ならず者国家・中国、アレコレ!(18)

この論考に掲載されている中国のGDPの成長率は、2012年に7%下降していることがよく判る。まあそれでも7.7%と、とても高い成長を見せているが、それ以前の10%以上の成長率に較べると、成長率は格段に下落していると言ってよい。中国は余剰労働力が豊富にあったので、その余剰労働力を吸収する事によって経済成長が出来たし、また雇用を維持するためにも必要だったのである。

 

表題の「中国7.3%成長は生みの苦しみか」は、成長が低下していると言うことを意味しているのだが。

 

一旦成長率が下がるとその影響は等比級数的に波及することになる。成長率が下がり続けてゆくことになる、と言うことである。これが景気循環を惹き起こすことになるのである。

 

景気が上昇するときには、投資が投資を呼ぶと言われる様に、投資が拡大してゆくのであるが、投資機会が減少して投資が減ると今度は次々と投資は減少するのである。これが景気循環となるのである。

 

ある企業がX円の投資(設備を購入)をしたとすると、その設備を納める会社はその設備を作るためにまた投資をすることになる。X円に対してαX円だけ投資(関連企業から設備・資材を購入)をする(α投資性向という)。すると関連企業は投資を受けたαX円のα割合だけまた投資をすることになる(α×αX円)。次は α×α×αX円だけの投資となる。

 

・・・・・と言った具合で、投資額の総額は次のようになる。

 

23+・・・・・=1/(1α× X となる。1/(1α)が投資乗数である。

 

たとえば投資性向が0.2とすると、投資乗数は、1/(1-0.2)=1/0.8=1.25 となり、この場合投資額は25% 増えることになる。投資機会が多い開発途上国などでは、投資性向は比較的高く、たとえば0.5とすると投資乗数は、1/(1-0.5)=2.0となり投資額は初期投資額の2倍に膨らむ。これが高度成長の理由である。

http://asread.info/archives/560 なども参照されるとよい。

 

労働力で言えば「完全雇用」か、それに近い状態となるのであり、賃金は(爆発的に)上昇してゆく。一般的に給料が上昇するため、消費が拡大することとなり、景気にもよい影響を与えることとなり、景気下落を下支えすることとなる。そのため景気の上昇・下降の動きは、一概に言えるものではなく複雑である。

 

投資で言えば、投資機会がすべて掘り起こされてしまい、投資対象がなくなって(少なくなって)行く。そのため投資金額が減少して、次々と投資が減ってゆくのである。投資が投資を呼ぶことの反対の現象である。一般的に言って開発途上国では、消費よりも投資の変化の方が景気には大きな影響を与える。

 

消費も同じで、消費額が減れば次の消費額も更に減り、その次の消費額も更に小さくなってゆく、と言う連鎖が続くのである。

 

この中国での「ルイスの転換点」への言及は、景気の変換点を意識しだしたと言うことではないのかな。中国では国土が広大で企業や労働者が偏在しているために、沿岸部では完全雇用状態に近づき、内陸部ではまだまだ失業者が存在していると言うまだら模様状態なのであろう。経済格差の解消などと言う生易しい状態ではないのではないのかな。効率なども悪く、もっと厳しい状況があるのではないのかと、想像できる。


 

事実、次の20129の記事ではあるが、企業の業績が悪化している、と言ったものである。

 

2014年ではなくて、2012年にはすでに企業の収益の下降が始まっていたのである。


 

中国企業、収益悪化が鮮明に
中国企業の業績動向

2012918日(火) プ・ヨンハオ

中国の上場企業の収益は2011年後半から減益局面にある。製造業は在庫圧縮に苦しみ、底入れは来年後半になりそう。為替も一方向の元高・ドル安は期待できないだろう。

 中国経済は失速してしまうのか、すんでのところで持ちこたえるのか。景気刺激策など政府の出方次第の面があるので予想は難しいが、現状を分析する手がかりの1つとして、上場企業の業績動向を観察対象に加えることを提案したい。

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 UBSは中国株の代表的な指数である「MSCIチャイナ指数」構成銘柄の業績動向を集計している。金融業を除くベースでは、既に2011年下期から減益局面に入っている。増益率の鈍化ではない。中国企業は2ケタ成長が当然という時代は終わりつつある。

 利益水準そのものはリーマンショック前を上回っている。これは過度の悲観が必要のない証拠ではある。ただ、物価の上昇を考慮すると、それほど力強い成長を遂げているわけではない。

 セクター別に見ると製造業、とりわけ鉄鋼や非鉄、セメント、機械などの不振が目立つ。鉄鋼などは輸入している鉄鉱石や石炭の値下がりがいずれ収益を下支えするだろう。しかし、今はまだ積み上がった在庫を少しでも早くさばかなければならない段階だ。

 どう見ても、2008年末に政府が打ち出した4兆元規模の経済対策の後遺症だ。(今後追加経済対策がない)自然体のままなら、企業業績の底入れは2013年の下期になってからだろう。足元におけるPMI(製造業購買担当者景気指数)の落ち込みも、この見方を補強している。

 今後、打ち出されるであろう景気対策にはどの程度、期待できるのか。実効性のある刺激策がパッケージとしてまとまるのは早くとも年末だろう。どこの国でも政権交代の直前に大胆な施策は出てこないものだ。

(続く)