ならず者国家・中国、アレコレ!(52)

ダシに使われようが使われまいが、中国は日本を目の敵にしていることは確かなことである。反面日本は中国にとって煙たい存在なのであろう。

あれやこれやの口実を作って、自衛隊攻略も研究している。

 

習近平の軍隊、秋にお披露目
日本を挑発、「自衛隊撃滅」を指示

2015212日(木)  福島 香織

 習近平政権は今年の「抗日戦勝記念70周年」の93に、大閲兵式をやるらしい。すでに全人代常務委の承認も得ているらしい。新中国になってから、大閲兵式はこれまで14回やっているが、抗日戦勝記念日にやるのは初めてである。普通は国慶節建国記念日101日)にやるのであって、文革後は1984国慶節に鄧小平が25年ぶりに大閲兵式を復活させたあと、建国50周年199960周年2009江沢民政権、胡錦濤政権がそれぞれ行ってきた。これまでの例にのっとって考えれば、習近平政権が大閲兵式を行うのは2019国慶節のはずである。それをこの抗日戦勝記念70周年93に行うということはどういうことなのか。ちょっと考えてみたい。

「早くも軍を掌握」を誇示か

 そもそも93日を国定記念日に制定したのは2014年、習近平政権である。習近平政権は2014年だけで、日中戦争に関わる記念日を3つも作った。93抗日戦争勝利記念日930烈士記念日123南京大虐殺犠牲者国家哀悼日。烈士記念日についてはアヘン戦争以降の民族と国家のために犠牲になった烈士全体をたたえる記念日らしいが、事実上、日中戦争で戦って散った兵士たちを指している。抗日戦争勝利が共産党の執政党たる正統性の根拠になっているので、党の求心力を高めるための記念日設定だといえる。だが、習近平はその自分で決めた記念日に、初めての大閲兵式を執り行うとは、なんとも不敵ではないか。しかも習近平は政権の座についてからわずか3年目である。江沢民政権も胡錦濤政権も大閲兵式は政権二期目に入ってからだった。一般に政権一期目は、権力闘争に明け暮れており、二期目になって漸く軍を把握できたという自信が出来て、初めて閲兵式を行うものなのだ。とすると、習近平は早くも軍を掌握したという自信があるということになる。

 興味深いのは、22日の新華社記者と解放軍報記者の連名での署名記事「政治建軍の時代新編-『新たな形成のもとでの軍隊政治工作に関する若干の問題に対する決定』誕生記」だ。

 4000字ほどの記事だが、そこで突出しているのは軍の統帥権習近平にあることの強調である。「軍隊はいかなる時のいかなる状況であっても、党中央と中央軍事委と習主席の指揮に従わねばならない」。はっきりと習近平主席の指揮と、言い切った。普通なら習近平同志を中心とする党中央とか、そういう表現である。「軍隊政治工作」に関する決定文書が出されたのは1999年以来。胡錦濤政権はこの種の決定を出していない。その理由は、胡錦濤は実質、軍が把握できていなかったからだ。軍の実権は江沢民派閥の徐才厚郭伯雄といった中央軍事副主席制服組が握っており、中央軍事委主席というトップの肩書をもっていても胡錦濤は中央軍事委の会議の席で人形のように座っているしかなかった、という。

 習近平は昨年、この胡錦濤も歯がたたなかった徐才厚を汚職キャンペーンで追い詰め、党籍剥奪に成功、徐を含めた16人の退役・現役将校を解放軍から完全に排除した。また郭伯雄も事実上失脚し、拘束中と伝えられている。その後、2014年暮れから、軍の「大洗牌」と呼ばれる大規模人事異動を敢行、七大軍区のうち北京、瀋陽、済南、南京、蘭州の五軍区の指令をすげ替え、全18集団軍のうち五つの集団軍の軍長をすげ替え、徐才厚の古巣であった瀋陽軍区第16軍、済南軍区第26集団軍の両軍長もすげ替えられた。昨年7月には、習近平に忠実な戚建国・副総参謀長、王教成・瀋陽軍区指令、褚益民・瀋陽軍区政治委員、魏亮・広州軍区政治委員が上将に抜擢され、次の第19回党大会での中央軍事委人事に向けた準備がなされている。この人事は汚職摘発、規律違反摘発と連動しており、その追求の徹底ぶりは自殺者も出しているほどだ。

大閲兵式で日本を挑発

 人事だけでなく、軍の制度改革にも着手しようとしている。例えば、軍銜年齢制限を復活し、少将は55歳以下にするなど、全体に若返りを進めようとしている。将官の位が事実上売買の対象となり軍の腐敗の温床となっていた状況を、将官の数を制限することで是正しようという。また、解放軍の任務に国家安全およびインターネット安全とコントロールが新しい「軍隊基層建設綱要」に加わり、国内テロサイバーテロに適応できる情報局部戦能力の向上を目指す、ともしている。

 習近平は国家安全委員会の主席でもあるので、国内外含めた国家安全の実戦、情報戦にかかわるすべての指揮権は習近平に集まる。解放軍は党の軍隊から、習近平の軍隊になったという声もささやかれるほど、露骨な軍権集中が進められているようだ。

 そして秋にはこの習近平の軍隊を「大閲兵式」と言う形で国内外にお披露目しよう、というわけだ。

 この大閲兵式がどれほどのものか、まだ具体的な話はでていないのだが、そこに込められている狙いは、従来の大閲兵式とはずいぶん違うようである。一般的には、大閲兵式の目的は国威発揚、軍威発揚による党の求心力強化である。同時に軍の掌握ぶりを国内外に喧伝する目的もある。だが、今回の大閲兵式は、日本に向けた牽制、あるいは挑発大きな狙いの一つといわれている。

 人民日報は大閲兵式の目的を以下の四つとしている。1中国の軍事実力をお披露目する。2日本を震えあがらせて、世界に向けて戦後の世界秩序を中国が維持していこうという固い決心を見せる。3国民に自国の軍容、軍心、軍貌、軍備を見せて自信と誇りを与える。4党と人民が解放軍を掌握していることを見せて腐敗分子に紀律検査委や司法以外の方法でも彼らを罰する実力があることを示す。

中台統一を邪魔する日本の存在

 シンガポール中文・紙聯合早報の論評記事がこうも指摘していた。「特に日本右翼勢力に、中国の“筋肉を見せつけ”安倍晋三首相に歴史を正視させねばならない」。さらにいえば、台湾へのアプローチもあるという。習近平の政治目標に、中台統一があるが、現状では台湾世論が反馬英九政権、反中国共産党に傾いており、いわゆる経済緊密化によって台湾を取り込むという従来の方法が順調とはいいがたい。

 この中国側の中台統一路線を邪魔するのは、日本の存在である。「両岸(中台)の最大の対立点は、抗日史実に対する評価と分けることのできない内戦のわだかまりが解けないことである」と同紙は指摘する。「例えば、国民党の張霊甫将軍は‘抗日名将’と呼んでよいかという議論が中国で起きた」。張霊甫は、日本軍との戦いでは常勝将軍であったが、その後の国共内戦で戦死している。中国としては「国民党軍(台湾軍)とともに、抗戦勝利を紀念するとしたら話は簡単になる」と考えるわけだ。台湾の国民党議員からもそういう提案が出ているらしい。ひょっとすると中台の抗日老兵士が一緒に参加する場面があるやもしれない。

 日本を震えあがらせるほどの軍事実力を大閲兵式で果たしてお披露目できるのか、と言う疑問についてだが、最近のジェーン・ディフェンス・ウィークリーによれば、中国海軍の実力は数年内に日本を超えて、アジア最強になるという話も出ている。今年は、最初の国産重型四代戦闘機J20が実践配備される予定らしく、また空母遼寧も戦闘群作戦能力を年内に完成させるという予測も出ている。

 J-20戦闘機のほか、運20大型輸送機、対衛星ミサイル、翼龍無人機、レーザー兵器、東風41号ミサイルなどがお披露目される、と香港紙などは報じている。

東シナ海自衛隊撃滅」を指示

 自衛隊OBの方に聞くと、たいてい中国の軍事作戦能力については評価がかなり低い。確かに、毎晩夕方5時から将校宿舎では茅台酒臭が漂うとか、空軍の中将が軍用機を私用に使って香港にまで買い物にいくとか、一階級昇進するときに、上層部に賄賂が支払われるのが常態だとか、中将クラスの階級は現金で支払うと嵩張るし足がつくので、ダイヤモンドなどが使われるとか、軍の腐敗ぶりを聞くにつけ、そんな軍隊でまっとうに戦えるはずがないとも思う。そういう現状を憂い、習近平は「戦える軍隊」をスローガンに、苛烈な軍の汚職退治を昨年展開したわけだが、果たして2年程度で、本当に「戦える軍隊」になるものだろうか。むしろ、現在の容赦ない汚職退治露骨な人事が、軍内部の委縮や反感を招くこともあるのではないだろうか。

 だが、2014年に米海軍第七艦隊諜報情報作戦局の副参謀長だったジェームズ・ファネル大佐が「中国人民解放軍は、日本に対して東シナ海自衛隊を撃滅し、釣魚島を奪取する能力を持たねばならないと、新たな指示を受けている」と発言し物議をかもしていた。ボイス・オブ・アメリカによれば、彼は最近副参謀長職をとかれて退役したそうだが、この発言が原因であったのではないかと言われている。

 そう考えると、「習近平の軍隊」は意外に早く強くなるかもしれない。「中国脅威論」を煽るわけではないが、習近平政権初の大閲兵式はしっかりと観察する必要がありそうだ。

中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス

 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20150209/277248/?n_cid=nbpnbo_mlt&rt=nocnt

(続く)