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ならず者国家・中国、アレコレ!(45)

なぜ量より質が大事かと言う事が、この論考でいくばくかでもご理解頂けたことと思います。いかに付加価値を付けるか、と言う事なのだ。それには、それなりのイノベーション・技術革新が必要なのである。これこそが「中進国のわな」から脱却するための要なのである。

 

しかし中国の今後の経済成長に対しては、それぞれの局面で大きな問題を抱えていると、津上俊哉氏は「中国の台頭の終焉」(p228)で解説している。

 

経済成長の局面は、短期、中期、長期のその何れでも、中国の経済は大きな問題を抱えていると言うのだ。

 

短期とは、2015年まで。これはすでに経過している。

中期とは、2020年まで。

長期とは、2021年以降だ。

 

短期での問題は、三つの過剰問題だ。過剰設備、過剰債務、過剰在庫(以前に雇用としていた)だが、これはすでにやってしまったことなので、どうしようもない。

 

長期の問題は、少子高齢化だ。これもすでに言及している。今後長い間どうしようもないことだ。ただそうだとしても、放っておけばますます厄介なことになるので、即効はないにしても今から何らかの手を打っておく、否、打ち続けていく必要がある。同じ問題は日本にもあるのだが。

 

中期の問題は、賃金・物価上昇以上に生産性や付加価値を向上させてゆかなければならない、と言う事である。津上氏はこれこそが「要中の要カナメ」と言っている。そしてまだ何とか打つ手があるのではないか、と言っている。

 

ここからこの「中国台頭の終焉」は、「中国での分配の公平性が許容度を超えていること」が問題だと、話を続けている。

 

「生産性の向上」と「分配の公平性」とは、どんなつながりがあるのか、小生には詳(つまび)らかではないが、小生なりに理解すると次のようなからくりではないかと、無理やり納得させている。

 

多分、所得を増やして実質賃金を上げるためには、企業は生産性をそれ以上に向上させたり、付加価値の高い製品を作り出し販売をそれ以上に向上させて、売り上げや収入を増やすことが大事になるが、それと同じことが、所得の公平な分配で同じ効果が得られるのである。富が一か所に集中して一般大衆が貧困に窮している状態も、その富を公平に分配できれば、一般対象の所得は向上することになるので、経済が成長したと同じ効果が得られるのである。

 

と言う事は、社会一般がそれなりに豊かになれば、技術革新・イノベーションへの強い動機づけとなるのである。

 

だから小生はイノベーション・技術革新が、「中進国のわな」からの脱却にはとても効果があるものだと思っているが、イノベーションによる経済成長・所得の向上を図るためには、所得分配の公平性を確保することがイノベーションを強く促す基になるものと考えられるのである。何といってもイノベーションの担い手は民間企業であるから、民間企業が豊かになるためには「国進民退」では困るのである。民間企業を活性化させる必要があるのである。

 

中国では、都市と農村の二元構造の害や官民格差や国家資本主義の弊害などの問題が存在している。この不公平を解消させるためにも、政府による「分配の公平性」の確保が重要なのである、としている。。

 

この分配の不公正は、次の二つに集約できるのであると言っている。

 

第一は、人民間の貧富の格差である。

 

この最たるものが農民差別である。農民は中国人民の3分の2を占めている。農民工と言う言葉に象徴されるように、早急にこの農村戸籍都市戸籍の解消が第一である。更には青色戸籍などと言う特別な戸籍も存在している(2015.12.7NO.16参照のこと)。

 

また政府や国有企業の幹部に対する優遇も、解消させなければならない。特に中国の年金官民格差は日本の比ではないと言う。公務員や共産党職員は年金保険料を負担していないのであり、そのうえ給付額は倍以上貰っているのである。

 

 

第二には官民格差の是正である。いわゆる「国進民退」そのものを是正する必要がある。

 

このことを次のように述べている。(230~231)

 

ここでいう「官民格差是正」の本丸は、それらの原因となっている「国家資本主義」や「国進民退」そのものを是正することである。政府の経済的な役割の見直しや国有企業の改革が中途半端なまま、長い高度成長期を経験したことで、中国の「政府と経済の関係」は今や異形を呈しており、特に「分配」の在り方は完全に失調をきたしている。

 

国家資本主義」による経済果実の過剰占拠・無駄遣い・腐敗、「国進民退」下の「民営企業差別」、そして強大すぎる実権を手にする党や政府の高層と親密な関係を結ぶ「権貴(特権)資本家」の跋扈は、庶民の怒りと不公平感を買う代表選手であるが、これらはいずれも「官」の役割・実権を縮小しないと緩和されない問題である。また、それは次に述べる今後の成長政策とも重なり合う課題でもある。

 

 

今後の成長のカギとなる生産性の向上や付加価値の増大のためには、このような格差を是正してゆかないと、そのようなイノベーションへのインセンティブになり得ないのではないのかな。経済成長のベースとなる社会生活の向上を図るためには、このような普遍的な格差をなくすことが必須なのである。

 

今まではインフラなどへの投資で経済成長が進行したが、公共投資などによる経済成長は頭打ちとなっている。

 

だからこれからは「従来の産業・都市インフラ投資から「都市・農村二元構造」や「農民差別」の解消へと財政投入の方向をもっと大胆に転換すべきだったが、逆に「4兆元投資」で旧い方向の「ダメ押し」をしてしまった。これ以上、膨大な経済資源を地方政府の自由にさせることは、無駄なばかりか危険である。地方政府の権能や経済実権に大きくメスを入れなければならない。・・・・・

また、「官」と「民(営企業)」の間に存在する格差は、中期成長モデル転換の成否を決する核心中の核心問題である。効率の劣る国有セクターが多くの重要産業分野を独占し、効率の勝る民営企業の活動範囲を狭めていること、「官」が成長果実の多くを取り過ぎて「民(営企業)」の資本蓄積を妨げていることは、両々相まって中国経済サプライ・サイドの活力を奪い、成長空間を狭めている。国有セクターのダウン・サイジングを進め、民営企業に活力の場を広げてやり、資本蓄積を許すことで、経済の効率化高まり成長を促進できるのである。(232~233)と、記述されている。

 

まあ中国では共産党一党独裁政権による独裁政治であるために、国有企業が強力な力を有しているのであり、そのためにその既得権益も半端ないものになっているのである。これが正常な民間企業の活躍の場を制限しているのである。この既得権益は何も中国に限ったことではなく日本にもあるもので、改革には必ずややり玉に挙がっている。

 

このことなどは中国政府もわかっているようで、すでに201211月の共産党18回党大会で言及されている、と津上氏は説明している。

 

201211の第18回党大会は胡錦濤政権の主催であったが、この国家資本主義既得権益にメスを入れるべき政権は、習近平政権となる。習近平がこれに本気で取り組む気があるかと言う事であるが、「腐敗撲滅」がその取り組みの先がけとなるかは今後の課題である。いよいよその手が上海閥に伸び始めたといったニュースも聞かれ始めたが、「国進民退」の動きを止めて「民進国退」へと舵を強烈に切らなければ、それこそ「中国停滞への突入」となってしまう。

 

まあ、それこそ共産党の終わりに近づくことになろう。

 

アメリカ経済は、それなりに順調である。最近は「シェールガス革命」も下火になってきているが、エネルギーの輸入国から輸出国へと転換しようとしている。だから貿易赤字で国が衰退するという話はないであろう。

 

中国が「GDPでアメリカを抜く日は近い」と言われていたが、中国の経済成長は7%どころか現在は5%成長もおぼつかないのが現状である。決して、中国がアメリカを抜く日は来ないと断言できる。

(続く)