続・次世代エコカー・本命は?(24)

2015.10.3東京新聞には「日本の技 VW不正見抜く 堀場製作所の測定装置」と大きく、写真入りで掲載されているので、そのさわりの記事を紹介しよう。

 

ドイツの自動車大手フォルクスワーゲンVW)が排ガス規制を逃れていた問題で、発覚のきっかけとなる米大学の調査に計測機器メーカー、堀場製作所京都市)の車載式排ガス測定装置が使われていた。・・・調査した米ウエストバージニア大工学部は、VWディーゼルエンジン車に堀場製作所製の測定装置を載せ、実際に路上を走行させて排ガスを検査。車体を固定して行う試験場での結果と比べ窒素酸化物(NO2)が基準より最大で35倍も多いことを20145に公表した。実験の内容を伝える大学のホームページには、堀場製作所の装置を扱う研究者の写真が載っている。・・・」として(この新聞には)その通りの写真が掲載されていたが、現在のWVUのホームページには上の写真が載せられている。

 

この記事では「20145月に公表」となっているが、たぶんこれはICCTがインターネットで公表した時期を言ったものと思われるが、2015.10.4の新聞には、CAFEE公開討論会で測定結果を公表したのは、20143とある。

 

「・・・「結果は143にある会合で公表したが、その後にVW側から数回、訪問を受けた。VW側はどのルートで実験を行い、データをどのように回収したか、どんな装置を使ったかなどを聞いた」-わずか五人の研究チームが世界を代表する自動車メーカーの不正を暴いた。世界が驚いている。「成果が認められたことには誇りを感ずる。ただ、不正公表後の騒ぎは私たちの手を離れたことだ」

 

 

2015.9.18EPAVWの排ガス処理に、違法なソフトウェア(defeat deviceが使われていることを発表したことにより大騒ぎとなったが、関係者間では当然早い段階で、それなりの物議を醸していた。

 

新聞紙上に載った記事から関係する事柄を、時系列的に並べてみる。

 

 

1.2005~2006年  浄化装置がコスト高のためVWは、違法ソフトウェアの使用を決める。

            ベルント・ピシェツリーダー(前)社長時代のこと。

2.2007年      マルティン・ヴィンターコーン社長就任

3. 〃         ボッシュ、テスト用として違法ソフト提供。但し文書で違法と警告している。
4.2008
年      社長の拡大路線表明2018年迄に一千万台達成目標、トヨタを抜くと、
            中期経営計画「ストラテジー2018」を発表。
             ('08/600万台→'14/1014万台、'15/1~6/504万台・トヨタを抜いた。

5.2008年      違法ソフト搭載ディーゼル車、米国で宣伝・販売開始。

             '08ロスアンゼルスモーターショーにブルー・モーション・テクノロジー

             ディーゼルEGの「ジェッタ」を発表、米Green Car of The Yearを受賞。

             このBlue Motion Technologyとは、アイドリングストップ機構とブレーキ

             エネルギー回収システムのことを言う。

6.200912   VWスズキ資本提携を発表。

7.2011年      VW技術者が、搭載ソフトウェアの違法性を指摘。

             VW20年振りに米国生産開始。

             VW年次報告書でスズキを子会社扱い

8.2011.6.27     スズキ、フィアットから1.6LディーゼルEGの供給で合意。

9.2011.11      スズキ、 VWを国際仲裁裁判所に提訴する。

10.20132月   WV大学CAFEE排気ガス測定試験開始

11.2013年      EU欧州委員会「共同研究センター報告書」でVWの違法ソフトによる規制

             逃れを認識していた。

12.20143月   CAFEEがサンディエゴ公開討論会VW車の排ガス測定をプレゼン。

              EPA職員が出席していた。EPA調査開始。

13.2015.8.30     スズキVWとの資本提携解消を発表。

14.2015.9.18     EPAVW排ガス不正を公表、違法ソフトを搭載2008~48.2万台。

15.20159月    独自動車局、10/7迄に改修方法・時期の具体策の提示を指示。

16.2015.9.22     VW社声明、不正を認め、該当車は全世界で1,100万台。

17.2015.9.25     VW監査役会・報告書に「2011年に 違法性を指摘」の記述。

18. 〃         ヴィンターコーン社長引責辞任→ポルシェのマティアス・ミュラー氏社長へ

19. 〃         スイス交通規制当局、VWディーゼル車の販売禁止。

20. 〃         独検察当局、ヴィンターコーン前社長を詐欺容疑で捜査。

 

 

と言ったところが、VWによる排ガス不正の経過であるが、この違法ソフトは2007年に独ボッシュが作りVWに納めたものであった。そしてご丁寧に文書で「車両に搭載することは違法である」と警告までしていたものであった。

 

更にVW社内でも、わかっている範囲では2011年に違法性が指摘されていたものであり、当然EUでも、このVWの規制逃れは認識されていたのである。それにも関わらずEUでは格別な対応はとらなかった。この点EUにも大きな責任があるとする新聞記事も見受けられる。当然EU域内でもユーロ5規制(2009年、ユーロ6'14/9~)は守られていなかったのではないのかな。だからEUとしても、しっかりとVWに問い正さなければならなかったものと思われる。だから当然EUにもそれなりの責任が発生する、もちろんVWが一番悪いのであるが。

 

まあブルー・モーション・テクノロジーと言いながら、必ずしも環境に優しかったわけでもないVWディーゼル車は、大手を振ってヨーロッパ大陸を闊歩していた訳だ。

 

欧州自動車工業会によると、2014年のEU主要15カ国での、新車登録のうちディーゼル車の占める割合は、何と53.6%にものぼる。だから環境対応車の代名詞となっており、看板製品なのである。そして欧州ではガソリン車に比べてCO2排出量の少ないクリーンディーゼル車の購入には、補助金や税控除が各国で導入されている、と2015.9.25のかの新聞には記載されている。

 

Green Car of The Year補助金なども返還せよ、と言われなかったのかと心配になるが、米国などでは集団訴訟の動きもあるやに聞くが、現在ではそのニュースはあまり新聞紙上では聞かれなくなっている。

 

何れにせよ排ガス規制がより厳格になるのは確かなので、いくらCO2の排出が少ないと言われるディーゼル車でもNOxPMを処理する排ガス処理装置はかなり高価なものとならざるを得ないので、ディーゼル車の利点はなくなりつつある。ここでもディーゼルエンジンの排ガス処理に関する技術革新が待たれることになるが、それまでは、HVPHVEVへの移行が加速することになろう。

 

まあまだ結論じみた事にはなってはいないが、クリーンディーゼルよりもトヨタハイブリッド技術の方に、軍配が上がった形になったようなものではないのかな。

 

その点日本のマツダスカイアクティブディーゼルは、環境対応も相当優れていると言われているので、ディーゼルもまだまだ捨てたものでもないのであろう。

 

このVWディーゼルの排ガス不正にびっくりした国交省環境省が、慌てた訳でもないが、国内のディーゼル車の排ガス試験を行っている。

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