ロンドン在住の友人は、筆者にくれたメールで「中国と韓国の国連での主張はやり過ぎで、逆効果になる」と言っていた。わが国が他国の人にもわかるように主張を繰り返せば、世界の世論がいつかわが国をフォローしてくれることも考えられる。

もう1つは、わが国の経済力を回復させることだ。1990年代初頭のバブル崩壊以降、わが国は世界経済の中で急速にプレゼンスを失った。海外に出てみるとよくわかる。それは、重要な同盟国である米国の世論にも微妙な影響を与えている。

 米国生活が長かった友人は、「米国の人ははっきりしているので、強さを失いつつある日本に対する認識がかなり低下している」と指摘していた。それに伴い、中国や韓国に対する意識が高まったという。

 わが国経済がもう一度強さを取り戻して、世界の中でプレゼンスを回復することは単に経済的なメリットばかりではなく、国際的な発言力の向上にも役立つ。その意味は、決して小さくはない。

 足もとでは、わが国経済にも少しずつ変化が見え始めている。倹約疲れから解放されつつある家計は、徐々に消費を増加させる傾向が見え始めている。企業経営者も設備投資に向かいつつある。

安倍政権は、これから規制改革など思い切った成長戦略の実現を図る必要がある。人、モノ、金が存在するわが国が、そうした地道な政策実行によって経済を回復させ、プレゼンスを引き上げることは十分できるはずだ。

http://diamond.jp/articles/-/48451

(続く)