続・次世代エコカー・本命は?(47)

(6)自動車業界再編、風雲急を告げる

 

 

トヨタダイハツ100%出資会社に、グローバルで両社の小型車事業を強化

トヨタダイハツ100%出資会社に、グローバルで両社の小型車事業を強化

 

1◎会見するトヨタ自動車社長の豊田章男氏(左)と、ダイハツ工業社長の三井正則氏

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2◎ダイハツブランドは無くさない」と強調する豊田氏

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3◎「先を見通すとトヨタとの連携強化が必要」と述べる三井氏

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 トヨタ自動車ダイハツ工業2016129日、株式交換によってトヨタダイハツ100%出資会社にすることで合意したと発表した。トヨタは現在ダイハツ51.2を出資している。今回の合意によって両社は今後、グローバルで小型車事業を強化する。100%出資会社への移行は、201681日を予定している(図1)。

 同日の会見でトヨタ社長の豊田章男氏は、「新たな車両開発手法であるTNGAトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の取り組みを通じて、小さなクルマ造りの大変さを痛感した。当社は小型車の分野では存在感が小さい。互いがこだわりを捨てて任せるところは任せ、それぞれが得意分野を伸ばしていきたい」と述べた(図2)。

 一方、ダイハツ社長の三井正則氏は、「グローバル競争への対応に加え、電動化自動運転、つながるクルマといった今後の成長を左右する次世代技術は、当社の企業規模を超える大きなテーマだ。先を見通すと、トヨタとのより一層の連携強化が必要だ」と述べた(図3)。

 両社の連携強化のポイントは1小型車戦略2技術戦略3事業戦略──の三つある。一つ目の小型車戦略では、軽自動車で培ってきたダイハツの技術を生かし、トヨタダイハツ両ブランドの小型車を開発する。現在ダイハツOEM生産し、両社がそれぞれのブランドで販売している「パッソ/ブーン」や「Avanza/Xenia」といった車両よりもブランドとしての差別化を進める。豊田氏は「ダイハツのブランドは絶対に無くさない」と強調した。

 二つ目の技術戦略では、トヨタが持つ電動化や自動運転といった次世代技術と、ダイハツが持つ低燃費の車両を低コストで作るといった技術を、車両開発の初期段階から共有する。ダイハツの軽自動車にトヨタの次世代技術を搭載するといった連携が考えられる。

 三つ目の事業戦略では、アジアなどの新興国においてはダイハツが主体となって、効率的なクルマの開発・部品調達・生産を推進する。国内事業については、トヨタが持つ販売のノウハウやネットワークも活用し、スズキと激しいシェア争いをしているダイハツの軽自動車の販売増加を目指す。

http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/012900377/?rt=nocnt

 

 

トヨタダイハツとスズキと言う軽自動車を中心とする2社を傘下に収めるとなると、その性格付けはどんなものになるのであろうか。いくらダイハツを子会社化しようとも、ダイハツの軽自動車技術は有効に使う必要があろう。

 

スズキを傘下に収めたとすると、ダイハツは小型車中心・軽自動車はその次、スズキは軽自動車中心と言った性格付けをするのか。提携交渉もそこら辺りが議論の中心となろう。それとも今まで通り、ダイハツもスズキも軽自動車を中心とした企業として、経営を続けさせるのか。大いに疑問のあるところである。今日5/12には、日産が三菱自動車に資本出資して傘下に収めると言ったニュースが飛び交っている。意外とダイハツとスズキの軽部門が協業体制を組んで、日本の軽自動車をトヨタが席巻することも企んでいるのかも知れないが、まず席巻するなどと言う可能性は低いものと思われるがより軽自動車に注力すると言う事は考えられる。特に新興国対策としてだが。しかし当座の間は現状維持を貫くのではないのかな。

 

この件が明確になるのはしばらく時間がかかるであろうから、それまで待とう。

 

 

さて、日本の自動車業界の生き残りは、ちっとやそっとの努力では図れないと言う事だけは確かな事実である。フォードがとうとう日本から撤退することになってしまった。

 

次の論考では、トヨタとスズキの提携交渉とフォードの日本撤退を扱っているが、その何れでも具体的なことは書かれていない。特にフォードは過去には日本でトップの外車であったものが、なぜ凋落してとうとう撤退する羽目となったかと言う具体的な理由も明白になっていない。ただ売れなくなっていった、と言った論調だけだ。まあ日本市場に合った車を作れなかったと言う事なのだが、折角ドイツ車と比較しているので、性能・品質・価格などの面での具体的な提示があればより納得のゆくものとなったものと思われ残念である。

 

 

 

トヨタ・スズキ提携交渉とフォード日本撤退がもたらす「二大激震」の波紋

【第22回】 2016129日 佃 義夫 [佃モビリティ総研代表]

自動車業界を揺さぶる
「二大激震」の背景


トヨタとスズキの提携交渉、米フォードの日本市場撤退という「二大激震」が、自動車市場にもたらす波紋とは? 写真はトヨタ・プリウス(上)とスズキ・アルト(下) Photo:TOYOTA/SUZUKI

2016年の幕開けから比較的平穏であった自動車業界に、「2つの激震」が起きた。1つはトヨタとスズキの提携交渉、もう1つがフォード・モーターの日本市場撤退だ。

トヨタとスズキの提携交渉については、日本経済新聞(2016.1.)27日付けで報じた。同紙によると、安全・環境技術、低コストの生産ノウハウなど両社の強みを対等の精神で持ち寄り、インドなど新興国での小型車需要の開拓を共同で進める見通しとする。

 これに対し、トヨタとスズキ両社はともに「提携交渉に入ったという事実はありません」との否定コメントを発表したが、火のないところに煙は立たず。トヨタによるダイハツの完全子会社化がステップとなるのか、独フォルクスワーゲン(VW)との離婚後にスズキがどのような方向性を模索するのか、提携交渉の行方は予断を許さない。

 一方、米フォード・モーターは、26に「日本事業から撤退する」というステートメントを発表した。フォードは2016年末までに日本における全ての事業から撤退し、経営資源を他の市場へ重中させていくとする。

 日本における事業には今後収益性確保に向けた合理的な道筋が立たず、また十分なリターンを見込めないと判断したことによる。つまり、日本の自動車市場におけるフォード車の販売不振により、シェア低迷で採算が見込めないとの決断である。近年の日本の輸入車市場における「アメ車」の低迷は、東京モーターショーへの米国車不参加などのトレンドに顕著に表れており、米フォードはグローバル市場戦略で日本市場から撤退するという、選択と集中を明確に打ち出したことになる。

 それでもフォードは、かつて日本の輸入車(外車)業界をリードした時期もある名門だけに、今回の日本市場からの撤退判断は輸入車業界にとっても衝撃的であり、大きな波紋を投げかけている。

(続く)