続・次世代エコカー・本命は?(60)

ゴーンは三菱の軽自動車の燃費偽装が判った時から、買い叩きをして安く三菱を手に入れたいと、画策したに違いない。何といっても資本金1657億円と幾分小さいが、売上高は21,807億円の会社を、たったの2370億円でものに出来るわけだから。

(資本金、売上高は20153月現在。三菱重工、商事、UFJ34%の資本を保有している。

三菱自動車の概要 http://www.mitsubishi-motors.com/jp/corporate/aboutus/profile/index.html による。)

 

20164月頃の株価は800円程だったものが、燃費偽造が判明した5月には500円を割り、現在6/6には567円程である。

 

発行済み株式総数は553,800万株程である。その34%は、従って、188,300万株程である。

188,300万株×567円≒1677億円となるが、それを2370億円で手に入れることになる。

 

こんな計算が合っているかどうかは知らないが、

ゴーンにしてみれば、笑いが止まらない状態なのであろう。あの笑顔がその証拠であろう。愈々一千万台クラブの仲間入りが出来るわけである。

 

 

 

財部誠一の「ビジネス立体思考」

三菱自動車に出資を決めた日産カルロス・ゴーンの野望

  • 2016.06.06

資本の論理を超えたゴーン流経営

「世界一に決まっているじゃないですか」

 日産自動車の電撃的な三菱自動車への出資決定。そこにはカルロス・ゴーン社長のトヨタ越えへの執念があるという。日産幹部の証言だ。

トヨタフォルクスワーゲンを追い越し、世界一の経営者と認められたいというのがゴーン社長の本音です」

 2005、ゴーン氏は日産の親会社であるルノーの社長を兼務した。その瞬間、資本の論理を超えたゴーン流の日産・ルノーアライアンス経営が始まった。

 2006、ゴーン氏は業績不振に喘いでいたGMとの提携交渉に乗り出し、一気に「世界一」を目指したが、残念ながら交渉は決裂。野望はついえたが、それから10年、再び世界一」への足がかりをつかんだ。

 

ゴーン目線で三菱自動車問題を考える

 三菱自動車の燃費不正問題を、視点をガラリと変え、日産のカルロス・ゴーン社長の目線に立って眺めてみると、まったく違う異なる風景が見えてくる。

三菱自、日産の傘下に

両社トップが共同会見(写真:UPI/アフロ)

 512日、日産が三菱自動車への34%の出資を公表。燃費不正問題発覚から、わずか3週間あまりのことだった。ゴーン氏は記者会見の席でも、三菱との提携は長年検討してきたことであり、今回の事件はきっかけにすぎないと説明した。

 たしかに日本国内の自動車販売を見ると、いまや市場全体の4割を軽自動車が占めている。日産も「軽」を無視しては日本国内のビジネスが成り立たなくなってきた。当初は日産も「」を自社生産する道を模索したが、どうにもコストがあわなかった

 従来の生産ラインでは対応できず、新たな設備投資が避けられないうえ、設計ひとつとっても「軽」には「軽」のノウハウがあり、自社生産を断念。最終的に生産委託というカタチで三菱と連携してきた経緯はある。

日産の社内アンケートで見えてきたこと

 じつは三菱への34%の出資に対する社内アンケートを日産が行った。

「管理職はおおむねポジティブでしたが、若手の反応はポジティブ、ネガティブ半々だった」

 日産幹部によれば、ネガティブな理由は一般世間の反応に近いという。「不正を働く体質」「技術力の低さ」に集中にしていた。

 一方、幹部クラスのポジティブな意見はビジネスライクである。

「世間では批判される一方だが、三菱の利益率は6%と高い。これは日産の利益率とかわらない。この10年ほどで三菱自動車は事業の集中と選択をやり、生産性は随分向上させてきたことは間違いない。また三菱は今後『国内市場は日産リードで、リソースをASEANに集中したい』とも言っている。逆に日産ASEANが弱い。日本市場は共同でやっていけばいい。ニュートラルに考えると、三菱との提携は決して悪い話ではない」

ゴーンの「壁」のおかげで独自経営ができる

 では三菱自動車の株価を睨みながら提携を即決したゴーン社長の判断に対する社内の評価はどうか。

 ある日産関係者は仏ルノーの子会社という特殊な環境でも、日産独自の経営ができるのは、ゴーン社長という「壁」のおかげだという。

「日産は曲りなりにも7000億円の利益を上げるまでになりましたが、資本関係でみればルノーの子会社です。いまゴーン社長がいなくなれば、社長はフランスから送り込まれ、フランス政府の意向にそった経営をやるリスクがものすごく高い。日産はそれを恐れている。フランス政府とも頑として闘えるゴーン社長がいて、パワーバランスが保てているんです」

 ゴーン氏が日産から受け取っている2015年報酬2年連続で10億円超えである。日本企業の経営者としては破格な報酬だが、日産社内からは批判の声は一切聞こえてこない。

 じつはゴーン氏の報酬をめぐる興味深い話がある。ルノーの会長兼最高経営責任者CEO)としての15年報酬を約725万ユーロ(88000万円)とした際、大株主であるフランス政府が高すぎると横やりを入れた。429日に開かれた株主総会ではいったん否決されたものの、直後の臨時株主総会88000万円のままで確定したのだが、その後でフランス政府がとった対応は、いかにもフランスらしい。企業経営者の報酬に上限を設ける法案を出したのだ。

ゴーン氏のルーツが「世界一」への執着を生んでいる

 日産関係者はここにカルロス・ゴーン氏の際立った存在感があるという。

 「ルノーの前CEOシュバイツァー氏は典型的な仏のエリートで、日産のことなどルノーにカネを貢ぐだけとしか考えていないでしょう。しかしゴーン氏はフランスのためでも、ルノーのためでも、ましてや日産のためでもなく、彼は自分のために経営している。アライアンスで統合するという自分にしかできない手法で、世界一の経営者と認められたい。そう熱望しているんです」

 結果として、フランス政府やルノーから日産の独立性を担保しているというのだ。
 それにしても、ゴーン氏は経営者としてもう十分な評価を得ていると思うのだが、この日産関係者は彼のルーツが「世界一」への執着を生んでいるという。

レバノン系ブラジル人。階級社会のフランスでは、どこまでいってもマイノリティーです。だからトヨタやワーゲンを追い越すという絶対的な結果にこだわる」

 そう考えると、日産と三菱自動車のアライアンスも巷間言われているものとは違って見えくる。果たして吉と出るか、凶と出るか。ゴーン流アライアンス経営のこれからが注目される。 

財部 誠一(たからべ・せいいち)

財部 誠一 

 1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。1995年、経済政策シンクタンクハーベイロード・ジャパン」設立。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして活躍。テレビ朝日系の『報道ステーション』、BS日テレ『財部ビジネス研究所』などに出演。近著に『メイド・イン・ジャパン消滅! 世界で戦える「製造業」をどう守るか』(朝日新聞出版)がある。
財部誠一のホームページはこちら

http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/100452/060200010/?P=1

(続く)