読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

続・次世代エコカー・本命は?(5)

燃料電池車はトヨタだけのものじゃないよ、と相当気張っていたと思われるのだが、当初は2015年中に販売すると言っていたものだったが、主力車の「フィットハイブリッド」などのリコールが相次いで結局2015年度中となってしまい、今回の2016.3.10のホンダ燃料電池車「CLARITY FUEL CELL」の発表となったものである。しかもリース販売年間200台と僅かなものだ。

 

大分古くはなるが当時のリコールに関する記事を見てみよう。あの「間違いだらけのクルマ選び」の著者の島下泰久氏の論考である。

 

フィットの不具合連発を招いたホンダの内情

独特な組織体制に潜んでいた弱点

島下 泰久:モータージャーナリスト

20141029

f:id:altairposeidon:20160406174535j:plain

20139月にフルモデルチェンジした現行フィットは3代目に当たることから、「FIT3」と呼ばれることも(撮影:梅谷 秀司)

何と、またもホンダが主力コンパクトカー「フィット」を含むいくつかのモデルについてリコール(回収・無償修理)を届け出た。特にフィットハイブリッド20139月のフルモデルチェンジから実に5回目、小型SUV(スポーツ多目的車)「ヴェゼル」ハイブリッドについても、201312月のデビューから3回目。デビューから短い期間でリコールを連発させるという異常事態である。

リコール対象車のユーザーにしてみれば、点検や整備のために車両を販売会社(ディーラー)に持ち込むなどの余計な手間となるのはもちろん、世間一般的に見てもホンダそのものの信頼を揺るがす事態となっている。そう、ホンダはいったいどうしてしまったのか。

品質問題につながる2つの理由

一連の品質問題には、ざっと2つの大きな理由を挙げることができそうだ。

一つめは、今回のフィット/ヴェゼルハイブリッドに採用された新しいハイブリッドシステム(HV)の機構の複雑さである。エンジンとモーターを併用するのがHVの基本メカニズムとなるが、ホンダは新しい機構を開発・採用した。

スポーツハイブリッドi-DCD(intelligent Dual Clutch Drive)と名付けられたそれは、従来の「IMA(Integrated Motor Assist System)と呼ばれるHVシステムに比べて、モーターの出力を3倍近くまで高めるとともにDCT(デュアルクラッチギアボックス)(Dual Clutch Transmission)の採用によりエンジンと電気モーターの切り離しを可能とし、IMAでは出来なかった電気モーターだけでの走行(EV走行)を実現した。新型フィットハイブリッドはガソリン1リットル当たりの燃費が36.4キロメートル(km/L発売時点で世界最高を達成(その後、トヨタ「アクア」が逆転)した。

ホンダの従来型HVはエンジンとモーターが直結している構造で、発進も加速も高速巡航も、常に両方が連動して駆動する状態になっていた。対して、最大のライバルであるトヨタ自動車が主力HVの「プリウス」や「アクア」に搭載する「THS-2」と呼ばれるHVシステムは、2つのモーターと遊星ギアを使った複雑な制御により、たとえばエンジンを停止しながらもモーターの力で発進できるなどの機能が、燃費性能の良さにつながっていた。ホンダはスポーツハイブリッドi-DCDによりトヨタへの対抗策を得た。

ここで重要なのがDCTだ。フォルクスワーゲンVW)をはじめとする欧州各車が採用しているこの高効率ギアボックスだが、モード燃費の稼ぎやすいCVT無段変速機)に固執している日本車メーカーで採用例は多くない。ホンダも例外ではなく、そのため実は現行フィット/ヴェゼルハイブリッドのDCTは、独シェフラー社の技術を採用している。

これが品質問題の一因になってしまった。今までホンダは基本的に内製か、もしくは関連会社製のギアボックスを使ってきた。しかし、外部サプライヤーとの仕事となれば、従来のように阿吽の呼吸ですべて物事がうまく進むというわけにはいかなくなる。

そもそも、こうした従来のやり方にも、どうやら問題が潜んでいたようだ。これはホンダという会社のクルマづくりの特殊性と言い替えることもできる。

ここで便宜上「ホンダ」と呼んでいる会社は、本田技研工業株式会社である。一方、本田技研工業で販売されているクルマを開発しているのは株式会社本田技術研究所。もちろん資本関係はあるが、つまり別会社だ。そこを踏まえる必要がある。

技術的な開発作業は「研究所」が担当

ホンダ車の商品企画などは原則として、本社所在地からホンダ社内や自動車業界関係者の間で、「青山」と呼ばれる本田技研工業部門でまとめられるが、技術的な開発作業は本田技術研究所、通称「研究所」が受け持つ。本社の商品企画などを基に1台のクルマを仕立てるのは研究所の仕事だ。

そして研究所は、1台のクルマの開発が終わると、その設計図面を青山に引き渡す。研究所の仕事はそこで終わり。あとは青山が、図面通りのクルマを生産し、販売する。

トヨタ日産自動車マツダなど日本の他のメーカーを見ると、企画、調達、開発、生産、販売はそんなふうには分かれていない。たとえば開発部門は、実際に量産が立ち上がるまで生産性を高め、不具合を見直し、より高い品質を得るために最後まで生産部門と一体となって擦り合わせを行ない、クルマのブラッシュアップを続けるのが一般的だ。

数万点の精密部品で構成されている自動車では仮に図面上はうまく動いていても、生産時の微妙な品質の誤差のおかげで、実際には正しい動作が出来ない可能性が生じることもある。そんな時には、開発部門が設計の見直しを行うことだって、ごく普通にある。

今回の一連のトラブルは、まさにこの量産に向けた擦り合わせの問題から引き起こされた。ホンダの場合、ここは本社の領域だが、あるいはここで研究所での設計や制御の見直しまで含めた綿密な作業ができれば、話は違っていた可能性もあるだろう。もちろんホンダにも品質管理部門はある。ただし、そこは市場に出た製品についての不具合を吸い上げるのが主目的の組織だったのだ。

しかしながら度重なるリコールという重い事態に鑑み、ホンダも遂に組織改革に踏み切った本田技研工業の福尾幸一常務執行役員が、本田技術研究所の副社長を兼任し、開発領域にある新技術について、また今後登場する新型車に関しては、量産開始まで研究所が責任をもつ体制に改められたのである。

軽自動車「Nシリーズ」では一貫体制を構築

実はホンダの最新世代の軽自動車である「Nシリーズ」(「N-BOX」「N-WGN]N-ONE」など)では、鈴鹿工場に開発から部品調達、生産、営業まで集結した開発体制が採られ好結果に繋がっていた。今後はすべてのモデルについて、研究所のお墨付きが得られるまでは世に出ることはなくなる。これまでの「新しいものをできるだけ早く」という考え方から「しっかり熟成してからユーザーに届ける」という転換が図られた。

この体制変更が吉と出るか狂と出るかは、まだ見えない。ホンダらしさが薄れるという危惧もある。しかし、リコール対策に追われて新車投入スケジュールが大幅に遅れ、目標としていた2014年度の国内販売100万台の達成に暗雲が立ち込めている現状からすれば、他に道はなさそう。焦ってニューモデルを投入しても、もしまたリコールのような事態になればダメージは致命的となる。ようやくの決断、ユーザーのためにも吉と出ることを願いたい。

http://toyokeizai.net/articles/-/51798?cx_click_topnews=top_panel

 

 

新型の燃料電池車(FCV)「クラリティ・フューエルセル」も、ここに言及されている「青山」と呼ばれる本田技研工業と、通称「研究所」の本田技術研究所が一体となって開発・生産・販売の(一貫)体制で、進められたものと思われるが、念には念を入れてFCVClarity Fuel Cell」は「リース販売」としたものであろう。FCVについては何もかも新しい技術なので、今度は一つも失敗は許されないと言う気持ちで開発、生産、販売を進めているのであろう。ホンダもすこぶる慎重だ。

 

それにまだ燃料電池スタックの量産体制はできていない、トヨタもまで出来ていなので致し方ないのだが、それにしても年200台のリース販売ということには、ちょっと気が抜けてしまったものだ。

 

島下泰久氏も、その著書で「外観デザインとリース販売という及び腰ぶりに失望。」として、総合評価6にした意味も分からないでもない。

(続く)