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ならず者国家・中国、アレコレ!(22)

まあ中国が失速しても、直接的には、日本にはそれほど影響はなかろう。と言うのも、日本の対中輸出のGDPに占める比率は、2%台前半しかないのである。幸か不幸かあの「尖閣諸島問題」で、日本の中国離れが進んでいたのだ。しかし中国経済が失速したため東南アジアやその他の国が失速してゆくその影響は、少しは日本にも来るであろうがそれほど深刻に考える必要はなかろう。


 

世界がヒヤリ、「中国お化け」の正体を探れば
編集委員 滝田洋一

2015/8/16 5:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 いま世界の市場を妖怪が徘徊(はいかい)している。中国リスクという妖怪が。市場参加者にとって悩ましいのは、そのリスクの中身が不透明で、波及経路が読みにくいことだ。

3日連続の人民元切り下げに踏み切った中国人民銀行人民元紙幣=共同
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 政策運営の議論はひとまず置き、ここでは中国経済が失速した際の影響をみておこう。中国・天津市の爆発事故の打撃の大きさなどは読めない。が、国際通貨基金IMF)によると、中国の国内総生産(GDP)の成長率が実質で1ポイント低下した場合、その翌年に他のアジア諸国の成長率は0.3ポイント低下する。

 下押しが大きいのは韓国、マレーシア、台湾、タイ。反対に日本やインドは相対的に影響が小さい――。

 みずほ総合研究所によれば、カギを握るのは「付加価値ベースの貿易(TIVA)」である。手っ取り早くいえば、中国がモノやサービスの最終需要先となるほど、付加価値ベースの輸出先としての重みを増す。

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 付加価値ベース輸出で目を引くのは韓国である。対中輸出額は2011年時点で652億ドル。米国向けの588億ドルや欧州連合(EU)向けの417億ドルを上回っている。

 国を挙げて中国に傾斜し、現代自動車サムスン電子は中国市場を販路としてきた。中国と一体となりすぎた韓国の経済運営は、今や大きく揺さぶられている

 台湾も付加価値ベースの対中輸出額は、11年時点で451億ドル。対米の343億ドルや対EUの206億ドルをしのいでいる。

 GDPに占める対中輸出比率はどうか。最も高いのが台湾の9.30マレーシアの8.36が次ぎ、韓国5.42、タイ5.15%、ベトナム5.13と、5%を上回っている。09年時点と比べても、各国の対中輸出は金額でも、GDP比でも上昇している。

 これに対して、11年時点の日本の対中輸出額は、付加価値ベースで1279億ドル。金額こそ韓国の2倍近いものの、日本の場合は対米輸出が1475億ドルと対中輸出を上回る。

 GDPに占める対中輸出比率でみても、日本は2.17%と2%台前半だ。不幸中の幸いというべきか、尖閣摩擦の影響もあり、12年以降は貿易や直接投資の面で中国離れが進んでいる。

 こうみると日本の場合、中国失速のダメージは相対的に小さい。だから、いたずらに浮足立つのは禁物だ。ただし、アジア諸国を通じた二次的な波及については、十分に警戒しておく必要がある。

 アジア域外への波及はどうか。米独についても、付加価値ベースの対中輸出のGDP比をはじくと、米国が0.63%、ドイツは1.69となっている。

 米国に関しては、中国が失速しても直接の影響は軽微といえよう。むしろ、アジア諸国資源国が音を上げて、ドル高が進むことがリスク要因となる。人民元の一方的な切り下げが、通貨安競争を誘発するようだと、そのリスクは増幅される。

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 ドイツの対中輸出比率は日本と近い。とはいえ、自動車や自動車部品、鉄道部品、医療機器など特定の分野では中国市場に深く食い込んでいる

 伸び率の高い市場をがっちりと押さえているともいえる。その分、中国が失速した場合、自動車など主力産業への影響は大きくなるフォルクスワーゲンを例にとると、今年上期の中国での乗用車販売台数は、全世界の4割近くを占めている。

 もうひとつ見逃せないのは、中国失速を織り込んだ国際商品市況の崩落である。なかでもWTI原油が一時1バレル41ドル台と、6年5カ月ぶりの安値を付けるなど、原油相場が再び底割れとなっている。

 輸入国である日本にとって、資源安は朗報。半面で、気がかりなのは中東の政情不安。最大の産油国サウジアラビアでも自爆テロが起きている。万が一にも体制が揺らぐようだと、世界経済のシナリオはちゃぶ台返しとなる。

 中国発のリスクの広がりについては、きちんとしたデータに基づく情勢分析が欠かせない。夏の肝試しではないのだから、中国お化けに一喜一憂するばかりでは大人げない。

http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=1&bf=0&ng=DGXMZO90532590U5A810C1000000

(続く)