ならず者国家・中国、アレコレ!(62)

中国が取り得る数多くの選択肢

 台湾の選挙結果に対して中国が楽観的な反応を示すのは、この厄介な事態を取り繕うためのものだと考えられる。だが中国がこうした態度を取り続けることはないだろう。そう考える根拠はいくつか存在する。

 最初の難問となるのは、中国がどういう言葉を使って民進党政権との対話にこぎつけるかだ。中国は民進党が「92年コンセンサス」を遵守すべきだと主張している(このコンセンサスは「中国は一つ」であることに対する半公式の合意だが、その解釈は両者で異なる)。

 蔡英文氏にとっては難しい課題となろう。蔡氏は現実主義者だが、民進党に対して恩義がある。その民進党はこのコンセンサスをずっと否定しているのだ。この点においてハードルを高めたのは他でもない習近平氏である。昨年の11習近平氏は馬英九氏とシンガポールで会談し、1949年以来初めて中台首脳会談の機会を持った。このとき習近平は「一つの中国」(という虚構)を維持することの重要性を強調した。

 こうした背景があるため、中国は統一に対して強情な態度を取り続ける台湾に対して制裁を加える必要を感じているかもしれない。中国は1996年に講じた粗野な方法――台湾海峡に向けてミサイルを放った――に頼らなくても、他に様々な手立てを持っている。

 例えば外交的な策だ。世界には、北京にある共産党政府ではなく台湾を「中国」として認めている国は21しかない(加えてローマ法王庁)。そのほとんどは貧しい小国だ。中国政府はかつて援助と引き換えに承認の転換を迫る外交戦争を展開したが、ここ数年はそれを休止している。だがもし中国がこの「休戦」を破れば、多くの国がすぐにでも台湾を見捨てるかもしれない。

 また、中国は自らの外交相手が「一つの中国」という理念を守っているかを厳しく監視するだろう。昨年12月、18億ドルの兵器を台湾に売却することを米国が承認した。このことが米中関係に再び大きな影を落とす可能性もある。

 さらに、中国は台湾が多国間組織に参加したり、自由貿易協定(FTA)に加盟したりするのを今後も全力で妨害するだろう。馬英九総統が治める台湾に対してはニュージーランドおよびシンガポールとのFTAに調印することを許したが(両国はいずれも中国と外交関係を持つ)、それでも多国間協議への参加は認めなかった。中国が主導して設立したアジアインフラ投資銀行AIIBに台湾を参加させてもいない。米国が主導する自由貿易圏、環太平洋経済連携協定TPPに関しても、加盟しないよう台湾に圧力をかけるかもしれない。ちなみに中国もTPPに加盟してはいない。

 これらに加え、経済的圧力を直接加えることもあり得る。台湾にとって中国は輸出の4分の1を占める市場であり、台湾は海外直接投資の大半を中国に投じている。 一方、中国の貿易全体に台湾が占める割合は4にすぎない。

 手っとりばやい経済制裁として、中国本土から台湾に向かう観光客の割り当てを削減することもできる。2014年に台湾を訪れた中国人は400万人を超え(2008年の28万人から大幅に増加)、訪台観光客全体の約4割を占めた。だが台湾総統選の期間中、中国本土からの観光客数は激減した。国民が選挙の雰囲気に触れ、その味を覚えることを中国当局が嫌ったからであろう。

「対立はない」とのふりをすることが肝要

 それでも、これまで下手に出ていた態度を急に硬化させれば台湾の世論を味方につけるうえで逆効果になるだろう。中国はその点をよく理解している。中国本土との接触が増すことで、台湾の人々は「台湾アイデンティティ」を強めている。それを理由に罰を与えても大した効果はない。少なくとも、陳水扁氏と異なり蔡英文氏は、中国を怒らせるようなことはしまいと心に決めているようだ。

 したがって今後期待したいことは、「互いに相容れない目標を目指しているわけではない」というふりをしながら、中台双方が関係の改善を何とか進めていくことである。実現したい「夢」を持つ習近平氏にとっては、「装う」だけでは不足かもしれないが。

©2016 The Economist Newspaper Limited.
Jan 23rd 2016 | From the print edition , 2016 All rights reserved.

エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/012700056/?P=1

 

 

 

お互いに相容れない目標を目指している台湾と支那中国の両国は、必ずやバッティングする事態に直面する時がある筈である。両者はどのように対応することになろうか。

 

共産支那中国は、台湾での(自由な)選挙運動はかなり気を使っている。この雰囲気が中国本土に入り込むことを極端に嫌っている。中国本土からの観光客は、2008年の28万人から2014年には400万人を超えていると言う。この6年で中国本土からの観光客は14倍以上も増えている。台湾への中国からの旅行者は、日本へ来る中国人などと同じ富裕層に属する人たちなのであろうか。

 

台湾はすぐ隣にあるから、日本に来る中国人達よりも所得の低い層に位置する人たちが多いことであろう。彼らたちは富裕層ほど情報に恵まれてはなない可能性がある。だから彼らが台湾での自由な選挙活動に接するとすると、かなりのカルチャーショックを受けることになろう。

 

そうなると現在の習近平政権のやり方に、彼らは疑問を感ずることになる。と言う事も習近平は心配したのであろう。

 

2014年後半からの台湾への旅行は、相当厳しく制限したことであろう。そうでなければ400万人をはるかに超える旅行者が、台湾を訪れたことであろう。

 

そんなこともあり、香港の「雨傘革命」は、ある意味徹底的に抑え込まれていったものと思われる。

 

中国の一部となった香港であるので、共産中国も相当気を使っている。香港の自由な民主的な雰囲気が本土に入ってきてしまっては、独裁中国は本当に困るのである。だからこれからも香港は、50年間の一国二制度だと言っても、政治・社会のあらゆる面で中国からの厳しい制約を受けることになろう。

 

いつかは中国全体が香港のようになればいい」となっては困るのである。

 

香港銅鑼湾書店関係者の中国政府による拉致・誘拐事件を見れば、そのことがよくわかる。中国は、自由・民主的な物事に対しては、容赦しないのだ。

(続く)