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続・次世代エコカー・本命は?(27)

 

この件については、トヨタも早い段階からVWの不正については気が付いていた。しかも「れはおかしいぞ」とEUのしかるべき機関に抗議までしていたのだ。

 

トヨタも少しはVWの追い上げを気にしていたのかも知れない。

 

と言うよりも、トヨタディーゼルエンジン搭載車を開発していたからである。2015.6.18に、クリーンディーゼルエンジン搭載のSUV「ランドクルーザープラド」を発売している。この2,800ccのターボディーゼルエンジンは、NOxを大幅に減らしたエコカー減税対象車になっている。

 

トヨタは国内でディーゼル車は販売していなかった。20077月に乗用車タイプのディーゼル車の販売を終了しているので、8年振りディーゼルの復活である。そのためVWディーゼル車も研究対象となっていたものと思われる。その検証過程で、VWの排ガスの不正を見つけたものであろう。

 

 

トヨタVWの不正に抗議していた

2015101日(木)大西 孝弘

 トヨタ自動車が数年前から、独フォルクスワーゲンVW)のディーゼル排ガス性能に疑問を持ち、欧州の規制当局に取り締まりを要請していたことが「日経エコロジー」の取材で明らかになった。

 背景にはディーゼル車の開発において、VWと同じような燃費や走行性能を求めると、排ガス性能が発揮できなかったことがある。競合他社のデータと比べてもVWが不正ソフトを使っていなければ説明できないデータだったという

 しかし、規制当局は動かなかった。実際、2013欧州委員会共同研究センターの調査で、不正ソフトを見つけていたと欧米メディアが報じている。EUではこうしたソフトは以前から違法としていたが、「規制当局は問題を追及しなかった」(英紙フィナンシャル・タイムズ)という。

 不正が明るみになったのは、欧州ではなく米国だった。環境NPO非営利法人)のICCTInternational Council on Clean Transportationウェストバージニア大学の調査からVWの排ガス性能に疑念が持たれ、最終的には米環境保護局(EPA)がVWの不正を発表した

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欧州の規制当局はVWの排ガス不正を認識しながら、問題を追及しなかったと報じられている(写真:ロイター/アフロ)          

 以前から同業他社VWに疑いの目を向けてきた。ディーゼル車のエンジンや排ガス技術は基本的に大きな差がない。それにも拘わらず、燃費や走行性能で差がついているならば、疑問を抱かざるを得なかった。

 フォルクスワーゲンの不正の背景に自動車業界に共通する課題が浮かび上がる。

 1つは実燃費向上に対するプレッシャーだ。

 排ガス問題でも注目されたICCT924に発表した報告書が、再び自動車業界で注目を集めている。

 ICCTは報告書で測定データに基づき、カタログ燃費実燃費かい離が広がっている問題を提起した。カタログ燃費とは規定の試験モードに基づき、認定された燃費だ。実燃費とは実際に走行してみた際の燃費だ。従来からその差の大きさが問題視されてきたが、ICCTは実際の測定データに基づくかい離を公表した。

 下のグラフをご覧いただきたい。企業ごとのかい離率のグラフだ。かい離があるのはもはや前提である。ポイントは全社平均のかい離率から各社がどの程度の差があるかだ。試験以外のリアルワールドでは基準値の40倍のNOxをまき散らしていたと報じられたVWだが、カタログ燃費と実用燃費のかい離率は他社に比べて小さい。毎年の全社平均値より下回っているのは、VWグループと小型車が主力のフィアットプジョーシトロエングループ(PSAだけだ。この対象車はディーゼル車以外も含まれるが、欧州で走行しているクルマを対象としたため、ディーゼル車が多いと見られる。

 実際、これまでVWは実燃費の良さを売りにしてきたVW日本法人のホームページでも、他社と比較しながら実燃費の良さをアピールしている。

 これは基盤とする欧州市場の特長がありそうだ。欧州の自動車事情に詳しいコンサルタントは「欧州の顧客は自動車の性能に厳しく、実燃費へのプレッシャーが強い」と話す。その中でフォルクスワーゲン排ガス性能を犠牲にしてでも、実燃費を向上させようとした構図が浮かび上がる。

燃費とNOxは二律背反の関係

 ディーゼル車において燃費NOx(窒素酸化物)は二律背反の関係にある。エンジンの燃焼効率を上げれば燃費が向上する一方で、空気中の窒素と酸素が反応し、NOxが発生しやすくなる。それを様々な技術を使って両立させようとしているが、どうしても二律背反の要素は残ってしまう。

 特にこのジレンマを抱えるのが排ガス浄化装置の1つである再循環装置(EGRだ。EGRは排ガスの一部をエンジンに戻し、エンジンの燃焼温度を下げてNOxの発生を抑えるEGRを機能させ過ぎると排ガスの循環量が増え、「燃費が最大で34割悪化する」(日本自動車研究所のエネルギ・環境研究部の土屋賢次部長)。

 そこで実際には、EGRを「適度に」使って燃費の悪化を抑えつつ、残りは後処理装置でNOxを低減するのが一般的だ。VWは不正ソフトを用いて試験以外ではEGRなどを使わず、燃費向上を実現する一方で、NOxをまき散らしていたと見られている。

 もう一つの共通の課題が耐久性だ。ディーゼルエンジンの研究に長年取り組んできた早稲田大学理工学術院の大聖泰弘教授はVWの不正発覚後すぐにこの問題を指摘していた。「EGRを使うと使わない場合に比べて燃費の悪化だけでなく、エンジンの劣化が早くなる」と話す。VWの不正によって、快走を続けてきたディーゼル車の技術的課題が改めて認識されることになった。

ICCTが公表した自動車各社のカタログ燃費と実燃費のかい離率

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CO2排出量で比較。リース会社のデータを活用した。2014年まで全社平均のかい離率は大きくなっている。2014年のトヨタ自動車のかい離率が伸びているのはハイブリッド車の販売が伸びたため     

[画像のクリックで拡大表示]

 試験時とリアルワールドでのデータの違いは、排ガスだけでなく燃費でもある。VWディーゼル車において燃費を優先したとするならば、環境よりカネを選んだとの批判を受けざるを得ないだろう。 なぜなら、燃費は直接消費者の便益になり、自動車の購入動機につながるが、排ガス性能は購入動機になることはあまりないからだ。規制をクリアするのは義務であるため、できるだけコストを減らしたいとの意思が働く。皮肉なことに、VW環境軽視のしっぺ返しを制裁金賠償ブランド毀損などの巨額資金流出という形で受ける。

他の環境規制への波及も

 試験時と実態の格差が問題となってきたのは、自動車の排ガス規制が初めてではない。これまで大気汚染や水質汚染、化学物質汚染など様々な環境規制が同様の問題を抱えてきた。常に汚染を測定するとコストがかかりすぎるからだ。2兆円を超えるとも言われる巨額制裁金がVWに科されれば、環境規制をより厳格に適用するという動きが世界的に広がりそうだ。

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(続く)