しかし上記の福島香織氏の論考によれば、死者・不明者200人、負傷者700人を超える大爆発がおきた、と書かれており、「爆発は半径3キロに及び、その範囲に15ヵ所以上の居民区があった。正式に登録されていない出稼ぎ者のバラックなども灰になっている。死者・不明者・負傷者合わせて1000人未満というのはあり得ないと多くの人が思っている。」との話もあるようだ。
以下は、PHPの雑誌・Voiceの10月号の福島香織氏の寄稿文「天津爆発をめぐる政治の暗闘」により補足している。
高速道路の高架 爆心地から500m
モノレール駅 爆心地から 600m
高級マンション群 爆心地から 800m と言う距離で、しかも農民工の寝泊りしているバラックも相当数(200軒)あった筈だから、死傷者数はこんなものでは収まらない筈なのだ。
しかも「中国の規則では、まず危険な化学薬品倉庫の周辺1キロに、公共インフラ施設や居民区があってはならない。」とされているから、この距離は完全に規則違反であり、普通ではこんなところに危険物倉庫は建てられないのだ。
この危険物倉庫を建てたのは、2012年に設立された「瑞海国際物流有限公司」と言う会社だと書かれているので、この倉庫も2012年に作られたものと思われるから、当然この規則に縛られることになる。
にも拘らず、居住区の1km以内にこのような危険物倉庫がつい最近建てられていたのだ。先に言及した福島香織氏の寄稿文に寄れば、この危険物倉庫に保管する化学薬品のような危険物の取り扱いについては、競合他社が少なく大きな利権の元となっていると言う。だからこの危険物倉庫の建設には、政府の認可がいるので、この倉庫は、明らかに「安全管理法規」に引っかかるので
まともにやれば建設は許可されないのだが、天津市の官と瑞海物流の民がべったりと癒着した関係で建設されていったものである。このような危険物倉庫はかなり儲かるものなので、お互いに(天津市の役人も瑞海物流も)巨額の利益を得ていたのであろう。
しかも保管していた危険物の量も半端ないものだった。
シアン化ナトリウム(規定量24t) 700t
硝酸アンモニウム 800t
硝酸ナトリウム 500t
・・・・・
危険化学薬品 合計 3,000t以上
神経ガスも検出されたとか中性子爆弾のようだ、などという情報もあるようだから、軍事物資も保管されていた可能性もあろう。だから共産党政府も大慌てで、報道統制とネット規制をしき取材も禁止したのであろう。
しかも設立(2012年)後2年で昨年(2014年)にこの倉庫は、拡張されて4万6226平米とあまりにも大きい危険物倉庫となっている。ちなみに日本では最大でも1,000㎡以下でなければいけないとされている。
このように法律上許されない危険な場所に危険物倉庫が建ち、しかも危険物が想像も出来ないほどの規定以上の量が、どうして保管できたのかと言う疑問が残るが、地元当局と瑞海物流が癒着していれば、誠に納得できることである。
だから習近平が「”虎”も”ハエ”も一緒に叩く」と、躍起になるのも当たり前なのであろう。
今回の瑞海物流などは「”虎”も”ハエ”も一緒に叩く」の”ハエ”に当たるのであろうが、しかしかなり大きなハエだ。こんなことをしていれば、早々に共産党政府への信頼はがた落ちする、それが習近平にとっては、国内的には最も気になるところでもある。
(続く)