ならず者国家・中国、アレコレ!(4)

危険物倉庫がなぜ火災となったのか、と言う問題もさることながら、その火災がなぜ爆発を誘引したのか、と言う疑問もある。爆発を起こさずに火災を鎮火させることが出来れば、こんなにも大事にはならなかったのであるが、火災の対象が化学薬品の倉庫であったことが、天津市にとっては最大の災(わざわ)いであった。放水した水にその化学物質が反応して爆発したと言う見方がなされている。だから化学物質の倉庫の火災に対して、水をかけたと言うことが大きな問題だったのである。火災に対しては、なんでも水を掛ければ良い、と言うものではないのだ。


だから、消防も、危険物倉庫も、化学物質に対しての知識がなかったのである。

 

次の記事を見れば、中国での危険物に関する業務に対する安全管理が皆無だった、と言うことがよくわかる。危険物の保管が出鱈目であった。だから何か事があれば、大災害は必至だったのである。天津という大都市の真ん中と言ってもよい住宅地近くに、こんな危険な危険物倉庫が存在していた、と言うこと自体が異常なのである。ここにも中国の腐敗・汚職が存在したものと見られるのである。

 

天津爆発が証明した中国の想像を絶する“ずさんさ”

http://diamond.jp/articles/-/77475

【第187回】 2015828日 姫田小夏 [ジャーナリスト]

混乱を深める中国・天津港での爆発事故。これが国内外に与えた影響と波紋は計り知れない。鈍化する中国経済への追い打ちともなり、国際社会は「中国は危ない」とますます疑念を深めている。
中国の現場から上がるのは「いまどきこんなことをやっているのか」という驚きの声だ。中国の危険物倉庫の実態から、今回の爆発事故に見る危うさを再検証する。

権力者が後ろ盾なら
安全基準も無視できる?

天津爆発事故の一番の原因は、危険物のずさんな管理にあったといわれる。(写真:新華社/アフロ) 危険物管理mg_cca7211e3049a099156973518b9b6ef961476 H m7T)

 天津港といえば1860年に開港した古い港だが、今では世界4位の貨物取扱量を誇る先進的な国際港に発展した。しかし「先進的な国際港」というのは名ばかりで、この事故で露呈したのは、「ずさんな管理」という失態だった。

 今回、事故を起こしたのは天津瑞海国際物流有限公司(以下、天津瑞海)。石油化学を中心に発展する天津をバックに、近年、危険物を扱う大型倉庫として頭角を現した一社だ。

 同社は危険物コンテナ取扱業務の大型物流基地として、数年間で急速な成長を遂げた民間企業である。設立は2012とまだ若い企業だが、昨年の拡張工事を経て、年間の危険物理扱量を5万トンにまで拡大させた。

設立から3年目の今年、天津瑞海は大惨事を引き起こす。その会社経営の実態を検証すれば、「不透明な会社設立」や「条例の無視」など、数々の“爆発の導火線”が浮上する。

 中国で危険品取扱業種は許可制であり、民間からの参入はほぼ不可能だが、この会社はなぜか短時間で設立にこぎつけた。しかも、中国では「危険化学品安全管理条例」に基づき、関連当局への書類申請が必要だが、現地報道によれば天津瑞海はこれすら行っていないという。権力者が後ろ盾になっていることは疑う余地もない。

後ろ盾」が存在するならば、厳しい規定を愚直に順守する必要などどこにもない。こうした企業体質からは「やることなすこと」がずさんであることも容易に想像がつく。

水に触れると猛毒ガスが出る
危険物を野積みにした杜撰

 天津港での爆発事故は、と反応すると引火性の猛毒ガスを発生するシアン化ナトリウム(以下NaCN)に、消防が放水したことが被害を拡大させたといわれる。NaCN生産工場から港に運び込まれたNaCN700トンが、通関手続きを待つ間に燃え上がり、大量の猛毒物質を飛散させた。

 このNaCNを生産したのは「河北誠信有限責任公司」という、河北省石家庄市に立地する工場だ。同社は中国最大規模のNaCN生産企業であり、年間生産量は50億トンにも上ると言われている。河北誠信はこれを400キロ離れた港に運送し、天津瑞海に引き渡した。

 ところが、天津瑞海は重大な過失を犯す。これを危険物倉庫に入れなかったのである。

 北京を中心に発行される地元紙「新京報」は取材で、同社副総経理の言質を引き出している。

「天津瑞海が扱う貨物の中に確かにNaCNがあっただろうが、危険品倉庫に入れず、屋外に置いておいた

 すなわち、天津瑞海はこれを野積みにし、露天に晒したのである。NaCNなどの危険物は化学反応を避けるため、単独で閉めきった空間に置かれるのが常識であるにもかかわらず、だ。

 これについて、「野積みなどとは考えられない」と驚きを隠さないのは、東京港区に拠点を持つ日本危険物倉庫協会だ。「日本でならば毒物・劇物取締法によりカギのかかる倉庫に搬入し、扉にも『禁水』と読みやすい表示を掲げ、消防もわかるような措置を施すのが普通」だという。

 さらに同協会が指摘するのは、危険物倉庫そのものの大きさである。日本では最大でも1000平米以下であり、倉庫と倉庫の間には510mの保有空地を設ける規定になっている。ところが、瑞海天津の危険物倉庫46226平米とあまりに大きい。区画割りをしたにせよ、そこにしかるべき安全措置は講じられていたのか甚だ疑問だ。

優先されるのは安全よりも
とにかく金勘定

 筆者はある中国人に面会を申し込んだ。外資系商社で部長職に就く王峰さん(仮名)は、危険物倉庫の内部事情に詳しい人物のひとりである。王さんはこの商社が、中国の生産工場からサンプルとして、ある化学品を2トン取り寄せたときの話を語り始めた。

 当時、王さんは日本の客先に向けて輸出をするため、まずはこの危険物を工場から上海港に輸送させ、港の倉庫に保管するという段取りを進めていた。

 中国の生産工場が危険物を詰め込んだ袋を物流会社に引き渡すにあたり、王さんは事前に物流倉庫の担当者に対し「化学品は重ねず保管するように」と厳重に注意を喚起していた。

 それでも王さんは胸騒ぎを隠せなかった。直後、彼はこの倉庫を抜き打ちで訪れる。ところが一歩、倉庫に足を踏み入れた瞬間、王さんはそのありさまに絶句してしまう。

「こんな管理がまかり通っているのか」――

 この化学品もNaCN同様に、閉めきった暗室に保管することが必須だ。しかも、重ね置きをさせないのは、凝固を防止するための重要な措置でもあった。

 ところが王さんは目の前の光景に愕然とする。あれほど口を酸っぱくして頼んでいた危険化学品の「1段積み」だったが、案の定、倉庫側は2段にも3段にも重ねて置いていたのだ。

「スペースの節約しか考えない倉庫側の意図が見え見えだ」

 王さんはあきれ果てた。危険物倉庫といえば、何種類もの危険物が保管される。天津瑞海でいえば40種類近くの危険物が置かれていた。そのなかでもNaCNといえば、微量で致死劇毒物である。運営に当たり、経営側は当然、危険物の性質を把握し、安全に配慮した保管を徹底するはずだ。しかし、中国の現場にあるのは「とにかく大量に保管して金を稼ぎたい」という金勘定だけなのだ。

 呆れながらも危険物の点検を続ける王さんだったが、次に目にしたのは「異物の混入」だった。

 この化学品は袋に入れられ、それをバンドで固定し梱包されているのだが、バンドの留め具とおぼしき金属片やプラスチックの切れ端などが多々紛れていたのである。

「こんなものが混入しているじゃないか!」

 王さんは傍にいた倉庫の従業員を怒鳴りつけようとしたが、そこをぐっとこらえた。「危険物倉庫の従業員」は表向きの顔であり、実態は知識のない農村出身者であるという内情を知っていたためだ。

「こうした農村出身者は厳しく注意したらすぐ辞めてしまう。だからといって、倉庫側は人件費が高い正規社員は雇えない。専門知識を必要とする現場でも、結局農村出身者が担っているのが現実なのです」(同)

(続く)