ならず者国家・中国、アレコレ!(36)

ここに挙げた三つの手法は、どちらかと言うと研究組織やそれに関連する人材を(外から)育成・支援してゆくようなものに小生には感じられるのだが、肝心要なことは、才能ある人材が全く制限なく自由に発想して共産党政府に気兼ねなく物事を進めることのできる雰囲気と言うか風土の醸成が必要なのではないか、と思っている。それをどのようにこの仕組みの中に育て上げるか、と言うことが一番大事ではなかろうか、とも小生には感じられるのだが、どうであろうか。

 

勿論これだけではないが、政治・経済・社会あらゆる面でこのような取り組みをしながら、2020までにまずまずゆとりのある社会・「小康社会」を築くことが当面の大目標だと、この論考の前半で言っている。これが「二つの100年目標」のその一であるが、それは先ずは、貧困層をなくすことが取り合えず最小限の目標と定めている。

 

しかし中国は更に大きな目標を持っている。それは米国に替わって世界に覇を唱えることである。これを中国共産党は、「二つの100年目標」のその二として定めている。

 

このことは、小生のブログ「日清戦争開始120年に考える」のNO.142014.8.26で少し言及しているので、ご承知のことと思われるが、それを次の掲げる。


 

習近平狙いの第一は、習近平自身の政治的権威を確定させるためである。習近平は、既得利益を潰し、腐敗摘発を促進して自分に権力を集中させなければ、「二つの百年目標」などの達成は出来ないとして、自身の政治的権威を高めさせる必要があった。

 

そのために大物権力者の周永康の処罰を急いだものと思われる。政治局常務委員であった周永康を、25年間の不文律を破ってでも立件した理由がここにあるのである。


 

本気で言っているのかどうかは判らないが、二つの百年目標」とは次のものである。

 

(1)1921共産党創立から1002021には、小康社会の全面達」(GDPを2010年から20年までに2倍に)を実現させる。そうすれば少しはマシな生活がおくれる事になろう。少しマシな生活でよければ、中国共産党が軍事費に回している金を幾ばくかでも人民の為に回せば、すぐにでも「小康社会」なんぞは実現できると思うのだが、当分は人民が共産党の犠牲にならざるを得ないようだね、中国では。

 

(2)1949中国建国から1002049には、「新中国100年には、わが国を富強、民主、文明、調和の取れた社会主義の現代化国家に」すると言うもので、これは2013.10.24~25の「周辺外交工作座談会」で、中国の部長級以上の幹部を前にして、習近平が打った大演説である。

 

まあ言ってみれば、これが「中国の夢(中華民族の偉大な復興)」の一側面であろう。一側面であると言ったのは、中国の真の夢は「世界征服」(アメリカを凌駕する)にあるからである。

 

(この解説は、以下の論考を参考にしている。

http://yuukouhachikara.dondon.cc/images/04%20koenkai%20kodera%20bun.pdf

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/china_research_conference/2013/chu25_11.pdf

 

第一の100年目標2021年と言えば東京オリンピックの次の年であり、五年後のことである。中国はその間GDPを2倍にさせると言う目標を掲げている。2010年から2020年の10年間で、GDPの倍増だ。高度成長期の日本も所得倍増計画なるものがあり、所得を倍増させた経験があるが、果たして中国のこの倍増計画は実現可能なものなのか。日本の経験からすれば、倍増もあながち実現不可能なものではないと思われる。

 

世界経済のネタ帳」の「中国のGDPの推移」(http://ecodb.net/country/CN/imf_gdp.html)によれば、2010年から2015年までのGDPの推移は次のようになる。

 

2010 2015 '15/'10 '20/'10

名目GDP 40,890.30 69,238.05 1.693 2.87

実質GDP 13,722.24 19,981.46 1.465 2.12

(単位:10人民元

 

2010年から2015年までの倍率をそのまま2015年から2020年までのGDPに単純に掛け算してみれば、2020年のGDPは、名目でも実質でも倍増している。問題は同じ傾向でGDPが成長してゆくか、と言うことであるが、今まで見てきたように中国の成長は現在急速に低下してきているので、2020年のGDPは如何程になるかは微妙なところだ。仮に成長率を先に予測した年率5%としたら、2010年から2020年までのGDPは2倍(1.858倍程)にはなりそうもない。名目では2倍は達成しそうなので、中国政府はこれで倍増したと、ごまかすのではないのかな。

 

まあ、現状の経済活動の低下をどのように処理してゆくかにかかっているものと思われるが、小生の感で判断すれば、少しのところで倍増は出来ないのではないのか、と思われる。

 

年明けの上海の株式市場の状況などを見れば、今の不景気はかなり深刻な状態ではないのかなと、感じている。過剰設備過剰債務・過剰雇用の状況下にして、今の低迷は相当長引くのではなのかな、と小生は感じているのである。

 

いわゆる「中進国の罠」からは容易に抜け出せないのではないのかな、と言うことである。抜け出すためには、ただ時間が過ぎれはよいと言う訳ではないかそれなりの時間か必要である、と考えるものである。

(続く)