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続・次世代エコカー・本命は?(66)

陰謀論」が囁かれる最大の理由

 静岡県富士市CVT(自動車変速機)の世界的シェアを誇るジャトコ株式会社という企業がある。日産が75%、三菱が15%出資しているこの企業が生まれたのは2002。日産の子会社「ジヤトコ・トランステクノロジー」と、三菱自の水島製作所など三工場の変速機部門が事業統合をした。国内自動車メーカーが基幹部品で手を結ぶのは初のことだった。

 「日産、三菱はともに外資の支援を受けて経営再建中で、開発コストを抑える必要があった。特に三菱はリコール隠し事件の後遺症で販売低迷が続いており、今回の統合も三菱側が提案した」(読売新聞2001105日)

 ゴーン氏が日産に乗り込んだのは1999。その剛腕で経営を建て直す一方で、スケールメリットを求めて事業拡大に意欲をみせていた。つまり、益子会長にとってゴーン日産というのは、自身が三菱自に送りこまれた10年以上前から提携交渉を進めてきた「パートナー」であるとともに、2000年、2004年という経営危機が起きるたびに手を差し伸べてくれた「恩人」でもあるのだ。

 そんな日産が、三菱自側の燃費データに不審な点があると気づいたのは昨年(2015)11だ。二度あることは三度あるではないが、今回もいち早く三菱自に手を差し伸べて、「傘下入り」という救済策を示したとしても、特に驚くような話ではない。

 このような両者の蜜月関係が「実はシナリオどおり」という疑念を抱かせていることは間違いないが、それをさらに「陰謀論」にまで押し上げてしまっている要素が別にある。それが3つ目の理由である「益子会長の不自然な立ち振る舞い」だ。

 燃費データ不正問題が発覚後、益子会長はなかなか公の場に現われず、はじめて登場したのは511に開かれた謝罪会見である。その理由はこのように述べた。

 「執行部門のトップである相川社長に委ねておりましたが、社内調査がある程度まで進みましたので、監督側の代表として直接ご説明申し上げるのが適切と考え、本日参った次第です」

 ただ、これはあまりしっくりこなかった。

日産と三菱自の「資本提携」は悲願

 謝罪会見でボコボコにされた相川哲郎社長は、最高執行責任者COO。会長に退いたとはいえ最高経営責任者CEOはいまだに益子氏である。企業の存続にかかわる不祥事の対応に経営トップが初動からノータッチというのはどう考えても解せない。日経編集委員の西條郁夫氏も以下のように指摘している。

 「益子会長は三菱自動車の社長になった直後の2005年3月に今回と同じ国土交通省記者クラブで会見し、情理を尽くした説明で「リコール隠し糾弾」にいきり立つ記者クラブの面々を納得させた一幕があった。それほどのコミュニケーションの名手がなぜ今回不在だったのか」(日本経済新聞426日)

 これはまったく同感だった。益子氏はこの9年、三菱自を守るため常に先頭で奮闘してきた。そんな人物が最も出なくてはいけない場に出てこない。もはや引責辞任は避けられないなかで今さら、責任逃れをしてもしょうがない。なにか理由があるのかと首を傾げている矢先、11日にようやく登場。そして翌日には日産のゴーン社長との共同記者会見に登壇されるのを見て、ようやくモヤモヤが消えた。

 日産と三菱自の「資本提携というのは長く進められてきた悲願だ。その記念すべき日の「顔」となるのは、2004年から蜜月にあったゴーン氏と益子氏と決まりである。

 そうなると、燃費不正問題の会見では出せない。当然だ。相川社長が「不正の三菱」を象徴する顔となってしまったことからも分かるように、益子会長にネガティブなイメージが付いてしまうからだ。

 これは非常に興味深い。三菱自が燃費不正で益子会長を「温存」していたということは、不正を公表した時点ですでに益子会長を「資本提携の顔」にする方針が定まっていたということになるからだ。

 すべては「日産三菱」をつくるための筋書き通り――。ご本人たちは否定されているが、今後のことを考えると、このようなイメージを広めたほうが良い気もする。

 これでルノー・日産・三菱自世界3GMにも手が届く。ゴーン社長は、かつて三菱自と組んでいたPSAとの大連合も視野に入れているという。「世界一」の座はきれいごとだけではつかめない。陰謀論バンバン沸き起こるほどの「したたかさ」はむしろ必要ではないか。権謀術に長け、ギラギラした目で野心に燃えた「日産三菱」になることを期待したい。 

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女92カ月監禁事』(小学館)で第12小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1605/17/news050.html

 

 

日産自動車三菱自動車を手に入れるための直接的なチャンスとして、この燃費不正問題をゴーンがうまく使った、と言った趣旨のことをまとめているようだ。そのこと(三菱自の燃費不正問題)をうまく情報操作(スピンコントロール)し政治利用して、筋書き通りにゴーンが三菱自を手に入れたのであろう、と言っている。

 

その理由として次の三つを挙げている。

 

一つ三菱自の燃費不正に、ゴーン日産がつけ込んだ、と言う事。三菱自の弱みにつけ込んで、軽自動車の開発・生産に対する主導権を取り戻し、更には資本提携でもゴーンが主導権を取ったものと思われる、と言う事である。

 

二つルノー・日産のカルロス・ゴーン三菱自の益子修会長は、お互いに海外経験が豊富でウマがあったので、話がよく通じていたと言う事である。お互いに「密月ハニームーン関係」にあったと、ここでは表現している。2002には日産と三菱自の変速機部門をジャトコ株式会社に事業統合しているし、2004には軽自動車で提携し20051月からekワゴンをオッティとして日産に供給している。201161には、両社は折半出資で、軽自動車製造の合弁会社株式会社NMKVを設立している。

 

三つ、既に、益子会長を「資本提携の顔」にする方針が定まっていたので、4/20の謝罪会見は相川社長に任せっぱなしであった。反対に5/12日産・三菱自資本提携発表会見では、益子修会長兼CEOは日産のゴーンと共に満面の笑みで写真撮影に収まったのである。

 

 

 

三菱自不正発覚の引き金・日産、三菱自を買い叩き…三菱財閥没落の隙突く、事前に計画準備か

2016.05.13 文=編集部 企業・業界

 


資本・業務提携の共同記者会見を行う日産のカルロス・ゴーン社長と三菱自の益子修会長(「Rodrigo Reyes Marin/アフロ」より)  

 日産自動車2373億円を投じ三菱自動車工業株式の34%を握り、筆頭株主になる。三菱自が第三者割当増資を実施する。日産と三菱自512日に取締役会を開き、資本・業務提携を決議した。34を握れば株主総会で合併や定款の変更などの重要事項を単独で否決できる拒否権を得ることになり、実質的に傘下に収めることができる。


 間接保有も含めて三菱自の約20%の株式を保有する三菱重工業は、三菱自の“盟主”の座から降りる。三菱グループの御三家、三菱重工三菱商事三菱東京UFJ銀行の出資比率の合計は第三者割当増資後に全体の4分の1程度に低下する。日産は、三菱3社はそれぞれの企業を取り巻く厳しい経営環境もあり、「これ以上、3社は三菱自にコミットできないだろう」と読み切った。その上で周到に作戦を練り三菱自を買い叩いた

 三菱自の水島製作所(岡山県倉敷市)の軽生産設備と、タイをはじめとする東南アジアにおける三菱自のシェアを手中に収めることができれば、2300億円出してもお釣りがくる。三菱自東南アジアに複数の生産拠点を持ち、世界販売台数の3割を東南アジア地域で売っている。これに対して日産はわずか1割だ。

 12日の資本・業務提携の記者会見でカルロス・ゴーン日産社長兼会長は、三菱自を手に入れることのメリットを「スポーツタイプ多目的車(SUV)、四輪駆動技術、ピックアップトラックASEAN東南アジア諸国連合)市場での協業」とすらすら答えた。「日産にとって、これは好機だ」とも述べた。こうした発言は、満を持してMA合併・買収)にゴーサインを出したことを物語っている。

(続く)