ならず者国家・中国、アレコレ!(8)

いかにもなぞが多いようだが、この福島香織氏の論考では、5つの疑惑を紹介しているので、おさらいの意味も兼ねて、次にまとめてみる。


 

疑惑① 正確な死傷者数が隠蔽されている。

 ここでは犠牲者(これは死者数と見る)だけでも、1,400人以上の可能性もあるようだ。

 

疑惑② 環境への悪影響大

 倉庫に保管されていたシアン化ナトリウムは水と反応して、青酸ガスが発生するという。  だから爆心地から6kmも離れた河は、死んだ魚で埋め尽くされていた、と言う。  

 そのほか神経ガスも検知されたと報道もされている。中性子爆弾が破裂したと言う話も、

 あながち途方もない話ではないかも知れない。
 しかも化学薬品が爆発して飛び散ったわけであるから、いわゆる毒物が地表などにばら

      撒かれていることになる。

 

疑惑③ 政治的責任を反習近平派の人物になすりつける。

 危険な化学薬品倉庫は、公共施設や居住区から1km以上離れていなければならないと

 言う決まり(規則)があるが、守られていない。しかも規定以上の化学薬品が保管されてい

 た。これは倉庫企業と天津市の職員、更には高級官僚との間に、賄賂のやり取りがあっ

 た筈である。習近平政権は、これを自身の政敵にその責任をなすり付けようとしている。

 

疑惑④ 爆発と権力闘争を絡める。

 しかも天津市は債務不履行に陥っていると言う。これらも含めて、習近平政権は反対派

 官僚に責任を押し付ける考えのようだ。

 

疑惑⑤ この大爆発は故意ではないのか。

 最初の倉庫火災の原因は不明のままだ。だから、習近平政権を揺さぶるために放火され

 たものではないのか、と言った陰謀説まで流れている。

 

果たして習近平は、人々の不安を解消して信頼を取り戻すことの出来る解決策を見つけることが出来るのか、はなはだ疑問である。


 

なぜこんな居住区近くに危険物倉庫が、法律があるにも拘らず建設されてしまったのか、中国ならではの闇があったのであろう。ここら辺りのことを、この福島香織氏は、PHPの雑誌・Voiceの10月号に詳しく記載している。そこでは、どんな形で官民の癒着があったかを、説明している。

 

そこで、それを参考に官民の癒着関係を、以下紐解いてみたい。

 

まずここに関係している人物を、整理してみよう。主な関係者・組織は次の10人と思われる。


 

1.瑞海国際物流有限公司 2012に出資1億元で設立された民間物流企業。天津市浜海地

 区に建てられた違法危険物薬品倉庫を所有する企業である。

 この大株主は 董社軒 于学偉。この2人が大きな利権となる危険物倉庫の経営を始める。

 2015812日深夜、火災を起こし大爆発した。爆心地には直径100mのクレーター。

 大爆発2回の威力はTNT3tTNT21tだと言う。

 

2.只峰 瑞海物流の雇われ社長。身柄拘束された。
 陳雅全 瑞海物流の雇われ監事。身柄拘束された。2人とも後述の「中化集団」の子会社、天津浜海物流から 于学偉が引き抜いた人材である。

 

3.董社軒 瑞海物流の大株主。元天津港公安局長の息子。身柄拘束された。董社軒は天津港公安局にコネあり。

 

4.于学偉 瑞海物流の大株主。化学危険物の扱いを熟知 中央企業「中化集団」の天津支社副社長を20129退職している。3王飛の有能な部下。身柄拘束された。于学偉 は中化集団天津支社の人脈、部下、顧客を引き抜いて董社軒と共に瑞海国際物流を創立した。

 

5.王飛  2012年に汚職で失脚した中化集団天津支社の元社長

 

6.楊棟梁 国家安全生産監督管理局長で20125月上旬まで天津市副市長。石油閥のボス・周永康と昵懇。彼は丁度天津の救援指揮部連絡会議に参加しているときに身柄拘束された。

 

習近平政権は董社軒、于学偉、楊棟梁らに事件の責任を負わせることにしたようだ。現役の天津市長兼同代理書記の 黄興国 には、責任は負わせない積りのようだ。彼は習近平の子分なのだ。

 

7.黄興国 200311月から天津市党委副書記となり、2008から天津市長を務め、昨年暮れから代理書記も兼務習近平のホープの一人。習近平浙江省党委書記になった時の浙江省党委常務委員で寧波市の党委書記として、仕えている。201412より孫春蘭の後を継ぎ天津市代理書記。直轄市の天津市書記は党中央政治局委員でないと就けない。習近平黄興国 を次の政治局委員にする積り。そんな折2015812深夜23時直前浜海地区倉庫で火災発生、後に大爆発。そして習近平の子分の黄興国 の責任が問われ始めた。しかし現在は善玉官僚として振舞っている。

 

8.孫春蘭 201412月天津市党委書記から中央統一戦線部長に、突然異動。黄興国を書記にするために習近平が取った処置である。

 

9.李鴻忠 2015813日、爆発の翌日に湖北省党委書記(習近平の子分)の 李鴻忠 が天津市の書記になるという噂が流れる。黄興国 の責任が追求される前に、習近平が新たな書記を天津に送り込もうとした、と言うこと。結局事前に漏れてしまったので、これは沙汰止みとなる。

 

10.張高麗 現役の政治局常務委員、習政権の副首相で、経済政策の柱の一つである「北京・天津・河北省一体化政策(京津冀一体化)」の責任者。このプロジェクトは現在遅延している。浜海新区開発計画も頓挫しており、この地区はゴーストタウン化している。そのため天津市は5兆元の債務不履行に陥り実質財政破綻しており、江沢民派(上海閥に属し、石油閥でもある張高麗の責任が、習近平に追求されている。そんな折に今回の天津大爆発が起きている。習近平はこれらの政治責任を、石油閥の 張高麗 に押し付ける積りである。楊棟梁張高麗とも昵懇である。


そうすれば、もろもろの責任は子分の黄興国から石油閥でもある張高麗楊棟梁に押し付けることが出来て、尚且つ石油閥の解体、江沢民にも打撃を与えられる、と言うシナリオを描いていると言われている

(続く)