続・次世代エコカー・本命は?(76)

この事故を受けてNHTSAも調査を開始したと言う。調査結果には注目が集まることになるが、テスラの他にトヨタをはじめ各自動車メーカーやIT企業のGoogleAppleも、自動運転については研究開発を進めているので、気になっている筈だ。

 

何といっても、我々の生活を大きく変える可能性がある技術であり、次世代エコカーには当然備わっていなければならない機能となってきているので、各社は大いに耳目をそばだてている筈だ。

 

まあ簡単に自動運転と言ってはいるが、「Level」の技術であり厳密に言わなくても自動運転ではない。

 

NHTSAは、自動運転のレベルを次のように定義している。(Wikipediaより)

 

レベル0 加速・操舵・制動とも、すべてドライバーが操作して運転する。

レベル1 加速・操舵・制動のうち自動ブレーキなど、いずれか一つをシステムが行うもの。

レベル2 加速・操舵・制動のうち二つ(複数)の操作をシステムが行うもの。

レベル3 加速・操舵・制動のすべてをシステムが行い、緊急時などはドライバーが操作する。

レベル4 加速・操舵・制動の全てをシステムが行い、ドライバーは全く関与しない。完全自動運転

 

この完全自動運転となると、ドライバーは運転操作は何もしない。豊田章男社長の言う”クルマを操る歓び・もっといいクルマを作ろうよ”は、ない。それでも完全自動運転車へのニーヅは存在しているので、将来的には、この完全自動運転車とドライバーが運転する車と二つの性格の車に分けられてゆくのではないのかな。分けられると言うと少し語弊がるが、自動運転機能付き自動車とそうでない普通の車、と考えてもよい。まあ完全自動運転車となると相当かたちも変わってくるとは思うが相当先のことになると思われるので、徐々に自動運転機能が導入されてやがては完全自動運転の車の登場となってゆく、と言うステップをとることになろう。

 

この死亡事故で、自動運転の開発戦略の練り直しが迫られることになるのではないか、と言った論評もあるが、より慎重にはなるのは致し方ないことであるが方向性は変わらないものと思われる。

 

世の中に沢山の交通事故が発生しているように、人間は間違うものでありその人間が考えたシステムであるので、当然この運転支援システムには間違いは存在していると思わなくてはならないのである。

 

このテスラの「Autopilot」には、状況認識のためのセンサーとしては、カメラミリ波レーダー・超音波センサーを搭載していた。そしてその情報をどのように認識・判断するかと言った頭脳に該当する判断を司るソフトウェアが、重大な役割を果たすことになる。

 

ここらあたりの(運転支援)システムは、イスラエルMobileyeが作っているものらしい。それをテスラが幾分か改良して、自車に搭載したもののようだ。

 

今回の事故は太陽が関係していると言っているので、センサーが的確に状況を認識出来ず、更にそのような場合にはソフトウェアにも不備があって車を制動するなどの操作しなかった訳だ。だからこのソフトウェアには、大いに改良の余地があるものと思われる。判断が出来ない状態に陥った場合には、そのソフトウェアは安全サイドに車を導くと言った判断をしなければならないからだ。

 

テスライーロン・マスクは、センサーでも人間でも認識できないような太陽の反射があった、などと人のせいにしているが、もしそういう事で弁解するのであれば、これは明らかにテスラのモデルSのAutopilot」の欠陥であろう。認識できなかったならば、即座に車を止めると言ったことを、そのプログラムはすべきなのであるし、認識出来なかったと言うセンサーにも問題があるのではないのか、と感じられる。

 

 

 

テスラの死亡事故は「太陽のせい」か?

技術の限界を伝える難しさ

2016719日(火)

 

今回死亡事故を起こした米テスラ・モーターズの「モデルS」(写真:テスラ・モーターズ

 殺人の罪を犯したムルソーが、裁判でその動機を聞かれ、「太陽が眩しかったから」とこたえる――。フランスのノーベル賞作家アルベール・カミュの代表作の一つである「異邦人」の有名な場面だ。殺人を太陽のせいにするこの小説は、「不条理」を表現した作品だと言われる。

 すでに旧聞に属するが、57に、米テスラ・モーターズの「モデルS」が、運転支援システム「オートパイロット」の作動中に、高速道路を横切ろうとした大型トレーラーに衝突して運転者が死亡する事故を起こした。オートパイロットの作動中に運転者が死亡する事故を起こしたのは今回が初めてだ。その原因としてテスラは「トレーラーの白色の側面が、明るい空を背景としていたために(against brightly lit sky)」人間もオートパイロットもトレーラーを認識することができず、ブレーキを作動させなかったことを挙げている。

 オートパイロットは、「自動操縦」というその名とは裏腹に、自動運転システムではなく、ドライバーを支援するシステムと同社は位置づけている。安全確保の義務はドライバーにあり、システムが安全に動作しているかどうかを監視するのもドライバーの役目だ。しかも、事故車のドライバーが走行中にDVDを鑑賞していた疑惑も浮上しており、テスラに対する批判的な論調は目立たない。ただ、オートパイロットがトレーラーを認識できなかった理由を空の明るさのせいにするテスラの説明に関しては、筆者は「不条理」だと感じた。

高速道路なのにトレーラーが横断?

 そもそも今回の事故は不可解なことが多い。最初に感じた疑問は、今回事故を起こしたテスラ車は高速道路を走っていたはずなのに、なぜトレーラーが道を横切るのか? というものだった。そこで米国のメディアの報道を調べてみると、日本のニュースで高速道路と翻訳されていたのはHighwayという言葉だった。これは日本語でいう国道に近いニュアンスで、日本語で一般にいう信号や交差点のない高速道路はFreewayと呼ばれることが多い。国道であれば、交差点があっても驚くには当たらない。日本と同様に米国の道路でも左折車(米国は右側通行なので、左折車は対向車線をまたぐことになる)よりも直進車が優先されるので、直進してくるクルマとの安全な距離を見誤ったトラクターにも一定の責任はあるはずだ。

事故の状況。トラクターは左折しようとして高速道路を横断しているとき、反対車線から直進してきたテスラ車が側面に衝突した。(グーグルの写真を基に筆者が作製)

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 ところで、筆者がなぜ「不条理」と感じたかといえば、テスラのオートパイロットは、カメラだけでなく、ミリ波レーダーも搭載しているからだ。確かに、太陽の光が強くて、それが白いトレーラーの側面に反射したら、人間もカメラも眩しくて、トレーラーを見つけにくいかもしれないとは思う。しかし、太陽の眩しさは、ミリ波レーダーには関係ない。ミリ波レーダーは、ミリ波と呼ばれる波長の短い電波を発射して、物体に当たって戻ってくるまでの時間を測定することで、物体の有無や、物体との距離を測定するセンサーだからだ。

 

 レーダーにはレーザー光を使う、いわゆるLiDAR(ライダー)と呼ばれるタイプもあるのだが、ライダーやカメラは、物体の検知に光を使うので、雨や雪などの天候では光が遮られ、測定性能が低下する。これに対しミリ波は、雨や雪の影響を全く受けないわけではないのだが、光に比べるとその影響は少なくまた空気中での減衰も光より少ないので遠くの物体までの距離を測定するのに適している。なので、まさに今回のような事故を避けるためにあるようなセンサーなのだが、ミリ波レーダーはどうして役に立たなかったのか。それが筆者の疑問だった。

(続く)